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ホーム > お知らせ > パブリックコメント > 意見提出手続 > 「化学関連分野の審査の運用に関する事例集」の追加事例(案)について

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「化学関連分野の審査の運用に関する事例集」の追加事例(案)について

平成12年4月4日
調整課審査基準室

特許庁では、この度、「スクリーニング方法特定化合物及びその医薬用途クレーム」について、実施可能要件に関する事例(案)を作成しました。本事例は、昨年10月より特許庁ホームページにおいて公表されている「化学関連分野の審査の運用に関する事例集」の、「Ⅰ.実施可能要件の判断に関する事例」をさらに充実するために作成されたものです。
これについて御意見がございましたら、文書または電子メールにて、以下の要領で提出してください。

(1)提出先

特許庁 審査第二部調整課 審査基準室(担当:山口、坂崎)
〒100-8915 千代田区霞が関3-4-3
電子メールアドレス PA2A10@jpo.go.jp
電話 03-3581-1101 内3113
ファクシミリ 03-3597-7755

(2)締め切り

平成12年4月14日(金曜日)

(3)その他

当方から内容確認等の必要が生じる場合がございますので、名前及び連絡先(電話番号又は電子メールアドレス)等を必ずご記入ください。

なお、電話での御意見・お問い合わせはお受けしかねます。あらかじめご了承ください。
上記(案)につきましては、お寄せいただいた御意見を反映させ、最終版を作成する予定です。

「「化学関連分野の審査の運用に関する事例集」の「Ⅰ.実施可能要件の判断に関する事例」への追加事例(スクリーニング方法特定化合物及びその医薬用途クレームの実施可能要件の運用に関する事例)(案)」について(案)

新薬開発手法の進展に伴って増加傾向にあり、内外からその運用が注目されている「スクリーニング方法特定化合物及びその医薬用途クレーム」について、実施可能要件に関する事例(案)を作成した。
この事例は、昨年10月より特許庁ホームページにおいて公表されている「化学関連分野の審査の運用に関する事例集」の、「Ⅰ.実施可能要件の判断に関する事例」を充実するための追加の事例として取り扱うものとする。
したがって、この事例も、先の事例集と同様、平成7年5月に公表された「平成6年改正特許法等における審査及び審判の運用」の運用指針を理解するために、具体的な事例を用いて、明細書の記載要件の判断を説明したものとなっている。また、実施可能要件の判断は、上記運用指針の考え方が、改正法施行前の出願にも適用されるので、本追加事例の考え方は、改正法施行前の出願(平成7年7月1日前の出願)にも適用される*。

* 実施可能要件の判断については、「特許法第36条の改正に伴う審査の運用指針」(平成7年5月 特許庁)の考え方が改正法施行前の出願にも適用されることが特許庁公報等に公示されている(「平成6年改正特許法等における審査及び審判の運用」の適用について 平成8年2月 特許庁)

 「化学関連分野の審査の運用に関する事例集」の「Ⅰ.実施可能要件の判断に関する事例」への追加事例(スクリーニング方法特定化合物及びその医薬用途クレームの実施可能要件の運用に関する事例)(案)

背景

1.現代の新薬開発における代表的なアプローチ

代表的な現代の新薬開発の手法は、生体内活性成分が結合する受容体蛋白質や生体内現象に関連する酵素等の構造を明らかにし、その構造情報をもとにコンピュータを用いて薬物を設計する手法(合理的薬物設計)、ならびに、得られた構造情報に基づいてデザインされた化合物及びその類似体をコンビナトリアルケミストリーの技術を用いて多種類合成し、HTS(high throughput screening)の技術によって高速スクリーニングを行ってリード化合物を選択する方法である。リード化合物が特定されたのちは、これらの技術を用いてさらに多くの種類の改変体を合成・スクリーニングし、より効果の高い薬物を得ることができる。
一方で、ヒト等のゲノム・発現蛋白質情報の蓄積と生化学的な研究の進展に伴い、疾病の発症や治癒がメカニズム的に解析されるようにもなってきている。このようなメカニズム解析には非常に高度な知識と実験が要求されるものの、一度解析がされるとその知見をもとに比較的簡単にHTSの系を構築することができ、その後は機械的に化合物をアッセイすることができるようになる。そのため、そのように構築されたスクリーニング系を用いて化合物をアッセイすることによっても、リード化合物の特定が行われるようになってきている。
参考文献 コンビナトリアルケミストリー研究会編「コンビナトリアルケミストリー」化学同人発行(1997年4月10日)

2.新しいタイプの特許クレーム

こういった新しい新薬開発手法の進展に伴い、特許出願においては新しいタイプの特許クレームが見られるようになってきている。
その傾向は、とりわけ国際特許出願において強く、たとえば、上記HTS技術により得られた「スクリーニング方法のみで特定された化合物」や、スクリーニング方法で特定された化合物が共通に有する性質と特定の疾病との関連性を見出したことによる「スクリーニング方法特定化合物を有効成分として含有する特定用途の医薬組成物」といった出願がなされるようになってきている。

3.欧米の状況

上記のような新しいタイプの請求項は、とりわけ国際特許出願に多く見うけられる。最近の国際特許出願では、「新規遺伝子」、「新規の発現蛋白質」、「その機能を用いた薬物のスクリーニング方法」、「スクリーニング方法のみで特定された化合物」、「その化合物を有効成分として含有する特定用途の医薬組成物」が一の出願にすべて記載されているものも多い。
ただし、スクリーニング方法のみで特定された化合物自体に特許付与された例は見あたらない。

4.この追加事例を作成することについて

上記のような状況をふまえ、今回これらの新しいタイプの請求項に対する実施可能要件の考え方を、この追加事例により明確化することとした。このような請求項についても基本的には現行特許法と現行審査基準等の枠組みの中で従来と同じ考え方で運用されるものであるが、それらは新しい技術内容及び新しい請求項の記載形式を含むものであるため、この追加事例によって実施可能要件に関する考え方をより具体的なものとすることを目的としている。
なお、現在、既存の審査基準等の見直しが行われているが、実施可能要件の判断については大幅な修正を予定していないため、この追加事例は、予定される新しい審査基準等のもとでも同じ考え方で運用されるものである。その他の、発明の明確性、新規性等の特許性に関する考え方については、当該審査基準等の見直しの方向性がはっきりとした時点で、必要があれば検討することとする。

5.留意点

この追加事例では、実施可能要件のみを取り扱っているが、個々の事例に照らして他にも拒絶理由があると判断されれば、それらはすべて最初に通知されるものとする。
そして、この追加事例は現時点での考え方をまとめたものであり、技術の進歩発展、特許法・審査基準の改正などにより随時見直すものとする。

事例1

R受容体活性化化合物をスクリーニングにより識別することができず、実施可能ではないと判断される場合

本願明細書

[請求項1]

次の工程

  • (1)試験化合物をR受容体発現細胞に接触させる工程
  • (2)試験化合物がR受容体を活性化させるか否かを確認する工程

を含むスクリーニング方法によって得られたR受容体活性化化合物

[請求項2]

請求項1記載のスクリーニング方法によって得られた化合物を有効成分として含有する肥満抑制剤

[発明の詳細な説明の概要]

R受容体は出願人が初めて発見したものであり、R受容体活性化化合物をスクリーニングする方法、及び、R受容体活性化化合物が肥満抑制効果を奏することは、本出願人が初めて見出したものである。

発明の詳細な説明には、R受容体活性化作用化合物として数個の化合物の製造実施例が記載されているが、R受容体発現細胞の調製方法、試験化合物をR受容体発現細胞に接触させる方法、R受容体を活性化させるか否かを確認する工程については何ら記載されていないし、上記実施例化合物がR受容体活性化作用を持つことや肥満抑制効果を奏することの確認もされていない(R受容体は本願出願人が初めて特定した受容体であるため、当該方法、工程、医薬用途等が出願時の当業者の技術常識でもない)。

拒絶理由の概要

[請求項1について]
請求項に記載されたR受容体は本願出願人が初めて見出したものであり、その受容体を発現する細胞の調製方法、試験化合物を当該細胞に接触させる方法、活性を確認する方法のいずれもが出願時の当業者の技術常識であったとは認められないにもかかわらず、発明の詳細な説明においてもそれらの方法が何ら具体的に説明されていない。
したがって、この請求項に記載の化合物を当業者が得ることができる程度に記載されていないので、発明の詳細な説明は、当業者が請求項に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
(なお、この請求項が公知化合物も包含する場合は、新規性の要件を満足しない点についても留意されたい。)

[請求項2について]

請求項1の化合物を有効成分として含有するこの請求項に記載の肥満抑制剤についても同様である。

さらに、医薬分野においては、種々の化合物が共通の性質(受容体活性)を有していても、それら化合物の全てが同じ薬理作用を示すとは言えないことから、性質で特定された化合物を含有する医薬組成物の発明においては、その性質を有する化合物が特定の薬理作用を示すと一般に認識できる程度の薬理データ又は理論的な説明が明細書中に記載されていることが必要である。
これを本願明細書についてみると、化合物の薬理活性に関して何ら具体的に確認されておらず、前記スクリーニング方法により得られたR受容体活性化作用を有する化合物が肥満抑制剤として使用できる程度に発明の詳細な説明が記載されていない。

拒絶理由に対する対処

意見書等により、上記手法等を明確に示し、R受容体活性化化合物を得ることができること、及び、肥満抑制剤としての薬理データを意見書等で提出して肥満抑制剤として機能することを主張した場合であっても、通常、上記拒絶理由は解消しない。
(説明)
上記のように取り扱うのは以下の理由による。
「当業者が請求項に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に、発明の詳細な説明が記載されている」とは、出願時の技術常識を前提にしていると解される。本願の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識を考慮しても、上記化合物を得ること、及び、当該活性を有する化合物が肥満抑制剤として機能することが推認できる程度に発明の詳細な説明が記載されていない場合には、その後にそれらの点が明らかにされたとしても、化合物を提供し、その化合物を有効成分として含有する医薬用途発明を実施することができる程度に明確かつ十分に、発明の詳細な説明が記載されているとはいえない。

事例2

スクリーニング方法によって得られるR受容体活性化化合物について、実施例以外のものを得ることができず、実施可能ではないと判断される場合

本願明細書

[請求項1]
次の工程

  • (1)試験化合物をR受容体発現細胞に接触させる工程
  • (2)試験化合物がR受容体を活性化させるか否かを確認する工程

を含むスクリーニング方法によって得られたR受容体活性化化合物

[請求項2]
次の工程

  • (1)試験化合物をR受容体発現細胞に接触させる工程
  • (2)試験化合物がR受容体を活性化させるか否かを確認する工程

を含むスクリーニング方法によって得られたR受容体活性化化合物を有効成分として含有する肥満抑制剤

[発明の詳細な説明の概要]
R受容体は出願人が初めて発見したものであり、R受容体活性化化合物をスクリーニングする方法、及び、R受容体活性化化合物が肥満抑制効果を奏することは、本出願人が初めて見出したものである。
発明の詳細な説明には、R受容体活性化作用の有無を識別するために実施する、請求項に記載のスクリーニング工程を含む一連の手順、及び、その識別のための判断手法(どの程度受容体が活性化された場合、R受容体活性化化合物とするのかの判断手法)が具体的に記載されている。また、その実施例として、新規のR受容体活性化化合物X、Y、Zが記載されており、それらがR受容体活性化作用を有することの確認もなされている。
さらに、このR受容体の活性化により肥満が抑制されることについては、その薬理学的なメカニズムが明細書中に理論的に記載されており、かつ、化合物Xについて、当該薬理効果を奏することが具体的な薬理試験結果と共に記載されている。
(ただし、X、Y、Z以外の新規化合物については、化学構造についても、製造方法についても記載されていない。)

拒絶理由の概要

一般に、所望の性質を特定することのみで、その性質を有する化合物自体を把握することは困難であるため、化学構造等の有効成分を得るための手がかりが記載されていない明細書は、発明の実施に必要な有効成分の入手過程において、無数の化合物を製造、スクリーニングして、当該性質を有するか否かを確認するという当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を求めるものであり、当業者が発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないものと判断される。
これを本願明細書についてみると、化合物を識別するためのスクリーニング方法と、該方法により得られた化合物の具体例としてX、Y、Zは記載されているものの、上記特定の化合物以外の有効成分を得るための化学構造等の手がかりが記載されておらず、かつ、それが出願時に当業者に推認できたものとも認められないので、それら以外の請求項に包含される有効成分を当業者が理解できず、発明の実施にあたり、無数の化合物を製造、スクリーニングして確認するという当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を求めるものである。
したがって、発明の詳細な説明は、これらの請求項に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。

拒絶理由に対する対処

(請求項1について)

化学構造等の化合物を得るための手がかりが記載されていない本願明細書に基づいて、実施例に開示されている化合物以外のR受容体活性化作用を持つ新規な化合物を当業者は理解できず、得ることができないので、補正がされない限り、拒絶理由は解消しない。
当初明細書の記載及び出願時の技術常識に基づいて当業者が得ることができたR受容体活性化作用を持つ新規化合物のみに補正された場合には、拒絶理由は解消する。
ただし、補正は、当初明細書に記載された事項の範囲内でなければならない。

(請求項2について)

R受容体は、本出願人が初めて発見したものであり、そのR受容体活性化作用を持つ有効成分が出願時の技術常識とは認められないにもかかわらず、当初明細書の発明の詳細な説明においても、当該有効成分が具体的にどのようなものであるのかを当業者が理解できる程度まで十分に記載されているものとは認められないため、本願明細書は、有効成分を得るために、あらゆる化合物をスクリーニングして確認するという当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を求めるものであり、補正がされない限り、拒絶理由は解消しない。
当初明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、当業者が得ることができたR受容体活性化成分の肥満抑制剤のみに補正された場合には、拒絶理由は解消する。
ただし、補正は、当初明細書に記載された事項の範囲内でなければならない。

[付記]

  • (1)アゴニスト、アンタゴニストについて
    本追加事例では取り上げていないが、末尾が、「R受容体アゴニスト」、「R受容体アンタゴニスト」の発明は、用語の意味をふまえ、それぞれ、「R受容体活性化化合物」、「R受容体阻害化合物」の化合物の発明として取り扱う。
  • (2)「R受容体アゴニストを有効成分とするR受容体活性化剤」の発明について
    本追加事例では取り上げていないが、「R受容体アゴニスト(活性化化合物)を有効成分とするR受容体活性化剤」の発明については、末尾の「R受容体活性化剤」なる用途の記載は、有効成分である化合物の「R受容体活性化作用」という性質を単に言い換えたものにすぎず、いわゆる用途発明を構成するものとはいえないから、この形式のクレームの実施可能要件は、上記の「R受容体活性化化合物(アゴニスト)」の請求項と同様に取り扱う。

[更新日 2000年4月4日]