模倣品被害レポート事例集【テーマ別レポート】
ニセモノ・海賊版の流通を阻止し、知的財産権を守る活動を行っているユニオン・デ・ファブリカンさんからお話を伺いました。
UNION DES FABRICANTS/一般社団法人ユニオン・デ・ファブリカン
事務理事・事務局長
堤 隆幸さん
Q 一般社団法人ユニオン・デ・ファブリカンはどのような団体なのですか?
A フランスで企業の工業所有権を守り、ニセモノ・海賊版の流通排除を目的に組織されました。現在は、国際的なネットワークを組織しています。日本に事務所が置かれたのは1980年で、日本でのブランド志向が高まり、同時に、ニセモノが増え始めたころです。
Q 具体的にはどのような活動をされているのですか?
A 「顔の見えないところからは安易にブランド品を購入しないように」などの啓蒙活動を行っています。関係省庁の法的環境の整備に加え、大手プロバイダやブランド権利者の協力、利用者の理解もあり、有名大手ネットオークションでの画面情報から区別できるニセモノは1から2%(100の出品のうち1出品)まで減少し、ほぼ無いと言える状態にまで成果を上げています。
Q 現在はネットオークションや携帯サイトなどでも簡単にブランド品を購入することができますが、こういうところにもニセモノは流通しているのでしょうか?
A ニセモノもかなり多いですね。先ほど「有名大手ネットオークション上では、画面情報から区別できるニセモノは無いに等しい」と申し上げましたが、そういう大手から追い出された悪質な業者が集まっているような防止対策の構築されていないサイトや中国人業者が運営するニセモノ販売サイトでの販売は、逆に多くなっています。
Q その被害はどのようなものですか?
A 「本物だと思っていたらニセモノだった」「届いたら思っていたものと違っていた」「粗悪な商品が届いた」「商品が届かない」「税関で止められた」などの被害が発生しています。
Q ニセモノと分かっていて購入する人も多いのでしょうか?
A 多いですね。海外旅行先でニセモノを購入するというケースも多いです。ニセモノを輸出入することは禁じられていますので、入国時の税関チェックで発見され、放棄をしなくてはならない場合もあるので、「買わなければよかった」と後悔する金銭的な被害はもちろん、嫌な思いをしたり、精神的にもショックを受ける場合もあります。
Q 今は商品をネットでいつでも購入できる状態ですが?
A そうですね。ネットでは相手が日本国内にいないという場合もあるので、ニセモノ被害も複雑になってきます。代金を支払えば商品を現地(中国など海外)から送るという約束なのに「届かない」。支払った先に問い合わせても「連絡がつかない」というケースや、購入したバッグは届いたが「変な匂いがして気持ちが悪くなった」などという健康被害を伴う例もあります。
Q 金銭的な被害だけではなく、健康被害もあるということですね。
A そうです。海外では薬のニセモノや化粧品のニセモノも流通しています。過去にニセモノの化粧品で肌が赤くただれたという被害もありました。また、一般的にニセモノは本物よりも雑に作られているので、金属部分の仕上げが不完全で手を切ってしまったということもありました。
Q 実際に事件の例を教えていただけますか。
A 実例事件を3例ご紹介しましょう。
【実例1】東日本の偽ブランドの元締め摘発
(平成22年10月、平成23年1月 警視庁浅草警察署)
警視庁浅草警察署は、2010年10月、暴力団に対する事件捜査の関係で、偽造品を大量に所持していたとして、東京都台東区内の店舗を捜索し、店舗より偽造品約5千点を押収、男性2名を現行犯逮捕した。また主犯格として浮上した76歳の男性は、隙をみて逃走したため、指名手配されたが、12月に逮捕された。男性は、指定暴力団関係者で、東日本における偽ブランド販売の元締め的存在だったという。
(現場の様子、押収された商品)
(押収された商品の一例)
その後の調べで、2011年1月に仕入れ先である大阪府生野区の店舗を捜索し、韓国籍の男性(50歳)を逮捕、偽造品約3千点を押収した。
【実例2】ティファニーの偽造品販売
(平成23年6月 警視庁小松川警察署)
警視庁小松川警察署は、ネットオークションでティファニーの偽造品を販売したとして、東京都品川区在住の中国籍の男女2名(32歳、28歳)を商標法違反の疑いで現行犯逮捕し、ティファニーのアクセサリー1, 127点を押収した。2009年9月頃から販売を始め、2千万円以上の売り上げがあったと見られる。
(押収された商品の例)
【実例3】エルメスの詐欺事件が全国で横行
(平成23年7月、平成24年1月 奈良県橿原警察署、石川県金沢東警察署合同捜査)
2011年7月、奈良・石川両県警合同捜査本部は、「エルメス」の偽バッグを全国の質屋などに持ち込み、売りつけたとして、商標法違反及び、詐欺罪などの疑いで、大阪市西区の中国籍男性(31歳)ら男女グループ7名を逮捕した。また2012年1月には、仕入れ先の大阪・鶴橋の韓国人業者2名も逮捕し、店舗兼倉庫から偽造品約500点を押収した。
警察の調べによると、詐欺グループのメンバーらは、高速道路利用料金が一律1, 000円だった休日を利用し、全国の古物買い取り店などに「エルメス」の偽造品を持ち込んでいたという。燃費のよいハイブリッド車を運転して移動経費を節約。偽造した百貨店の領収書をみせて「新品で買ったときには87万円くらいした」、「日本限定のバッグ」などと言葉巧みに店側を信用させるなど、買い取りに慎重な店側の盲点を突いた新たな手法で各地の買い取り店から不正に現金を取得していた。また本人確認の身分証には、他人名義の健康保険証を使っていたという。業者から偽造品を8~14万円で仕入れ、店側に27~45万円で買い取らせていた。
バッグを買い取った奈良県橿原市内のブランド品取扱店が、ネットオークションに出品したところ、偽物と指摘を受けたことから事件が発覚した。警察は、全国の9府県の13店舗について立件しているが、実際には、約200店舗が被害に遭ったとみられている。
登録されている商標の例
Q ニセモノの被害に遭わないためにどのようなことに注意をすればよいのでしょうか?
A まず、「信頼ができる顔の見える相手から購入する」。これに尽きます。安く購入しようとして、所在のわからないような人から購入しないことです。ニセモノを海外で直接購入したり、日本からネット注文をした場合、日本の司法権は海外に及びませんので、問題が起きても誰も助けてくれません。「購入した、あなたの責任です」ということを認識しておくことです。
Q 一人ひとりのモラルが重要になってきますね。
A その通りです。まさに「だから、私は買わない」という、一人ひとりの意識が大切なんです。この考えをしっかりと持っていれば、ニセモノを安易に購入して健康被害に遭ったり、金銭トラブルに巻き込まれたりはしないはずです。