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へのへのもへじアイコン 模倣品被害レポート事例集

【テーマ別レポート】

模倣品・海賊版に対する取り組み
偽パーツ篇

ニセモノ商品が引き起こした事故の実例や対策について、一般社団法人日本ベアリング工業会さんからお話を伺いました。

一般社団法人日本ベアリング工業会
国際部
佐藤 稔さん

1 活動目的と内容

Q 一般社団法人日本ベアリング工業会はどのような活動をされているのですか?

A 当工業会は、ベアリング製造を営む法人が会員となって様々な活動を行っています。ニセモノ対策としては、企業個別の活動に加えて、1999年から工業会としても取り組んでいます。

2 日常生活に欠かせない“ベアリング”

Q ベアリングはどのように使われているのですか?

A ベアリングは、「ものを動かす」ところに使われているものです。例えば、ものを動かそうとした時に、重くて動かない(抵抗力)場合でも、玉をものの下に置くと抵抗力が小さくなって簡単に動かすことができます。これが、ベアリングの原理です。普段はあまり目にすることはないと思いますが、ものを動かそうとするところには必ずベアリングが使われています。

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Q ベアリングにもニセモノが使われていることがあるのですか?

A ベアリングは国際基準に基づいて製造されていますので、基準内容さえ分かれば、外見上からは本物と見分けのつかないニセモノを容易に作ることができます。ニセモノは材質が悪いうえ、生産工程もずさんですので、品質は本物と比べるまでもありません。特に、日本の各社が製造するベアリングは厳しい検査に合格し、品質が保証されたものだけを市場に出荷しています。そうしないと製造工場のラインが止まったり、エレベーターに異常が発生したり、自動車や列車の車輪の回転に異常が起きるなど、日常生活ばかりか人体までもが危険に晒されることになってしまいます。

3 ニセモノの実例と対策

Q ベアリングのニセモノとは、具体的にどのようなものですか?

A 日本の有名企業のブランドを本体に刻印して、ニセモノを本物とそっくりの箱に入れているケースが多く見られます。箱の印刷技術がかなり良くなっているので、一般の人には見分けがつかないでしょう。またブランド名を1文字だけ変えて、本物と見間違う箱に入れていることもあります。最近はノンブランド品にレーザーマーキングマシンで刻印することで、あらゆる偽ブランドを扱うような業者も増えています。

Q その実例を見せていただけますか?

A 本年の中国行政機関によるニセモノ摘発の写真をご紹介します。ニセモノ業者は、ベアリング製造工場からノンブランドの本体を受け取り、写真①のレーザーマーキングマシンを使ってベアリング本体にニセブランドを刻印します。ソフトを入れ替えることで、どのような型のベアリングでも自由にニセブランドを刻印できます。写真②は、ニセブランド刻印を終えたニセモノ本体の写真です。写真③は、ニセモノ本体を梱包する別工場で、ニセブランドシール、ニセの箱を用いて梱包しています。このようなニセ・ブランディング、ニセ梱包、ニセモノ流通販売というネットワークを組織するニセモノ業者が増えています。中国の行政機関は、組織化されたニセモノ業者に対する摘発を更に強化しています。
写真④は、上記のような過程で作られた大型ベアリングのニセモノです。写真内の右上に見える靴と比較すると大きさが分かると思います。大型のニセモノ販売は、ニセモノ業者にとって利益が特に大きいためにますます増えていますが、最終ユーザーには危険極まりないものです。

写真1~4

写真提供:一般社団法人 日本ベアリング工業会

Q メイド・イン・ジャパンという信頼感で高く売れるということですか。

A 日本製ということで高く売れることもあると思います。もちろん「ものの善し悪し」が分かる人が見たらニセモノだとすぐに分かるのですが、「納期に間に合わせる」ために、ニセモノかどうかの確認もせずに、数を合わせるために購入するというようなことも中国ではよくあります。急激な経済成長をとげた結果、“需要と供給のバランスが崩れ”、それがニセモノを増加させ、中国製品そのものをダメにしているとも言えます。さらに困ったことには中国で製造されたニセモノが南米やアジア、中近東、アフリカなどの他の国々へ流出しているということです。輸出する側の罪悪感が欠如していることも問題ですが、もっと大きな問題は、ニセモノを注文する海外の悪質業者が絶えないことにあります。注文が無ければニセモノは輸出されません。これらの悪質業者は先ほどお話ししたような中国以外の発展途上の国にあり、法も行政も未整備なため適切な対策をすることができません。中国以外の国では消費者はニセモノと知らずに購入しています。そのほかには商標権侵害はなくてもMade in Japanと刻印を打って、産地を偽って消費者を騙すベアリング企業もいます。

Q ニセモノが招いた事故例を教えていただけますか。

A 最近の例では、エレベーターの点検作業中に各階のドアの開閉テストでドアが開かなくなったものがあります。調査の結果、不正なベアリングが使用されたことが原因でした。また欧州では、ニセモノベアリングによる事故例として、F1レース中の発火、鉄工所の操業ダウン、石油化学工場の緊急停止、大型コンテナ船の発電機の異常振動などがあると聞いています。さらにインドでは、ニセモノが大規模発電設備に使われる寸前であったとも聞いています。
中国工業会のニュースを見ると工場の稼働がストップしたり、重機が止まったり、トラックが発火する、といった事故も発生しているようです。検証することはできませんが、南米では原因不明な自動車事故にも関係しているとの報道もあります。また、2003年頃のことですが、東南アジアのある国では、ニセモノベアリングによるオートバイ事故で年間約2万人が亡くなっているとの報道もありました。これらの事故は、知らずにニセモノを購入して前輪に装填、走行中の前輪ロックが原因だと言われています。

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4 WBA組織と今後の活動

Q ベアリングの性能が製品の品質を高めているとも言えますね。

A そうですね。走行中の新幹線やエアコンの音が静かになったということを耳にしますが、そういうところでもベアリングの力が大きく貢献しているのだと思います。

Q 私たちがニセモノ商品を原因とする事故に遭わないためにはどうしたらよいのでしょうか?

A 買い物をする場合には、どんなものでも「信頼のできる店」で商品を確認して購入すること。安いからといって、品物を確かめずに買ったばかりに事故に遭ってしまうことがないように、「だから、私は買わない」という意識をもってくださることが大切です。

Q 今後の展望についてお聞かせください。

A 2006年に日米欧のそれぞれのベアリング産業の団体を会員としてWBA(World Bearing Association)が創設されました。WBAでは世界のベアリング産業の健全な発展と共通するグローバルな問題解決に向けて、環境、模倣品対策など様々な分野で協力活動を推進しています。
ニセモノは、機械産業の事業者、最終製品の消費者に危険であることから、WBAでは模倣品対策には特に力を入れており、中国税関への協力、世界各地で共同の調査活動、摘発活動などを行っています。中国税関では2011年の1年間で計160件、約65万個のニセモノを差し止めており、中国税関の模倣ベアリングに対する警戒が強まっていることから、差し止め件数は毎年倍増しています。下の写真は2012年に行われた中国寧波税関(左)、中国青島税関(右)への表敬訪問の模様です。水際でのニセモノ防止は、単に権利登録するだけでは実現しません。税関は通関と関税の機関であり、本来的に摘発機関ではありません。権利者による税関への継続的な情報提供と積極的な協力が必要です。

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さらに模倣品対策のプロジェクトの一つとして、2010年11月に啓蒙教育キャンペーンを立上げました。その一環として次のホームページを広く公開しています。2011年1月には啓蒙のためのブローシャーを6ヶ国語で作成配布し、2011年10月からは様々な媒体を通して、You Tubeフィルムを広めています。これらについては下記サイトをご覧ください。
WBA模倣品対策キャンペーン公式サイト www.stopfakebearings.com

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