【技術分類】

 F−2−(2) 残留低減


【技術の名称】

 作物残留低減


【技術内容】

 農薬は作物に直接散布されるものだけに、作物および食品中の農薬残留性としてそれぞれ農薬取締法、食品衛生法により厳しく規制されている。両基準は基本的には同じものである。農薬が散布された後の作物中の農薬の消失過程、作物収穫物中、食品中の農薬残留濃度などは詳しく調べられ、残留基準を超えて検出されることはほとんどない。

 作物に対する散布が有効に行われることによりその有用性が明瞭に示されるとともに作物体に吸収された薬剤がいつまでも残留することは好ましくはなく、適用の希釈濃度、処理量、処理時間が問題となることが多い。また、農薬は作物体内や土壌中などで代謝され、光分解、化学変化などで薬害の原因となる物質として残留性を示す場合がある。蒸気圧の高い除草剤のように、農薬散布後いったん作物体や土壌に付着した農薬成分が再び気化して空気中を漂流するなどして作物に障害を与えることもあるので、散布後速やかにその付着場所から残留することなく移行するとともに無作用な化学物質に変換されることが望ましい。

 表1に主な作物残留低減の例を示す。

 表1 作物残留低減

   事  例      処置例
気化などしやすい農薬の再漂流 農薬物性の選択
耐雨性農薬などの再ドリフト 耐雨性農薬の安全性
分解、化学変化などによる残留性有害物質への変換 分解防止剤
農薬使用条件 濃度、散布量、時間、天候、環境、薬剤調整の考慮
農薬の付着、展着性 添加剤の選択


【図】


【応用分野】

 作物の安全性


【出典/参考資料】

 「土壌中における農薬の挙動 散布された農薬の行くえ」、「土と農薬」、鍬塚昭三・山本広基著、(社)日本植物防疫協会発行、56頁



【技術分類】

 F−2−(2) 残留低減


【技術の名称】

 土壌残留低減(土壌残留)


【技術内容】

 施用散布された農薬の大部分は土壌に入り、微生物により分解消失する。畑地では散布量の約90%、水田では60%内外が最終的に土壌に入る。各農薬については、圃場試験と容器内室内試験により土壌中における残留性が明らかにされる。農薬は土壌中分解速度および土壌吸着を調べることが義務づけられ、地下水まで浸透するものはほとんどない。

 農薬は毎年同じ場所に同じ薬剤を施用するので、土壌に添加した農薬が半減する時間(半減期)が1年以上の場合には登録許可されないのが一般である。半減期が1年を越えないかぎり、同じ農薬を毎年反復施用しても投下量の2倍を越えることはないし、土壌中に存在する微量の農薬の絶対量はあまり問題にならないことが多いとされている。

 農薬の土壌残留は、微生物による分解、分解生成物の残留性、土壌中における農薬の吸着、移行などで決まり、諸々の要因の影響をうける。表1に農薬の土壌残留(分解、土壌吸着、移行)に影響する主な因子を示す。

 表1 土壌残留影響因子

    要因分類           影響因子
農薬の特性に関係する要因 化学的安定性、分解菌に対する生物学的安定性、蒸気圧、水溶解度、親油性、土壌吸着性
施用散布に関係する因子 剤形、散布量、散布法、散布時期、散布履歴
農耕上の要因 耕作法、作物種類と状態、施肥、湛水灌水
気象要因 温度、日照、降雨、風
土壌要因 土壌構造、土性(有機物含量、粘度含量、粘度鉱物、重金属含量、pH、CEC、水分、好気嫌気状態、地温など)

 (1)農薬の特性要因

 現在用いられている農薬の大体半数は半減期が10日以内の残留期間は短いものが多く、大半のものは1ヶ月以内に消失する。圃場試験と容器内試験で得られる結果の相互の関係は、半減期の30日以内のすみやかに消失する有効成分で相互の数値はよく近似しているが、半減期の長いものでは容器内試験での半減期の方が長くなる傾向が示され、圃場では残留期間が長くなるにつれて分解以外の要因、例えば光分解、蒸発、流出、脱溶などの要因による消失の影響が大きくなることが示唆されている。

 (2)施用散布要因

 液剤で散布すると粉剤よりも速やかに土壌に吸着され、分解が抑えられ残留性は長くなる。粒剤は粒子の大きさに依存してさらに残留が長くなる。施用量の影響も大きく、薬剤が高い濃度で分解菌に対して殺菌性をもつと、ある濃度以上で急速に残留性が高くなる場合がある。低濃度で施用する場合は比較的長時間残留する場合が多い。混合施用、反復施用なども農薬の残留性に影響する。

 (3)土壌特性

 有機物の含量が多い土壌では消失が早いのが一般であるが、有機物の含量が高いからといって微生物の栄養となりえる有機物が多いとはかぎらず、クロボク土などでは消失は遅い。その他、土性の影響はそれほど大きくなく、土壌のpHの影響は農薬によって異なることが多い。例えば、2,4−DはpH5付近で消失が速く、酸性でも塩基性でも残留しやすい。ダイアジノンは酸性で消失が速く、ダラポンはpH4の土壌ではpH6の土壌よりも半減期が40倍長い。

 (4)土壌環境

 土壌の酸化還元環境(好気的、嫌気的環境)が大きな影響を与え、畑地状態と湛水状態で残留性は異なる。土壌構造、雨量、潅水、乾湿田などとも関係している。


【図】


【応用分野】

 農薬の施用散布(土壌残留低減)


【出典/参考資料】

 「土壌中における農薬の挙動 農薬の土壌残留」、「土と農薬」、(1998年)、鍬塚昭三・山本広基著、(社)日本植物防疫協会発行、59頁〜69頁



【技術分類】

 F−2−(2) 残留低減


【技術の名称】

 土壌残留低減(農薬の分解)


【技術内容】

 最近では、環境問題とのかかわりで比較的分解されやすい農薬が用いられてきており残留性農薬は見られなくなってきている。土壌における分解には土壌微生物による生物的な分解と微生物の関与しない化学反応による非生物的分解がある。

 表1に微生物による農薬の代謝分解の一般的な分類を示す。

 表1 微生物による農薬の代謝分解の一般的分類

酵素的 微生物が分解によってエネルギーを得る
 好気的条件下における無機化
 嫌気的条件下における脱塩素反応
微生物が分解によってエネルギーを得ない
 基質特異性が低い酵素による分解
  モノオキシゲナーゼ,加水分解酵素など
 類似化合物を代謝する酵素による分解合成反応
  ラッカーゼなどによる重縮合反応
  メチル化反応などによる無毒化反応
非酵素的 微生物の働きによってpHや温度などの環境要因が変化し、その結果、間接的に農薬が分解される

 出典:「土壌中における農薬の挙動 農薬の分解」、「土と農薬」、(1998年)、鍬塚昭三・山本広基著、(社)日本植物防疫協会発行、76頁 第4-1表 微生物による農薬の代謝分解の一般的分類(片山,1993)

 農薬の土壌残留は、土壌微生物による分解を利用して極性の低い性質(水難溶性)から極性の高い性質(親水性)の代謝物に変換されて無毒化することが理想的である。


【図】


【応用分野】

 農薬の施用散布後の土壌残留低減化


【出典/参考資料】

 「土壌中における農薬の挙動 農薬の分解」、「土と農薬」、(1998年)、鍬塚昭三・山本広基著、(社)日本植物防疫協会発行、73頁〜84頁



【技術分類】

 F−2−(2) 残留低減


【技術の名称】

 土壌残留低減(交差適応分解)


【技術内容】

 ある農薬有効成分に対して生物的分解活性の高まった土壌に類似構造の農薬有効成分を散布したとき同様に速やかな分解をうける現象を交差適応分解というが、対応する農薬として、カーバメート(N−CO−O)、尿素(N−CO−N)、アミド(N−CO−C)、エステル(COO−C)、チオカーバメート(N−CO−S)、ジチオカーバメート(N−CS−S)の構造をもつものが報告されている。交差適応分解が認められる場合に有効期間の延長を目的として分解活性を制御する添加剤をextenderと呼んでおり、チオカーバメート剤分解活性の高まった土に加える有機リン化合物のジエトエートなどが該当する。土壌残留低減に影響を与える。

 表1に土壌中における酵素的分解の反応を示す。

 表1 土壌中における農薬の酵素的分解

酸化 C−水酸化,C−カルボキシル化,メチル基の酸化,β−酸化,エポキシ化,ケトン生成,C=Cの開裂,C=Oの開裂,C−脱水素,N−脱メチル,N−酸化,S−酸化,Sの置換,エーテルの開裂,脱塩素(酸素付加)
還元 C=Cの還元,C≡Cの還元,NOの還元,SOの還元,還元的S−S結合の開裂,還元的脱塩素,還元的脱臭素,NOの消去
加水反応 カルボン酸エステルの加水分解,硫酸エステルの加水分解,カーバメートの加水分解,ニトリルの加水分解,エポキシドの加水分解,加水反応による脱塩素

 出典:「土壌中における農薬の挙動 農薬の分解」、「土と農薬」、(1998年)、鍬塚昭三・山本広基著、(社)日本植物防疫協会発行、81頁 第4-2表 土壌中における農薬の酵素的分解(Scheunert,1992年を改変)

 表2に土壌中における分解に影響を与える農薬の化学構造の特性を示す。

 表2 農薬の化学構造の特徴と微生物による分解性の難易との関係

より分解されやすい より分解されにくい
低分子
直鎖型のアルキルグル−プ
アルケン
アルカン
ベンゼンの誘導体
置換基の少ない芳香族化合物
1級、2級アミン
アルキル基置換芳香族化合物
置換ハロゲンの少ない芳香族化合物
エステル結合
高分子
枝別れしたアルキルグル−プ
アルカン
芳香族化合物
トリアジン
置換基の多い芳香族化合物
3級アミン
ハロゲン置換芳香族化合物
置換ハロゲンの多い芳香族化合物
エーテル結合

 出典:「土壌中における農薬の挙動 農薬の分解」、「土と農薬」、(1998年)、鍬塚昭三・山本広基著、(社)日本植物防疫協会発行、82頁 第4-3表 農薬の化学構造の特徴と微生物による分解性の難易との関係


【図】


【応用分野】

 農薬の施用散布後の土壌残留低減化


【出典/参考資料】

 「土壌中における農薬の挙動 農薬の分解」、「土と農薬」、(1998年)、鍬塚昭三・山本広基著、(社)日本植物防疫協会発行、73頁〜84頁



【技術分類】

 F−2−(2) 残留低減


【技術の名称】

 土壌残留低減(農薬の吸着)


【技術内容】

 農薬の土壌への吸着脱着は病害虫防除、雑草防除などの農薬の効用と環境汚染の関連からも重要な問題であり、吸着、脱着、移動(溶脱)にかかわる試験がガイドライン化されている。

 土壌吸着は空気中への拡散、土壌から水への移行、植物や土壌生物による取り込み、農薬の分解などの影響をうけ農薬の効用、持続性に波及する。一般には固体表面への沈着や単に土壌粒子に付着することまでも土壌吸着として取り扱われることが多い。土壌への農薬の吸着様式は、表1の3タイプに分けられることが多いが、水に溶けにくい農薬の場合には、さらに土壌有機物への疎水結合による吸着が極めて重要である。

 土壌への吸着の土壌因子は、粘土鉱物質などの土性と土壌有機物(腐植)であることが一般的である。中性農薬の土壌吸着の大半は物理的吸着で化学的吸着はほとんどないが、イオン性の農薬は粘土質の土壌中では化学的吸着の関与は大きい。物理的吸着に比べて化学的吸着はゆっくりおきる。非イオン性の農薬は土壌有機物との吸着が主要である。疎水性の結合、共有結合などにより強く結合した農薬は長時間土壌中に残留する。

 モンモリロナイトやバーミキュライトのような水で膨潤する粘土鉱物は陽イオン交換容量が大きく吸着容量は大きい。カオリナイト、ハロイサイト、イライトの吸着容量は小さい。アロフェンやイモゴライトのような火山灰土壌に含まれる粘度鉱物は吸着容量が大きい。

 表1 土壌吸着様式

吸着様式 特  徴
イオン吸着
(化学的吸着)
分子と吸着表面の間でおこるイオン間の静電引力による化学的吸着で、吸着熱が高く比較的長い期間その状態でとどまる。
物理吸着
(物理的吸着)
ファンデルワールス力(分子間引力)による物理吸着で、低い吸着熱で吸着表面での残留は短時間である。多くの農薬はこの類型にはいる。
水素結合による吸着 吸着力は化学的吸着と物理的吸着の中間。

 土壌の温度も吸着に影響し一般に低温で吸着は増大するが、農薬の吸着と水の脱着、化学的吸着と物理的吸着のバランスにより例外となる場合もある。


【図】


【応用分野】

 農薬の施用分布(土壌残留低減)


【出典/参考資料】

 「土壌中における農薬の挙動 農薬の吸着と移動」、「土と農薬」、(1998年)、鍬塚昭三・山本広基著、(社)日本植物防疫協会発行、84頁〜93頁



【技術分類】

 F−2−(2) 残留低減


【技術の名称】

 土壌残留低減(農薬の土壌吸着定数)


【技術内容】

 表1に農薬の化学構造のグループごとの水溶解度と土壌吸着定数(Koc)を示しているが、比較的水に溶けやすい有機酸系農薬はあまり土壌に吸着されない。トリアジン系農薬は塩基性のNH基をもちイオン吸着により粘土粒子への吸着がおこるが有機物への吸着が少ないために土壌全体の吸着はそれほど強くなく土壌吸着定数はそれほど大きくない。パラコートは水によく溶けるがイオン吸着に合わせモンモリロナイトのような2:1型粘土鉱物の結晶層間に入り込むことで土壌に強く吸着される。ピレスロイドおよび有機塩素系農薬の土壌吸着定数は大きく、土壌有機物に多量に吸着される。

 表1 種々の農薬の水に対する溶解度(ppm)と土壌吸着定数(Koc)

グループ 農薬名 用途 水溶解度 土壌吸着定数
ピレスロイド シペルメトリン
ペルメトリン
フェンバレレート
殺虫
殺虫
殺虫
0.01
0.2
0.31
61000
39300
5270
ビピリジウム パラコート 除草 易溶 16200
有機塩素 アルドリン
ケルセン
クロルデン
TPN
殺虫
殺虫
殺虫
殺菌
0.03
不溶
0.06
0.6
17500
6064
6000
5000
ジフェニルエーテル ビフェノックス 除草 0.35 7600
有機リン クロルピリホス
MEP
ダイアジノン
MPP
殺虫
殺虫
殺虫
殺虫
2
14
40
55
9930
7150
1520
1390
ベンゾイミダゾール ベノミル 殺菌 4 1910
ジカルボキシイミド イプロジオン 殺菌 0.013 666
カーバメート IPC
NAC
除草
殺虫
90
120
505
288
スルフォニル尿素 ベンスルフロンメチル 除草 120 315
トリアジン プロメトリン
アトラジン
シマジン
除草
除草
除草
33
33
5
383
147
124
酸アミド アラクロール 除草 240 124
有機酸 2,4−D
ピクロラム
除草
除草
620
430
48
29

 出典:「土壌中における農薬の挙動 農薬の吸着と移動」、「土と農薬」、(1998年)、鍬塚昭三・山本広基著、(社)日本植物防疫協会発行、87頁 表5-1 種々の農薬の水に対する溶解度と土壌吸着定数Koc


【図】


【応用分野】

 農薬の施用分布(土壌残留低減)


【出典/参考資料】

 「土壌中における農薬の挙動 農薬の吸着と移動」、「土と農薬」、(1998年)、鍬塚昭三・山本広基著、(社)日本植物防疫協会発行、84頁〜93頁



【技術分類】

 F−2−(2) 残留低減


【技術の名称】

 土壌残留低減(吸着量の評価)


【技術内容】

 農薬の土壌への吸着は土壌吸着係数、ラングミュア、フロイントリッヒの吸着等温式から導かれる吸着定数などによって示されるが、土壌吸着係数に関しては幾つかの求め方がある。

 土壌吸着係数Kは、土壌を希薄塩溶液に加え懸濁平衡化した土壌に農薬を含む試験溶液を入れて十分振とう後、溶液中農薬濃度、吸着農薬量を求め、K=(x/m)/Cの式に従い求める(x/mは土壌への吸着量、Cは溶液中濃度である。)が、土壌によって変動しやすい。

 土壌有機物含量を加味した土壌吸着定数KOCは、KOC=(KX100)/% O.C(ただし、%O.Cは土壌中に含まれる有機炭素含量%)の式で求められ、非イオン性農薬の吸着などが土壌有機化合物と相関性があるところからより実際値に近く比較的変動が小さい。一般には、水に溶けやすい農薬ほどKおよびKOCは小さく、土の表層から地中に浸透しやすい。

 農薬の濃度依存の土壌への吸着を扱う場合には、種々の濃度の農薬を含む溶液中に土壌を懸濁して振とう、平衡後に溶液中、土壌中の農薬量を測定し、吸着等温式に従い吸着定数を求めるが、多くの農薬のいろいろな土壌への吸着はラングミュア吸着等温式が適当であり、異なる農薬の種々の土壌への吸着を比較するのにはフロイントリッヒ吸着等温式が適当である。農薬の登録にあたっては、図1に示すようにOECD(経済協力機構)ガイドラインが汎用されている。これは、予備試験(土壌と溶液の比率、吸着平衡に達する時間、安定性などの検討)、スクリーニング(予備実験条件による5土壌を用いた1濃度の時間に対する吸着率のプロットによる吸着試験によるKおよびKOCの検討)、フロイントリッヒ吸着等温式の作成(土壌の単位重量あたりの吸着量の濃度に対するプロットによるフロイントリッヒ吸着定数Kの算出)、脱着−脱着等温式を含んだものである。


【図】

 図1 吸脱着試験法(OECDガイドライン106)

 出典:「土壌中における農薬の挙動 農薬の吸着・移動」、「土と農薬」、(1998年)、鍬塚昭三・山本広基編、(社)日本植物防疫協会発行、90頁 図5-1 吸脱着試験法(OECDガイドライン106)の概略


【応用分野】

 農薬の施用散布(土壌残留低減)


【出典/参考資料】

 「土壌中における農薬の挙動 農薬の吸着・移動」、「土と農薬」、(1998年)、鍬塚昭三・

 山本広基編、(社)日本植物防疫協会発行、88頁〜93頁



【技術分類】

 F−2−(2) 残留低減


【技術の名称】

 土壌残留低減(土壌中移動、溶脱)


【技術内容】

 農薬の土壌中移動は、移動粒子に吸着し粒子とともに移動する、水に懸濁した状態で移動する、揮散する、土壌の隙間の気体中を拡散する、土壌中の水に溶けて移動するなどのいずれかの挙動をとり、水に溶けた状態、気体中での拡散、対流、分散などとも関連している。これらの土壌中移動に関連する土壌要因としては、土壌の吸着と微生物の分解、土性、孔隙率、水分含量、水の流速、団粒の安定性などがある。

 溶脱は表面流失、暗僻排水、地下水溶脱などの挙動をとり表層の土壌から移動し、最終的には河川、湖沼、地下水に融合するので地下水の汚染の原因になることがある。

 溶脱と最も関係の深いパラメーターは、土壌吸着平衡定数(Koc)、土壌中半減期(DT50)であるが、これらのパラメーターが土壌の種類や土壌層土に依存して変動するため予測し難い。例えば、有機炭素含量が高く吸着係数が大きい土壌でも安定した団粒構造をもつ土壌の場合は、有機炭素含量の少ない不安定な団粒構造をもつ土壌よりも溶脱量が大きいこともある。可溶性の腐植物質が界面活性様の効果をもち難溶性農薬を可溶化することにより移動しやすい。水田に使用する農薬については、「試験水田を用いた水田水中の農薬の残留試験」が義務づけられていて、田面水中の農薬濃度の推移と同時に浸透水中の農薬濃度が測定されている。土壌中の移行の予測するための室内試験としてカラム浸透試験、土壌TLC試験などが行われている。


【図】


【応用分野】

 農薬の施用散布(土壌残留低減)


【出典/参考資料】

 「土壌中における農薬の挙動 土壌中での移動」、「土と農薬」、(1998年)、鍬塚昭三・山本広基著、(社)日本植物防疫協会発行、93頁〜97頁