1.3 画像認識技術の歴史的変遷

 画像処理技術は画像情報を計算機に入力して、効率的に処理したいという要求から始まった。表1-3-1は画像処理技術の歴史的変遷を表にまとめたものである。

    表1-3-1 画像処理技術の歴史的変遷

  技術開発の特徴 具体例
1960年代 ・科学に関係した画像の処理
・コンピュータビジョン
・文字認識の実用化
・人工衛星写真の処理
・泡箱の飛跡写真の処理
・手書き郵便番号読取装置
1970年代 ・リモートセンシング技術
・医用画像
・大型プロジェクト発足

・工業用画像処理
・ランドサット画像の処理
・CT断層写真
・工技院「パターン情報処理
 システムの研究開発」
・半導体組立
1980年代 ・画像処理用ソフトウエアの
  標準化
・画像処理用ハードウエア
・実用化技術
・電総研「SPIDER」公開

・専用プロセッサーの開発
・図面認識、ファクシミリ、
 複写機への適用
1990年代 ・処理の高度化
・処理の高速化
・応用分野の広がり
・知識利用、エキスパートシステム
・並列処理、パイプライン処理
・汎用画像処理装置、
 専用画像処理システム

 

 デジタル画像の処理に関する研究は1960年代より、文字認識、物体認識、医療用画像処理、バブルチェンバー(泡箱)の飛跡写真、人工衛星から送られてきた画像の強調などの分野で進んだ。主に科学の分野で成功を収め、今日の画像処理の礎となる諸研究が始まった。実用化では、1968年に手書き郵便番号読取り装置が稼動を始めている。

 前掲の物体認識に関していえば、コンピュータに視覚を持たせると言う意味でコンピュータビジョンと呼ばれているが、人工知能の分野で早くから注目され、人工知能ロボット研究の一部として1960年後半に始まっている。この研究は文字、記号、図形等の2次元パターンの認識ではなく、3次元の形状を持った対象物をコンピュータによって認識しようとするものである。認識対象としてはより複雑なものが選ばれ多くの方法論が生まれている。

 

 1970年代からは工業用画像処理、衛星画像処理、医療用画像処理の開発が盛んにり、1972年、EMIが開発したコンピュータトモグラフィー(CT断層写真)装置は鮮明な断層写真を提供するものとして注目を集めた。また、この年に軌道を廻った宇宙資源衛星ランドサットは地球表面の資源データをデジタル画像として地上に伝送し、リモートセンシング(遠隔探査)の分野に光明をもたらした。

 上記、2例の成功はデジタル画像処理の研究を一層盛んにしたと言えよう。

 また、さらに同時期(1971年)に発足し、以後10年間続けられた工業技術院の大型プロジェクト「パターン情報処理システムの研究開発」はさらにこの分野の研究推進に拍車をかけることになった。

 一方、工業用画像処理では1970年代前半には視覚技術の工業利用の研究が始まり、時を同じくして、開発が進行した工業用ロボットとともに、1970年代後半にロボット工学という大きな研究分野を形成し、生産技術の分野で大きな革新をもたらした。

 特に、半導体の組み立てに関する視覚技術の寄与は目覚ましく、生産工程での自動化、効率化、省力化そして生み出される半導体素子の品質向上に大きく貢献している。当初、画像処理用コンピュータとしては、主に中型、大型コンピュータがバッジ処理で使用されたが、1970年代にはいりミニコンピュータを用いた対話式画像処理システムが普及した。

 

 1980年代に入って、上記研究が高度化されるとともに、図面認識、文書理解、ファクシミリ、複写機など応用分野が広がった。ソフトウエアの分野でも、電子総合研究所を中心として開発された画像処理用サブルーチンパッケージSPIDERが一般に公開配布され、多方面に貢献している。

 また、半導体デバイスの進歩により、メモリー素子の集積度向上とコストダウンが進んで、画像処理利用にとって追風となっている。さらにマイクロコンピュータの普及と画像処理に初めて利用されるようになった専用プロセッサの開発促進により、産業応用やリモートセンシングの実用化が盛んになっている。

 

 1990年代はさらにこれらが高度化され、知識の利用、画像処理エキスパートシステムの導入、高速処理のための並列処理、パイプライン処理が進んでいる。また、多様なニーズへの対応、知識ベースの利用が積極的に推進されており、実用化の面でも画像処理用の汎用画像処理装置や専用画像処理システムが販売されるようになっている。