1.4.3 果実類

 果実類の品種改良技術の特許出願件数推移を図1.4.3-1に示す。1990年前後以降ほぼコンスタントに出願されており、研究開発が活発であることを示している。 1991年の出願が最も多い。果実類の品種改良技術の特許主要出願人を表1.4.3-1に示す。際だった件数を有する出願人はないが、農林水産省果樹試験場、ゼネカ(イギリス)からの出願が多い。1980年前後には個人の出願もみられたが、その後はほとんどない。1990年以降、海外からの出願が多くなっていることも注目される。

図1.4.3-1 果実類の特許出願件数推移

 果実類の海外出願人の占める割合を図1.4.3-2に示す。その割合は40 %である。

 

表1.4.3-1 果実類の特許主要出願人

出願人 開始年 最近年 出願件数

農林水産省果樹試験場長

1985 1993 5
ゼネカ(イギリス) 1990 1995 5

倉方英蔵

1977

1981

3

日産化学

1976

1985

2

橋本農場

1983

1984

2

滝沢圭太

1976

1977

2

キッコーマン

1985

1989

2

味の素

1990

1991

2

日本たばこ産業

1991

1993

2

コーネルリサーチフアウンデーシヨン
(米国)

1993

1993

2

図1.4.3-2 海外出願人の占める割合



1971.7-98.6迄に公開の特許出願

 果実類の技術/改良特性マトリックスを表1.4.3-2に示す。育種技術は遺伝子操作技術が最多で、選抜技術と交配技術がこれに次ぐ。わが国の主要作物であることから、選抜技術、交配技術の従来技術が中心となっているものの、遺伝子操作技術が増えつつあることが伺われる。果実類の場合、変異技術は少ない。改良特性では品質向上を目指したものがほとんどであり、味、色、形、大きさ、酸度、日持ち等多岐にわたっている。収量向上、ストレス耐性も品種改良の主要課題であるが、ストレス耐性は主に遺伝子操作技術により改良されている。従来技術によるストレス耐性の付与は果実類の場合は難しいのかもしれない。

 

表1.4.3-2 果実類の技術/改良特性マトリックス

収量向上 品質向上 ストレス
耐性
操作性
向上
その他 共通 合計
件数
選抜技術 16,17,18,
31
2,3,4,5,
10,11,14,
24,47,55
  19 13,25 9,12 19
細胞・組織培養技術 18,26           2
細胞融合技術 23 23       15 3
交配技術 1,23,28 2,4,7,11,
20,23
  30 6,21,22 8,12 15
変異技術 17,28 38,44         4

倍数体形成技術

26,31       43 46 4
遺伝子操作技術   29,33,35,
36,37,39,
40,41,42,
45,50,51,
54
32,34,
48,49
27,30   52,53 21
合計件数 14 32 4 4 6 8 68

(1971.7-98.6月迄に公開の特許出願)
(番号は表1.4.3-3の番号を表す)

 

 果実類における主要な課題を抽出し、育種技術との関連を解析した結果を図1.4.3-3に示す。色、味、大きさ等の品質向上が、選抜技術や交配技術等の従来技術だけでなく遺伝子操作技術によって達成されている。遺伝子操作技術では、日持ち等の果実類に特徴的な品質向上の課題が取り組まれている。ウイルス耐性や除草剤耐性、病害抵抗性等のストレス耐性の向上が遺伝子操作技術により達成されていくことが今後とも課題であるが、変異や選抜、細胞融合等によっても新品種の作出が可能であると考えられる。

 

1.4.3-3 果実類の品種改良の課題

 果実類の育種技術別特許出願件数推移を図1.4.3-4に示す。遺伝子操作技術が急増している傾向にあるのは各作物に共通であり、有力な技術革新とみなすことができる。

図1.4.3-4 果実類の育種技術別特許出願件数推移

 

果実類の改良特性別特許出願件数推移を図1.4.3-5に示す。

図1.4.3-5 果実類の改良特性別特許出願件数推移

 収量向上、品質向上が中心であるが、特に1990年以降品質向上の改良が増えていることは、遺伝子操作技術による技術革新と関連して課題解決にあたっていることを示している。ストレス耐性の改良も増える傾向にあるが、まだまだ少なく遺伝子操作技術と関連した今後の課題であることを示している。

 果実類の品種改良に関する出願特許を表1.4.3-3に示す。総件数は55件である。

 メロン、ミカン、リンゴ、イチゴなどに特定した品種改良に関するものだけで、半数近くを占めている。登録特許には登録欄に○を付けた。

 

表1.4.3-3 果実類の品種改良出願特許(1/3)

番号 公報番号 登録 発明の名称 出願人 生物種 改良特性

1

特開昭52- 47436   果樹花粉増量剤の品質改良法 山根 昭美 果樹 収量向上、結実率向上

2

特開昭52-145145   交配して作出したりんご紅古今 滝沢 佳太 リンゴ 品質向上、色、味

3

特開昭53-  7451
特公昭57-11281

無核で、肥大なブドウ果実の生産方法 日産化学工業 ブドウ 品質向上、無核

4

特開昭54- 60132
特公昭59-34330

桃の新品種黄桃の育種増殖法 倉方 英蔵 モモ 品質向上、大果

5

特開昭54- 75334   新規なイチゴ マダム マリオ
ネ ジヤンヌ
ネ ラビエ(フ
ランス)
イチゴ 品質向上、収量

6

特開昭54- 75338
特公昭61-32930

果木の栽培方法 村田 道雄 果樹  

7

特開昭54- 85922   交配して作出したりんご乱山 滝沢 佳太 リンゴ 品質向上、色、味

8

特開昭56- 51935   倉方甘栗 倉方 英蔵 クリ 味、耐病虫害

9

特開昭56- 88723
特公昭58-26297

文旦の原木育成法 尾鼻 正之 ブンタン(ザボン) 耐寒、作業

10

特開昭57-166921   リンゴ根株木 ミシガン ステ
−ト UNIV
(米国)
リンゴ 品質向上、台木

11

特開昭57-132819   倉方黄桃 倉方 英蔵 モモ 品質向上、味

12

特開昭59-162826   イチゴの四季成種子系F1品種 橋本農場 イチゴ 生育速度、耐病性

13

特開昭60-164419   イチゴの雄性不稔利用F1採種 橋本農場 イチゴ 稔性

14

特開昭60-237925   加熱調理しても、変色しないイチゴ 二村 さと美 イチゴ 品質向上、色

15

特開昭61-192283
特公平03-20229

ミカン科植物の体細胞雑種の作出方法 農林水産省樹
試験場長、キツ
コ−マン
ミカン科  

16

特開昭62- 63501   柑橘類実生の生育促進法 日産化学工業 ユズ等 収量向上、生育速度

17

特開昭61-234724   早咲きのマンダリン蜜柑の変種リペトリ ミシエル ペト
リグナニ(フラ
ンス)
ミカン 収量向上、ストレス耐性、多実

18

特開昭63-141524
特公平03-46087

ミカン科植物の合成周縁キメラ候補樹の作出方法 農林水産省果樹 試験場長 ミカン科 収量向上

19

特開昭63-141525
特公平03-46088

ミカン科植物の合成周縁キメラの作出方法 農林水産省果樹試験場長 ミカン 操作性向上

 

表1.4.3-3 果実類の品種改良出願特許(2/3)

番号 公報番号 登録 発明の名称 出願人 生物種 改良特性

20

特開平01- 55129
特公平03-65729

黄金色特大パツシヨン・フル−ツの育種方法 豊田 栄 パッションフルーツ 品質向上、大きさ

21

特開平01- 67140
特許2638834

ハリナシバチによる植物の交配方法 住友化学工業 メロン 操作性向上、受粉率

22

特開平02-154628   すもも−あんず交雑果樹 中島天香園 スモモ、アンズ  

23

特開平03-117440   ミカン科植物の体細胞雑種利用による育種法 農林水産省果樹
試験場長、キツコ−マン
ミカン 収量向上、品質向上

24

特開平03-164119   パイナツプルと栽培方法 緑健研究所 パイナップル 品質向上、耐輸送、ストレス耐性

25

特開平03-277218   アルビノレモンバ−ム並びにその取得方法及び増殖方法 井関農機 レモンバーム 食用、鑑賞

26

特開平03-280817   ククミス属の半数体植物及びその製造法 味の素 メロン 収量向上

27

特開平03-103127   CucumisMelo(マスクメロン)種に属する遺伝子導入植物 バイオセム(フランス) メロン 操作性向上

28

特開平04-131025   植物ホルモン剤使用による種なしスイカの製造方法 早田 保義 スイカ 果実肥大、高着果率

29

特表平05-501200   DNA、組立て体、細胞及びそれから誘導される植物 ゼネカ(イギリス) 共通 品質向上

30

特開平04-262798   メロンF1植物の検定方法、DNAプロ−ブ及び試薬 味の素 メロン 操作性向上

31

特開平05-219849   ウリ類における半数体植物作出方法 日本たばこ産業 マウリ 収量向上

32

特開平06-319568   ブドウからのスチルベンシンタ−ゼ遺伝子 バイエル AG(ドイツ) 共通 ストレス耐性

33

特表平05-502160   DNA、構造体、細胞及びこれらから誘導した植物 ゼネカ(イギリス) 共通 品質向上

34

特表平05-503010   植物におけるエチレン生合成の遺伝子制御 アグリト−プ(米国) 共通 ストレス耐性

35

特表平05-506576   DNA、DNA構造体、細胞及びこれらから誘導した植物 イムペリアル
CHEM IND PLC(イギリス)
共通 品質向上

36

特表平05-509228   内因的甘味強化トランスジエニツク植物プロダクト ユニバ−シテイ
オブ カリフオ
ルニア(米国)ラ
ツキ− バイオ
テツク COR
P(米国)
共通 品質向上

37

特表平06-502759   組換えACCシンタ−ゼ アメリカ合衆国(米国) 共通 品質向上

38

特開平06-113692   酸味を有する栽培メロン及びその作出方法 新宅 ユリエ メロン 品質向上、味

39

特表平06-503953   DNA、DNA構造体、細胞及びこれらから誘導した植物 ゼネカ(イギリス) メロン 品質向上、日持ち

40

特表平06-503954   植物DNA ゼネカ(イギリス) モモ 品質向上、日持ち

 

表1.4.3-3 果実類の品種改良出願特許(3/3)

番号 公報番号 登録 発明の名称 出願人 生物種 改良特性

41

特表平06-505864

 

トマト酵素エンドポリガラクツロナ−ゼPG1β−サブ単位の少なくとも1部をコ−ドするDNA配列 コモンウエルス
サイエンテイフ
イツク アンド
IND リサ
−チ オ−ガニゼ−シヨン(オーストラリア)
トマト 品質向上、日持ち

42

特表平06-504668   果実の成熟および植物の老化の制御 モンサント(米国) 共通 品質向上、日持ち

43

特開平06-237657   ウリ科植物の染色体倍加方法 日本たばこ産業、日本バイエルアグロケム ウリ科 純系種子

44

特開平07- 67488   種子改良組成物、改良された種子及びその製造法 藤森 康次、藤森 啓子 共通 品質向上

45

特開平07- 87979   スイカの選抜に用いる合成オリゴヌクレオチド 農林水産省野菜茶業試験場長、萩原農場生産研究所 スイカ 品質向上

46

特表平06-511388   フラガリア植物および種子 ノバルテイス セ−ズ BV(オランダ) イチゴ  

47

特開平08- 37928   矮性植物体の育成法 農林水産技術情報協会 ミカン 品質向上、大きさ

48

特表平07-509604   植物の過敏反応の誘導因子 コ−ネル リサ−チ フアウンデ−シヨン(米国) 共通 耐病性

49

特表平08-502169   火傷病耐性を有するトランスジエニツク・リンゴ類果実 コ−ネル リサ−チ フアウンデ−シヨン(米国) リンゴ 火傷耐性、ストレス耐性

50

特表平08-509122   熟成する果実において異種遺伝子E.G.5−アデノシルメチオニンヒドロラ−ゼを発現するためのトマトE8由来プロモ−タ−の使用 エピト−プ(米国) 果実類 品質向上、日持ち

51

特表平09-500006   PH遺伝子およびそれらの使用 デイ− エヌ エイ プラント テクノロジ− CORP(米国) 共通 品質向上、色、酸度

52

特表平09-500274   果実特異性プロモ−タ 不明(米国) 果実類  

53

特表平09-508786   バシヨウ種のアグロバクテリウム・ツメフアシエンス(AGROBACTERIUMTUMEFACIENS)形質転換 テキサス エイ アンド エム UNIV システム(米国) バショウ  

54

特表平09-509322   ペクチンエステラ−ゼをコ−ドするDNA、それに由来する細胞および植物 ゼネカ(イギリス) 共通 品質向上、日持ち

55

特開平10-127197   マラグサン・ス−パ−スイ−ト・バナナ変種 ド−ル バナナ 品質向上、味

(1971.7-98.6月迄に公開の特許出願)