1.4.8 生薬植物

 生薬植物の品種改良技術の特許出願件数推移を図1.4.8-1に示す。年によるバラツキがみられ、1990年は4件の出願がみられ最多であった。

図1.4.8-1 生薬の特許出願件数推移

 生薬植物の品種改良技術の特許主要出願人を表1.4.8-1に示す。際立った件数の出願人はなく、ツムラ、武田薬品工業、鐘紡等から3〜4件程度が出願されている。海外からの出願はアスタメデイカ(ドイツ)の2件のみである。

 生薬植物の海外出願人の占める割合を図1.4.8-2に示す。海外出願人の占める割合は10 %と低い。

表1.4.8-1 生薬の特許主要出願人

出願人

開始年

最近年

出願件数

ツムラ

1985

1994

4

鐘紡

1974

1990

3

武田薬品工業

1983

1990

3

日本新薬

1977

1977

2

ライオン

1986

1986

2

アスタメデイカAG(ドイツ)

1984

1985

2

図1.4.8-2 海外出願人の占める割合



(1971.7-98.6月迄に公開の特許出願)

 生薬植物の技術/改良特性マトリックスを表1.4.8-2に示す。育種技術では、交配技術が最多で、倍数体技術、細胞組織培養技術、遺伝子操作技術、選抜技術等が使われた技術開発がほぼ同程度の頻度でみられることが、生薬の特徴である。ただし、変異技術はみられず、細胞融合技術は1件のみである。改良特性では、収量向上、品質向上が主であり、これらを基本に他の改良をも複数含む共通もみられる。遺伝子操作技術が生薬植物の収量向上に使われていて品質向上に使われることが少ないことは、いろいろな成分を含有する生薬植物育種の特徴を反映している。

表1.4.8-2 生薬の技術/改良特性マトリックス

収量向上 品質向上 ストレス
耐性
操作性
向上
その他 共通 合計
件数

選抜技術

7,15

4

13

11

 

3,18

7

細胞・組織培養技術

8,9,10,15

     

12

 

5

細胞融合技術

2

         

1

交配技術

1,2,6

13,14,19,
20

5

   

3,5,8

11

変異技術

             

倍数体形成技術

7,16,17

4,19,20

       

6

遺伝子操作技術

8,9,11

   

11

12

 

5

合計件数

16

8

2

2

2

5

35

(1971.7-98.6月迄に公開の特許出願)
(番号は表1.4.8-3の番号を表す)

 生薬植物にかかわる主要な課題を抽出し、育種技術との関連を解析した結果を図1.4.8-3に示す。変異技術以外の従来技術、細胞組織培養技術、倍数体技術、遺伝子操作技術により、生薬植物の収量、成分含量、生育速度等の向上が達成されている。生薬植物のストレス耐性改良の課題にかかわる出願が少ないが、他の作物と同様に重要な課題であるので新品種の作出がみられるものと考えられる。

図1.4.8-3 生薬植物の品種改良の課題

 生薬植物の育種技術別特許出願件数推移を図1.4.8-4に示す。1985年以前には交配技術、倍数体技術が主に使われ、以降は交配技術、倍数体技術以外に細胞組織培養技術、遺伝子操作技術、選抜技術等を中心とした出願がみられる。他の作物にみられるような遺伝子操作技術の急増している傾向がみられていないことが特徴である。

 

図1.4.8-4 生薬植物の育種技術別特許出願件数推移

 生薬植物の改良特性別特許出願件数推移を図1.4.8-5に示す。

図1.4.8-5 生薬の改良特性別特許出願件数推移

 収量向上、品質向上が中心であり、いろいろな生薬植物にかかわる収量、生育速度、生薬成分の含有等の改良に関する出願域がみられるが、おのおのの出願時期は分散している。ストレス耐性にかかわるものは、1984年の1件のみである。

 生薬植物は欧米ではほとんど使用されないため、海外からの出願が非常に少ない。また、それに関連して遺伝子操作技術の利用も少ない。わずかな遺伝子操作による特許もアグロバクテリウムのプラスミドで細胞を形質転換し、生じた毛状根を培養する方法で、真の意味での遺伝子操作ではない。従って、この分野は欧米の大企業が参入する可能性が非常に低く、従来技術による品種改良の良いターゲットと考えられる。

 生薬の品種改良に関する特許を表1.4.8-3に示す。総件数は20件である。本来食品用途であるものの、その含まれるサントニン成分含有率が向上したヨモギ属新品種の作出も生薬植物として2件含んでいる。登録特許には登録欄に○を付けた。

表1.4.8-3 生薬植物の品種改良出願特許(1/2)

番号 公報番号 登録 発明の名称 出願人 生物種 改良特性

1

特開昭51- 57528   雑種新植物の育種法 鐘紡 リンドウ科 収量向上

2

特開昭55- 96096
特公昭62-57308

植物培養細胞の細胞融合を促進する方法 住友化学工業 インドジヤボク 収量向上

3

特開昭60- 78524
特公平07-89803

ジオウ新品種に属する植物の育種方法 武田薬品工業 ジオウ 共通

4

特開昭60- 47621   カミレ新品種の生産法 アスタ メデイカ AG(ドイツ) カミルレ 品質向上、成分含有

5

特開昭60-168322
特公平07-89792

ジオウ新品種に属する植物の栽培方法 武田薬品工業 ジオウ 共通

6

特開昭62- 83834   ミシマサイコ属に属する新植物および該植物の育種方法 ツムラ ミシマサイコ属 収量向上

7

特開昭61-146132   ビサボロ−ルに富む、改善された性質を有する四倍体カミルレ、その製造法及び該四倍体カミルレを含有する抗炎症剤の製造法 アスタ メデイカ AG(ドイツ) カミルレ 収量向上

8

特開昭63-133995   ナフトキノン系化合物の製造方法 ライオン ムラサキ科 収量向上、生育速度

9

特開昭63-133996   ナフトキノン系化合物の製造方法 ライオン ムラサキ科 収量向上、生育速度

10

特開平02-117332   新規なブクリヨウおよび該ブクリヨウの栽培方法 ツムラ ブクリョウ 収量向上、生育速度

11

特開平04- 75595   フエニル配糖体の製造法 鐘紡 共通 収量向上、操作性向上

12

特開平04- 77494   フエニル配糖体及びその製造法 鐘紡 センブリ  

13

特開平04-121128   晩生アカシソ新品種並びにその育種方法及び育種増殖方法 ツムラ シソ 品質向上、精油含量


表1.4.8-3 生薬植物の品種改良出願特許(2/2)

番号 公報番号 登録 発明の名称 出願人 生物種 改良特性

14

特開平03-187327   アンジエリカ・アクチロバ(Angelicaacutiloba)新品種植物、その育種方法及び増殖方法 武田薬品工業 トウキ 収量向上、高含量

15

特開平06-    37   植物組織培養による高生産株の取得方法及び該株を用いた二次代謝産物の取得方法 ピ−シ−シ−テクノロジ− ジギタリス 収量向上、操作性向上

16

特開平06-153731   薬用ニンジンの4倍体誘導法 三菱農機 薬用ニンジン 収量向上

17

特開平07-123878   同質4倍体パチヨリ植物及びこれを用いるパチヨリ精油の製造法 花王 パチョリ(シソ科) 収量向上

18

特開平07-227164   菌類の新規交配法 ツムラ ブクリョウ 共通

19

特開昭53- 98235
特公昭58- 3646

ヨモギ属に属する新植物 日本新薬 ヨモギ属 品質向上

20

特開昭53- 98236
特公昭58- 3647

ヨモギ属に属する新植物 日本新薬 ヨモギ属 品質向上、成分含量

(1971.7-98.6月迄に公開の特許出願)