続く

2.2 植物の品種改良権利化特許

2.2.1 穀類

(1)イネ

 イネの登録されている特許は14件で、その内交配技術に関するものが10件、プロトプラスト培養が2件、選抜技術と遺伝子操作技術が各1件である。これらの技術の発展図を図2.2.1-1に、技術の概要を表2.2.1-1に示す。

 交配技術では雄性不稔とそれを利用するハイブリッド種子(F1種子)に関する特許が多い。イネのF1種子は三井化学等によって生産されている。雄性不稔化法としては、不稔化剤の他に高温除雄法等が登録されており、この技術がイネの育種技術における最大の技術系統を形成していることが理解される。また、雄性不稔化技術を含まないF1種子生産法も2件ある。F1種子以外では、葯培養による半数体育種法に関する特許が1件ある。葯培養による新品種も種苗法に登録されている。

 細胞培養技術に属するプロトプラスト培養はそれ自体では遺伝子の変化を伴ういわゆる「育種法」ではないが、細胞融合技術と変異技術とのかかわりが深く、品種改良技術に関連する基礎技術である。

 遺伝子操作技術によるものは1件だけであるが、今後登録件数が増加すると予測される。変異技術および細胞融合技術による品種改良は、理論的にも遺伝子操作に代替されると予想される。

(2)ムギ

 ムギ類の登録されている特許は8件である。内6件を雄性不稔およびそれに関連するF1種子が占める。ムギはイネ科植物であるため技術に共通性があり、イネと共に権利化されているケースが多く、6件中4件は前出の特許である。これらの技術の発展図を図2.2.1-2に、技術の概要を表2.2.1-2に示す。

 雄性不稔化とF1雑種はイネの場合と同様に、穀類の品種改良における重要技術で、大きな技術系統をなしている。その他は、選択技術と突然変異技術によるデンプンの物性改良法が登録されている。この目的には遺伝子操作技術によるアプローチが有効であり、今後はそれらの特許が登録されると予測される。

(3)トウモロコシ、ダイズ

 トウモロコシとダイズはそれぞれイネ科とマメ科に属し、植物の分類上は大きく異なるので、同一グループで論じるのは適当でないかもしれない。しかし、ダイズに関する登録されている特許はわずかに2件であるので、穀類という共通性から便宜的に1グループとしてまとめた。合計11件で、その内10件が交配技術に関する。技術の発展図を図2.2.1-3に、技術の概要を表2.2.1-3に示す。

 トウモロコシはイネ科であるため、イネとムギの項で挙げた雄性不稔に関する特許の一部が1つの技術系統を形成している。無臭化はダイズ独特の改良特性で交配技術による特許が登録されている。この目的には未登録であるが、遺伝子操作による方法によっても取り組まれている。デンプンの物性を変化させたアメリカンメイズプロダクツ(米国)の特許が6件登録されているのが注目される。これらはデンプンの製造法に関する特許であるが、原料のトウモロコシを交配技術によって取得している。遺伝子操作技術は耐除草剤性ダイズに関する特許であるが、今後同様の特許が登録されると予測される。トウモロコシ、ダイズとも油糧植物でもあるので、油脂、脂肪酸を改良特性とする特許が多数出願されているが、登録されたものはまだない。雄性不稔以外は、遺伝子操作技術にシフトすると予測される。


続く