2.3 動物の品種改良権利化特許

2.3.1 家畜

(1)ウシ

 ウシの登録されている特許は5件で、すべて交配技術に関するものであるが、胚移植を目的とした生殖細胞の採取法・培養法・移植法に関するものと、それ以外の交配技術に分けることができる。これらの技術の発展図を図2.3.1-1に、技術の概要を表2.3.1-1に示す。

 ウシの育種における重要な課題の1つに性選別がある。誕生するウシの性比を調節できれば、効率のよい生産調整を行うことができる。黒木の特許は特殊な飼料を排卵前に与えることで調節を行う。

 もう1つの課題は優れた性質をもつ系統を短期間に増産することである。農林水産省は卵胞刺激ホルモン(FSH)を用いて排卵を調節し、双子出産率を高めた。しかし、この課題で近年主流となってきたのは、体外受精・胚移植などの技術であり、その延長にクローンウシがある。胚移植に関する登録特許はその基礎をなすもので、その後も特許が出願されている。将来的には優良な細胞を預けたり、引き出したりする細胞バンクが事業化され、世界的なビジネスに発展すると考えられる。

 

図2.3.1-1 ウシ品種改良の技術発展図

年月は出願日または優先権主張日

表2.3.1-1 ウシ品種改良の代表的特許(1/2)

出願年

87

89

90

92

交配技術

特公平07-2067
(黒木 常春)
人工的性選択法。
繁殖牛に特殊な濃厚飼料を,排卵前にフラツシング給与することにより,雄牛を高い確率で出産させる。
(出願日87.03.30)

登録

特公平07-38768
(黒木 常春)
人工的性選択法。
繁殖牛に対して排卵前に特定配合の濃厚飼料をフラツシング給与して,容易に雌子牛をより多く計画的に選択生産する。
(出願日89.06.29)

登録


特公平05-6982
(農水省家畜改良センタ−所長)
FSHによる牛の双子生産方法。
卵胞刺激ホルモンを,特定条件で投与することにより,多胎による流産を避けながら多くの双子を生産させる。
(出願日89.09.29)
登録

 

 

胚移植
技術

  

特開平02-227016
(家畜受精卵移植技術研究組合)
ウシ体外受精卵の体外発生方法。
ウシ受精卵を,牛栄養芽細胞小胞と共培養を行うことにより,成牛子宮内へ戻せる段階までの発生効率を高くする。
(出願日89.10.30)

係属中

特公平06-83622
(山形県くみあい畜産研修センタ−)
受精卵移植方法。
受卵動物に副交感神経遮断剤を投与後に,受精卵を移植して,受胎率を向上させる。
(出願日90.05.21)

登録

特公平07-34698
(機能性ペプチド研究)
牛胚の体外発生方法。
無血清培地中プロテアーゼ阻害剤存在下で牛受精卵を培養し、血清ロツトの影響、ウイルス等の感染を防ぐ。
(出願日92.06.02)

登録

遺伝子
操作技術

 

  

   

特表平08-504562
(ジエン フア−ミング ヨ−ロツパ:オランダ)
ウシ種による組み換えポリペプチドの製造及びトランスジエニツク法。
組み換えDNAを発現する遺伝子をウシ種の胚標的細胞中に導入し,胚移殖して組み換えポリペプチドを製造する。
(優先日92.06.15)

係属中


表2.3.1-1 ウシ品種改良の代表的特許(2/2)

出願年

94

95

胚移植
技術

特開平08-116966
(雪印乳業)
ウシ胚性幹細胞およびその作製方法。
大量に継代培養することができ、外来遺伝子の導入やウシ個体発生の材料として用いられるウシ胚性幹細胞。
(出願日94.10.25)

係属中

特開平08-289779
(機能性ペプチド研究所)
無血清培地及び体外受精卵の生産方法。受精卵の体外培養に好適に使用される無血清培地及び体外受精卵を生産する。
(出願日95.04.24)

係属中

特開平08-308865
(全国農業協同組合連合会)
牛の卵胞卵子採取方法。
雌牛にインヒビンに対する抗体を生成させて、卵胞の発育を促進し、卵胞卵子を効率的に採取できるようにする。
(出願日95.05.19)

係属中

特開平09-28721
(機能性ペプチド研究所)
ウシ精子の体外受精効率促進方法。
ウシ精子の体外受精効率を促進できる方法を提供する。
(出願日95.07.19)

係属中

 

(2)ブタ

 ブタの登録されている特許は2件と少ない。育種関連技術は家畜としてウシと共通した部分も多く、登録されている特許は2件とも胚移植に関連したものである。しかし、ウシと異なり性選択はなく、また繁殖力が高いせいか体細胞を用いたクローン技術よりも、卵細胞の採取・凍結保存・培養法に関するものに重点がおかれている。これらの技術の発展図を図2.3.1-2に、技術の概要を表2.3.1-2に示す。

 まだ権利化はされていないが、ヒトに対する異種間臓器移植、ヒトに輸血するためのヘモグロビン産生工場などの遺伝子操作関連の特許がウシより多数出願されていることもブタの特徴である。これはブタの大きさが人間に比較的近く、手頃であるためで、これらの技術の実用化を待って権利化の動きがあるものと考えられる。

 他方、1980年代に無毛動物やわい小化動物など操作性改善を目的として表現型を改良したブタの特許が出願されているが、権利化されていない。このような操作性に関する特許は飼育施設等の改善により、特許化するメリットが失われた可能性が考えられる。

 

図2.3.1-2 ブタ品種改良の技術発展図

年月は出願日または優先権主張日

表2.3.1-2 ブタ品種改良の代表的特許

出願年

85

88

91

93-94

交配技術
(胚移植)

特公昭63-27013
(伊藤忠飼料)
子宮角短縮豚及び非外科的豚受精卵の採取方法。
繁殖期の雌豚の子宮角を短縮することにより、外科手術によらずに受精卵を採取できるようにする。
(出願日85.09.30)

登録

特公平06-51601
(伊藤忠飼料)
豚の凍結受精卵及び凍結保存方法。
長期に亘り保存が可能で,受精卵を産出した雌豚死亡後においても産子を得ることができる等の標記受精卵。
(出願日88.10.27)

登録

特開平06-14945
(日清製粉)
豚の繁殖方法。
豚の胚から得られる分離割球を卵細胞に移植し、成長させた核移植胚を仮親に移植することにより、遺伝的に同一の形質を有する豚の増殖を容易にする。
(出願日91.01.18)

係属中

 

遺伝子
操作技術

 

 

 

特表平09-501319
(デイ− エヌ エツクス CORP:米国)
トランスジエニツクブタにおけるヒトヘモグロビンの生産。
ヒトαグロビン遺伝子をブタに導入することにより,ヒトの輸血に用いることのできる無細胞ヒトヘモグロビンの効率的・経済的な供給源とする。(優先日93.08.11)

係属中


特表平10-504442
(バイオトランスプラント INC:米国)
α(1,3)ガラクトシルトランスフエラ−ゼ陰性ブタ。
所定のガラクトシルトランスフエラ−ゼの正常な発現が,組織の型の器官で妨げられることにより,遺伝子導入ブタを得る。
(優先日94.04.13)
継続中

選抜技術

特開昭61-170330
(浦田 修一)
毛の無い豚。体表に毛が無く,足部,尾部に微毛を有する,食肉部分,特に頭部等の歩留りが多く,食肉部分に豚毛が付着せず,体表を消毒し易くした標記豚。
(出願日85.01.23)

係属中

 

特表平06-508522
(パイオニア ハイブレツド:米国)
動物における腸の構造および酵素の操作。
菌由来物質投与により,腸の粘膜構造,消化力および吸収力を改善する。
(優先日91.06.28)

係属中

特開平07- 67499
(日本たばこ産業)
矮小化動物の産生方法。
母親に3−DPAラクトンを連続投与することにより、わい小化動物を容易かつ簡便に産生させる。
(出願日93.08.30)

係属中