4.2.2 生物学的処理

 下水に代表される有機性の汚濁物質が含まれる廃水の処理には、活性汚泥法や散水ろ床法、あるいは嫌気性消化法などがある。微生物によるこれらの方法は、有機性物質を効率よく短時間にかつ経済的に処理できる。

 動植物を用いる処理を除き、通常微生物を用いる生物学的処理は、溶存酸素が必要な好気性処理と、溶存酸素が必要でない、あるいは溶存酸素が全く存在しない状態が必要な嫌気性処理とに分けることができる。

 生物学的処理では、溶解性の有機性物質が微生物によって分解され、同時に分解された有機物の、好気性処理では概ね50%が、嫌気性処理では概ね10〜20%が微生物菌体、すなわち余剰汚泥に変換する。

 

(1) 好気性処理

 好気性処理は、溶存酸素の存在のもとに、さまざまな好気性微生物が関与して、有機性物質、アンモニア性窒素、臭気、鉄などを酸化分解し、除去する方法である。好気性処理を大別すると、曝気によって生物フロックを浮遊させた状態で有機物質を酸化分解する方法と、担体に微生物を付着増殖させて生物膜を形成させ、これを廃水に接触させて酸化分解する方式に分かれる。前者の代表が活性汚泥法であり、下水処理で広く用いられている。後者は一般に生物膜法と呼ばれている。

a 活性汚泥法

 活性汚泥法は、1910年代に下水処理分野で開発され、50年代にさまざまなプロセスが提案された。80年代に閉鎖系水域の富栄養化に対応すべき、活性汚泥法をベースとした窒素・リンの処理技術の開発が行われた。

 活性汚泥法は、活性汚泥と呼ばれるさまざまな好気性微生物や有機性物質や無機性物質などからなるゼラチン状のフロックを用いた処理方法である。図4.2.2-1に示すように、標準活性汚泥法において、廃水は土砂、浮遊物質を最初沈殿池で除去した後、曝気槽(エアレーションタンク)中で活性汚泥と混合、曝気し、微生物の代謝によって有機物を分解し、最終沈殿池で汚泥と処理水に分けられる。分離された汚泥の一部は返送汚泥として曝気槽に戻され、残りの余剰汚泥は廃水中の溶解性物質の固形化として処理される。運転操作の違いにより、各種の活性汚泥法が用いられている。オキシデーションディッチ法(酸化溝法)は、環状になった浅い曝気槽に、回転ブラシや散気装置をつけて水を循環している間に処理する、構造、維持管理が容易な方法である。なお、過度の曝気は好気性微生物が自己酸化し、活性汚泥の活性が低下し、汚泥量が減少する他、曝気エネルギーの無駄使いになる。

 

図4.2.2-1 標準活性汚泥法の処理フロー概略

 

b 生物膜法

 生物膜法の特徴は、活性汚泥法と異なり、付着した微生物を処理槽内に保持し続けることができることであり、増殖速度が遅い微生物でも高濃度に維持することが可能である。

 生物膜法は微生物を付着させる担体の位置により、処理槽中に担体を入れて空気を送る場合と、空気中にある担体に廃水をかける散水濾床のような場合がある。前者においては担体の状態により固定床方式と流動床方式に大別できる。

 固定床方式は、生物膜が付着した砕石あるいはプラスチック濾材を処理槽中に固定して、その下部から曝気するもので、接触曝気法や生物濾過法がある。固定床方式では、生物膜の剥離作用が弱いために、担体間で剥離微生物が閉塞しやすいために、強制的に下部から曝気して剥離することもある。

 これに対して、流動床法は、図4.2.2-2に示すように曝気などによって流動状態に砂や活性炭などの担体を保持しているために、余剰生物膜の剥離も行われ、廃水中に懸濁性物質が存在していても閉塞することはない。また剥離生物膜が担体間に浮遊していることから、活性汚泥のような作用を示す。担体には、スポンジのようなものや、高分子ゲル内に微生物を包括固定化させたものを用いるものがあり、担体の流出防止、担体の分離、あるいは過剰の生物膜の剥離などの技術開発がなされている。

図4.2.2-2 流動床法の原理

(特公昭53-31315)

 

(2) 嫌気性処理

 嫌気性処理は、溶存酸素のレベルにより、溶存酸素が1ppm以下からゼロ付近までの状態のものと、メタン生成細菌のように酸素があると死滅してしまうので酸素濃度がゼロの状態にしなければならないものがある。前者については後述する好気性処理と嫌気性処理の併用処理において述べる。

 後者の嫌気性処理には、し尿、下水汚泥や食品工場廃水などの高濃度で含まれる有機性物質を嫌気性細菌によってメタンと二酸化炭素に分解するメタン発酵(嫌気性消化法)がある。

 嫌気性処理の特徴として、好気状態に保つための曝気エネルギーが不要であり、生成する汚泥量も少ないことが長所として挙げられるが、COD除去率が低い、滞留時間が大きいことなどの短所もある。

 

(3) 好気性処理と嫌気性処理の併用処理

 閉鎖系水域の富栄養化の進行に伴って、無機栄養塩類の排出抑制が求められ、窒素やリンの排水基準が強化されてきている。

 窒素の生物学的除去には、活性汚泥法あるいはメタン発酵において、微生物菌体として固定化させて除去する方法、アンモニア性窒素を亜硝酸・硝酸に酸化し、さらに窒素として除去する硝化脱窒法などがある。後者は特に生物学的脱窒法として広く下水をはじめ産業廃水の処理に適用されている。

 生物学的脱窒法は、アンモニア性窒素を好気性条件下において、硝化細菌によって亜硝酸あるいは硝酸性窒素まで酸化する硝化工程と、この処理水を嫌気性条件におき脱窒細菌によって窒素に還元除去する脱窒工程からなる。硝化過程では硝化細菌が炭酸ガスを炭水化物に変換する際にアンモニア性窒素や亜硝酸性窒素を酸化し、そのエネルギーを用いている。脱窒では、分子状酸素O2が存在しない嫌気条件下で、細菌がやむを得ずNOx-N中の酸素を有機性物質の酸化のために利用する原理を利用している。

 生物学的脱窒では、図4.2.2-3に示すように、好気性処理(硝化)と嫌気性処理(脱窒)をどのように組み合わせるかにより、さらに返送汚泥の流入方法などからさまざまなプロセスがあり、単一槽で好気と嫌気を繰り返す方法から、個々の槽を用いて連続的に処理する方法などがある。

 

図4.2.2-3 生物学的脱窒処理フロー

(特公昭53-27915)

 

 続いて生物学的脱リン法について述べる。従来の活性汚泥法では、活性汚泥が取り込んだリンの濃度は汚泥量の2%程度であるが、ある条件において、活性汚泥は過剰にリンを摂取する性質を示す。すなわち、生物学的脱リンは、基本的には嫌気性状態で活性汚泥からリンを放出させ、続いて好気性状態に置くと活性汚泥がいったん放出したリンを嫌気性処理する前の濃度をこえて過剰にリンを摂取することを利用するものである。図4.2.2-4に示すように過剰に摂取した汚泥を余剰汚泥として処理系から除くことにより脱リンが可能になる。嫌気状態で細菌がリンを放出するときは、BODの存在がリン放出を促進し、硝酸性窒素(NOx-N)の存在が、リン放出を阻害することが知られている。

 

図4.2.2-4 生物学的脱リンの処理フロー

(特公昭62-16718)

 

 生物学的脱リンは、凝集・沈殿処理と比べて発生汚泥量が少ない、薬品の添加がないので維持管理費が低減されるなどの長所があるが、運転操作が複雑であることや、処理水の残留リン濃度下限値が凝集・沈殿処理より高い欠点もある。

 このように、生物学的脱窒も脱リンも好気性処理と嫌気性処理の組み合わせであることから、同時に脱窒と脱リンを行うプロセスも開発されている。