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4.2 環境汚染物質と測定方法
環境測定の測定対象は、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染を引き起こす有害物質や騒音、振動、悪臭などである。
測定技術には自動連続式(自動間欠式も含む)のセンサや簡易測定装置によるモニタリング技術と手分析で行う機器分析技術がある。モニタリング技術はプロセス用連続分析技術から発展したもので、機器分析技術は研究開発などに用いられている分析である。
環境モニタリング技術による測定は工場からの排ガスや自動車の排ガスなどを測定する発生源用と汚染物質を含む環境大気(発生源のガスが大気に拡散したもの)を測定する環境用がある。発生源用は高濃度測定であり、環境用は低濃度の測定になる。発生源用は一般に高温、多湿、多塵であるため、測定成分が同じであっても測定方法や機器の構造が環境用とは異なる場合が多い。環境基準の指定成分と測定方法を表4.2.1-1に、ばい煙などの測定方法(排出規制)を表4.2.1-2に、自動車排出ガスの測定方法を表4.2.1-3に示す。表に示した測定方法は法で規定されたいわゆる公定分析法である。公定分析法以外の測定方法でも測定は可能であるが、公定分析法との相関を明らかにし、測定値に補正を加えることが必要となる。公定分析法以外の測定方法としては、塩素の測定で隔膜電極法、溶液導電率法、検知管法が、塩化水素の測定ではイオン電極法、溶液導電率法が、ふっ素の測定でイオン電極法がそれぞれ使われている。
表4.2.1-1 環境基準の指定成分と測定方法
| 指定成分 | 測定方法 |
| 二酸化硫黄 | 溶液導電率法、紫外線蛍光法 |
| 一酸化炭素 | 非分散形赤外線吸収法 |
| 浮遊粒子状物質 | 重力濃度測定法、光散乱法、圧電天びん法、β線吸収法 |
| 二酸化窒素 | 吸光光度法、化学発光法 |
| 光化学オキシダント | 吸光光度法、電量法、紫外線吸収法、化学発光法 |
| ベンゼン | GC-MS法または同等以上の性能を有すると認められる方法 |
| トリクロロエチレン | GC-MS法または同等以上の性能を有すると認められる方法 |
| テトラクロロエチレン | GC-MS法または同等以上の性能を有すると認められる方法 |
表4.2.1-2 ばい煙などの測定方法(排出規制)
| 測定物質 | 測定方法 | |
| 硫黄酸化物の排出量 | 硫黄酸化物 | 中和滴定法、沈殿滴定法、比濁法 |
| 二酸化硫黄 | 溶液導電率法、赤外線吸収法、紫外線吸収法、炎光光度法、定電位電解法 | |
| 燃料中の硫黄含有率 | 石油類 | 微量電量滴定式酸化法、放射線励起法、放射線式透過法など9種類 |
| ガス類 | ジメチルスルホナゾV吸光光度法、メチレンブルー吸光光度法など5種類 | |
| 石炭、コークス類 | エシュカ法、高温燃焼法 | |
| ばいじん | 重量法 | |
| 有害物質 | カドミウム、鉛 | 原子吸光法、吸光光度法、ポーラログラフ法 |
| 塩素 | 吸光光度法、連続分析法 | |
| 塩化水素 | 吸光光度法、硝酸銀法(廃棄物焼却用) | |
| ふっ素 | 吸光光度法 | |
| 窒素酸化物 | 吸光光度法、イオン電極法、化学発光法、赤外線吸収法、紫外線吸収法、定電位電解法 | |
表4.2.1-3 自動車排出ガスの測定法
| 測定対象 | 測定方法 |
| 一酸化炭素 | 非分散形赤外線分析法 |
| 炭化水素 | 非分散形赤外線分析法、水素炎イオン化検出法 |
| 窒素酸化物 | 非分散形赤外線分析法、化学発光法 |
| ディーゼル黒煙 | 光反射式測定法、光透過式測定法 |
4.2.2 水質汚濁の測定
水質汚濁の原因となる物質は非常に多いが、法規制では比較的広く存在するもののみを規制の対象としている。測定方法としては昭46環告59および昭49環告64に示された方法により測定することになっているが、そのほとんどは手分析である。環境基準および排水基準に定められた測定方法を表4.2.2-1に示す。
表4.2.2-1 環境基準および排水基準の測定方法
| 項目 | 環境 基準 |
排水基準 | 測定方法 | |
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健 康 項 目 |
シアン | ○ | ○ | 蒸留-吸光光度法 |
| アルキル水銀 | ○ | ○ | GC法、TLC分離-原子吸光法 | |
| 総水銀 | ○ | ○ | 原子吸光法 | |
| 有機リン | ○ | ○ | 吸光光度法、抽出-GC法、TLC分離-原子吸光法 | |
| カドミウム | ○ | ○ | 原子吸光法、電気加熱原子吸光法、ICP発光分析法、ICP質量分析法 | |
| 鉛 | ○ | ○ | 原子吸光法、電気加熱原子吸光法、ICP発光分析法、ICP質量分析法 | |
| クロム(六価) | ○ | ○ | 吸光光度法、原子吸光法、電気加熱原子吸光法、ICP発光分析法、ICP質量分析法 | |
| ヒ素 | ○ | ○ | 吸光光度法、原子吸光法、ICP発光分析法 | |
| PCB | ○ | ○ | 抽出-GC法 | |
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生 活 環 境 項 目 |
銅 | − | ○ | 抽出-原子吸光法、電気加熱原子吸光法、ICP発光分析法、ICP質量分析法 |
| 亜鉛 | − | ○ | 抽出-原子吸光法、電気加熱原子吸光法、ICP発光分析法、ICP質量分析法 | |
| クロム(全) | − | ○ | 吸光光度法、原子吸光法、電気加熱原子吸光法、ICP発光分析法、ICP質量分析法 | |
| マンガン(溶解性) | − | ○ | 原子吸光法、電気加熱原子吸光法、ICP発光分析法、ICP質量分析法 | |
| 鉄(溶解性) | − | ○ | 原子吸光法、電気加熱原子吸光法、ICP発光分析法 | |
| pH | ○ | ○ | ガラス電極法 | |
| 生物化学的酸素要求量 | ○ | ○ | 標準希釈法、ミラー変法、隔膜電極法 | |
| 化学的酸素要求量 | ○ | ○ | 酸性過マンガン酸カリウム法 | |
| 浮遊物質 | ○ | ○ | 重量分析法 | |
| ヘキサン抽出物質 | ○ | ○ | 抽出-重量分析法 | |
| フェノール類 | ○ | ○ | 蒸留-吸光光度法 | |
| ふっ素 | ○ | ○ | 蒸留-吸光光度法、イオン電極法、イオンクロマトグラフ法 | |
| 大腸菌群数 | ○ | ○ | 希釈-培養-計数法 | |
| 溶存酸素 | ○ | − | ウインクラー・アジ化ナトリウム変法、ミラー変法、隔膜電極法 | |
| 窒素 | ○ | ○ | 総和法、紫外線吸光光度法、還元法 | |
| リン | ○ | ○ | 吸光光度法 |
しかしこの方法では人手がかかり常時モニタリングができないため、指定された手分析による方法に準じた測定方法や、全く別の方法ではあるが自動化装置を用いた測定が行われているのが現状である。公定分析法以外の分析方法として多用されている測定には生物化学的酸素要求量の測定でクーロメトリ法、酵素センサ法による測定がある。また、化学的酸素要求量の測定ではCOD計、TOC計、TOD計、UV計など専用の機器が用いられている。
悪臭防止法で規制されている悪臭物質とその測定方法を表4.2.3-1に示す。悪臭物質の測定にはラボ用分析機器のガスクロマトグラフ(GC)が使われている。現在のところ自動測定装置は開発されていない。
表4.2.3-1 悪臭物質と測定方法
| 悪臭物質 | 測定方法 |
| アンモニア | 吸光光度法、イオンクロマトグラフ法、イオン電極法、GC(FID) |
| メルカプタン | GC(FPD) |
| 硫化水素 | GC(FPD) |
| 硫化メチル | GC(FPD) |
| 二硫化メチル | GC(FPD) |
| トリメチルアミン | GC(FID) |
| アセトアルデヒド | GC(FID)、GC-MS |
| スチレン | GC(FID) |
| プロピオン酸 | GC(FID) |
| ノルマル酪酸 | GC(FID) |
| ノルマル吉草酸 | GC(FID) |
| イソ吉草酸 | GC(FID) |
| プロピオンアルデヒド | GC(FTID)、GC-MS |
| ノルマルブチルアルデヒド | GC(FTID)、GC-MS |
| イソブチルアルデヒド | GC(FTID)、GC-MS |
| ノルマルバレルアルデヒド | GC(FTID)、GC-MS |
| イソバレルアルデヒド | GC(FTID)、GC-MS |
| イソブタノール | GC(FID) |
| 酢酸エチル | GC(FID) |
| メチルイソブチルケトン | GC(FID) |
| トルエン | GC(FID) |
| キシレン | GC(FID) |
FPD:炎光光度検出器 FID:水素炎イオン化検出器 FTID:アルカリ熱イオン検出器 |
ダイオキシン類は「廃棄物処理におけるダイオキシン類標準測定分析マニュアル」(厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課)および「有害大気汚染物質測定方法マニュアル」(環境庁大気保全局大気規制課)の2つの方法によりサンプリング、分析が行われている。これらの測定方法の基本的な操作はほぼ同一であり、そのほとんどが手作業に頼る方法となっている。大まかに、試料採取、抽出、クリーンアップ、高分解能GC-MSによる分析、数値化の手順からなっている。通商産業省ではダイオキシン濃度の測定法を日本工業規格(JIS)で定め統一することを目指している。
ダイオキシン類の測定を行える施設は限られており、また測定費用が高価であることから、全国的な汚染状況の実態調査を実施するには膨大な費用が発生する。そのため簡便で低価格な測定・分析技術の改良・開発が望まれている。その結果、低分解能GC-MS法や免疫測定法(イムノアッセイ法)、バイオセンサによる簡易分析法の開発が行われている。バイオセンサによるダイオキシンの検出では、測定試料からの抽出や濃縮が不要なため、測定時間、費用を大幅に引き下げられる可能性がある。
環境ホルモンの測定には公定分析法と呼ばれるものはまだないが、実際にはGC-MS法による測定が行われている。
