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4.3 測定方法と装置
電気分析法は試料溶液中の化学種を電気化学的手法により分析または解析する方法である。溶液中に浸した2電極間の電位差を測定する電位差分析、電気伝導度を測定する電導度分析、ファラデーの法則に基づき電解中に流れた電気の量を測定する電量分析、加電圧と電解電流との関係曲線を測定するボルタンメトリがある。
電気分析法は装置が簡便で安価、自動化が容易であるなどの特徴があり、そのため多検体の迅速分析に適している。
磁場を利用した分析方法としては質量分析がある。質量分析はイオン化した試料が電場や磁場条件下でその走行や挙動がそれぞれの質量/電荷数(m/z)に依存して一義的に決まることを利用した分析方法である。
(1)電量分析
目的成分を電流効率100%の条件下で電解し、これに要した電気量から定量分析をする定電位電量分析法と、一定電流で電解を行う定電流電量分析法がある。
a.原理
定電流電量分析法は目的成分と迅速かつ定量的に反応する試薬を定電流電解により100%の電流効率で発生させ、目的成分と発生した試薬との反応の終点を検知して終点までに要した試薬量を発生するのに要した時間を測定し、その電気量から目的成分の濃度を求める方法である。電解により発生した試薬が容量分析の滴定試薬に相当することから電量滴定法といわれる。
b.特徴
電量滴定法では微量物質の定量が可能で、滴定試薬が不安定で通常の滴定操作で用いるのが困難な場合に特に有効であり、分析の自動化に適している。
また、定電位電量分析法は100%の電流効率が達成される場合、ポーラログラフィで定量できるすべての物質に応用できるため、多くの無機および有機化合物の定量に応用することができる。
(2)ポーラログラフィ
a.原理
ポーラログラフィは電解分析法の一種であり、被酸化性または還元性の試料を含む溶液に、分極性の微小電極と非分極性の対極とを浸し、この両電極間に連続的に変化する電圧を加え、電解により生じた電流(電解電流)を測定して電流-電圧曲線を得る。電解電圧が物質に固有であることから定性分析が、電解電流の大きさが試料濃度に比例することから定量分析を行う。
b.特徴
ポーラログラフィは微量から極微量の電極活性な無機および有機化合物の定量分析が可能である。特にCu、Zn、Cd、Pbなどの金属イオンは高感度に分析できる。また、物質固有の定数である半波電位が接近していない場合は、多成分が混合した試料の同時分析も可能である。
(3)電位差分析(ポテンショメトリ)
a.原理
試料溶液中に目的イオンに感応する指示電極と、目的イオンの濃度に無関係に一定電位を示す参照電極とを浸し、両電極間の電位差を測定することにより目的のイオンの濃度を求める方法である。
b.特徴
分析操作が簡便であり、分析の自動化に適しているため、ガラス電極をはじめとする多くのイオン選択性電極を用いた電位差分析法によるイオン濃度の測定は、広い分野に応用されている。また、電極の小型化が可能であり、極めて少量の試料を分析することができるという特徴がある。
ガラス電極によるpHの測定は水溶液を扱うあらゆる分野で行われており、水質保全のための工場排水の管理などにおいては自動化が進んでいる。
イオン電極は生体試料中のナトリウムイオンやカリウムイオンの分析や環境水中に極微量に含まれるシアンなどの有害物質の測定に用いられている。
(4)電導度分析
a.原理
試料溶液中に一対の白金電極を浸し、両電極間の電導度を測定することにより、目的イオンの濃度を求める方法である。また、滴定により生じるイオン濃度の増減から滴定反応の終点を決定する方法を電導度滴定という。
b.特徴
電導度滴定は水の純度測定、塩類の濃度、錯体の解離度などの測定に用いられる。電導度滴定は、酸-塩基滴定、沈殿滴定、錯滴定の場合に用いられ、溶液が着色あるいは混濁している場合や、適当な指示薬がない場合に特に有効である。電導度の測定は液体クロマトグラフィの検出器にも広く用いられている。
(5)バイオセンサ
バイオセンサは酵素や微生物を利用して、特定の物質が惹起する生体反応を電気信号などとして取り出すもので、バイオセンサと呼ばれている。バイオセンサは生物および生体活性物質の持つ高度な反応特異性と反応効率を巧みに利用したもので、以下のような特徴を持つ。
・目的とする物質のみを選択的に測定しうる
・高感度である
・測定時間が短い
・繰り返し使用が可能である
このような優れた特徴を持つバイオセンサは、各種臨床診断や廃水中のBOD測定、化粧品中の細菌検査、アミノ酸発酵プロセスの管理など広く利用されている測定技術である。バイオセンサは固定化された生体材料(レセプター)の種類によって酵素センサ、微生物センサ、免疫センサなどに大別される。中でも微生物センサは菌体内の単一酵素反応だけでなく、生物の複雑な酵素反応を一括して利用するので応用範囲が広く、酵素センサに比べて長期間の安定性に優れ、かつ連続的に使用することができるので、工業プロセスや環境などの測定に適しているといわれている。
微生物を使って有害物質などを検出するバイオセンサの原理は20年ほど前から提言されてきたが、他の微生物による汚染によりセンサが使えなくなるなどの問題があるあため、実用化されているものは少なく、研究段階のものが多いのが現状である。
通商産業省では経済新生特別枠(ミレニアム・プロジェクト)として、2000年度から5カ年計画で環境保全や企業の環境管理の強化に結びつける目的で、環境中の汚染物質や有害化学物質をPPT(10億分の1)単位で検出するバイオセンサの開発を支援する方向を打ち出し初年度5億円の予算を要求中である。
(6)質量分析
質量分析は試料のイオン化、質量分離、イオンの検出の順で分析が行われ、原子や分子から得られるイオンの質量の大きさが測定される。
原理のあらましとしては、まず第一に試料が気化され、さらにイオン化室でイオン化される。生成したイオンは強い電場で加速されイオンビームとして発射され、強い均一な電場や磁場を有する分析場に入る。ここで各イオンは電場や磁場によりその質量に応じて方向を曲げられ分離される。イオンの検出は電子増倍管で行われる。
質量分析は試料分子の質量測定、構造解析、微量定量測定などに広く利用されている。質量分析装置は原理の違いにより磁場分散型、四重極型、飛行時間型、イオンサイクロトロン共鳴型などに分けられる。
多成分系の試料の分析においては、質量分析の結果が複雑となり解析が難しい。そのため分離をカラムクロマトグラフィで行い、各成分の混合比を定量するとともに質量分析から成分の定性分析が行われる。
a.磁場分散型
磁場分散型質量分析装置は高真空(10-4〜10-5Pa)に保たれたハウジングにイオン化室、分析場(磁場、電場)、検出器からなる。
試料は気化した状態で高電位(1〜8kV)を持つイオン化室に導入される。試料分子は加速された熱電子(20〜70eV)による衝撃を受け、電子を放出してイオンとなる。生成イオンは、イオン化室に設けられた出射口より電位によるエネルギーを与えられて分析場に向けて出射される。出射された高速イオンは分析磁場に入ると磁界および速度に垂直な方向に力を受けて円運動を行う。円運動の半径r、イオンの質量と電荷の比(質量数;m/z)、イオン源電位(V)、磁場強度(H)の間には次の関係式が成り立つ。
(m/z)=kr2H2/V2
従って軌道半径一定のイオンを検出し、加速電位を一定とすれば磁場強度Hをスケールとしてm/zを測定することができる。一方イオンは出射の際にある開き角を持って出射されるが、扇形磁場はイオンに対して光におけるレンズと同様の作用を持ち、出射されたイオンを1点に収束させ、像を結ぶ。この収束作用はイオンの質量の精密な識別のため重要であり、同一分解能での感度、イオンの質量数決定の制度にも影響する。磁場のみを分析場として持つ装置では、イオンが持つ加速エネルギーのばらつきが収差として表れるため高分解能は得難い。エネルギーによる収差には、電場が収束作用を持つため、磁場および電場を組み合わせることで高分解能を得ることができる。
磁場を用いた質量分析装置ではその構成により磁場のみのものを単収束形といい、電場と磁場の両方を持つものを二重収束形という。
b.四重極型
四重極型質量分析装置は磁場を用いず、電場による作用のみを利用して質量分析を行う。イオンの加速電圧は10V前後で、磁場タイプの3〜10kVに比較して極めて低い電圧の下で高感度の分析が行えること、分析部の構造が簡単であることから、小形でかつ操作性に優れ、微量ガス分析や混合物分析法としてGC-MSに採用されている。また、大気圧下でのイオン化を適用しやすく、大気圧イオン化質量分析計として用いられている。また、LC-MSなどの応用分野での利用が期待できる。
c.飛行時間型
飛行時間型質量分析装置はイオン源で発生した試料分子イオンが検出器まで到達する時間によって質量を測定する装置である。
飛行時間型質量分析装置は分解能では磁場型に劣るが、原理的に測定質量範囲に上限がなく、分子量数万〜十数万のタンパク質のような高分子を測定することができる。一般的に装置がコンパクトで、操作や保守も簡単であり測定時間も短く多数の試料を容易に処理することが可能である。発生したイオンのほとんどが検出器に到達するため感度も高く微量分析に適している。また、ゲルパーミッションクロマトグラフィなど高分子の分子量を測定する他の方法と比べて質量精度が格段に高い。
高分子の質量を高感度かつ精度よく測定できるため、タンパク質など生体高分子の測定によく用いられる。また、ポリマーの分子量および分子量分布の測定にも用いられる。
