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4.3.2 カラムクロマトグラフィ
固定相を充てんした管(カラム)に移動相を流し、移動相中の混合物を分離する方法をカラムクロマトグラフィという。カラムを用いるクロマトグラフィの中で、移動相に気体を使用するガスクロマトグラフィ(GC)、液体を使用する液体クロマトグラフィ(LC)という。
(1)ガスクロマトグラフィ(GC)
クロマトグラフィのうち移動相に気体を用いる物をガスクロマトグラフィ(GC)という。試料ガスをキャリアガスは常に相溶であり、分離を支配するのは分析対象成分の蒸気圧と固定相に対する親和性である。
a.カラム
固定相には吸着剤または使用温度で液状の溶媒(液相)が用いられる。吸着剤はそのまま粒状とした物をカラムに充てんする。液相を用いる場合は、溶媒を不活性な多孔質担体粒に含浸したものをカラムに充てんする。これらを充てんカラム(パックドカラム)と言う。カラムの材質には硬質ガラスまたはステンレス鋼を用いる。
b.検出器
ガスクロマトグラフィに用いる検出器には、熱伝導度検出器(TCD)、水素炎イオン化検出器(FID)、電子捕獲検出器(ECD)、炎光光度検出器(FPD)、熱イオン化検出器(FTD)などがある。
c.特徴および用途
GCはLCに比べて長いカラムを用いるので、分離能が優れ、迅速分析が可能である。また、検出器の種類が多く感度も高いため試料の蒸気圧は極微小でよい。このためかなり高沸点を有する試料にも適用できる。有機高分子試料は熱分解法で、固体や液体中の揮発性成分はヘッドスペース法で試料導入される。
大部分の無機物および熱に安定な有機物に適用できる。品質管理から各種分野の研究まで極めて広く応用される。自動化されプロセス用、環境監視用としても用いられている。
(2)液体クロマトグラフィ(LC)
固定相および移動相と呼ばれる相接する2つの相が形成する平衡の場において、化合物をその両相との相互作用(吸着、分配、イオン交換、分子サイズなど)の差によって分離定量する手法である。この中で移動相として液体を用いるものを液体クロマトグラフィ(LC)と呼ぶ。中でも移動相を高圧で送り、分離時間を短縮したものを高速液体クロマトグラフィ(HPLC)と呼ぶ。
a.カラム
LCに用いられるカラムは通常、内径1〜6mm、長さ5〜30cmのステンレススチール管で、直径3〜10μmの微小な充てん剤(固定相)が緻密に充てんされている。クロマト管材質としては、ガラスやプラスチックが用いられる。高分離を得るためにこれらのカラムを複数直列に接続したり、分取用として内径数十mmのカラムが使用されることがある。カラムはカラムオーブン中に格納され、一定温度に保たれる。
LCは充てん剤に働く相互作用の違いにより吸着、分配、イオン交換、分子ふるいなどに分けることができる。GCと異なり試料を気化させる必要がないため、分子量の大きな化合物やアミノ酸、糖なども直接分析することができ、多くの分野で使用されている。
b.検出器
検出器として最もよく使用されるのは、化合物の紫外線強度を測定する紫外線検出器で8〜20μl程度のフローセルが装着されている。屈折率の変化を測定する示差屈折率計検出器や蛍光光度計検出器、電気化学検出器、電気伝導度検出器などもしばしば用いられる。
c.特徴および用途
特別な場合を除き、ng〜μgの化合物が定量できる。
揮発性が不十分な化合物、熱的に不安定な化合物を容易に測定できる。定量性に優れており、分離した化合物を容易に分取できるなど、他の分離法にはみられない特徴を持っている。
イオン性化合物、変化しやすい天然物および種々の高分子化合物を対象成分にした一斉分析として医学、生化学、薬学、高分子化学、天然物化学の分野をはじめ、食品や環境測定分野など広い範囲の分野で応用されている。
(1)原子吸光分析
試料を化学炎などで熱解離し、生成した基底状態の原子蒸気に特定波長の光を照射したとき起こる原子の吸光現象を利用した分析方法である。
基底状態にある原子はその原子に特有の波長の光を吸収して励起状態に励起される。原子吸光分析法はこの現象を利用している。すなわち、フレームなどにより試料を原子蒸気化し、その原子蒸気層に適当な波長の光を照射する。その際原子によって吸収された光の強さを光電測光などにより測定し、これにより試料中の元素濃度を定量する。
原子吸光分析装置は光源部、試料原子化部、分光部および測光部から構成される。
金属の原子化は試料を炎の中に導入して行う。この時、金属特有の波長の光を持つ光源として中空陰極放電管や無極放電管が用いられる。このため目的元素ごとに別々の光源が必要となるが、波長が充分離れている元素については、複数の元素を合わせて一個の光源にすることも可能である。吸収量は分光器を介して測定されるが、比較的紫外線領域を用いることが多いため、検出器には光電子増倍管が用いられる。
試料の原子化の手段としては、炎以外に黒鉛やWの電気炉を用いる電気加熱炉原子吸光法もある。
原子吸光分析は共存イオンの妨害が少なく、選択性がよい。ほとんどの金属元素の微量から極微量の定量分析に使用でき、試料の形態に依存しない特徴を持っているため広い分野で用いられている。
たとえば、環境分析においてはJIS K 0102工場排水試験方法で、銅、亜鉛、鉛、カドミウム、鉄、マンガン、クロムなど15種類の金属元素の分析法として採用されており、河川水、海水、ならびに土壌中のこれらの金属元素の定量法が記述されている。また、化学工業の工程分析として金属の成分分析や化学製品中の金属元素、岩石や鉱石中の金属元素の分析にも用いられている。さらに農作物、食品および生体試料中の金属元素の分析にも用いられている。
しかし原子吸光分析は原理的に多元素を同時に分析できないため定性分析には適さない。
(2)ICP発光分析
誘導結合高周波プラズマ(inductively coupled plasma, ICP)発光分析は発光分光分析法の1つであり、原子の励起を高周波で誘起されたアルゴンガスの高熱プラズマで行う方法である。
ICP放電により励起状態の原子またはイオンを生成し、これらが放射する発光スペクトル線の波長位置と発光強度から定性・定量分析を行う。
300Hz以下の周波数においてコイルに高周波電流を流し、高周波磁界の時間変化により電磁誘導によって発生する電界によって放電を行うと、放電と電気回路の結合は誘導型となる。この光源はICP(誘導結合プラズマ)と呼ばれている。発生した高温アルゴンプラズマ中に霧化した液体試料を導入すると、熱エネルギーにより励起され光を発生する。この光を分光器で元素特有のスペクトルに分け、そのスペクトルの強さにより試料に含まれる元素の濃度を測定する。発光分光分析の光源としてのICPの優れている点を以下に示す。
ICP発光分析は極微量の不純物を検出・定量する必要のある半導体や電子関連工業をはじめとして、土壌や河川水、海水などの環境試料ならびに農作物や食品中の微量元素の定量に応用されている。また、臨床医学の分野においても、血清や尿などの生体試料中の微量元素の定量に利用されている。
ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS)は有機化合物の定性、定量を目的とした分析装置でガスクロマトグラフ(GC)と質量分析装置(MS)を結合した複合装置である。分析試料には多くの成分が存在し、GCはこれらの成分を分離するが定性は困難である。一方、MSは混合成分の分離は困難であるが、分離された成分の定性は容易である。GC-MSはGCで多成分系の試料を成分ごとに分離し、MSでそれらを定性する機能を持っている。定量にはGC-MSの選択イオン検出法(SIM)が用いられる。
GC-MSは有機化合物の分離および定性、定量が可能である。測定範囲は化合物にもよるが、ppm以下の微量分析が可能である。河川水などに含まれている農薬の分析や水道水中のVOCの分析ではppbまたはpptの測定ができる。また、ダイオキシン分析には二重収束形GC-MSを用い、ppb以下の分析を行う。
各種クロマトグラフィは複雑な混合系の分離手段として広く用いられている。質量分析計(MS)は化合物の定性情報を高感度に与える分析手法である。この2種類の装置の特徴を生かしたシステムとしてガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)がある。MSは真空中で動作するため、大気圧下で動作するGCとの直結に関しては、そのインターフェース部に多くの工夫が行われた。
クロマトグラフィにはGCの他に液体クロマトグラフィ(LC)や超臨界クロマトグラフィ(SFC)などがあり、近年はその分離能の多様性からLCが多く用いられるようになってきている。このため、GC-MS同様LCに関してもMSとのシステム化を行い、分離、定性が同時にできる装置の実現が要望された。しかし、LCは溶液を扱うためMSとの直結にはGCよりも多くの問題を解決する必要があり、多くの手法が提案された。現在はこれらの手法のうちのいくつかが実用に耐える物として応用されるに至っている。
LC-MSには以下のような特徴がある。
・熱不安定、不揮発性の物質を化学修飾なしに分析可能
・成分ごとの定性が同時に行える
・特定イオンのモニタにより多チャンネル検出器として使用可能
・バイオ、医薬、環境、化学工業など応用範囲が広い
LCはGCでは前処理なしでは不可能であった熱不安定、不揮発性の化合物の分離分析が可能なため、分離手段のメイン手法となっている。LCも他のクロマト手法と同様に定性情報が少ないため、豊富な構造情報を与えるMSとの結合は分析の精度向上と効率化を実現する物として注目されている。
