続く

(3) 技術発展図

a.履歴ダンパ

 この分野では、鉛の塑性変形を利用したダンパが古い(特公昭62-16336)。その後1980年代前半から鋼棒の弾塑性変形を利用したダンパが相次いで出願されている(特公平2-59261、特公平2-59262、特公平3-3725、特公平3-35472)。鉛を利用する出願は、その後鉛を拘束するタイプが多くなり、鋼管(特公平4-80184)やリングで拘束(特公平6-89800)するのみでなく、シリンダに封入する技術(特許2711712)も提案されている。この時期までは、積層板等のアイソレーター支持構造物にとりつけるダンパが主体であった。80年代後半からは、アイソレーターである積層体の内部に塑性変形材を保持して免震と減衰の両特性を持つ積層体が出願され始めた(特公平5-20808、特許2636950)。また耐震部材に組込んで使用されるタイプのダンパも登場し、耐震部材でも振動吸収が期待されるようになった(特許2516576、特開平11-153194)。その他の履歴ダンパとして注目される出願として、長尺材をロール変形(特公平7-13418)、鋼管のねじり変形(特開平5-239952)、鎖集合体(特開平11-241435)等がある。

 

b.粘弾性ダンパ

 このタイプでは、ばね体との組合せ技術が古い(特公昭58-48785)。しかし、その後免震用の積層体との複合あるいは積層体の軟質板にダンパ機能を持たせる形式の出願が主体となる。これは、免震装置と一体化したダンパといえる。この種の出願が始まった時期は履歴型ダンパが積層体に挿入して使用され始めた時期と一致している。

 具体的には、複合型としては、積層体への挿入型がまず出願され(特許2615626)、その後は、積層体に使用される軟質板の特性でダンパ機能を発揮する特許が増加してきた(特許2589727、実用新案2554883、特許2766154、特開平10-252823)。また、高減衰ゴムと鉛の組合せも出願されている(特開平9-317822)。

 耐震部材の柱組込み型ダンパも1990年代に登場している(特開平6-264963)。特殊粘性体をゴムに分散した特許(特許2509318)、積層体の傾斜積層(特開平10-259852)も注目される。

 

c.粘性ダンパ

 このタイプの代表的なものは、オイルダンパである。構造物の地震振動対策として工夫された出願がある。例えば、粘性流体の流露制御(特公昭62-32310)、電気、磁気で特性が変化する機能性流体を使用(実公平7-5308、特開平5-332047、特開平10-299283)、弾塑性材の変形と組合せ等の出願(特公平3-35472)等もある。

 免震支承のコイルばねを減衰材に浸漬する技術も出願されている(特開平6-300082)。このタイプも1990年以降では、免震装置や、耐震部材に組込まれる傾向にある

 

d.摩擦ダンパ

 このタイプのダンパは、ブレーキの原理と同様に摩擦抵抗を応用したダンパであるが地震対策としても活用されている。免震装置である積層体との組合せが早くから検討されている(特公平3-58009、実公平4-39968)。単独ダンパのタイプでは、各種の地震レベルに対応できるように異なる摩擦係数を持つ装置も提案されている(特公平6-43856)。

 

e.マスダンパ

 マスダンパは構造物の制振装置の主要要素として使用されており、質量体単独で使用されることはない。建物が持っている固有振動と同条件を持つ重錘を建物の振動と逆方向に振動させることにより、建物自体の振動を消そうというのが狙いである。

 当初は、塔状建造物の風による振動対策が主目的であった(特公平3-37058、特公平5-20544)。その後地震時の建造物の振動対策に展開された。アクティブ制振の例として特公平3-70075(鹿島建設)がある。質量体としてタンク中の液体を用いるパッシブ型(特開平9-144378)、平面トラス構造への適用技術も提案されている(特開平11-2048)。

 

f.電磁ダンパ

 電気または磁気を応用したダンパを総称した。振動エネルギーを電気に変換して消費する発想は比較的早く(特公昭63-58300)、最近では、圧電体を活用する技術もある(特開平6-94074)。磁気力の活用技術の中では、超伝導体との組合わせ(実公平3-35808)、リニアモーターによる制御(特許2516404)が注目される。

 

g.慣性力ダンパ

 回転慣性体とばねを組合せた振動吸収装置(特開平9-177875)や、制振装置におけるマスダンパ(質量体振動)の代りにコマ状回転体の歳差運動を用いる技術(特許2881728)が新たに提案されており注目される。

 

 


続く