3.1.1 各分野の概要

(1)フレキシブル基板

 非晶質シリコン半導体を使った太陽電池は単結晶シリコンに比べて可視光に対する吸収係数が1桁大きく、従って太陽光を有効に吸収利用するのに必要な膜厚は薄くてよい。膜厚が薄くても効果があることから、これをフレキシブルに使用することが可能になる。そこで必要となったのが樹脂フイルムなどの可撓性の基板である。また、樹脂フイルムを使うことによって太陽電池自体が軽量となり、フレキシブルであるため加工性が増し、用途も拡がる。さらにロール状に巻き取ることができるため大量生産が可能となる。

 非晶質シリコンを形成するときに高温度になるため、主として研究されている樹脂はポリイミドなどの耐熱性樹脂である。ポリイミドの基板は熱による膨張を抑制することが課題である。

フレキシブル基板はロール・ツー・ロールで大量生産できる。富士電気総合研究所出願の特許では、この方法で作製し巻き取った基板を縦に切断して一度に大量の基板を製造する。

 今後は、この基板の可撓性を利用したモジュールの検討や用途の開発が望まれる。

 

(2)時計・電子式卓上計算機用途

 太陽電池を時計などの電子機器に応用するときに最初に問題となったのは、充電用の電池に対する過充電の防止、および入射光不足による充電不足である。前者については電圧を検知して放電させる方法で、また後者についてはコンデンサの工夫などで解決しようとしている。

 太陽電池自体のコンパクト化や機器内での配置が、特に腕時計などでは重要であり種々の方法が検討されている。

時計では太陽電池を外から見えなくするなどのデザインを考慮した開発も行われている。

 非晶質太陽電池を使った電子式卓上計算機の実用化基本特許は三洋電機から出願されている。複数の非晶質太陽電池を基板内電極直列に接続して集積化、高効率の電子式卓上計算機が可能となった。非晶質太陽電池は太陽光よりも蛍光灯のほうが変換効率が高く、室内電子機器用途には最適である。

 

(3)タンデム構造

 太陽電池はこれを直列に接続すると開放電圧が上昇する。従って高い電圧を得ようとするには複数の太陽電池セルを直列に接続する必要がある。タンデム構造は従来、この接続を基板平面上で行っていたのを積層して直列接続したものである。非晶質シリコンのpin接合を複数積層し、セル間のpn接合が整流性を有しないようにして、開放電圧を単位セルの電圧の和とする。

 基本特許は浜川圭弘氏らの発明によるもので、1979年に出願されている。非晶質シリコンの太陽電池は太陽光に対する吸収係数が大きく、また蒸着法で製造できることから太陽電池自体を薄くすることができるが、変換効率が低いのが課題であった。タンデム構造はこの課題を解決した技術として注目された。その後、非晶質シリコン単独であったものを非晶質シリコンと多結晶シリコン、あるいは微結晶シリコンと組み合わせて高い変換効率が得られている。非晶質のセルが太陽光の短波長を吸収し、結晶系セルが長波長を吸収して広範囲の光を利用して効率を上げる。

 その後、セル間の接合層の検討や各セルの層の特性を特定するなどの研究が各社で行われている。また、材料についてはシリコンだけではなく無機および有機化合物などの半導体にまで広げて検討されている。

 

(4)II−VI族化合物太陽電池

 II−VI族化合物の太陽電池はCdSとCuSなどのヘテロ結合が松下電器産業を中心 にして研究されていたが時間により性能低下する劣化の問題があった。同社は「サンシャイン計画」の一環として引き続き研究を行い、劣化のないCdTe系の太陽電池を開発した。さらに炭素を電極として用いて製造すると炭素の中の不純物がアクセプタ源となってCdTe中に拡散し、炭素が電極とアクセプタ源との二役を演じることにより製造が簡略化された。

 一方、同じく松下電器産業によって、「サンシャイン計画」の中で1976年にスクリーン印刷法によるCdTe太陽電池の製造法が開発された。この方法は基板上にCdTeとバインダのペーストをスクリーン印刷してから焼成するもので、量産できる製造方法である。

 2つの役割をする炭素電極を用いたCdTe系太陽電池と、これをスクリーン印刷法で製造する方法が1979年に基本特許として工業技術院長から出願されている。