(4) 細胞を取り扱う技術

 図1.3.1-9に示すように細胞を取り扱う技術では、遺伝子を細胞に導入する上で重要な遺伝子プラスミドの導入が約半分の47%、次いで遺伝子改変された細胞の培養方法、培養装置に関する特許が24%で両者で71%と大部分を占める。この関係の特許が多いのは、実用化上最も重要な動物細胞への遺伝子プラスミドの導入には種々の方法が提案され、導入した細胞を培養して最終製品を取得するのに幾多の工夫と技術が関与しているためと思われる。

図1.3.1-9 遺伝子工学関係細胞を取り扱う技術の出願件数推移および構成

a. 遺伝子、プラスミドの導入

 図1.3.1-10に示すように出願件数はその他が61%と最も多く、出願も一番古くからなされている。これは細菌、酵母、糸状菌などの微生物は直接プラスミドを細胞内に導入できるのでそれに関連する出願が多いためと思われる。マイクロインジェクション法は1975年頃から植物細胞を対象になされてきたがその技術的な難しさ、生産性の低さのため普及度合いは低い。これに対して1985年頃から電気穿孔法の特許が増えてきている。処理時間が短く操作が簡単でコストの安い種々の工夫がなされた特許が出願されているものと思われる。

図1.3.1-10 遺伝子、プラスミドの導入関連技術の出願件数推移および構成

b. 培養方法、培養装置

 図1.3.1-11に示すように動物細胞と微生物に関するものがほぼ同じくらいの出願件数で両者で78%を占める。これは1990年頃から医薬品の商品化を目的とする組換え動物細胞を宿主にした方法が実用化されていることに対応している。近年はコスト削減を念頭に高密度、無血清培地の開発などで出願件数も増えてきている。  

 一方微生物としては大腸菌、枯草菌などの細菌だけでなく酵母、糸状菌など多種多様である。微生物はいずれもバイオテクノロジーにおいて古来から最も身近で扱いやすく、なくてはならない生物材料として存在してきたからである。

 1980年代に出願が急増したのは組換え菌の大量培養方法、装置が開発されたためと推定される。植物細胞の培養は15%を占めるが、当初は継代培養、組織培養の研究、近年は特定細胞の培養による有用成分の生産が試みられており、これらが出願に表われているものと思われる。

図1.3.1-11 遺伝子工学関係培養方法、培養装置の出願件数推移および構成