1.3.2 遺伝子工学関連技術

 概要は1.1.3項にて紹介済であり、図1.1.3-2と同じ全体の円グラフのみを示す。

図1.1.3-2 遺伝子工学関連技術の出願件数構成

1971〜98年8月
までに公開の出願

(1) プロテインエンジニアリング

 プロテインエンジニアリング関係の特許出願状況を図1.3.2-1に示す。米国のウルマーによってプロテインエンジニアリングの概念が提唱されたのが1983年であるが、同じような考え方の特許がそれ以前から出願されていたものと思われる。1990年位から出願件数が半分以下に落ち込み93年頃から急速に回復している理由としては、この時期に第一世代の技術開発が終わり、第二世代のブレークスルー技術の開発が起こっているためと思われる。

図1.3.2-1プロテインエンジニアリング関係の出願件数推移

(2) 生産物の分離・精製

 図1.3.2-2に遺伝子工学による生産物の分離精製関連の特許出願状況を示す。タンパク質の分離・精製は基本的にカラムクロマトグラフィーによっており、各種分離剤の出願が多数を占めている。1990年頃から急激に出願件数が減少し、その後急速に増えているのは、クロマトグラフィーの技術開発が一段落し、中空糸膜などの新規な材料を使った、しかも大量に処理できる分離・精製法が開発されてきたためと思われる。

図1.3.2-2 遺伝子工学による生産物の分離・精製関連の出願件数推移

(3) タンパク質の活性化・安定化

 図1.3.2-3に遺伝子工学に関連したタンパク質の活性化・安定化に関わる特許の出願状況を示す。タンパク質の活性化、安定化にはプロテインエンジニアリングの技術開発の進歩が深く係わっている。1987年頃から急速に増加しているのは、安定化の理論的な解明が進み、タンパク質の設計が可能になってきたこと、併せて温泉地などに生息する耐熱性微生物からの情報が解明されたことによるものである。

図1.3.2-3 遺伝子工学関係タンパク質の活性化・安定化関連の出願件数推移

(4) 遺伝子工学関連酵素

 遺伝子組換え技術に用いられる制限酵素、逆転写酵素、DNAリガーゼ、RNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼなどの酵素が遺伝子工学関連酵素に含まれている。これらの酵素は遺伝子工学技術の発展のためには不可欠で、図1.3.2-4に示すように、近年その出願件数はさらに増大している。

図1.3.2-4 遺伝子工学関連酵素の出願件数推移

(5) 分析・診断方法

 図1.3.2-5に遺伝子工学分野の分析・診断方法および装置関連の出願状況を示す。分析・診断方法ではモノクローナル抗体を用いる特許が半数近くを占め、1/3がDNAプローブを用いる特許である。近年DNAプローブ法の出願が着実に増加していることから、今後DNAプローブを使った新しい診断法が普及してくることが期待できる。

図1.3.2-5 遺伝子工学関係分析・診断方法および装置関連の出願件数推移および構成

(6) 遺伝子治療法

 図1.3.2-6に示すように、遺伝子治療法の出願件数は近年急速に増加してきている。詳細は第2章 権利化されている特許2.6節の項目に記述するが、海外からの出願が多いのがこの分野の特徴である。倫理問題は存在するものの、将来的には癌やエイズなど有効な治療法のない疾患に対し画期的な治療法になる可能性を秘めている。

図1.3.2-6 遺伝子治療法の出願件数推移

(7) DNAの合成・配列決定法

 図1.3.2-7にDNAの合成・配列決定法に関する特許出願状況を示す。技術開発の歴史をみると出願件数の推移が理解できる。当初のDNA合成法はホスホアミダイト法として知られる化学合成法であり、塩基配列の解析は1975年のDNAポリメラーゼを用いたサンガー法、77年の化学分解法とも言われるマクサム・ギルバート法である。これらの方法にあっては、標識としてラジオアイソトープを用いていたが、蛍光色素で標識する方法が開発されるようになると、近年急速な出願件数の増加がみられるようになった。さらに1985年のPCR法の登場、DNAチップ法などが出現し、この分野の出願は大幅に増えてきている。

図1.3.2-7 DNAの合成・配列決定法の出願件数推移