2.1.2 権利化されている特許

 遺伝子工学技術に関して既に約3,700件が特許として登録されている。遺伝子工学を構成する各技術別の権利化された特許件数を図2.1.2-1に示す。組換えDNA技術に関するものが約70%と最も多く、次いで細胞融合技術に関するものが16%である。

 組換えDNA技術の内訳をみると、共通技術に関わるものが1,986件(78%)と最も多く、DNAフラグメント、宿主・ベクターに関わるものがこれに次いでいる。

図2.1.2-1 遺伝子工学関係各技術別の権利化された特許件数

 図2.1.2-2に示すように主要応用に関するものではモノクローナル抗体が23%と一番多く、次いで酵素、インターフェロン、インターロイキンの順になっている。

 DNAの合成・配列決定法、遺伝子工学関連酵素、遺伝子治療などの遺伝子工学関連技術に関する特許も注目される。特に遺伝子治療に関しては歴史の新しいこともあり権利化された特許は少ないが、出願は近年急激に増えてきている。

 これら遺伝子工学の主要な応用分野について、その権利化されたものの件数を図2.1.2-2に示す。

図2.1.2-2 遺伝子工学主要分野の権利化特許件数

 モノクローナル抗体に関する特許が応用分野の中では多数を占めるが、それはモノクローナル抗体がタンパク質の品質管理を可能にし、組換えDNA技術と並んでバイオテクノロジー分野における基幹技術であるためである。

 近年世界的にヒトを含む種々の生物のゲノム解析が進んでいるが、こうした動きに関連して、米国インサイト社が1998年11月に米国でcDNA断片の特許いわゆるEST特許(ESTs;Expressed Sequence Tags)を取得したことを表明している(USP5,817,479:ヒト・キナーゼ・ホモローグス:出願1996.08)。これまでEST特許に関しては、その遺伝子の持つ本来の機能に関連した有用性が示されていないことから、特許としては認められないということになっていたが、今回ESTの有用性についてさまざまな実施例を挙げて主張したことが認められたことになる。現時点では、米国でこの1件のみが特許として認められているが、多くの企業・研究機関がESTライブラリーを保有しており、今後同様なEST特許の出願が増加するものと思われる。

 本章では、これら権利化された特許の中から、生産物質として酵素インターフェロン、モノクローナル抗体、遺伝子工学技術として、ゲノム解析研究には欠かせないDNAの配列決定のための方法、さらに最近注目されている技術として遺伝子治療を取り上げ、権利化されている特許を中心にその権利内容を解析する。

 また本章では発明の内容が対象となる技術分野に沿ったもので、かつ基本的なもの、産業的・技術的に影響力の大きいものを取り上げ、代表的特許とした。

 これらについて

  (1) 発明の目的・効果と種類・利用技術のマトリックス

  (2) 技術発展図

  (3) 特許リスト

の3種類の図表による整理を行っている。

 なお(1)の縦軸・横軸については、対象分野の違いによりそれぞれの分野に適切な項目を設定した。また技術発展図の冒頭には図中の各技術に関係する、現在の技術を支える特許を示している。

 技術上の問題点、ニーズを把握した上でマトリックス上のどの位置にあるかをみて、その周辺の特許および技術発展図上で前後の位置付けを知り、さらに特許リストによってその概要をつかんで参考にして頂きたい。

 なお、本章で掲載した特許は、上記各技術分野について技術的に特徴のあるものを抽出したものであり、権利関係を分析したものではない。権利調査を行う場合は別途調査が必要である。