2.4 モノクローナル抗体

2.4.1 技術開発の内容

 動物に異物(抗原)を注射すると、異物に対して結合性を持つ抗体が血液中に大量に生成される。通常抗原には複数の抗原決定基が存在する。従って、生体に進入する抗原が単一であっても抗体は1種類だけでなく、同一抗原に対して結合性のある複数の分子種からなる抗体が生産されることになる。ある抗原に対する複数の分子種の抗体の集団をポリクローナル抗体という。これに対して、1種類の分子種だけからなる抗体の集団をモノクローナル抗体という。

 1975年にG.ケーラーおよびC.ミルシュタイン(イギリス)は細胞融合法によるモノクローナル抗体の生産技術を確立した。その概要を図2.4.1-1に示す。特定の抗原により免疫したマウスの脾臓から抗体を産生する細胞を取り出し、別に用意したマウスの骨髄腫細胞(ミエローマ)と融合させる。骨髄腫細胞は、抗体を産生する形質細胞の腫瘍化したもので、継代増殖能を持つ。得られた融合細胞(ハイブリドーマ)は、特定の抗体(モノクローナル抗体)産生能と継代増殖能を併せ持つようになる。この融合細胞を試験管内で培養あるいはマウスの腹腔内に移植することで、目的の抗体だけを生産することが可能となる。

 モノクローナル抗体作成技術はタンパク質の品質管理を可能にし、遺伝子工学技術と並んでバイオテクノロジー分野における基幹技術であり、産業分野でも臨床検査薬として広く利用されている。

 疾病の治療用としてのヒト・モノクローナル抗体生産についても技術開発が進められ、

 (1) ヒトの抗体産生細胞を用いる細胞融合法
 (2) 遺伝子工学を利用してファージの表面に抗体の抗原結合部位を発現させるファージディスプレイ法
 (3) ヒト抗体遺伝子導入トランスジェニックマウスの利用

などが開発されている。

 このほかに、遺伝子工学的にマウス・モノクローナル抗体とヒト抗体とのキメラ分子を作ったり、マウス抗体のごく一部だけをヒト抗体に移植することによって、ヒト型化モノクローナル抗体を作る技術も開発されている。

図2.4.1-1 モノクローナル抗体の生産