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2.1.3 免疫工学の代表的特許
免疫工学に関連する技術の応用分野は、医薬品、診断に大別される。医薬品の中では、抗体医薬とワクチンがあるが、いずれの場合も感染症に対するものが多く、その中でもウイルス性肝炎とエイズに関する技術開発が最も活発に行われている。診断に関しても、同様にウイルス性肝炎およびエイズに関する特許出願が多く、ウイルス性肝炎およびエイズに関しては、医薬品開発、診断技術開発という免疫工学の主要技術群を駆使した開発が行われている。
そこで第2章では、1977年〜99年7月までに登録された特許と1994年〜99年7月までに公開された特許の中から、ウイルス性肝炎対応技術とエイズ対応技術および免疫診断技術を取り上げ、基本的な発明、産業的・技術的に影響力の大きい発明を代表的特許として131件取り上げ、これらを解析することにする。
これらの代表的特許について、以下の4つにまとめた。
2.2 代表的特許の技術マトリックス
2.3 代表的特許の技術発展図
2.4 代表的特許の課題解決図
2.5 代表的特許リスト
(1) ウイルス性肝炎対応技術
ヒトの肝細胞内で増殖し、肝炎を起こすウイルスを肝炎ウイルスと呼び、現在A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルスを初めとして、E型肝炎ウイルス、G型肝炎ウイルスの6種類の肝炎ウイルスが確認されている。このほかにもF型肝炎ウイルスなどのいくつかのウイルスが存在すると考えられており、今後順次確認されていくと考えられる。
A型肝炎ウイルスは、流行性肝炎を引き起こす肝炎ウイルスであり、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスは血清肝炎を起こす肝炎である。
流行性肝炎は、感染者の糞便中に排出されたウイルスにより汚染された水や食物を接種することによって新たな感染が起こる。通常は一過性の急性肝炎で終わり、多くは自然に治癒する。しかし、時には激症化して死亡者が出ることもある。日本国内でも年間10万人以上の患者が発生している。
血清肝炎は、感染者の血液などを通して新たな感染が生じるものであり、母子感染や輸血による感染が問題となっている。B型肝炎は、成人が感染した場合には、通常一過性の急性肝炎で終わる。しかし、小児が感染した場合には、持続感染を生じてキャリアとなり、長期間の潜伏期間を経て、慢性肝炎から肝硬変、さらには肝癌へと進行する場合もある。C型肝炎は、小児だけでなく成人もキャリア化することが多く、B型肝炎よりも肝癌へ進行することが多い。ウイルス性肝炎に関して、1977年〜99年7月に登録された特許と1994年〜99年7月に公開された特許の中から71件を代表的特許として取り上げて解析する。
エイズウイルスは1984年に、モンタニエ(フランス)とギャロ(米国)により発見されたレトロウイルスであり、その診断方法と治療方法の開発が世界中で活発に行われている。エイズに関して1977年〜99年7月に登録された特許と1994年〜99年7月に公開された特許の中から28件を代表的特許として選び、解析する。
免疫現象を利用した病気の診断技術については、1960年のバーソン(米国)とヤロー(米国)によるラジオイムノアッセイ法の開発により、実用化への道が開かれた。これは、抗体を放射性標識しておき、免疫反応で抗原と結合した抗体の量を放射線の強さで測定するものである。非常に高感度であり、現在も特に高い感度が要求される特殊な用途については、ラジオイムノアッセイが用いられている。しかし、放射線を扱うため、測定者に危険が伴い、また決められた取り扱い場所でしか測定できないという制約があった。
1971年に、エングバル(米国)とパールマン(米国)により酵素免疫測定法が開発され、放射線を用いない安全な測定方法が可能となった。しかし、当初はラジオイムノアッセイに比べて感度が低かった。その後色素の改良などが進み、次第に感度が上昇し、現在ではほとんどの免疫測定がラジオイムノアッセイから酵素免疫測定法へと置き換わりつつある。
さらに1980年頃に化学発光法が開発された。化学発光法は感度が比較的高く、免疫診断の適用範囲を広げるために役立っている。ホタルやウミホタルのルシフェラーゼなどを利用する方法も開発されている。
免疫診断においては、患者の血液や組織などの生体試料から抗体または抗原を取り出し、免疫反応をさせ、未反応の抗体あるいは抗原を取り除くといった一連の煩雑な操作が必要であり、測定は、特殊な訓練を受けた技術者に限定されていた。そこで、これらの操作を自動化し多数の検査を同時に行う装置が開発され、検査センターによる集約的検査が可能となっている。一方、家庭や診療現場で簡便に診断を行うことを可能にする診断キットや診断機器の開発が、米国を中心に進められている。これは、半導体製造において開発された微細加工技術などを応用して、コイン大のシリコン基板上に測定装置を実現しようとするもので、ラブ・イン・チップとも呼ばれるものである。
また、抗体を利用して癌などの部位を診断する抗体画像診断法も開発されている。1991年にはサイトジェン社(米国)が、大腸癌の画像診断薬を初めて商品化している。
しかし、近年PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応法)が実用化され、理論的には感度の点で免疫診断法よりも優れているために、現在、競合関係になっている。しかし、免疫反応は非常に高い識別能力を持っており、この特性を活かし、PCR法との棲み分けと協調が進むと考えられる。
免疫診断技術について、1977年〜99年7月に登録された特許と1994年〜99年7月に公開された特許の中から代表的特許を32件選抜し、解析する。
なお、本章で掲載した特許は、上記各技術分野について技術的に特徴のあるものを抽出したものであり、権利関係を分析したものではない。従って、権利調査を行う場合は、別途調査が必要である。
また、係属中の特許については、その後権利化されるか否かを示すものではない。
