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第1章 特許からみた技術開発の動向
ゲノム科学を中心に、バイオテクノロジーは急速な発展を遂げようとしている。
今日直面している人類の問題の多くは、生命に関わる問題である。健康や医療、食料、環境、エネルギー等の問題は、産業革命以降の目覚ましい技術開発にも関わらず、いまだ解決できず、むしろ年々深刻になってきている。しかし、生命の基本設計図であるゲノムの構造とその機能を明らかにできれば、これら生命に関する課題について革命的な解決が見出せるはずである。このような期待を担って、ゲノム解析は急速に進められている。
ゲノム科学は、図1-1に示すように、ゲノムの実体であるDNAやRNAの塩基配列を解読する
ゲノム構造解析と、ゲノム上の塩基配列がどのようにして遺伝現象、すなわち私たちの身体を形作り生命活動を営ませるしくみを明らかにするゲノム機能解析に分けられる。しかし、ゲノムを理解することにより、より深い理解は可能になるが、得られたゲノムの知識(ゲノム情報)を利用し活用する技術が育たないと、われわれの生活を豊かにする技術にはならない。ゲノムの基本構造は、細菌・ウイルスからヒトまで、すべての生物に共通であるが、その一方で、ゲノムの詳細な構造は各個体ごとに異なっている。そこでゲノム情報を利用するには、それ自体膨大で、しかも個々に異なるゲノム構造を調べ、構造の違い(遺伝的変異や多型)が結果として個体にどのような違いとして現れるか(遺伝子表現型)を明らかにし、それを制御する技術が必要である。このような技術は、ゲノム科学を推進する技術と共通点が多い。ゲノム科学と、ゲノム情報を利用するための技術をゲノム技術と呼ぶことにする。一方、ポリヌクレオチドやペプチド合成から発展した、
コンビナトリアルケミストリー(コンビケム)という化学合成技術が注目を集めている。遺伝的変異の考え方を取り込むことで、同時に多数の化合物を作り出す方法として「大化け」したこの技術は、ゲノム解析の重要技術としてDNAチップなどに利用されるだけでなく、膨大なゲノム情報に対応できる有機合成技術として、特に創薬の分野ではゲノム技術と不可分の技術と位置付けられている。ゲノム特許というと、ゲノム上の遺伝子を何個申請しているかが話題になることが多い。しかし、ゲノム情報を活用し21世紀の技術開発を行う基幹技術は、上述のようなゲノム技術である。ゲノム技術への遅れを叫ばれる今日ではあるが、この技術に関する歴史はまだ浅く、ゲノム技術に関する特許は決して多くはない。
図1-1 ゲノム科学の構成

