第2章 技術開発の課題と展開

 

 第1章では、遺伝子工学の基礎技術、ゲノム構造解析技術、ゲノム機能解析技術に分けて動向を解析した。しかし、遺伝子工学の基礎技術は、その技術動向が今後のゲノム技術を考えるヒントになるものではあるが、それ自体はゲノム技術ではないので、本章からは割愛する。

 あらためてゲノム工学関連の特許を見直してみると、出願人は欧米に集中しているものの、その数は少なく、しかもこの数年に出されたもので、権利化されるか否かも定かではない状況にあることが分かる。あるいは、アイデアは斬新であるが、出願された特許の技術自体は、既存技術の組合せだったり、すでに知られていた方法が機器の精度向上により実用レベルを実現できた、というものが多い。

 ゲノム研究に言われている欧米との格差は、技術力の差というより、量の差であり速度の差である。ゲノムという資源の囲い込みでは速度が重要であるが、ゲノム情報は公開が原則である。ゲノム情報を用いて何ができるか、ポストゲノム計画では技術力が争われることになろう。

 そこで、ゲノム技術の現状について、権利化された特許がまだほとんどない状況であるが、出願特許を含めて個別に解析することにより、それぞれの技術開発の実態を見ることにする。図2-1に、ゲノム技術およびコンビナトリアルケミストリーの個別技術の関係を示す。ゲノム機能解析技術については、まだ技術開発が進んでいない。そこで、現在機能解析の中心となることが確実視されているDNAチップ技術(遺伝子発現量および遺伝的変異・多型の解析技術)と遺伝子表現型の解析技術(遺伝子改変・クローン動物技術)を中心に解析を行った。なお、機能解析はタンパク質のレベル(プロテオームという)でも行われようとしている。

図2-1 ゲノム技術およびコンビナトリアルケミストリーの個別技術の関係