2.4 光学活性化合物

2.4.1 技術開発の内容

 光学活性化合物は当初L-アミノ酸が原体のまま最終製品として直接食品や飼料に利用されてきたが、近年、医薬、農薬あるいは強誘電性液晶ディスプレイ用(LCD)としての有機電子材料分野への需要が拡大するに従い、原体製造の合成中間体材料として位置付けられるようになっている。それにつれて、低分子の単純な化学構造の化合物から比較的高分子の複雑な構造の化合物が求められるようになった。

 ラセミ体の光学分割で得られるL型光学活性化合物全盛の時代から医薬農薬分野で有用なD型活性体についても技術開発が行われてきた。農薬分野ではアルコール類、カルボン酸類に、また有機電子材料分野ではアルコール類とエステル類に特化している。

 これらの光学活性体はそのほとんどが微生物あるいは酵素によってすなわち生化学的に製造されている。図2.4.1-1に光学活性化合物が酵素によって製造される様子を関連図として示した。光学活性化合物としてはエステル類、その構成成分であるアルコール類、カルボン酸類やアミノ酸関連化合物が主体となっており、多種多様な酵素によって生産されることが分かる。これらの酵素が反応に使用される形態としては、図2.4.1-2に示したように微生物培養物、菌体または単離された酵素やそれらの加工処理物によって光学活性化合物が生産される。

 表2.4.1-1からも分かるように、アルコール類、カルボン酸、アミノ酸類の生産では単離された酵素反応による場合の他、微生物自体による資化や分解といった不斉反応による場合も多い。酵素反応ではエステラーゼ、リパーゼが最も多く、次いでアシラーゼ、アミダーゼ、ヒダントイナーゼ、ニトリラーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、エポキシダーゼなどが多く使われている。これらの酵素は多くの場合微生物由来のものが多く細菌、酵母、カビ類が主要な酵素資源となっている。エステラーゼやリパーゼは動物の肝臓、すい臓からも抽出され、利用されているケースがある。

 開発の初期段階では、微生物(野性株)/酵素そのものの利用が多く、技術開発が進むにつれて微生物の変異株、細胞融合株や遺伝子組換え体(形質転換株)あるいは遺伝子工学技術によって得られた酵素が使用されるようになり、さらには生産コスト低減のため固定化微生物や固定化酵素へと一連の技術開発が進展する傾向が見られる。田辺製薬の冠血管拡張剤などの医薬品製造中間体として用いられるグリシッド酸エステル類とベンゾチアゼピン類化合物の製造法特許(特公平6-78、特許2788385、特開平9-9991、特開平9-299099)は技術開発の流れを示す好例である。

 

図2.4.1-1 微生物及び酵素反応による光学活性化合物の生産法

 

図2.4.1-2 微生物/酵素による光学活性化合物生産の反応ステージ

 

表2.4.1-1 光学活性化合物の特許で使用されている生産用酵素資源一覧表(1/3)

(B):細菌、(Y):酵母、(F):カビ、(S):放線菌、(A):藻類

 

表2.4.1-1 光学活性化合物の特許で使用されている生産用酵素資源一覧表(2/3)

 

表2.4.1-1 光学活性化合物の特許で使用されている生産用酵素資源一覧表(3/3)