1.2.2 力学的・形態学的高性能物性加工技術

(1)形態安定性繊維加工技術

 形態安定性関連の出願は8,273件であり、過去20年間の出願の流れを年次的に見ると、図1.2.2-1に示すように、1984年ごろと1990年ごろの2つのピークが見られる。前者のピークは、主としてマーセル化や樹脂加工によるセルロース系繊維の寸法安定性、防縮、防シワ性のレベルがアップした時期であり、後者は、さらに形態固定、形状記憶性が追加され、1993年ごろからの形態安定・形状記憶繊維商品のドレスシャツなど(例えば、特開昭63-105179、特開平4-163375など)の大ヒットにつながったころと一致する。

 

図1.2.2-1 形態安定性繊維加工技術の出願件数推移

 繊維素材のうち、合成繊維特にポリエステル繊維は、優れた形態安定性を有している。

 一方、綿、羊毛など天然繊維素材は、その繊維構造から縮みやすい、シワになりやすい性質を有しており、ポリエステル繊維の出現後、市場で大きな打撃を受けたが、ポリエステル繊維を目標にこの特性の改善に挑戦し続けている。

 形態安定性関連の出願特許は、図1.2.2-2に示すように、天然繊維を対象としたものの比率が20年平均で27%と機能性全体の平均値23%を上回り、94年以降は32%前後と比率が大きく増加している。これはバブル崩壊後の景気の低迷で合成繊維関係の出願の大きな落込みに対し、天然繊維関係は後述の形態安定繊維商品のヒットなどで出願の落込みが小さかったことが背景となっている。

 

図1.2.2-2 繊維素材別形態安定性加工技術の出願件数推移

 機能性付与は図1.2.2-3に示すように、布帛・仕上げ工程での付与が全体の約60%強と非常に大きい。具体的には、布帛・仕上げ工程が天然繊維への主たる機能付与工程になっている(特開昭59-125964、特開昭62-85078など)。

 

図1.2.2-3 形態安定性繊維加工技術の機能付与工程別構成

(1977〜99年8月までに公開の出願)

 

 次に5年間ごとの出願状況を調べた。

    A   1977〜81年の5年間

    B   出願件数が最大のピークを示す1987〜91年の5年間

    C   1993〜97年の最新の5年間

 素材別の出願件数の推移を見ると表1.2.2-1のようになる。最新の5年間では天然繊維の出願件数が合成繊維のそれを上回る傾向が見られる。しかも、ピーク時の5年間と比較してセルロース繊維関連の出願のみが大幅に増加し、その他の素材は全て減少しているのが特徴的である。

 

表1.2.2-1素材別形態安定性繊維加工技術の出願件数

 

  繊 維 の 種 類 77〜97
合計
A
77〜81
B
87〜91
C
93〜97



鉱物繊維以外の天然繊維 702 79 221 193
セルロース系 456 59 114 152
セルロースのエステルまたはエーテル 326 39 79 114
動物性繊維 248 20 111 43
ケラチン繊維または絹 257 20 119 52
天 然 繊 維 計 1,989 217 644 554



鉱物繊維以外の合成繊維 703 92 267 140
炭素-炭素不飽和結合のみからなる合成繊維 147 9 68 28
ポリアルケン 25 1 15 3
ハロゲン化モノオレフィン 37 1 23 8
アクリロニトリル 61 5 26 10
炭素-炭素不飽和結合のみ以外からなる合成繊維 524 76 192 113
ポリエステル 402 60 147 89
ポリアミド 175 16 77 41
芳香族ポリアミド 34 1 15 6
ポリウレタン 18 1 5 6
合 成 繊 維 計 2,126 262 835 444

 

 次に形態安定性繊維加工技術の傾向として、特徴的なものを表1.2.2-2に示す。

 

表1.2.2-2形態安定性繊維加工技術の特性付与技術出願件数

 

  特 性 付 与 因 子 77〜97
合計
A
77〜81
B
87〜91
C
93〜97


プラズマ処理 93 4 22 7
電子線処理 20 2 3 6
物理的処理その他 27 1 7 8
無機 無機酸化物による処理 63 4 21 13




炭化水素によるもの 544 54 196 126
エポキシ基を含む化合物またはその前駆体 55 1 20 18
モノアルデヒド(ホルムアルデヒドなど) 47 1 5 38
エーテル 86 4 30 20
カルボン酸 60 5 19 16
カルボン酸エステル 109 9 33 26
硫黄を含む化合物 81 9 25 24
窒素を含む化合物 243 29 107 38
アミン 71 8 21 14
N2を含む複素環式化合物 96 12 32 20
窒素、酸素またはいおうを含むもの 70 13 22 14
アミド 158 17 51 28
尿素、チオ尿素またはその誘導体 83 13 20 17
窒素とりんを含むもの 39 0 25 4
少なくとも1つの炭素-金属(ほう素、けい素、セレン、またはテルル)結合をもつ化合物 103 13 30 21
少なくとも1つの炭素-けい素結合をもつもの 94 13 27 18





高分子化合物による処理 169 13 73 28
タンパク質またはその誘導体 30 0 9 16
アミノアルデヒド樹脂 100 38 16 4
変性アミノアルデヒド樹脂 21 11 0 0
ポリエーテル 47 14 13 7
ポリ尿素、ポリウレタン 96 9 32 28
主鎖にけい素を含有するもの 151 14 61 30
天然または合成ゴム 84 5 40 16
機械的処理との組み合わせによるもの 47 3 9 21
プロ
セ ス
処理のプロセスに特徴があるもの 221 12 139 6
処理剤がマイクロカプセル中に組込まれてるもの 48 1 33 9

人造フィラメント変性特性のための他の添加剤 71 0 38 22
ポリエステルからなる高強度繊維(産業用、ミシン系) 99 7 42 21

 

 さらに、その中で顕著な動きを現すものをグラフで示すと図1.2.2-4〜図1.2.2-6のようになる。

 図1.2.2-4に示すように、まず物理的加工技術では87〜91年にプラズマ処理が多かったが、最近は電子線照射などに関する出願が増加傾向にある。

 

図1.2.2-4形態安定性繊維の物理的加工技術の出願件数推移

 化学的加工技術では有機化合物によるものが、古くから各種検討され出願されてきている。図1.2.2-5に示すように、低分子有機化合物では残留ホルマリンの問題から使用が控えられていたアルデヒドを使った出願が最近急増している。これはガス状で使うため、残留問題が無くなったことによるものである。ホルムアルデヒドガスと触媒ガスを反応させるVP(Vapor Phase)加工関連で形態安定繊維商品のブームにつながっている。そのほかは全て減少傾向にあるが、エポキシ基を含む化合物、カルボン酸、硫黄を含む化合物などが比較的減少傾向が小さい。

 

図1.2.2-5形態安定性繊維の化学的加工技術の出願件数推移

 

 一方、図1.2.2-6に示すように、高分子化合物も減少傾向が強く、アミノアルデヒド樹脂、ポリエーテルによるものがほとんど見られなくなってきているが、最近蛋白質またはその誘導体によるものや機械的処理(プラズマ処理、電子線照射も含む)との組合せによるものなどが、新しい技術として出願件数が増加傾向にある。

 

図1.2.2-6形態安定性繊維の高分子化合物による加工技術の出願件数推移

 また、用途では図1.2.2-7に示すように、生活用品関係が3,922件と全体の約2分の1を占めており、中でも衣類に多く利用されている。社会的ニーズ(生活のしやすさ、快適さの追求)から考えると、今後この比率はさらに大きくなるものと考えられる。次に多いのが、例えば工業用ベルトやフィルターなど(特開昭60-231044、特開昭61-103512など)の工業用資材分野である。

 

図1.2.2-7 形態安定性繊維加工技術の用途別出願件数

(1977〜99年8月までに公開の出願)

 

 出願件数を出願人別に見ると、図1.2.2-8に示すようになっており、上位20社で全体の約2分の1を占めている。また、図1.2.2-9に示すように、外国出願人の比率は、約7%で、そのうち米国が3.2%を、次いでドイツが1.3%を占めている。

 

図1.2.2-8 形態安定性繊維加工技術の出願人別出願件数

(1977〜99年8月までに公開の出願)

 

図1.2.2-9 形態安定性繊維加工技術の出願人の国籍別出願構成

(1977〜99年8月までに公開の出願)