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(5)生体適合性繊維加工技術
生体適合性の定義は難しく、さまざまに用いられている。本書では、生体適合性とは“生体に優しく、影響を与えない。また生体からも影響を受けずに良くなじむ性質”とした。血液成分と直接接触する医療デバイスは、生命維持に大きく影響を及ぼし、最近、特に使用範囲が広がってきた。
図1.2.3-25に示すように、1980年代になって特許出願件数が増えてきているが、既に70年代には研究がなされてきていたが、製品の段階までいたっていなかった。80年代になって最も飛躍的に血液適合性材料として使用されるようになったのが、いわゆる循環器系では、人工血管、血液回路、人工心臓、代謝系では各種中空糸膜を使用した人工腎臓が最も代表的なもので、血液凝固に対する中空糸膜の素材、構造、膜の構成、表面処理など多方面からの研究も盛んである(特開昭61-18404、特開平6-228887など)。
一方生体の一部として埋設される部材、一時的あるいは永久に埋設されるものについての繊維素材、構成、構造等についての特許(特開平4-119113、特開平6-296673など)の出願も見られる。特に中空糸膜についてはいろいろな角度からの特許出願があり、今後の展開方向が注目される。

機能性を付与する工程を工程別に見ると、図1.2.3-26に示すように、紡糸工程および布帛工程での処理が二大工程で折半している。生体適合性繊維加工技術としては、繊維に関して医学的に適合性を考え、しかも繊維製品と生物(生体)の関係としての見方が必要で、ある部分では繊維の生分解性と重なる部分がある。生体適合性繊維加工としては、中空糸膜の紡糸方法に関わり(特開平4-65505など)、さらに層の構成、構造などが主である。布帛工程での処理としては、むしろ生分解・微生物分解性繊維加工に関わる不織布の製法(特開平5-93318、特開平8-246316など)についての特許が多い。
図1.2.3-26 生体適合性繊維加工技術の機能性付与工程別構成

(1977〜99年8月までに公開の出願)
図1.2.3-27に示すように、生体適合性繊維加工関連技術の開発については、天然の蛋白質繊維を利用した外科用の縫合糸が先行したものの、70年代にいくつかの特許が見られる程度である。80年代後半から90年代になって、分離半透膜用の中空糸膜が開発され、中空糸その物に関しての研究開発が活発化されてきたことが分かる。その中でも中空糸膜の構造・構成に関わる技術開発が活発化されている。
図1.2.3-27 生体適合性繊維加工技術内容の出願件数推移

図1.2.3-28に示すように、より生体適合性の優れた、より透析効率の高い半透膜の開発要求が高まり、中空糸膜素材面からの開発も活発化している。生体適合性として最適と思われるセルロース系の中空糸膜は依然として継続しているものの、本来、生体適合性繊維としてはあまり生体適合性の良くなかった合成繊維膜もより活発に開発が進められている。中空糸膜内部に生体適合性処理を施したり、紡糸時に微細孔を設けるような特殊紡糸方法も開発されている、それらの技術を併用することによって近年では、透析効率や特定の成分の濾過に適用される中空糸膜の開発をも可能になってきている。
図1.2.3-28 生体適合性繊維加工技術の中空糸膜素原料出願件数推移

図1.2.3-29は中空糸膜製造に関わる製造技術の出願状況である。素原料の開発とともに重要な技術は、紡糸技術であり紡糸口金により大きく左右される。一方、紡糸された中空糸については、中空糸膜の巻取り方法、装置などがあり、さらには、人工腎臓や人工肺などに組上げられたものの中空糸内部の洗浄方法、洗浄剤などに関する研究開発も活発化している。特殊形状の中空糸膜のための紡糸口金、多層の中空糸膜技術のための紡糸口金、中空糸膜の内部洗浄方法および洗浄液、洗浄剤などの研究開発が展開されている。
図1.2.3-29 生体適合性繊維加工技術の中空糸膜製造出願件数推移

図1.2.3-30に示すように用途に関しては、工業用産業資材として分類されているものも多く、生体適合性繊維としての、中空糸膜なども人工腎臓用透析膜として使用されるのみならず、精密濾過用の濾過膜、あるいは空気清浄用の膜フィルターなどにも用途展開されている。さらに工業的には、酪農分野、食品加工分野、医薬品分野、化学工業分野、原子力分野などですでに使用されている。使用されるエレメント形式としては、管状型および平膜が多い。医療用にはさらに高度な選択濾過性膜が展開されている。

(1977〜99年8月までに公開の出願)
図1.2.3-31に、出願人別特許出願状況を示した。繊維製品の生体適合性については、人体との生物学的性質・機能および医学衛生機能の両面から検討し、特に人工臓器関連の中空糸膜に関する製法、製造装置などの技術に関しての出願動向を示した。
図1.2.3-31 生体適合性繊維加工技術の出願人別出願件数

(1977〜99年8月までに公開の出願)
図1.2.3-32に、国内に出願されている特許の内、外国から出願された特許と国内出願人による特許の出願状況を見たものを示す。約92%が国内各社からの出願であり、6%が米国、残りが欧州、その他各国となっている。
図1.2.3-32 生体適合性繊維加工技術の出願人の国籍別出願構成

(1977〜99年8月までに公開の出願)
