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1.2.4 親水・親油性加工技術
最近の生活様式の変化につれ、家庭内での衣類の変化、および社会的風潮であるレジャー産業の発展、さらには衛生、健康指向につれて繊維素材、布帛、製品への色々な要求が高まりつつある。基本的な衣料との感触に直結するこれらの機能性に対する開発研究は20年以上も前からされてきている。一般に合成繊維は疎水性であり、吸水性に乏しく、人体に直接接触する衣料としては好ましくないといわれている。吸水・吸湿性では、人体との関わりが最も強く、人体から発生する汗を考えると、人体表面から排泄される水分としての汗と、水分として感知できない水蒸気としての汗の2種類の状態の水分がある。このいずれを対象とするかによって繊維の開発方向も異なり、液体状態を吸収するためには、吸水性繊維であり、気体状態を吸収するためには吸湿性繊維である。当初、吸水性繊維の開発が先行され、技術的に難しいとされてきた吸湿性繊維の開発がそれに続くことになった。
図1.2.4-1に示すように、吸水・吸湿・透湿性に関する特許・実用新案は7,070件で、現在も、年間約350〜400件と、出願件数の多い機能性繊維加工分野である。
図1.2.4-1 吸水・吸湿・透湿性繊維加工技術の出願件数推移

図1.2.4-2に工程別の特許出願状況を示す。吸水・吸湿・透湿性に関する加工方法としては、繊維その物の改質で繊維の内部改質と繊維の表面改質、繊維あるいは布帛状態での改質の3つの方法がある。加工工程からみると、ポリマー、紡糸工程での処理が33%、糸綿、布帛、仕上げで65%が処理されている。吸水・吸湿性に関しては糸、紡糸工程と、布帛工程での処理が圧倒的で、布帛、仕上げ工程での出願(例えば紡糸工程では、特開昭52-70117、特開平4-245975、特開平7-278960、布帛、仕上工程では、特開昭53-147862、特開昭63-35887、特開平5-209316、特開平9-256224など)がある。
ポリマーには親水化成分を共重合したり、ブレンドを行い、紡糸段階では中空または異形断面にて毛細現象を発揮させ、さらに、布帛工程においては、繊維集合体構造を例えばアルカリ減量処理などにより微細化を計り機能性を上げている。
図1.2.4-2 吸水・吸湿・透湿性繊維加工技術の機能性付与工程別構成

(1977〜99年8月までに公開の出願)
次に5年間ずつ4つの区分を想定し、これらの区分での特許出願状況から開発技術動向を探ることにした。
A 1977〜81年までの5年間、開発当初で出願も少ない時期
B 1982〜86年までの5年間、活発に増加傾向の時期、
C 1987〜91年までの5年間、活発に増加傾向の時期
D 1992〜96年までの5年間、活発のまま安定している。
処理される繊維、より糸、織物として素材別に見ると表1.2.4-1のようになる。依然としてセルロース系、あるいはセルロースのエステルまたはエーテル化されたものも多いが、合成繊維、中でもポリエステル系繊維製品に対する処理が圧倒的に多くなっている。以前は天然繊維、特に綿の吸水・吸湿性が主であったが、加工技術の進歩で合成繊維への付加機能が高まってきている例である。
表1.2.4-1 吸水・吸湿・透湿性加工技術の素材別出願件数
| 繊維の種類 | 77〜97 合計 |
A 77〜81 計 |
B 82〜86 計 |
C 87〜91 計 |
D 92〜96 計 |
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| 天 然 繊 維 |
鉱物繊維以外の天然繊維 | 412 | 37 | 79 | 124 | 141 |
| セルロース系 | 320 | 24 | 61 | 88 | 125 | |
| セルロースのエステルまたはエーテル | 210 | 15 | 39 | 51 | 90 | |
| ケラチン繊維 | 116 | 8 | 17 | 51 | 37 | |
| 合 成 繊 維 |
鉱物繊維以外の合成繊維 | 1,197 | 195 | 275 | 309 | 364 |
| 炭素−炭素不飽和結合のみ以外からなる合成繊維 | 755 | 125 | 173 | 179 | 248 | |
| ポリエステル | 618 | 104 | 145 | 137 | 207 | |
| ポリアミド | 237 | 28 | 40 | 73 | 89 | |
| 炭素−炭素不飽和結合のみからなる合成繊維 | 319 | 38 | 54 | 102 | 107 | |
| ハロゲン化モノオレフィン | 80 | 9 | 10 | 30 | 30 | |
| アクリロニトリル | 70 | 14 | 11 | 17 | 20 | |
| ポリアルケン | 60 | 4 | 10 | 21 | 24 |
次に、吸水・吸湿・透湿性加工技術に関する特性付与技術展開について、各機能性付与因子をまとめて表1.2.4-2に示す。
吸水・吸湿性は繊維内部、繊維間、糸の間、などに介在する隙間、あるいは空間によって、その中を通る液体が、いわゆる毛細管現象によって流れていくことが基本である。したがって、これらの材料の中にいかにそれらの空間を作るかが鍵となる。
表1.2.4-2吸水・吸湿・透湿性加工技術の特性付与技術出願特許
| 機能性付与因子 | 77〜97 合計 |
A 77〜81 計 |
B 82〜86 計 |
C 87〜91 計 |
D 92〜96 計 |
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| 糸 の 構 成 |
芯が有るか、被覆された糸 | 301 | 40 | 66 | 114 | 58 |
| 糸またはより糸に特徴 | 231 | 30 | 65 | 68 | 52 | |
| 他のフィラメントで捲かれているより糸 | 114 | 10 | 24 | 31 | 36 | |
| 構造に特徴のある糸または撚り糸 | 48 | 3 | 13 | 13 | 17 | |
| 非 高 分 子 有 機 化 合 物 |
窒素を含む化合物 | 217 | 34 | 68 | 59 | 50 |
| カルボン酸エステル | 166 | 30 | 47 | 47 | 32 | |
| アミド | 154 | 15 | 42 | 37 | 54 | |
| 第4級窒素原子を含む化合物 | 94 | 14 | 24 | 28 | 21 | |
| 少なくとも一つの炭素−金属、炭素−珪素など | 94 | 15 | 20 | 38 | 18 | |
| エーテル | 85 | 17 | 30 | 18 | 16 | |
| アミン | 84 | 10 | 30 | 18 | 23 | |
| アルコール、金属アルコラート | 56 | 6 | 14 | 16 | 19 | |
| 高 分 子 化 合 物 |
繊維製品の高分子化合物による処理 | 215 | 22 | 66 | 64 | 49 |
| ポリ尿素、ウレタン処理 | 200 | 12 | 56 | 66 | 53 | |
| ポリエーテル | 160 | 47 | 53 | 34 | 15 | |
| 不飽和カルボン酸塩処理 | 94 | 8 | 14 | 39 | 23 | |
| タンパク質またはその誘導体 | 81 | 0 | 9 | 24 | 45 | |
| ポリアミド;ポリイミド | 63 | 6 | 23 | 21 | 11 | |
| 織 成 ・ 織 物 構 成 |
糸を構成する繊維の断面、表面形態特徴 | 118 | 19 | 25 | 26 | 41 |
| 糸を構成する繊維の組合せに特徴 | 102 | 5 | 12 | 22 | 51 | |
| 他の物質を付着または混入したもの | 72 | 1 | 9 | 19 | 35 | |
| 糸を構成する繊維の集束形態に特徴 | 62 | 6 | 7 | 24 | 18 | |
| パイル糸に特徴のあるもの | 54 | 7 | 6 | 20 | 18 | |
| 極細繊維 | 47 | 3 | 6 | 20 | 11 | |
| 単 一 フ ィ ラ メ ン ト |
フィラメント製造、変性特性のための添加剤 | 142 | 6 | 8 | 59 | 51 |
| 主成分不飽和二トリル | 99 | 20 | 14 | 32 | 24 | |
| 主成分不飽和カルボン酸/不飽和エステルの中空糸 | 38 | 1 | 6 | 15 | 15 | |
| ポリスルホン,スルフイド | 38 | 1 | 6 | 23 | 7 | |
| 変性アクリル繊維, | 33 | 2 | 7 | 11 | 12 | |
| 異形断面 | 60 | 6 | 17 | 18 | 13 | |
| 中空〔独立泡のものも含む〕 | 44 | 18 | 6 | 5 | 14 | |
| 微〔細〕孔 | 43 | 13 | 11 | 8 | 10 | |
| ミクロ〔微孔〕・マクロ〔中空,異形断面〕構造 | 34 | 4 | 7 | 12 | 6 | |
| 複 合 糸 |
ポリエステル-ポリエステル複合繊維 | 171 | 22 | 27 | 35 | 74 |
| ポリエステル-ポリアミド以外のもの | 98 | 2 | 5 | 33 | 40 | |
| ポリエステル-ポリアミド複合繊維 | 94 | 4 | 8 | 39 | 43 | |
| 複合・ポリオレフィンを少なくとも一成分 | 87 | 0 | 6 | 27 | 47 |
表1.2.4-2中の糸の構成では、糸に巻縮性を与えることによって、織物になっても内部に空間が保持でき、吸水・吸湿・透湿性を繊維製品に与えることができる。
図1.2.4-3に糸の構成動向を示す。糸の構成に特徴が一番はっきり示されているのは80年代後半で、被覆糸や糸またはより糸に特徴があるものが主流である。他のフィラメントが巻かれているようなより糸の使用が増加しており、吸水性向上のため糸そのものにバルキー性を付与している。
図1.2.4-3 吸水・吸湿・透湿性加工技術の特性付与関連(糸の構成)出願件数推移

繊維製品の表面処理、特に非高分子有機化合物によって吸水・吸湿・透湿性を付与するもの、および高分子有機化合物によって処理されて吸水・吸湿・透湿性を付与するものにつき図1.2.4-4にその推移を示した。調査期間中特に大きな変化はないが、90年代になってアミド系の処理剤の使用が多くなっている。全体的には80年代前半に多くの検討がなされたことを示している。
図1.2.4-4 吸水・吸湿・透湿性加工技術の特性付与関連(表面処理)出願件数推移

図1.2.4-5に織物の構成による傾向を示す。織物の基である繊維の状態が重要で、糸を構成する繊維の断面形状、および表面形状に関わるもの、さらにそれら糸を構成する繊維の組合わせによるものが増加の一途をたどり、技術開発展開されていることがうかがえる。また繊維に他の物質を付着、あるいは混入することによって繊維内部の吸水性の性能を向上させているものが増えている。その他、微細孔を設けるためのものもあり、あるいは直接的に吸水性を向上させるものなどがある。
図1.2.4-5 吸水・吸湿・透湿性加工技術の特性付与関連(織物の構成)出願件数推移

図1.2.4-6にこれら繊維を形成する方法、形態について示す。繊維そのものでは、モノフィラメントからマルチフィラメント(複合繊維)への傾向があり、特に複合繊維ではポリエステル-ポリエステル複合繊維、ポリエステル−ポリアミド複合繊維が大きく増加している。繊維形状としては、異形断面のものは80年代を通じて盛んであったが若干安定化の方向で、微細孔(微孔、凹凸)、マクロ孔(中空、異形断面、太細)を含めた空隙ある繊維が安定的な動きを示している。
図1.2.4-6 吸水・吸湿・透湿性加工技術の特性付与関連(フィラメント構成)出願件数推移

用途関連では、図1.2.4-7、および表1.2.4-3に示すように生活用品の衣類、特に衛生用品、使い捨て用品が最近特に多い。一方工業用品では、この特性を工業用途に利用した包装材料として、工業用シート材が多い。
図1.2.4-7 吸水・吸湿・透湿性繊維加工技術の用途別件数

(1977〜99年8月までに公開の出願)
表1.2.4-3に生活用品の中で主なものについて、具体的用途を示す。生活用品および衣類は家庭用の布帛、不織布、あるいは肌に直接触れるもので吸水性を要求されるものなどに用途範囲が広い。さらには衛生用品、今後の介護用品や健康指向の用品に発展性があり、吸収部に特徴を有するようなもの、あるいはオムツ類似品への展開がされている。
表1.2.4-3 吸水・吸湿・透湿性加工技術の生活用品用途出願件数
| 生活用品用途 | 77〜97 合計 |
A 77〜81 計 |
B 82〜86 計 |
C 87〜91 計 |
D 92〜96 計 |
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| 用 途 |
肌当部に特徴を有するもの | 119 | 9 | 18 | 41 | 43 |
| おむつおよび類似物 | 108 | 2 | 26 | 32 | 40 | |
| 家庭用、布・紙・不織布 | 105 | 3 | 4 | 32 | 54 | |
| 吸収部に特徴を有するもの | 79 | 8 | 13 | 30 | 20 | |
| 下着用で材料に特徴のあるもの・その他 | 55 | 4 | 12 | 14 | 22 | |
| 吸収部に特徴を有するもの | 47 | 0 | 5 | 11 | 30 | |
| 月経帯のための吸収性パツド | 44 | 17 | 23 | 0 | 2 | |
| ベビ−用ナプキン、すなわち、おしめ | 38 | 9 | 26 | 2 | 1 |
