1.2.5 熱特性加工技術

(1)難燃・防炎性繊維加工技術

 難燃性繊維の定義は明確でないが、業界ではLOI値が26以上の繊維を一般には難燃繊維と称している。防炎繊維とは単独では燃焼が継続しない自己消火性を有するもので、小さい炎を繊維製品に接している間は燃え続けるが、炎を遠ざけると数十秒以内に消えるという性能を有していものをいう。難燃繊維製品は現在では消防法や建築基準法をはじめとする法条例、告示や通達により法規制や行政指導あるいは自主規制が行われている。

 難燃・防炎性関連の出願は3,162件であり、過去20年間の出願の流れを見ると、図1.2.5-1に示すように第1ピークが84〜86年ごろに見られ、その出願件数は77年の出願件数に比べて倍増している。また、第2ピーク出願として89〜91年ごろに見られ、最近は技術が飽和しているのか少し減少傾向にある。その技術内容を特許から見ると第1ピークでは後工程での難燃処理剤の固着改善(特開昭62-57984、特開昭62-57985など)が多い。リン―窒素の相乗効果が利用されているプロバン加工(特開昭63-309674など)も出願されている。第2ピークの出願では、それまでの機能付与をさらに効率的に行いかつ色調への影響が少ない難燃剤の固着改善法(特開平3-97966、特開平3-113072など)が出願されている。一方、チタンやジルコニウムの錯化合物を含んだ強酸性浴でウールを処理し、ウールの反応基(−NH、−COO)に化学結合させたザプロ加工の改善(特開平3-82876など)も出願されている。

図1.2.5-1 難燃・防炎性繊維加工技術の出願件数推移

 図1.2.5-2に示すように、前工程(ポリマー、紡糸、糸綿)において難燃・防炎化の機能が付与されているものが約50%と多い。紡糸段階でポリマーにハロゲン化物やリン成分を練り込んだり混合(特開昭63-50571など)したり、難燃性繊維を通常の非難燃繊維と混紡して使うものが多い。後工程(布帛、仕上げ)工程で難燃剤を固着させるには、繊維の官能基に結合させる反応タイプ、分散染料と同じように繊維内に拡散・固着させる吸尽タイプ、難燃剤を含んだ樹脂をバインダーとして繊維表面に皮膜形成させるバインダータイプ(特開昭63-190080など)が出願されている。

 

図1.2.5-2 難燃・防炎性繊維加工技術の機能付与工程別構成

(1977〜99年8月までに公開の出願)

 

 次に5年間ごとの出願状況を調べた。

A  1977〜81年の5年間

B  出願件数が最大ピークを示す1988〜92年の5年間

C  1993〜97年の最新の5年間

 表1.2.5-1に示すように、20年間で見ると合成繊維の件数が天然繊維の件数の約3倍に達し、ポリエステルは最近でも増え続けている。また、芳香族ポリアミドと炭素繊維が難燃・防炎性の発現のために素材的に寄与していることも示している。

 

表1.2.5-1 素材別難燃・防炎性繊維加工技術の出願件数

  繊維の種類 77〜97
合計
A
77〜81
B
88〜92計
C
93〜97



鉱物繊維以外の天然繊維 230 33 72 33
セルロース系 184 29 52 31
セルロースのエステルまたはエーテル 120 20 30 16
動物性繊維 33 1 19 1
ケラチン繊維または絹 43 3 17 8
天然繊維計 610 86 190 89



鉱物繊維以外の合成繊維 693 114 202 135
ポリオレフィン 137 13 53 28
ポリアルケン 18 2 5 4
ハロゲン化モノオレフィン 21 1 6 5
アクリロニトリル 57 3 25 13
不飽和結合以外の反応で得らる重合体 398 50 114 102
ポリエステル 270 34 69 75
ポリアミド 138 16 45 36
芳香族ポリアミド 55 4 18 16
炭素繊維 80 6 36 12
合成繊維計 1,867 243 573 426

 

 次に難燃・防炎性加工技術の傾向として、特徴的なものを表1.2.5-2に示す。さらに、その中で顕著な動きを表すものをグラフで示すと図1.2.5-3、図1.2.5-4のようになる。図1.2.5-3に示すように、無機酸化物による処理はピーク期間だけでなく最近の5年間でも多い。無機リン酸による処理は従来多く出願されたが、最近は出願が少ない。有機化合物(非高分子または高分子化合物)の処理では、リン酸系化合物による機能付与が最も多く、次に有機ハロゲン系化合物または有機窒素系化合物による難燃・防炎加工が多い。これらの3大処理方法に次いで、有機珪素系化合物による処理などによる難燃・防炎機能の付与が多い。また、有機硫黄化合物による処理も難燃・防炎性の発現に寄与している。

 

表1.2.5-2 難燃・防炎性加工技術の特性付与化合物の出願件数推移

   
特性付与因子
 
77〜97
合計
A
77〜81
B
88〜92
C
93〜97


無機酸化物 81 5 24 21
無機リン酸塩 33 10 13 1
無機珪酸塩 23 5 6 5


有機リン酸系化合物 328 44 87 62
有機珪素系化合物 115 15 42 23
有機ハロゲン系化物 230 31 68 43
有機スルフォン系化合物 90 19 20 15
有機フェノール系化合物 147 23 32 24
有機硫黄化合物 121 38 18 19
有機窒素化合物 258 44 68 56

 

図1.2.5-3 難燃・防炎性加工技術の特性付与化合物の出願件数推移

 

 一方、難燃・防炎性加工処理された繊維の出願件数を見ると、図1.2.5-4のようになる。難燃ポリエステル繊維または難燃アクリル繊維の件数が多く、リン系化合物による難燃・防炎性機能加工がピーク時だけでなく最近でも活発に研究され続けられていることが分かる。また、炭素繊維やポリイミド・アラミドからなる繊維を一部用いて、汎用の合成繊維の難燃・防炎性を高めるために利用されていることが分かる。

図1.2.5-4難燃・防炎性加工処理された繊維別出願件数推移

 用途としては、図1.2.5-5に示すように、工業用包装容器分野の出願が圧倒的に多い。具体的には難燃・防炎加工処理された中間製品のシート状物(織物、不織布)または積層体などの出願が工業用資材の分類に分けられている。

図1.2.5-5 難燃・防炎性繊維加工技術の用途別件数

(1977〜99年8月までに公開の出願)