4.2.8 抗菌・防ダニ性加工

 抗菌とは、殺菌、滅菌、消毒、除菌、静菌、サニタイズなどすべてを意味するといわれている。

 防ダニ性とは、繊維製品とりわけ寝装具においてダニが入りたがらない、ダニがわきにくい、ダニが繁殖増殖しない性質および機能を意味する。天然の布団綿などは睡眠中の発汗により水分をかなり吸い、ダニにとっては理想の巣の状態になりやすい。このような状態は単にダニだけでなく、細菌(例えばグラム陽性菌や陰性菌)や菌類のカビがわき増殖しやすい。自然界の通常の手指には103〜4個/mlの細菌が存在し、日常生活のもとでの繊維製品も無菌状態ではない。ましてや、人が発汗したあと不潔にしたり放置すると皮膚表面では汗とともに分泌される排泄物が酸化されたりして菌や細菌が急増殖される。皮膚を覆い皮膚に接触している衣服には当然これらの菌と細菌が転移しているため、洗濯を繰り返して、広い意味での除菌をしている。

 抗菌性繊維の技術を概略的にみると、下記の2つに分かれる。

(1) 繊維自身の中に紡糸製糸の温度に耐える抗菌剤を混合する技術。

(2) 布帛の表面層ないしは繊維間に各種の抗菌剤を固着させる技術。

 最近では下記の無機系抗菌剤が多く利用されている。

  ・銀ゼオライト系抗菌剤      ・銀錯体系抗菌剤

  ・銀リン酸ジルコニウム系抗菌剤  ・金属溶解性ガラス系抗菌剤

  ・金属イオン固溶化抗菌剤     ・超微粒子担持光触媒系抗菌剤

 特に、高齢化社会おいて病院での入院・通院生活を考慮して抗菌・防ダニ性繊維製品が多く利用されつつある。

 

4.2.9 消臭・脱臭性加工

 生活環境に影響を及ぼす悪臭については悪臭防止法(1971年制定、1995年改定)で規制され、また、大気汚染防止法(1997年改正)により自主規制されている。

 人が悪臭を感じる経路は、空気中に分散している一定濃度以上の化学物質が吸入により鼻孔内に入り、臭覚粘膜中の臭覚細胞を刺激し電気信号に変わり臭覚神経を経由して脳に伝達され悪臭と感覚される。そのため、臭覚細胞を刺激するまでの一定濃度以上に達すると不快に感じるのである。消臭・脱臭の方策としては、まず、悪臭を低濃度にすることである。

 消臭・脱臭性繊維に利用されている技術は、下記のように集約される。

(1) 素材の改質  
 a.共重合 :化学吸着などしやすいように繊維素材に反応性官能基を共重合する。
 b.ブレンド練込み :紡糸温度に耐える消臭機能を有する微粒子状物質を混合する。
(2) 布帛処理  
 a.香料付与 :悪臭を相殺させる芳香性物質を付与する。臭覚を錯覚させる。
 b.消臭脱臭剤の付与 :天然系、有機系、無機系の消臭剤・脱臭剤を繊維表面、または布帛表面層に固着させる。
 c.悪臭菌を抑制させ
  る抗菌剤の付与
:天然系、有機系、無機系の抗菌剤を繊維表面または布帛表面層に固着させる。

 古くから、吸着性能を有する活性炭やゼオライトなどの多孔性微粒子を繊維製品に包含させ消臭・脱臭する技術と、芳香性物質を繊維製品に固着させて悪臭を隠す技術が利用されている。現在では、下記の技術が主要である。

(1) 中和作用により悪臭を化学的に吸着させる化学吸着型の脱臭技術

(2) 悪臭を酸化還元的に分解することを狙った化学分解型の消臭技術

(3) 抗菌剤を活用して悪臭菌の悪臭を元から消臭する技術

(4) 悪臭を酸化還元反応で長期間分解する触媒機能を有する消臭技術

 

4.2.10 生体適合性加工

 生体の内部環境の恒常性(ホメオスタシス)を壊すことなく、特定の生体組織の機能を代替し得る機能を持った、繊維加工品の健康分野への貢献は非常に大きく、今後もますます拡大していくものと思われる。

 生体適合性の材料として使用できるために、目的とする生体機能を持つ必要がある。生体に埋め込み組織や器官の一部を形成させたり、補修を助けるような場合は、生体適合性の付与が最も重要な要因となる。

 生体適合性材料として使用できるための生体適合の機能性としては、(1)生体内耐久性機能、(2)生体内分解性機能、(3)生体細胞利用機能、(4)生体組織誘導機能の4つに区分される。

 現在では、抗血栓性を付与するための方法が検討されていて、臨床的には人工血管として用いられているものが多く、ほとんどポリエステル布製、超極細ポリエステル繊維、テフロン繊維からできているといってよい。ポリエチレンテレフタレート(PET)は結晶性、配向性に優れ、水中でも機械的強度が変わらない。耐磨耗性、耐薬品性にも優れているが抗血栓性という点ではまだ欠点があり、そのため多くの機能性付与技術の改良がなされている。

 最近、人工血管内面に血栓層を作らせないで内細胞の被覆を期待しない機能性付与の開発も行われている。人工腎臓、人工肺、腹水処理装置などに用いられる血液浄化用中空糸でも血液凝固が問題で、現在は抗血栓剤であるヘパリンを使用し対応している。抗血栓性の優れた素材の中空糸、あるいは中空糸内部への高度な抗血栓性付与技術開発が待たれている。

 生体適合性は素材によるところが大きいが、中空糸の物性、糸内部の構成・構造、層の物理的、化学的特性などの付与によって大きく改善されつつある。

 手術縫合糸には、縫合後体内組織に徐々に吸収され、抜糸の必要のない縫合糸と、抜糸する非吸収性縫合糸に大別される。前者は生体適合性が特に重要である。この機能性を有する繊維として、動物性タンパク質からのガット、ポリグリコール酸、グリコール酸と乳酸の共重合物、再生コラーゲンからの繊維などがある。