2.4 細胞の直接利用

2.4.1 技術開発の内容

 細胞はそれを培養して有用物質を生産するというだけでなく、細胞そのものを操作して、医療や畜産に利用することはバイオテクノロジーにおいて大きな研究開発のターゲットとなっている。

 1981年イルメンゼー(米国)らにより、マウスにおける核移植が試みられて以来、1986年マウス、続いてヒツジで核移植に成功している。遺伝子導入や個体発生の材料とするには胚性幹細胞を安定に維持、増殖させる必要がある。培養で無限に増殖できる胚性幹細胞では遺伝子導入も容易である。初期胚と混合して代理母に移植すれば、トランスジェニック動物も効率よく作成できる。

 動物の各組織中には幹細胞が少量存在する。それらの幹細胞は自己再生能と特異的分化能とを持っている。造血幹細胞については分化のプロセス、細胞表面マーカー、造血因子などについても解明が進んでいる。

 造血系に由来する最も有用な細胞として疾患特異的傷害性Tリンパ球がある。癌特異的Tリンパ球は癌の治療において非常に有効性を示す細胞である。
胚性幹細胞など細胞の医療への応用に関する技術も大きく発展してきている。放射能を照射されたり、致死量の化学療法剤で処理された動物を長期生存させるために造血幹細胞の濃縮培養物を投与して造血系の再生を図るなどの試みが行われている。

 人工器官を作製する基本的な考え方は、生分解性があり、かつ生体適合性の人工マトリックスと、生体外で培養、増殖させた機能性細胞から構成した3次元の細胞−マトリックス構造物の移植により、天然の器官の機能的類似物を作製することであり、人工膵臓、人工血管、人工腎臓の作製などが試みられている。