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(4) 開発課題・将来予測
1980年WHOは天然痘の根絶を発表した。これはもちろん種痘の普及による成果であって、ワクチンの有効性をはっきり示したものである。ヒト以外の動物には感染せず、持続感染なく、抗原が変化しないウイルスならば、天然痘同様にワクチンで駆除できるかもしれない。しかしそのようなウイルスは少なく、可能性あるのは麻疹、風疹ぐらいとされている。動物からヒトへ伝播するウイルスは多く知られており、今後その経路で新しいウイルスがヒトを襲うことは充分考えられる。そのような場合にもワクチン療法は第一義的処置法であろう。ワクチン開発は今後も続けられ、改良が加えられて行くであろうが、製造法は基本的には既に確立していると言える。問題なのはインフルエンザAウイルスに典型的に見られるように抗原シフトを起すウイルスで、流行ごとに対応するワクチンを製造せねばならない状態である。新しい観点からの対応策が待たれる。
ワクチン以外でウイルスに対抗する手段はまだ少ない。転写を阻害するアンチセンスヌクレオチドの利用など今後の開発が期待される。ウイルスレプレッサーrex遺伝子で類縁ウイルスを阻止する試み(特開平10-165188)なども注目されるが、実際上の有効性はどうであろうか。
ウイルスをベクターとして利用し、有用タンパク質を生産したり、それを特定の細胞に導入する系(特許2843318)は今後も開発の余地が多く期待して良い。
遺伝子治療も、レトロウイルスの系はまだ不満足な点も多く、他のウイルス系の開拓が進められているが、病原性のないことからアデノ随伴ウイルスの系(特許2655771)などの発展が特に期待される。
植物ウイルスの分野では、これまではウイルス耐性の導入が多かったが、今後ベクターとして遺伝子改変、植物の育種に使われる例がさらに高まろう。
ウイルスの変った利用法として、2、3挙げてみる。昆虫ウイルスに蛍光タンパク質を導入し、ウイルス伝播を簡単に検出する方法(特開平11-18761)、ウイルスで不死化した毛乳頭細胞を得る(特開平11-89565)など目新しい。これまでの枠組みに捉われない新しいアイデアも求められる。
最近日本のアコヤガイが大量に死んでおり、真珠生産に大打撃を与えていると報道されている。原因はウイルスらしいと言われる。もしウイルスが分離されるならば、対抗策を見出すことは困難ではないであろう。一方で赤潮プランクトンに感染するウイルスが発見された(特開平11-98979)。このウイルスを感染させると赤潮防除に有効とされるが、ウイルスだけで生物を完全に駆除することは、これまでの経験から見て無理であろう。ウイルスは必ずや宿主と共生する道を見出すに違いない。
どの生物にも、それに感染するウイルスを見出すことができるのではなかろうか。また内在性のウイルスも広く存在すると思われる。今後もウイルスの発見は続くであろうし、それに対処する、あるいは利用する技術が求められるに相違ない。
