(4) 開発課題・将来予測

 現行法(薬事法)上有効物質を含む培養細胞そのものや、その抽出エキスを医薬品として開発することは難しい。医薬品として利用するためには培養後に抽出、精製の過程を必要とする。このためのコストを下げるためには、細胞培養における生産性の向上が期待されている。遺伝子組換え技術を利用して二次代謝産物を細胞外に分泌させ、抽出精製の過程を容易にしたり、生産性自体の向上が試みられている。

 農薬分野においては植物の生産する二次代謝産物は防御、生殖の役割をになっており、その機構に着目し、新しいタイプの農薬の開発が進められている。一般に植物は病原菌と接触すると抵抗性反応を示し、反応部位にファイトアレキシンと呼ばれる抗菌性を示す物質を産生する。この物質を植物体中に産生誘導する物質はエリシターと呼ばれ、エリシター活性を有する物質が新しい安全性の高い植物病害防除剤として注目されその開発が試みられており、今後とも開発が進むであろう。

 育種した物質高生産性植物の利用も含めて太陽光を利用した生産と細胞培養を利用した生産、化学合成による生産についてコスト面で比較し、それに見合うターゲット二次代謝産物を検討する必要がある。今後は、タキソールのように化学合成は非常に難しく、植物本体には微量にしか含まれず、かつその生産植物の大量伐採も難しいが医薬としての有効性が確認されているものの開発が中心となって進められるであろう。将来的には環境保全などを考えると細胞培養による生産の技術は必須なものとなるであろう。

図2.6.2-13 植物細胞の二次代謝産物開発課題と対応技術