4.3 抗菌性プラスチック

4.3.1 概要

 従来から一般的に抗菌剤とは、防腐剤、防カビ・防藻剤、殺菌・消毒剤全般を指してきたが、近年いわれている「抗菌剤」は、細菌の生育を抑制する能力を持つ物質を指しており、その性能は必ずしも菌を殺す力を持たずともよく、菌の繁殖を抑えたり、一部の菌を殺してその数を減少させるようなものを指している。

 プラスチック添加用の抗菌剤には有機系、無機系の多数の物質が使用されている。有機系抗菌剤は即効性があるが、抗菌特性の寿命が短かく、また、耐熱性に劣るので、プラスチックの成形加工温度に耐えられない欠点がある。無機系抗菌剤の成分は金属で、実際に用いられているのは銀、銅、亜鉛であるが、特に銀は抗菌効果が大きく、かつ安全性が高いことから、無機系抗菌剤では銀を主たる抗菌成分とする銀系抗菌剤が中心となっている。抗菌効果の寿命も半永久的で、耐熱性にも優れているので、プラスチックの加工用として適している。

 抗菌剤の適用されるプラスチックには、PVC、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、ABSPET、ポリアミドシリコーン樹脂などがある。

 

4.3.2 抗菌性プラスチックの歴史

 生活関連機器への抗菌剤の応用は、1970年代に家庭用浄水器から始まり、掃除機や洗濯機などの家電製品に採用され始めた。最初、人と直接接触しない部材に有機系の抗菌剤が使用されてきたが、最近では、その多くがより安全な銀系抗菌剤に代替されている。

 1990年代になって、主として銀系抗菌剤を人が直接触れるプラスチック製品にも応用するようになり、当時のユーザーの清潔志向に応えて、電話機、ファックスなどの家電機器や、文具類、建材などにブーム的に使用されるようになった。

 銀系抗菌剤は当初はハロゲン化銀が使用されたが、その後、微生物やウイルスにもより抑止効果のあるチオサルファイト銀錯体が広範囲に使用されるようになった。

 

4.3.3 抗菌性プラスチックの現況と問題点

(1) 銀錯体系抗菌剤の製法

 酢酸銀を40℃の純水に溶解させ、飽和溶液を作る。この溶液に亜硫酸ナトリウムとチオ硫酸ナトリウムを順次溶解させて銀錯体を得る。

 この銀錯体を含む溶液に、担体としてシリカゲルを混合して銀錯体を吸着させ、さらに、銀錯体溶出の持続性を確保するための徐放効果をねらって、担体表面にSiO2骨格からなるコーティング被膜を形成させる。

 この抗菌剤はチオサルファイト銀錯体とシリカゲルから構成されるため種々の特徴がある。その主なものは耐塩素性、透明性、耐熱性などである。例えば、塩化ビニルや、樹脂中に残存する塩素系重合触媒などの塩素化合物がある場合、反応性が低く、抗菌性能を維持できる。また、約230℃の耐熱性があるから、ほとんどの汎用プラスチックに混練することが可能である。

(2) 銀錯体系抗菌剤によるプラスチックの抗菌化

 各種製品の主体となるプラスチックに抗菌剤を添加して成形する方法と、通常のプラスチック成形体の表面を抗菌性塗膜で被覆する方法とがある。

 前者の方法では、プラスチックと銀錯体系抗菌剤の混合物を押出機で加熱混練後、ペレット化する。このペレットを成形加工して製品化する。また、必要に応じてあらかじめ顔料を混合して着色ペレットを作ることもある。

 後者の方法では、プラスチックフィルムの表面に、抗菌剤を少量添加したUV硬化型塗料をコートした後、紫外線を照射して塗膜を硬化させる例などがある。

(3) その他のプラスチック用抗菌剤

 銀系抗菌剤の他にも、有機系、無機系の抗菌剤が種々利用されている。その主なものは次の通りである。

a. 無機系

 ・銀ゼオライト(合成ゼオライトに銀イオンを含有させたもの)
 ・チオサルファイト銀錯体(前述)

b. 有機系

 ・ニトリル誘導体
 ・イミダゾール誘導体
 ・トリアジン誘導体
 ・フェノールエーテル誘導体
 ・ピロール誘導体

 これら抗菌剤によるプラスチックの抗菌化は、原則として、(2)銀錯体系抗菌剤の所で述べたのと同じ方法で行われる。

 抗菌性プラスチックの最近の用途としては、携帯電話、タッチパネル、空調フィルター、フレキシブルディスクなどの他、食品包装用フィルム、床材などもあげられる。