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答申・報告書・講演録

第2回 イノベーションと知財政策に関する研究会 議事要旨





平成20年4月14日
特許庁
1. 日時
    平成20年4月14日(月)8:00〜9:30
     
2. 場所
    ホテル ルポール 麹町 3階「マーブル」
     
3. 出席者
   
  青木 初夫   アステラス製薬株式会社代表取締役共同会長
  伊藤 元重   東京大学大学院経済学研究科長・教授
(代理) 小川 王幸   株式会社デンソー取締役副社長
  後藤 卓也   花王株式会社取締役会会長
  長岡 貞男   一橋大学イノベーション研究センター長・教授
  中山 信弘   弁護士(西村あさひ法律事務所顧問)
(座長) 野間口 有   三菱電機株式会社取締役会長
  藤田 隆史   東京大学生産技術研究所教授・産学連携本部長
  有識者:
   
    荒井 寿光   東京中小企業投資育成株式会社代表取締役社長
     
4. 議題
   
(1) 開会
(2) 審議経過報告
(3) ワーキンググループ検討状況報告(長岡委員)
(4) 「イノベーションと知財政策に関する研究会」への期待(荒井寿光氏)
(5) 「イノベーションと知財政策に関する研究会」のとりまとめの方向(案)について
(6) 今後のスケジュール等
(7)

閉会

     
5. 議事の概要
   

当該研究会ワーキンググループ座長である長岡委員によるワーキンググループ検討状況の報告、荒井寿光氏によるプレゼンの後、事務局からの資料説明を踏まえ自由討議を行った。
プレゼン内容及び自由討議における委員からの意見の概要は以下のとおり。

     
<総論>
  トフラーの考え方によれば、社会は農業社会から工業社会、そして知識社会へと変化をしている。知識社会における知財の価値は向上し、質的にも変わってきている。特許のフロンティアは広がっており、ビジネスもそれに伴って進歩している。
  オープンイノベーションの進展により、オープンソース・ソフトウェアの取組など、知財の活用の仕方が変わってきている。こうした中で、「特許が貨幣として機能する」とはまさにその通りである。また、上流特許やリサーチツール特許の扱い方が問題となっているが、フェアユースの考え方等をビルトインすることで、知財の独占と共有のバランスを図っていくことが重要ではないか。
  グローバリゼーションとボーダレス化が進展し、基準認証など相互承認が実現している分野もある中で、特許制度は属地主義が残っているため国際化が遅れている分野であろう。WIPOによるデジュールの構築が望ましいが、簡単には実現しないだろう。そのため、同様の考え方を持つ国同士でコンソーシアムを形成し、その環を広げていくのがよいのではないか。特許審査ハイウェイは相互承認に向けた取組として評価できる。
  特許庁は、ユーザーがビジネスや研究開発を行いやすくするためにはどうあるべきか、とのユーザーサイドの視点からの取組を進めると共に、世界のオピニオンリーダーとして、知財に関する議論をリードしていくべきである。
     
<南北問題>
  地球知財問題として南北問題解決への取組が重要。途上国からは、知財制度は先進国の利益を守るためのエゴであると言われることもあり、WTOやWHOの場において基本コンセプトの論争が行われており、数の面等から先進国は押されている印象を受ける。こうした論争に対して日本が法制度の論点等から積極的に議論をリードして欲しいところであるが、こうした議論に参加する日本の代表者が少ないと感じている。そのためこうした議論の場に日本から代表者を派遣すると共に、日本が世界の議論をリードして欲しい。
  南北問題については、今後、環境問題での対立が予想されている。先進国は途上国に対して資金援助等様々な形で貢献しているが、ODAの一環で行うなど知財政策を越えた大きな取組の一環で捉えることが必要となっており、これは今後の議論の課題。
  途上国との関係についての解はない。19世紀のパリ条約も途上国という発想がない時代の制度であり、極論だが、途上国は、過去には軍隊で侵奪されて現在は知財制度によって侵奪されているとの声もある。石油にしても昔は欧米のメジャーが独占していたが、近年は国有化されている。先進国の利益確保も理解できるが、何らかの形で途上国に還元する仕組みを考慮する必要がある。
  特許権者が自己の権利から利益を得ることができないと、研究開発のモチベーションは高まらない上、事業の継続も難しくなる。こうしたデメリットを含めてなお考慮すべき途上国の利益や公益とは何か。
 

「グローバル化」とは何か。エイズの薬の場合、米国を中心とした先進国での販売により利益を得て、さらなる研究開発を行っているが、パテント料を除いた形で安くすることでアフリカ等へ販売できるのではないかとの議論があった。技術が国境を越えていくという意味でのグローバル化と、モノが越えていくという意味でのグローバル化ではその意味が異なる。色々なレベルのグローバル化を一つの観点から捉えると分かりやすいかもしれないが、問題の本質を見逃す可能性があり、分けた方が面白い議論になる。貿易の世界では、ここ10年〜15年で新興工業国のウェイトが増大しており、どう対応するかが議論されてきている。WTOで包括的に議論することが難しくなり、途上国を取り込むためにFTAがでてきている。グローバル化の中での特許の議論においても、貿易の世界で起こっていることとどう違うのかという考え方で整理するとよいのではないか。

  WIPOにおける議論も重要だが、WTOやWHOで行われている議論も大きなものとなっており、数の多い途上国が有利な状況にある。世界のヘルスケアも重要との立場から知的財産権に対して制限をしようとするなど、哲学的な議論になってしまっている。
  エイズの薬に関する問題は政治全体という大きな枠組みの中で位置づける必要があり、特許単独で考えることはできない。アフリカではエイズ薬を製造することはできない。インドでは製造は可能かも知れないが、アフリカ諸国の末端にまで届くデリバリーシステムもないし、処方も難しいだろう。つまり、特許をアフリカ諸国に対して権利行使しないようにすればよいという問題ではない。援助を始めとして国際政治全体の中で捉えるべき。
  国際的なロイヤルティには国際的なレートが存在するのであろうが、知的財産権の利用に際しての限界費用は0であることから、権利消尽の関係を整理すれば、低い利用料でも使ってもらうことにより、利用者、特許権者双方がWin-Winの関係になるのではないか。こういう提案は、OECDや世界銀行において過去試みられたが難しかったようだ。
     
<オープン化>
  これまでは知的財産権の強化のみがプロパテント政策だとされていたが、現在はプロパテントの中身を吟味する時代となった。特に現在のイノベーション構造においては、オープンにするということが重要である。コモンズもその大きな流れのひとつ。費用と時間を節約するためにもオープンは必要。オープンの流れを広めていくべき。
     
<パテントトロールについて>
  パテントトロールは何をもってトロールとするのか。他者から権利を買うものや、権利者が自ら事業を実施しないものだとする意見もあるが、その場合、大学や個人、あるいは事業から撤退した企業等もトロールとなってしまう。よって、そういった者の観点からの検討も当然必要であり、非常に難しい問題。完全な解決策はないにしても一歩一歩方向付けすることが必要。
     
<研究開発・知財プロデュース事業>
  知財プロデューサーを大型の研究プロジェクトに派遣することは必要であり、是非実現して欲しい。一点注文があるとすれば、派遣対象が複数大学や企業とのコンソーシアム型に限定されているようだが、こうした体制のみならず、一大学のみであっても、国として重要な大規模プロジェクトであれば、広く派遣対象として欲しい。
 

東京大学においても、知財を専門に取り扱う職員を10人前後抱えているが、権利の承継等のルーティンワークで忙しく、研究開発のプロデュースまでは手が回らないのが現状である。TLOの職員が、個人的に研究者の研究サポートをしているケースはあるが、組織としてはできていない。

  大学の研究資金の4割がライフサイエンスで占められている中で、ライフサイエンス分野での知財の専門家、知財プロデューサーとなりうる人材が少ない。
  民間主導での研究開発・知財プロデュース機関については、大学としてどう付き合って行くかは、当該機関の性格にもよるので、現時点では未定。
  研究開発・知財プロデュース事業においては、「金融」がキーワードであろう。金融が産業と結びついて全面に出た場合、その産業はガラッと変化する。90年代の後半に不動産の証券化が起こったときも、証券化することでビジネスがかなり変わった。イノベーションの3つのキーワードはリスクと時間差と複雑な活動のコーディネーションであろう。これは金融の得意な分野であり、リスクを管理して資金を獲得して、まとめあげて活動することを容易にする。今後5〜10年先の活動に対しては、金融という要素を含めて考えることも必要。
  海外の大学・研究機関と共同研究を増やすことも想定しており、その対応を考えている。そのためにも例えば、ロードマップを軸にして早期に技術を認識し合うことが共通のキーとして考えている。
 

研究開発と知財をプロデュースする人材の重要性については、従来からの主張である。こうした人材の確保のためには、その組織が儲けることが可能かどうかの問題と共に、その組織の将来性の問題もある。例えば、TLOは難しいだろう。TLOはスタンフォードのTLOのように利益を上げることを目指しているが、スタンフォードであっても一部の優秀な発明から利益を上げているのであり、それは極まれなケースである。TLOにおいても企業で行われているような取捨選択は必要であり、iPSのような重要な研究成果に重点的に取り組み、成功事例を積み重ねることが重要である。例えば、米国の弁護士は流行している分野に人材が流れる傾向にあるが、知財においても成功事例を広げて、人材が流入するようにすることが必要なのではないか。

  TLOはコストセンターになるのは仕方がないと考えている。しかし、将来的にプロフィットセンターへの転換を考えており、そのためにも優秀な特許を仕込んでいるところである。人材については、人材のミスマッチが存在しており、東大TLOのスタッフ1名の募集に対して400名の応募が集まる場合もあるが、即戦力となり且つこちらの望む分野に明るい応募者がいないため、全員不採用とする場合もあった。特にバイオ・ライフサイエンスの分野にはいないとの印象をもっている。ニーズに合う人が集まりにくい状況はあるかもしれない。
  知財プロデューサーについて、人材に関しては、一つの大学に一人のプロデューサーを付けることは、やるべき事とは思わないし、できないことである。しかし、この取組自体には賛成である。最低限のインフラとして、国策として進めていくことは必要である。
     
<シームレスな検索環境について>
  シームレスな検索環境実現について、バイオテクノロジー関係について特に米国では進んでおり、国立医学図書館、NCBI(国立バイオテクノロジー情報センター)に非常に広範なデータがある。各大学・研究機関のデータベースにハイパーリンクを張って統合データベースを構築している。これは、図書館の仕事として行っているが、日本においては、国立国会図書館がやっているとは聞いたことがない。どこかが、データベースのためのデータベースを構築しなくてはならない。日本の統合データベースの現状についてはよくわからないが、国立遺伝学研究所や京都大学など良いデータベースを持っている研究機関は多い。
  各大学は掘り下げてデータベースを構築しているが、大学や機関同士のつながりは薄い。
  著作権は現在のデジタル化の時代に対応できていないため、非常に使いづらい制度となっている。著作権の世界は昔から権利者が強くデジタル化の対応に向けた改正が進んでいない。現在は、個々の企業から個人に至るまで著作権に関わるようになっていることから、特許庁を始めとした外部から改正を望む強い声が必要である。
 
<職務発明規定について>
  特許法第35条の職務発明の規定については、発明者への報奨金について規定されているが、グローバルに研究開発を行う際に、海外の従業員と日本の従業員で処遇について比較すると、日本の職務発明の規定は特異なケースであると感じている。この点については今後どのような展開が予想されるのか。
     
本議事録は事務局の文責にて作成したものであり、出席者各位の了承を得た ものではない。
     

  
<この記事に関する問い合わせ先>
  
 
特許庁総務部総務課
  担当 若月、鹿児島
  電話 03-6810-7456
  FAX :03-3591-9624
  E-mail PA0A00@jpo.go.jp
 
 
特許庁総務部企画調査課
  担当 柳澤、三井
  電話 03-3592-2910
  FAX :03-3580-5741
  E-mail PA0920@jpo.go.jp
 
[更新日 2008.4.22]
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