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答申・報告書・講演録

第3回 イノベーションと知財政策に関する研究会ワーキンググループ 議事要旨




平成20年5月23日
特許庁
1. 日時
    平成20年5月23日(金)8:00〜9:30
     
2. 場所
    ホテル ルポール 麹町 3階「マーブル」
     
3. 出席者
   
  青木 玲子   一橋大学経済研究所教授
  伊藤 耕三   東京大学新領域創成科学研究科教授
  江崎 正啓   トヨタ自動車株式会社理事、知的財産部主査
  加藤 幹之   富士通株式会社経営執行役、法務・知的財産権本部長
  大津山 秀樹   SBIインテクストラ株式会社代表取締役社長
  五神 真   東京大学大学院工学系研究科教授
(座長) 長岡 貞男   一橋大学イノベーション研究センター長・教授
  長谷川 卓也   長谷川綜合法律事務所弁護士・弁理士
  渡辺 裕二   アステラス製薬株式会社知的財産部長
  和田 哲夫   学習院大学経済学部経営学科教授
     
4. 欠席者
   
岡部 讓   岡部国際特許事務所副所長、弁理士
松沢 隆嗣   根本特殊化学株式会社常務取締役
山田 敦   一橋大学国際・公共政策大学院教授
     
5. 議題
   
(1) 開会
(2) イノベーションと知財政策について
(3) スケジュールについて 等
(4) 閉会
     
6. 議事の概要
    事務局から配布資料に沿って説明した後、自由討議を行った。
自由討議における委員からの意見の概要は以下のとおり。
     
<研究開発・知財をプロデュースするビジネス>
  研究開発・知財をプロデュースする企業は、すでに日本へ進出しており、東大の教員にもアプローチをかけている。その目的は、教員の有する技術ではなく、その企業の有する技術の評価にあるようだ。話を聞く限り、研究者には魅力的な内容であるが問題点もある。地方の大学では、特許にかかる出願費用や維持費用等が十分に確保できず、特許を出願できないところもあり、その企業はこれらの費用を負担することで大学から特許を買っているようだ。全ての日本の大学がこうした企業に特許を売ってしまうようになるのではないか。そのため、日本においても国策としてこのような事業を行うべきである。
  研究開発・知財をプロデュースする企業は、特許と商品が密接にかかわる分野においては、その開発自体がクリエイティブな活動であり、産業の発展にも資するだろう。しかし、組み合わせ型のような一つの技術に多数の特許が絡む分野においては、標準化活動におけるアウトサイダーになるおそれがあるのではないか。
  知財プロデュース事業は資金がかかることがネックだろう。投資側からすると、知財をプロデュースする、研究開発をすることは目的ではなく手段である。目的は、研究開発の成果である知財を活用して事業を起こし、キャッシュフローを得て、資金の出し手がキャピタルゲインなど何らかのリターンを得ることである。米国においては、これらを支える知財を活かした経営をできる人材がいるが、日本では少ないのではないか。これらのことから、日本の投資家からすると知財プロデュース事業に手を出しづらい。知財を事業に活かせるような人材育成が課題になるだろう。
  知財をプロデュースする事業の難しいところは、資金の確保だろう。これは、経営と金融の観点からみたときに知財が結びつかないところに起因する。最近の投資は、期間が短期になっており、短期で利益をあげる必要がある。企業経営も取締役の任期も短くなっており、株価で細かくPBR等の数字が見られており、短い期間で高パフォーマンスをあげることが現在の経営と金融の至上命題となっている。これに対して知財は、投資してから収益をあげるまでに5〜10年のスパンが必要であり、また失敗するリスクも大きい。このタイムラグとリスクの大きさをどう抑えていくかが問題である。その一つの鍵は人材である。金融と知財の仕組み及びその投資から収益までのタイムラグを理解し、目利きができる能力、決断する能力などを備えた人材が必要である。もう一つの鍵はリスクの吸収である。リスクを吸収するためには、ロットを大きくしてやることが必要となる。投資した結果、収益をあげられるものは10%で、90%は失敗するかもしれない。そのため、成功した10%で収益をあげられるようにしなければならない。このため、規模の小さいファンドでは困難である。このような人材投入とファンド規模の大きさを実現するには、国策レベルでの大規模な対応が必要である。
  知財プロデュース事業では、資金を付けることが主眼にあるようだが、ベンチャー企業や中小企業には、資金だけではなく、ライセンス交渉や製造委託等の広い意味でのアライアンスが必要である。ベンチャー企業や中小企業は技術の開発はできても、製造、販路等の事業として成り立つベースに乏しいケースが多い。そのため、これらを確立している大企業側とのアライアンスが必要である。
  特許や技術の価値評価の問題もある。知財の価値評価は、金銭的評価ではなく、技術の目利きである。知財の価値評価は困難であるが、ファンドとして資金を投資していく以上ある程度の数値化は必要であり、この数値化が妥当かどうかという点は知財プロデュース事業自体が成功するかどうかにまでかかわるものである。
     
<知財プロデューサー派遣事業>
  知財プロデューサー育成は必要である。知財プロデューサーに求められるのは、事業をプロデュースする中で、知財の知識を活用すること、事業を知財の面から助けることである。事業をマネジメントする知識と技術の知識、そして知財の知識が必要であり、これら全てをカバーするにはチームを組まないことには難しいだろう。
     
<人材育成>
  日本では、優秀な人材がベンチャー企業に少ない傾向にある。逆に、大企業では優秀な人材は多いのだが、大企業では事業の一部しか担当しないため、米国と比べると日本はビジネス全体をマネジメントできる人が少ない。ベンチャーへ人材が流れるような政策が必要ではないか。そのためには、税制や労働法などにおいて、インセンティブを与える必要がある。例えば、ストックオプションは一つの方法であるが、ストックオプションを行うと費用で計上され、PL上に影響してしまうという会計上の問題から敬遠されている。ベンチャー育成にももう一度目を向けるべき。
  人材の流動化は企業でも大学でも重要なことである。企業では、部門ごとのローテーションが重要であり、事業部と知財部のローテーションを行っている。これにより、知財の知識をもった事業の推進が可能になる。大学においても、ポスドクを知財部に配置する制度をつくるなど、流動性を高める必要がある。
  人材育成は深刻な問題。博士課程の学生をどう育成するかが問題である。素粒子理論の分野ではポスドクが1000人もワーキングプアになってしまったとまで言われる一方、工学部では学部定員が100名に対して博士に進学するのは2人しかいないなどと、進学面を含めて人材育成の環境がよくない。人材を活用するためには、若者にインセンティブを与えていく必要があり、リターンを得られる仕組みを整理する必要がある。
  イノベーションにはそれを担う優秀な人材が必要。この人材育成をどうするか、それを活用するつなぎ部分の育成が日本には欠けている。発明・発見から活用・実施へとつないでいくシステムをクリアにしていく必要がある。つなぐ機能を担う商社もあくまで一部しか担っていない。発明者側にも、実施すること、活用することがいかに重要か、ということを普及する必要がある。新しいものを作り出すことが、グローバルに、人類規模で社会に貢献できるという意識をもった人材を社会に送り出さなければいけない。その時に特許制度はよい制御機能をもたらす可能性と阻害する可能性の両面の要因をもっている。夢をもってチャレンジできる仕組みが重要であり、理学的な発想と実施というものをシームレスにつなぐような意識が重要。
     
<ユーザーニーズに応じた審査>
  スーパー早期審査は良いアイデアである。是非検討してほしい。1986年から始まった早期審査は従来から利用している。新製品を出し始めた時に他社が自社の技術を使用している可能性がある場合や海外との特許交渉の際に、特許化できるかどうかで交渉の流れが変わることもあり、早期の権利化が必要なケースはある。制度導入に当たってはよくパブリックコメントの意見を聞いてほしい。
  疑問点としては、出願して分割をしながら、いろいろなものを取り混ぜてスーパー早期審査により1〜2月で結論が出る場合に、特許性が認められそうにない出願は公開されないように取り下げる可能性があるのではないか。そうすると公知になっていないので、同じような出願を何度もできる可能性があるのではないか。1回認められなかったら取下げできないようにする等、悪用されないような仕組みを検討すべきである
  スーパー早期審査というオプションが増えることは良いと思うが、どのように使われるか予期しがたく、どういう要件で使われるようになるのかがわからない段階ではコメントできない。スーパー早期審査については、高額料金と対象を制限して設定するなどの試行を行い、その効果と影響を見極めて料金を下げていくことなどで政策に役立てられるのではないか。
     
<透明で予見性の高い審査メカニズム>
  審査基準を透明化するのは良いことである。過去の傾向では、新しい技術については基準の対応が遅れがちである。スピード感をもった制度・基準の設定を希望する。
     
<パテントトロール問題>
  クライアント企業はパテントトロールの問題を気にしている。あきらかにトロールというものからきわどいものまである。早期に何らかの対応をお願いしたい。
  海外での話だが、大学のベンチャーファンドが資金に困るとパテントトロール化するケースがある。
     
<標準化戦略の推進>
  海外の研究者と研究のための標準団体の情報等を集めたプラットフォームを作るという話がでている。欧州において国策として進める動きがある中で、特許庁が率先してこれらの情報を収集・整備するのは良いことである。
  技術の標準化戦略は知財ビジネスにおいて重要である。仮に自社技術の標準化に失敗すると、いくら良い技術をもっていてもその市場に参入することが困難になる。イノベーション以前の問題として、そもそも市場に参入することが重要。どのようにして標準化を自らのビジネスにひきつけていくかが重要。標準化に失敗した場合、これまでの研究開発の資金が回収できないばかりか、市場に参入するためにライセンス料を支払う必要があり、非常に不利になる。
     
<イノベーションを促進するためのインフラ>
  シームレスな検索環境についてだが、色々なデータベースにアクセスできるのは良いが、その分ノイズが増えることになるので、検索エンジンのアルゴリズム等の研究がますます重要になる。特許庁のシステムやコンテンツが民間でも利用できるようになるのは良いが、特許審査官が使用していると同様の端末を利用したいという特定の動機づけもあるのではないか。もし偏った結果を出すようなシステムを使っている場合、悪意をもった人がこのシステムを知り、これだったらばれないだろうとして出願することがあり得ないとはいえない。一方、特許審査官の検索範囲が明確になることで、それ以外をどのようにカバーするか出願人は知恵を絞るだろう。
  検索システムは使用者に依存するものである。特許庁は、技術を検索する一流の検索集団であり、民間のサーチ能力をもった人やサーチシステムを作る人とのコミュニティができるといいのではないか。特許庁のシステムのアルゴリズムや検索式、検索結果等を公開し、シェアすることで、それ自体にも意見をもらいフィードバックしていくのも良いのではないか。効率的な検索を可能とするシステムは、民間における的確な先行技術調査を促進し、質の高い特許を可能とするなど、官民のワークシェアにつながるものである。
     
<その他>
  特許の質といった場合に不確実性とその他を区別する必要がある。オープンイノベーションや標準化を進めるにあたっては、不確実性をコントロールすることが、大事だと考えており、本研究会の提言においては、そこに明確に書き分けられている。
  発展途上国を含めた知財制度の健全な育成は日本の産業の発展にとって重要である。
  制度調和は、日本が積極的に働きかけ、対立ではなく調和できるようにして欲しい。
  職務発明についても、企業経営側はリスクとしとらえている部分もあり、発明者側のインセンティブとして必要である旨をより明確にしていくべき。そのためには、グローバルにどのような制度が良いのか議論すべきである。
  知的財産制度はリターンを得られる合理的な仕組みであり、それを確実に確保できるような法制度にすべき。
  引き続き研究者としてもこの提言をフォローアップして、何らかの形で将来的に貢献していきたい。
     
本会合における意見を踏まえて資料の修正を行い、パブリックコメントにかけること、また、資料の修正、親研究会への報告については座長に一任することが合意された。
本議事録は事務局の文責にて作成したものであり、出席者各位の了承を得たものではない。
     

   <この記事に関する問い合わせ先>   
  特許庁総務部総務課
  担当 若月、鹿児島
  電話 03-6810-7456
  FAX :03-3591-9624
  E-mail PA0A00@jpo.go.jp
 
  特許庁総務部企画調査課
  担当 柳澤、三井
  電話 03-3592-2910
  FAX :03-3580-5741
  E-mail PA0920@jpo.go.jp
 
[更新日 2008.6.2]
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