平成21年4月
特許庁
1.日時
平成21年4月24日(金)10:00〜12:00
2.場所
特許庁庁舎16階 特別会議室
3.出席委員
野間口 有独立行政法人産業総合研究所 理事長(座長)
飯村 敏明知的財産高等裁判所 判事
大歳 卓麻日本アイ・ビー・エム株式会社 会長
大渕 哲也東京大学大学院法学政治学研究科 教授
奥山 尚一理創国際特許事務所 弁理士
片山 英二阿部・井窪・片山法律事務所 弁護士・弁理士
佐々木 剛史トヨタ自動車株式会社 知的財産部長
白石 忠志東京大学大学院法学政治学研究科 教授
田中 昌利長島・大野・常松法律事務所 弁護士・弁理士
山本 敬三京都大学大学院法学研究科 教授
尹 宣熙漢陽大学校 法科大学 教授
渡部 俊也東京大学先端科学技術研究センター 教授
4.議題
- (1)開会
- (2)特許の活用促進について
- (3)今後のスケジュール
- (4)閉会
5.議事要旨
事務局からの資料説明、委員の一部から特許の活用促進の実態についてご紹介の後、自由討議を行ったところ、概要は以下のとおり。
<実施許諾用意制度(ライセンス・オブ・ライト制度)1について>
- ○ 制度導入にはデメリットもある。料金減免だけを目当てに制度が利用され、実際には流通促進に繋がらないおそれがある。
- ○ 企業にとって料金減免の経済効果は大きいため、導入に賛成。
- ○ 制度設計が一番の課題。最も問題になるのはライセンス料の設定の仕方や合意に至らなかった場合の紛争解決システムが構築できるかどうかである。また、特許会計全体へのインパクトや、既存の特許に対する経過措置も考慮すべき。
- ○ 特許の活用が進んでいないという現状は、そもそも活用したい特許がないことに起因するのではないか。制度導入は活用促進に劇的な効果を及ぼすとはいえないかもしれないが、新しいビジネスを起こす手がかりになるという程度の効果はあるかもしれない。
- ○ 活用促進になるかどうかは不明。制度を導入した場合、利点もあるが、権利を弱める方向の動きになると思うので、あまり好ましくないと思う。
<ライセンスの対抗の在り方について>
- ○ 現行の登録対抗制度は、通常実施権を登録しなければ、通常実施権者が特許権の譲受人等の第三者から差止請求等の権利行使を受け得るものだが、登録がビジネス実務上困難であるため、使いづらい。登録を必要とせずに通常実施権の存在を立証するだけで第三者に対抗可能とする当然対抗制度を導入する必要性はかなり高い。
- ○ 当然対抗制度は、民法の一般原則との関係では特異な制度であると考えられる。しかし、特許権の取引は制度に精通する業者間で行われていることや現状の実務においてデュー・デリジェンス2が実施されていること等からすれば、取引の安全を害するとは考えづらい。当然対抗制度を導入すべきではないか。
- ○ 実務の実態がよくわからないが、デュー・デリジェンスでは、ライセンスの具体的内容までは判明しないのではないか。デュー・デリジェンスにおいて必要な情報が取得されることが慣行として成立しているのであれば、当然対抗制度の導入に賛成。
- ○ デュー・デリジェンスの実施程度は、取引形態により異なる。特許権の売買の場面に比べ企業買収のような場面では、例えばクロスライセンスの詳細な内容についてまでは調べていない場合もある。
- ○ 民法や商法といった法制度は社会経済のインフラのようなものである。必要があれば例外を設ければ良いが、その際には相応の理由が必要。当然対抗制度とするためには、以下三つのハードルがある。(1)通常実施権が特許権の譲受人等の第三者にも主張可能な権利であると考えられるか。(2)通常実施権が第三者にも主張可能な権利であるとした場合に、その主張に登録は不要と考えられるか。(3)要求すべき水準の努力を尽くしても通常実施権の存在を認識できなかった第三者に対しても、通常実施権を主張可能と考えられるか。これらのハードルを越えるためには、単に登録が困難ということだけでなく、現代の社会の状況に即した積極的な理由付けが必要。
- ○ 民法の一般原則の例外を認めるにあたっては、特許権の譲受人とライセンシーの実務的なニーズと理論的な説明の双方を検討することが必要。理論的な説明としては、有体物を前提にする民法は、無体物に関する一般法とは必ずしも言えないのではないかという点がある。また、有体物である不動産に関する権利に民法の一般原則の例外(借地借家法等)が認められていることからすれば、無体物を前提とする通常実施権に民法の例外を設けることは可能ではないか。
<独占的ライセンス3に係る制度の在り方について>
- ○ 独占的ライセンスに関するニーズは業界によって異なる。電機業界は独占性を確保するというより事業に必要な特許を利用できることを重視する傾向が強い一方で、製薬業界は利用を完全に独占することを重視する傾向が強い。そのため、製薬業界では独占的ライセンス制度の整備に対するニーズが高いといえる。
- ○ 登録が効力発生要件とされている専用実施権制度は日本と韓国にしかみられない特殊な制度であり、外国企業との取引において問題が生じている。専用実施権制度を廃止して、独占的な実施権と非独占的な実施権の2種に整理し、いずれも契約により効力が発生するものとすれば、外国から見てもわかりやすいのではないか。
- ○ 不動産登記制度は、登記が問題なくできることを前提としている。一方、ライセンスに関する情報を他人に知られたくない場合があるなど、登録すること自体にマイナスの効果がある専用実施権等に関して、登録が問題なくできることを前提とした制度が妥当するのかについては、今一度考え直す必要があるだろう。
- ○ 登録を効力発生要件とする現行の専用実施権制度は、取引安全を強く重視した制度だが、実務上の問題が多く、現代において適切な制度であるかは十分に検討の余地がある。契約により効力が発生し、第三者に対して主張する際にのみ登録が必要という制度は、民法における物権の仕組みとも一致するため、導入可能と考えられる。
- ○ 民法の世界では、取引安全のために強い権利は外から見てわかるようにしておくべきと考えられている。知財の世界において、情報開示による権利者の不利益に対応し、独占的ライセンスの開示事項の範囲を現行の専用実施権より狭めることを検討する際には、公示システムとの折り合いをどうつけるか等の問題について十分に勘案しておく必要がある。
<特許出願段階からの早期活用について>
- ○ 出願段階における特許権への質権設定の解禁や出願段階における特許権の公示・登録制度の創設は、実務のニーズに対応するものであり、賛成。
- ○ 譲渡担保による資金調達は、金融機関が特許権の名義人になる点で、特にベンチャー企業にとっては抵抗感がある。出願段階における特許権への質権設定をさほどコストをかけずに解禁できるのであれば、解禁しても良いのではないか。
※本議事録は事務局の文責にて作成したものであり、出席者各位の了承を得たものではない。
1実施許諾する用意がある旨を登録した特許に対して特許維持料等を減免する制度。実施許諾の用意がある旨を公表するインセンティブを与えて、特許の流通・活用を促進することを目的とする。
2物品・権利購入、投資、M&Aなどの商業取引の際に行われる、対象とする物や権利・企業の財産的価値や状況等に関する各種の調査のこと。本文中では、購入予定の特許権にどのような内容の権利がどれだけ付随しているかについての調査を指している。
3ここでの「独占的ライセンス」は、専用実施権と独占的通常実施権を指す。
- <この記事に関する問い合わせ先>
- 特許庁総務部総務課
- 電話:03-3593-0436(直通)
- FAX :03-3593-2397
- E-mail:問い合わせフォーム
[更新日 2009.5.15]