| 工業所有権審議会損害賠償等小委員会報告書のとりまとめについて |
平成9年11月25日 特許庁 |
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工業所有権審議会損害賠償等小委員会は、平成9年4月24日に開催された第33回工業所有権審議会総会において、法制部会の下に設置された。
中山信弘東京大学教授を委員長として、学会、行政機関、裁判所、弁護士、弁理士、産業界、マスコミの各界から選ばれた21人の委員(別紙1参照)により、計7回の会合が開催され、「知的財産権侵害に対する救済等のあり方」について、民事、刑事等の幅広い検討を経て、報告書が本日まとめられた。 |
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(1)知的財産権の侵害に対する救済等のあり方については、我が国の社会経済の環境が大きく変化してきたにもかかわらず、現行特許法等が制定された昭和34年以来、約40年もの長期にわたり、見直しがなされていない。
我が国経済がキャッチアップ型からフロントランナー型に移行していく中で、今後科学技術創造立国を実現するためには、知的財産の強い保護を可能とするシステムを構築する必要がある。
(2)一方、我が国の知的財産権侵害訴訟については、産業界を始め各方面から、訴訟期間が長い、損害賠償の認容額が低い、裁判にかかる費用が高い、といった問題点が一般的に指摘されている。
審議会においても、以下のような意見が出された。
[我が国の損害賠償額に関する代表的意見]
- 研究開発に多額の投資をしており、その成果物である知的財産の保護をきちんとしてほしい。権利侵害に対して十分な賠償が保証される制度を構築しないと、研究開発意欲がそがれる。
- 研究費をあまりかけず、人件費も安い地域からの追い上げを考えると、模倣に対する保護の強化を図ることは重要。
- 裁判は長期間を要するうえ、費用もかかる。しかし、損害賠償の認定額は少なく、裁判で勝っても費用で訴訟倒れになるケースが多い。日本では侵害し得。
- 賠償額の低い日本の裁判には期待できない。訴訟を起こすなら、米国の裁判制度を利用する。日本の特許裁判の空洞化が進む。
- 侵害訴訟では、被告の代理人は楽だが、原告の代理人は負担が多く大変。
- 故意侵害の場合には、1.5〜3倍の賠償額が求められるべき。
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(3)従来の判決をみると、我が国の損害賠償額は米国に比べてはるかに低い(別紙2参照)。また、認定額は通常ライセンス料に留まっている場合が多いため、誠実にライセンス契約を締結するよりも、侵害が発見された場合に損害賠償を支払うという、侵害し得の社会になっていると言われている。 |
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本小委員会では民事、刑事にわたる広範な検討を行った。主な検討項目は以下のとおり。検討の中心は特許法であったが、他の知的財産法についても同じ方向での検討が可能。
検討内容は科学技術創造立国の前提条件の整備に資するとともに、知的財産権訴訟の早期かつ適切な解決につながるもの。 |
(1)民事的救済のあり方(別紙3参照)
1. 逸失利益の賠償の引き上げ(別紙4参照)
立証責任の転換等による逸失利益の立証の容易化、三倍賠償制度の導入等により損害賠償額の引き上げを図る。
2. 実施料相当額の賠償の引き上げ
特許法において最小限の賠償額として実施料相当額を定めている規定について、三倍賠償制度の採用も含め、具体的事情を賠償額に加算しうるようにする。
3. (侵害の立証、損害額の計算に関する)文書提出等の訴訟手続の改善
侵害物の特定に必要な書類の提出義務、侵害者の協力義務に基づいた鑑定報告書の作成等により、権利者の証拠収集を容易にする。
4. 裁判制度の充実・強化
迅速性の要請に応えるとともに、技術的専門性を確保するため、裁判体制の充実・強化を図る。
また、特許裁判所の検討を行う。
(2)刑事罰のあり方(別紙5参照)
1. 侵害罪における刑罰の強化
工業所有権の侵害に対する刑事罰は、刑法上の他の財産罪と比較して軽くなっているため、刑事罰を引き上げ、侵害抑止効果を高める。
2. 親告罪規定の見直し
公訴の提起に告訴等を必要とする親告罪規定を、商標法と同様に他工業所有権法においても非親告罪とし、侵害抑止効果を高める。
3. 両罰規定における法人重課の導入
個人の場合よりも法人に対して重い罰金刑を課す法人重課を、商標法のみでなく他工業所有権法でも採用し、法人に対する制裁機能を高める。
(3)無効審判の審理促進
無効審判は侵害訴訟の対抗手段として請求されることが多いため、侵害判断の前提となる権利の有効性を早期に決定すべく、審理を1年以内に行う。 |
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本報告書の内容は、平成9年12月16日工業所有権審議会法制部会・同審議会総会における審議の後、工業所有権審議会答申として具申される予定。
その後、政府部内で各方策について必要な検討を加えた上、来年の通常国会に提出する予定。 |
(別紙1) |
工業所有権審議会損害賠償等小委員会委員名簿(50音順・敬称略)
氏 名 |
役 職 名 |
委員長
中 山 信 弘
委員長代理
鎌 田 薫
委 員
伊 藤 眞
揖 斐 潔
尾 崎 英 男
尾 崎 道 明
齋 藤 博
酒 井 一 弘
滝 井 朋 子
竹 田 稔
武 田 康 嗣
田 中 正 治
長 岡 貞 男
永 岡 文 庸
馬 場 錬 成
原 田 芳 宏
板 東 久美子
平 井 宜 雄
藤 野 政 彦
丸 島 儀 一
山 口 厚 |
東京大学 教授
早稲田大学 教授
東京大学 教授
法務省民事局参事官
弁護士
法務省刑事局参事官
筑波大学 教授
日本知的財産協会 副会長
(株)リコー 専務取締役
弁護士
東京高等裁判所 判事
(株)日立製作所 専務取締役
弁理士会 会長
一橋大学イノベーション研究センター 教授
日本経済新聞社 論説委員
読売新聞社 論説委員
東レ(株)代表取締役副社長
文化庁文化部著作権課長
東京大学 教授
武田薬品工業(株) 代表取締役副社長
(社)経済団体連合会 産業技術委員会
知的財産問題部会 部会長
キヤノン(株) 専務取締役
東京大学 教授
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(別紙2)
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【米国】
| 認容額 |
判決番号 |
権利内容 |
(1) 1,148億 4,280万円
(2) 260億 1,943万円
(3) 203億 9,144万円 |
17USPQ2d 1711/1991
229USPQ 81/1986
24USPQ2d 1321/1992 |
インスタントカメラの特許
岩削用ビットのシールの特許
整形外科ギブス包帯の特許 |
※判決当時の為替レートで算出した。 |
【日本】
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(1) 7億 6,100万円
(2) 7億 2,881万円
(3) 2億 4,029万円 |
東京地裁S48.5.25
静岡地裁H6.3.25
東京地裁S43.7.24 |
二輪自動車の意匠
ビタミンD化合物の特許
硬質物質粉砕装置の特許 |
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(別紙3)
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(別紙4)
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特許権が侵害された場合には、権利者は民法709条(不法行為)に基づいて逸失利益の請求が可能である。
逸失利益とは、「侵害行為がなければ得られたであろう権利者の利益額」である。この立証には因果関係を始めとした要件の立証が必要であるが、特許権の場合、その立証が困難であるため、特許法では様々な特則を設け、権利者の軽減負担を図っている。
特許法102条1項では、侵害者利益(侵害者が侵害行為により受けた利益額)を逸失利益と推定している。また、同条2項では最小限の損害賠償額として実施料相当額(通常ライセンス契約を締結する際に支払うべき額)を規定している。
しかし、上記の表にみられるように現状は大半が実施料相当額に留まっている。 |
(別紙5)
刑事罰のあり方
1.現行制度
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懲役刑 |
罰金刑 |
非親告罪 |
法人重課 |
| 特許法 |
5年 |
500万円 |
親告 |
× |
| 実用新案法 |
3年 |
300万円 |
親告 |
× |
| 意匠法 |
3年 |
300万円 |
親告 |
× |
| 商標法 |
5年 |
500万円 |
非親告 |
1億5000万円 |
| 著作権法 |
3年 |
300万円 |
親告 |
× |
| 半導体チップ法 |
3年 |
100万円 |
親告 |
× |
| 不正競争防止法 |
3年 |
300万円 |
非親告 |
× |
| 独占禁止法 |
3年 |
500万円 |
公取による告発 |
× |
| 証券取引法 |
3年 1年 |
300万円(相場操縦等) 100万円(相場操縦等) |
− − |
3億円 1億円 |
※1 法定刑の数値は上限
※2 刑法上の財産罪では窃盗罪、詐欺罪、電子計算機使用詐欺罪の懲役刑の上限は10年
2.検討案
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懲役刑 |
罰金刑 |
非親告罪 |
法人重課 |
特許法 |
10年 |
500万円 |
非親告 |
法人重課 |
商標法 |
10年 |
500万円 |
非親告 |
1億5000万円 |
※実用新案法、意匠法においても同様の検討を行う。
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