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答申・報告書・講演録

第36回工業所有権審議会総会について
 
平成10年12月14日
特  許  庁
 
 
1.概要
   本日午後、通商産業大臣の諮問機関である工業所有権審議会(会長:金井務 (社)経済団体連合会産業技術委員会委員長)の総会が開催された(同審議会法制部会との合同会議)。
 同総会では、知的財産権保護の強化(プロパテント政策)のための具体的な制度改正事項を盛り込んだ2つの小委員会報告が、審議会答申として了承された。
 また、WTO次期自由化交渉でのTRIPS協定見直しを始めとする、今後の工業所有権制度の国際調和の在り方について、来年早々、約10年ぶりに国際部会を開催し検討することが報告された。
 
2.審議内容
  (1)特許法等の改正に関する答申について(別添1)
   6月の総会において設置された企画小委員会及び商標小委員会(委員長はいずれも中山信弘東京大学教授)の2つの報告書(11月26日)の内容が、工業所有権審議会答申として了承された。
  ○企画小委員会報告書 : 権利取得の早期化、広く強く早い救済措置の実現等
  ○商標小委員会報告書 : マドリッド協定議定書への加入等
 
  (2)パブリック・コメント制度の導入について
   政策の立案等を行うに当たって、広く国民から意見を求め、これを審議に当たっての参考とするためのパブリック・コメント制度を工業所有権審議会に導入することを決定した。
 
  (3)国際部会の開催について(別添2)
   2000年に開始される予定のWTO次期自由化交渉におけるTRIPS協定の見直しを始めとする、今後の工業所有権制度の国際調和のあり方について、国際部会を開催し検討を行うこととした。また、国際部会長として中山信弘東京大学教授が指名された。
 
3.今後のスケジュール
   答申を踏まえ、政府部内で必要な検討を加えた上で次期通常国会に特許法等の一部を改正する法律案を提出する予定。
 また、国際部会において来年3月を目途に報告書を取りまとめるべく、精力的に検討を行う予定。
 

 
工業所有権審議会委員名簿(50音順)
氏    名 役  職  名
会  長 
○金 井   務(社)経済団体連合会産業技術委員会 委員長
委  員 
 秋 草 直 之(社)日本電子工業振興協会 副会長
○秋 吉 稔 弘弁護士
 池 田 徳 三中小企業事業団 副理事長
○石 垣 君 雄最高裁判所事務総局 行政局長
 板 井 昭 子(株)医薬分子設計研究所 代表取締役社長
○井 上 由里子筑波大学 助教授
○内 田 公 三(社)経済団体連合会 事務総長
○大 塚 文 昭弁理士
○小 川 勝 男日本知的財産協会 理事長
 奥 田   碩(社)日本自動車工業会 副会長
○小 野 雅 文(社)発明協会 理事長
 鎌 田   薫早稲田大学 教授
○菅 野 利 徳全国中小企業団体中央会 専務理事
 黒 田 玲 子東京大学 教授
 權 藤 卓 也(社)情報科学技術協会 会長
○齋 田 信 明(財)工業所有権協力センター 理事長
○志 賀 學(財)機械産業記念事業財団 会長兼理事長
○篠 原   徹日本商工会議所 常務理事
 柴 田 勝 隆(財)日本テクノマート 理事長
 下 条 裕 代(社)婦人発明家協会 会長
○城 下 武 文弁理士
○滝 井 朋 子弁護士
○竹 内 三 郎弁理士会 会長
○武 田 正 彦(社)日本国際工業所有権保護協会 副会長
○竹 田   稔弁護士
 竹 原 あき子和光大学 教授
○田 中 康 久東京高等裁判所 判事
 谷 野   陽(財)食生活情報サービスセンター 理事長
○永 岡 文 庸日本経済新聞社 論説委員
 中 村 喜久男(社)日本オフィス家具協会 会長
 中 村 守 孝科学技術振興事業団 理事長
 永 山   治日本製薬工業協会 会長
◎中 山 信 弘東京大学 教授
 中 山 ハナ子(社)全国発明婦人協会 理事・関西支部長
○花 岡   巌弁護士
 藤 村 宏 幸(社)発明協会 副会長
 藤 村 正 哉日本知的財産協会 会長
○保 延   進(財)工業所有権電子情報化センター 理事長
○丸 島 儀 一(社)経済団体連合会 産業技術委員会
 知的財産問題部会 部会長
 三 浦   昭(社)日本化学工業協会 会長
 宮 原   明(社)日本事務機械工業会 会長
○守 屋 一 彦日本化学繊維協会 副会長・理事長
 森 脇 康 博弁理士
 山 科   誠(社)日本玩具協会 会長
 吉 田 豊 麿(財)知的財産研究所 専務理事
○若 杉 和 夫石油資源開発(株) 取締役社長
○和 田   裕(財)日本特許情報機構 理事長
◎は法制部会長、○は法制部会委員
 

 
別添1
 
工業所有権審議会
特許法等の改正に関する答申について
 
平成10年12月14日
通商産業省特許庁
 
 本日、工業所有権審議会企画小委員会及び商標小委員会(両小委員会とも委員長は中山信弘東京大学法学部教授)の2つの報告書の内容が工業所有権審議会答申として了承された。その骨子は以下のとおり。
 
1.プロパテント政策の意義
 大競争時代が本格化する中、我が国の21世紀に向けての課題は創造的技術開発の促進、それによる新規産業の創出、ひいては科学技術創造立国の実現。
 そのためには、知的財産権制度の強化(プロパテント政策)により投資の迅速かつ十分な回収を可能とし、創造型技術開発に対するインセンティブを高めることが必要であり、「創造」→「権利設定」→「権利活用」からなる「知的創造サイクル」の加速化が不可欠。
 なお、米国で80年代以降展開されたプロパテント政策は同国の産業競争力強化につながったと評価されている。
科学技術創造立国の実現
 
(制度改革)
1.権利取得の早期化
審査請求期間の短縮、審判書記官制度の確立
2.広く強く早い救済措置の実現
特許侵害に対する救済措置の拡充、特許期間の延長登録制度の見直し
3.知的創造の加速化のための環境整備
情報化時代への対応、手続の簡素化
(意識改革)
1.キャッチアップ型からフロンティア型へ
・大量生産による収益⇒高付加価値生産、ライセンス料・権利移転による収益
2.フルセット型から重点型へ
・広範な技術を出願
 ⇒優位技術重視(質重視、基本特許)
3.守りから攻めへ
・防衛的*・追従的な意思決定
 ⇒経営戦略的意思決定
*我が国では出願40万件のうち、半分の20万件しか審査請求されず、さらにその内、12万件しか登録されない。また、現存する90万件の特許権のうち、36万件が未利用特許となっている。
 
(米国のプロパテント政策に関連する主な出来事)
1982年 連邦巡回控訴裁判所(CAFC)創設
1985年 ヤングレポート発表(知的財産権保護の強化を提言)
1988年 包括貿易法成立(通商法スペシャル303条新設、関税法337条、特許法改正)
 
(図) 技術貿易収支は1986年から1995年の累積で米国が大幅黒字の一方で、我が国赤字。
日米間の技術貿易収支
出典:日本銀行「国際収支統計月報」、米国商務省「SURVEY of CURRENT BUSINESS」
 
2.知的創造サイクルの加速化のための具体的対応
(1)知的財産権制度の強化等
 経済のグローバル化が進展する中、「企業が国を選ぶ時代」が到来。各国は企業の活力が最大限発揮できるような制度設計を行うことが求められている。
 かかる観点から、我が国は企業の技術開発へのインセンティブを高めるため、知的財産権制度の強化に向けた制度改正を早急に行うべき。
 そうした制度設計とともに技術開発の重視、知的財産権の活用に向けた広く各方面における意識改革が必要。
 
権利取得の早期化(審査請求期間の短縮)
 我が国の審査請求期間(7年)は国際的に見て長い(欧州2年、米国なし)。その結果、長期間にわたり権利の帰趨が未確定な出願が214万件に上り、企業の技術開発を阻害。このため、審査請求期間を3年に短縮。
 
○権利の帰趨が未確定出願が権利化された場合自社技術が抵触のおそれ
 ⇒監視や設計変更等の多大な負担=技術開発の障害
○早期に権利化が確定する欧米の審査結果を中心に特許の国際相場が確立
 ⇒我が国の審査結果が尊重されない。
○欧米の特許を基礎に実施契約や許諾が行われる(日本特許の空洞化)。
日米欧での特許取得時期比較
日米欧での特許取得時期比較
資料:特許庁作成(ダーウェン社データベースの検索による。)
注)1985年に日本に出願された日本人出願のうち、欧米にも出願されたもの(5,926件)を対象に、日米欧での特許取得時期を比較。日本の特許取得時期については公告年を使用。なお、同一の原出願から派生した分割出願等のうち異なる年に特許取得したものについては、それぞれ1件としてカウントしたため、米国の特許取得件数は調査対象件数を上回っている。日本の特許件数が少ないのは、審査請求されないものや、審査未了のもの等があるため。
 
「広く強く早い」権利の実現
【A 権利侵害に対する救済措置の拡充】
 我が国の知的財産権侵害訴訟については「審理期間が長く、損害賠償認定額も低いため、権利者の保護が不十分」「知的財産権侵害訴訟を起こすなら国内ではなく海外の裁判所を利用する」との指摘が存在。
 特許侵害に対する救済措置の拡充が喫緊の課題。
 
(図)損害賠償額の日米比較
損害賠償額の日米比較
 
(図)欧米企業との特許訴訟の件数
  日本企業と欧米企業との特許訴訟のうち、日本の裁判所で争われる件数は1割未満
欧米企業との特許訴訟の件数
 
<具体的方策>
○侵害行為の立証の容易化(文書提出命令の拡充、積極否認の特則の導入)
・相手方の行為の立証に必要な文書提出命令の拡充等の規定を創設
・相手方が権利者の主張を否認するときは自己の行為を説明しなければならないこととする規定の導入(積極否認の特則)
欧米企業との特許訴訟の件数
 
○損害の立証の容易化(計算鑑定人制度の導入)
・膨大な経理会計等に関する専門的書類の解読のため、損害の計算を行えるような計算鑑定人制度を設け、権利者の立証負担を軽減。
・侵害者に計算鑑定人に対する協力義務を課する。
損害の立証の容易化
 
○損害額の立証の容易化
 確信を得るに足る立証のされた事実だけでなく、裁判官の判断により相当程度の蓋然性がある事実まで考慮して、「実質的な」規模の損害賠償の実現を図る。
損害額の立証の容易化
 
○刑事罰の強化
 詐欺行為で権利を取得したり(詐欺行為罪)、製品に虚偽表示を付して(虚偽表示罪)、利益を得た法人に対して、法人重課を導入。
刑事罰の強化
 
○行政的対応の強化(判定制度の強化等)
工業所有権紛争の早期解決及び訴訟解決手段の充実強化を図るべく、
・当事者主義的手続を取り入れて特許庁の判定制度を強化
・裁判所が特許庁に技術専門的判断を求めることができることとする。
証拠調べの規定の整備等による判定制度の強化
 
(参考)侵害訴訟手続に関する検討課題と改善策
侵害訴訟手続に関する検討課題と改善策
 
【B 特許期間の延長登録制度の拡充】
先端的医薬品開発等を促進するため、特許期間の延長登録制度を拡充。
○特許発明を実施できなかった期間が2年以下の場合も5年を限度として特許期間を延長。
○許認可を特許期間満了前6月以後に受けた場合も特許期間を延長。
特許権の延長登録制度: 薬事法等による公的な承認に時間がかかり、権利がする制度が存在(特許権の存続期間は出願から20年)。
a: 現行では実施できなかった期間が2年未満の場合には延長が認められない。
b: 現行では権利期間満了前6月以降は延長登録出願はできない。
 
特許期間の延長登録制度の拡充
 
【C 申請による早期公開制度の導入】
 権利保護の強化の観点から出願から1年6月経過前であっても出願人希望する場合には出願公開を行う早期出願公開制度を導入し、権利保護の始点を早める。
 
 現行、出願から1年6月後に出願内容を一般に公開(出願公開)することにより権利が保護される(補償金請求権の発生)。
 
申請による早期公開制度の導入
 
 
(2)企業の国際競争力向上のための商標制度の改正
 大競争時代が本格化する中、商品・サービス(商品等)は多様化。他社と品質面で識別された商品等を各国において提供することが企業の課題。
 このような中、商品等の品質を消費者へ訴求する手段である商標の役割は増大。商標を巡るかかる環境変化に対応し、
○企業の円滑な国際展開に必要な商標権の外国における円滑な取得を可能にするマドリッド協定議定書へ加入。
○商品のライフサイクルの短期化等に対応して商標保護の早期化を図る。
 
丸1商標とは
   商標とは、事業者が自己の取り扱う商品等他人の商品等と区別するために、その商品等について使用するマーク(標識)。
 近年、商標(ブランド)により消費者は一定の品質を想起する等商標の経済的価値は著しく向上。
 
(参考)ブランド価値上位10位
順 位ブランド名価値(兆円)
コカコー6.2
マルボロ6.2
IBM3.1
マクドナルド2.6
ディズニー2.2
ソニー1.9
コダック1.9
インテル1.7
ジレット1.6
10バドワイザー1.6
(資料:Financial World(1997年9月/10月号):1ドル=130円で計算)
 
(参考)税関による知的財産権侵害物品の輸入差止状況(大蔵省調べ)
   (注)1申告で複数の権利にまたがるものは、それぞれの権利ごとに計上。
(件数)
税関による知的財産権侵害物品の輸入差止状況
 
丸2マドリッド協定議定書による商標保護の仕組み
   一国に出願又は登録されている商標を基礎として、保護を求める国(指定国)を明示して国際事務局に国際出願すると12か月(又は18か月)以内にその指定国において保護の可否が決定。本議定書により我が国企業は海外において簡易、迅速かつ低廉に商標権を取得可能。(協定議定書は1995年12月に発効。加入国数は欧州を中心に33か国。)
 
(図)マドリッド協定議定書の仕組み
マドリッド協定議定書の仕組み
 
(参考)マドリッド協定議定書加入に関するアンケート調査(対象企業約2000社)の概要
・加入によるメリットとして  
「1回の出願で複数国での権利取得が可能」
「経費が安い」
「登録が早い」
83%の企業
59%の企業
31%の企業
・「議定書加入にメリットあり」との回答 94%の企業
・「議定書に基づく国際出願を検討」との回答 95%の企業
 
(参考)マドリッド議定書加入による我が国企業の外国出願経費の節減額
    (今後10年間、加入国数増加の想定等の一定の仮定の下での試算)
マドリッド議定書加入による我が国企業の外国出願経費の節減額
  ※29か国は現時点でデータ入手可能な議定書加盟国数
※韓、米、加、ブラジル、豪は日本から外国への出願件数上位5カ国(議定書加盟国を除く)
 
丸3商標の早期保護制度の確立
   商標は模倣が容易であるが、近年、商標が有する信用力、顧客吸引力等が設定登録前に既に発生し、商標に化体した信用力が毀損される事例が存在。
 登録前の商標についても一定程度保護するべく、

○出願から設定登録までの間について損害賠償等の請求権を設定(設定登録後に権利行使可能)。

○権利が確定していない時点における第三者との関係のため、出願公開制度を創設。

 
商標の早期保護制度の確立
 
3.今後のスケジュール
 平成11年2月     次期通常国会へ必要な法案を提出(予定)
 

 
別添2
 
工業所有権審議会国際部会の開催について
 
1.審議事項
(1) 次期自由化交渉に向けた我が国の対応
  2000年から開始される予定のWTO(世界貿易機関)次期自由化交渉において、TRIPS協定(知的財産権の貿易関連側面に関する協定)の見直しに関する交渉に対し、工業所有権制度の国際調和を推進する観点から適切に対処していく必要がある。
(2) 途上国における実効ある知的財産権の保護
  アジア諸国を中心に我が国企業の有する知的財産権の侵害問題が深刻化しており、実効ある知的財産権保護の実現が求められている。
 
2.国際部会の開催
(1) 工業所有権審議会国際部会を開催し、TRIPS協定見直しへの対応等について早急に検討を始め、3月中に結論をとりまとめる。
(2) 途上国における実効ある知的財産権の保護については、4月以降、産業界を主要メンバーとするワーキンググループを設置し、検討する。
 
3.スケジュール
平成10年12月14日 工業所有権審議会総会において国際部会の開催を報告
平成11年3月 国際部会報告書とりまとめ
 
4.WTO/TRIPS協定の見直しの観点
丸1TRIPS協定について
  TRIPS協定は、各国知的所有権制度の国際標準を定めている。
WTO/TRIPS協定
(世界貿易機関/知的所有権の貿易関連側面に関する協定)
特許意匠商標地理的
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著作権その他
各国の最低限の保護水準

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