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答申・報告書・講演録

工業所有権審議会商標小委員会報告書
〜企業活動の国際展開に伴う商標保護のための制度整備について〜

平成10年11月26日


目     次
 
roma01 .はじめに ・・・ 2
 
roma02 .報告書の概要 ・・・ 5
 
roma03 .企業活動の活発な国際展開に伴う海外における商標保護の必要性 ・・・ 6
 
roma04 .マドリッド協定議定書加入の意義 ・・・ 8
  1. マドリッド協定議定書による商標保護の仕組み ・・・ 8
  (1) マドリッド協定議定書の概要
  (2) 議定書の経緯と現況
  (3) 議定書加入によるメリット
 
  2. マドリッド協定議定書加入に向けた我が国の状況 ・・・10
 
roma05 .マドリッド協定議定書加入に伴う主な論点とその対応 ・・・12
  1. 登録の効果の発生とその内容について ・・・12
  2. 国際登録簿について ・・・15
  3. 国際登録の我が国での情報提供のあり方について ・・・15
  4. いわゆるセントラルアタックについて ・・・18
 
(参考資料)
roma06 .おわりに ・・・23


roma01.はじめに
 近年における企業の海外進出や商取引のボーダーレス化による国際競争の激化という状況を考慮すると、海外で簡易、迅速かつ低廉な手段による商標の保護が得られる枠組みが必要である。この枠組みとして商標の国際登録制度であるマドリッド協定議定書が発効しており、我が国もそのシステムへの加入の必要性が高まっている。
 また、迅速な権利付与を始めとした課題を商標制度の国際的調和の観点から検討し、よりよい商標制度を作り上げていく必要性もある。
 本小委員会は、これらの課題について幅広い観点から調査、検討を行うため、平成10年6月2日に開催された第35回工業所有権審議会総会において、法制部会の下に設置された。
 以降、中山信弘東京大学法学部教授を委員長として、幅広く各界から有識者を募り16名の委員により計5回の会合を開催し、アンケート調査やパブリックコメント制度の活用等によって得られた様々な意見も十分に参考にしつつ、鋭意審議を行い(下記開催経過参照)、本報告書をとりまとめるに至った。
 
(開催経過)
第1回(平成10年7月8日)
  1.商標に係る工業所有権行政の現状について
  −審査処理の現状と迅速化に向けた取り組み−
  2.国際的な商標の保護について(マドリッド・プロトコル)
  (1)マドリッド・プロトコルの概要
(2)企業における「海外商標管理の実情」等について
(3)マドリッド・プロトコルに関する20社アンケートの結果報告(要約)
  3.商標制度に関するアンケートの実施について
 
第2回(平成10年7月30日)
  1.「マーケティング研究におけるブランド論の変遷」
    (青木幸弘委員(学習院大学経済学部教授))
「国際的ブランド展開の意義(マドリッド・プロトコルとの関係)」
(小川孔輔委員(法政大学経営学部教授))
  2.第1回商標小委員会において出された指摘事項について
    maru01欧米及びアジア主要国の国内出願と外国出願の推移
maru02マドリッド・プロトコルを巡る諸外国の動向
  3.模倣品を巡る実態について
  4.マドリッド・プロトコル加盟に係る論点について
 
第3回(平成10年9月22日)
  1.マドリッド・プロトコル加入等について
    (1)マドリッド・プロトコル加入等についての企業アンケート結果報告
(2)マドリッド・プロトコル加入等に伴う法整備に係る論点の方向性
(3)マドリッド・プロトコルの運用に係る国際比較
  2.商標小委員会におけるパブリックコメント制度の導入について
 
第4回(平成10年10月28日)
  1.マドリッド協定議定書加入等について
    (−工業所有権審議会商標小委員会報告書(案)−についての議論)
  2.パブリック・コメントの結果について
 
第5回(平成10年11月26日)
  1.工業所有権審議会商標小委員会報告書とりまとめ
 
(注:「マドリッドプロトコル」とは、本文中、「マドリッド協定議定書」のこと)
 

 
商標小委員会委員名簿(50音順・敬称略)
 
氏    名 役   職   名
委 員 長
  中 山 信 弘
 
委  員
  青 木 幸 弘
  池 田 守 男
  梅 本 和 義
  小 川 勝 男
  小 川 孔 輔
  鎌 田   薫
  川 崎   肇
  菅 野 利 徳
  北 川 富 造
  菅 原   修
  田 中 康 久
  永 岡 文 庸
  松 尾 和 子
  丸 島 儀 一
  米 澤 健一郎
 
東京大学 教授
 
 
学習院大学 教授
株式会社資生堂 専務取締役
外務省経済局国際機関第一課長
日本知的財産協会 理事長
法政大学 教授
早稲田大学 教授
日産自動車株式会社 取締役
全国中小企業団体中央会 専務理事
大正製薬株式会社 理事
弁理士会 副会長
東京高等裁判所 判事
日本経済新聞 論説委員
弁護士
キヤノン株式会社 専務取締役
ソニー株式会社 常務
 

 
roma02.報告書の概要
 
1. 企業活動の活発な国際展開に伴う海外における商標保護の必要性
 国際的な企業間競争が進展する中で、国際市場において質の高い識別された商品・サービスを提供していくことが重要となっている。
 これに伴い、質の高い商品・サービスを製造・提供することと併せて、そうした商品・サービスを顧客に対して識別、保証、広告する機能を有するものとして、商標の重要性が一層高まっている。現に、優れた商品・サービスに付される商標は、いわゆる「ブランド」として国際的にも高い経済的価値を有すると評価されるものが多数存在するようになっており、またその傾向も顕著になっている。
 このように、商品・サービスの個性や質の象徴としての商標を、企業は戦略的に活用しており、企業の国際展開に際しても簡易、迅速かつ低廉に商標の保護を図る必要性が高まっている。
 
2. マドリッド協定議定書加入に向けた対応
 海外における商標権の取得を簡易かつ迅速に行うシステムとして、マドリッド協定議定書が存在している。このシステムを用いれば、これまで各国個別の手続によらなければならなかった海外における商標権の取得が、複数の加入国を指定することによって一括して行うことができ、手続コストも低廉になるものである。
 そうした点を含め様々なメリットを有するマドリッド協定議定書のシステムへの加入については、これまでも法制面や運用面等から検討が鋭意行われてきた。最近に至り、maru01加入国が設立当初の4ヶ国から33カ国にまで増加(日本からの外国出願の4割をカバー)し、欧州の主要国や中国といった日本企業にとって重視すべき国が参加していること、maru02さらに米国については、議会を通過しなかったものの加入のための法案が既に準備されたこと(米国が加入すれば日本からの外国出願の5割をカバー)、maru03当該システムが求める国内の審査処理のスピードへの対応の見込みが立ったこと、maru04国内ユーザーのニーズが急速な高まりを見せていること等の国内外の状況変化に鑑みれば、我が国としてマドリッド協定議定書への加入の機は熟したものと考えるべきであり、その早期実現が望まれる。
 マドリッド協定議定書は、我が国のような審査主義国にも配慮した制度であるとはいえ、国際登録に係る効果の発生の仕組み等、我が国の商標制度と完全に整合しているものではない。しかしながら、多数の加入国を有するマドリッド協定議定書の制度との整合性を十分に図っていくことが、我が国商標制度にとって国際的調和の観点から必要である。併せて、両制度の整合性を図った結果がユーザーにとって不都合なものとならないよう、国際登録簿の扱いや国際登録に関する情報提供を適切に行う必要がある。
 さらに、国際的な商標保護を一層進展させるため、商標の国際出願の約10%を占める我が国が、積極的に国際的な枠組みに参加するとともに、他の未加入国、就中、日本企業にとって重要なビジネス市場であるアジア諸国についても、マドリッド協定議定書への加入に向けた検討を働きかけていくことが必要である。
 

 
roma03.企業活動の活発な国際展開に伴う海外における商標保護の必要性
 
 近年の情報通信を始めとする様々な技術革新の著しい発達とそれに伴う企業活動の国際展開の活発化により、東西冷戦構造の終焉による市場の拡大の中で、いわゆる大競争時代が本格化している。そうした中で企業戦略上、我が国企業は活動を国際展開させており、また、外国企業も日本での活動を活発化させている。かかる状況の下、顧客ニーズも多様化しており、技術革新をベースにあらゆる分野で商品・サービスの高品質化・識別化が顕著になっている。
 こうした高品位の商品・サービスをめぐって展開される企業間競争においては、それらの個性を表象するものとして商標が有効に用いられており、特定の企業の信用が商標に累積的に化体されることで、高い価値を有するブランドが確立されるようにもなってきている。また、ブランドイメージを維持するために企業が商品・サービスの品質を高く保つ努力を払うことで、さらに高品位の商品・サービスが生み出されることにもつながっている。商品・サービスのライフサイクルの短期化とも相俟って、ブランドが企業イメージを想起させ商品・サービスの基本的価値にも影響を与えるようになっていることからも、その傾向は一層顕著なものとなっている。
 こうした商品・サービスと商標との相乗効果を積極的に活かしつつ、企業は国際市場の中で戦略的に商標を位置付けるようになっており、国内のみならず海外においても、簡易、迅速かつ低廉な方法による商標権の取得・保護が求められている。
 事実、次図からも明らかなとおり、近年、商標の保護を求める動きは急速かつ世界的なものとなっている。日本においても同様、外国への商標出願数について、1986年〜88年の増加率が23.8%(11,231件→13,906件)、1989年〜91年の増加率が24.2%(17,753件→19,958件)、1992年〜94年の増加率が40%(19,185件→26,859件)、また、外国出願の対象国が、1986年には76カ国だったのが、1994年には95カ国にまで増加との動きが見られるように海外における商標保護の必要性は急速に高まっていると言える。(データはWIPO統計)
(参考1:商標の基本的機能)
(参考2:いわゆるブランド価値の向上について)
 
世界の商標出願の推移
* 内国出願と外国出願を分類して報告してない国があるため、上のグラフの合計数字は一致しない。
資料:特許庁年報 WIPO統計(1994)

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