平成24年の新春を迎え、謹んで新年の御挨拶を申し上げます。
昨年、3月11日に我が国は未曾有の大災害に見舞われました。被災された皆様に対しましては、旧年中の御苦労を心からお慰め申し上げ、新年の御多祥を祈念申し上げます。
今回の震災により、被災5県の特許出願は、震災のあった3月には大きく減少したものの4月には前年度並みに回復しており、全国の特許出願を見ても、3月に若干の落ち込みは見られるものの4月以降は前年度並みで推移しております。このように、我が国の知財活動が引き続き活発であることを嬉しく思います。
我が国の知財活動の動向は、この15年間で日本企業の海外出願比率が倍増しておりますが、昨年のPCT出願傾向については対前年同期比で20パーセント以上の伸びが続いており、国際的な出願がこれまで以上に増加しております。また、長年海外への支払超であった特許等使用料は、2003年に受取超に反転して以降、受取額が拡大を続けております。このことから、日本企業は旺盛な研究開発を続けつつ、海外における知財保護に励んでいることがわかります。近年、日本企業は国内に重要な基盤を維持しつつ、研究開発、生産、販売活動においてより適切な地域を選んで活動を行おうとしております。言い換えれば日本企業が強みとする技術やデザイン、ブランドをいかによりグローバルに活用するかが課題となっているということです。このように、日本企業の知財戦略が特に国際的な面を含めて一層重要となってきており、特許庁といたしましても、企業が知財を戦略的にかつグローバルに活用していける体制整備を加速していく必要を痛感しております。
我が国企業が円滑にグローバルなビジネス展開を図っていくためには知財の分野で、「より早く」、「より安く」、「より強い」知財の権利取得ができる環境整備が重要です。特許庁は、本年もこの課題につき引き続き強力に取り組んでまいります。「より早い権利」の達成のため、特許庁は2013年までに審査順番待ち期間を11か月に短縮するという中期目標を掲げておりますが、この期間は順調に短縮されてきて、現時点では25か月台となった順番待ち期間を引き続き短縮できるよう取り組んでまいります。また、「より安い権利」について、平成23年8月には、審査請求料の25パーセント引き下げを実施いたしました。残る課題は、「強い権利」の実現、グローバルに展開する企業が、円滑に安定した特許を取得できるという環境の整備であります。
「強い権利」の実現には知財に関する制度・運用の国際調和が重要です。昨年6月に日本で開催した日米欧中韓の五大特許庁長官会合において、知財の制度調和の重要性を改めて確認したところであり、今後より議論が加速していくことが期待されます。また、9月にはついに米国特許法が改正され、特許制度の国際調和の最大の障害となっていた米国の「先発明主義」は「先願主義」へと移行し、制度調和の機運がますます高まっています。このような流れの中で、今後も日本国特許庁は、知財の国際的な制度調和の観点で積極的に世界をリードしていきたいと考えております。また、運用面の調和を図る上で国際特許ネットワークの構築が重要です。日本は昨年11月に世界で初めて中国と特許審査ハイウェイ(PPH)を実施したところです。これによって、日本で権利化した技術を海外へ出願した場合、その約9割が簡素な手続で早期審査を受けられるようになりました。
今後重要性を増してくるASEAN加盟国との関係においても、これまで以上に知財面の協力強化が必要であり、本年2月に特許庁長官会合の開催を予定しております。
今や大企業だけでなく中小企業にとっても、海外展開を含めたグローバルな競争は避けて通れない課題となっています。日本の中小企業の数は約420万社、全企業の99パーセント以上を占め、日本のイノベーションを進展させる上で極めて重要ですが、日本企業の特許出願件数のうち中小企業が占める割合は、全体の11パーセントに留まっております。中小企業の経営者には、知財の活用が金融、経営全般に次いで重要な課題として認識されていますが、資金不足や人材不足等のため上手に活用されていないとの指摘があります。特許庁では、中小企業の方々が知財を十分に活用できるよう、知財総合支援窓口の設置、外国出願に対する補助、中小企業向け特許料の減免などの支援を行っております。本年4月からは、特許料金の減免期間を3年から10年に延長するなど支援を拡大いたします。素晴らしい技術を数多くもつ中小企業は、我が国の宝でありますので、引き続き、知財の権利化や海外展開等の支援をしてまいります。
さらに、日本企業がグローバルな競争を行うためには、これまでのものづくりに、デザインやブランドといった高い付加価値をこれまで以上に加えて世界に発信していくこと、またそれを知財として保護していくことが更に重要になってまいります。特許庁は、我が国企業が海外において意匠権を取得する際の手続・コスト負担を軽減するため、意匠の国際登録に関するヘーグ協定への我が国の加入について検討を進めてまいります。また、企業の多様なブランド展開を支援するため、音や動き、色彩など、より消費者に商品イメージ等を直接伝達する新しいタイプの商標の登録制度についても検討してまいります。
このように、特許庁では知財の保護・活用を通じ、ものづくり、デザイン、ブランドと様々な観点から、中小企業を含む我が国企業の活動の応援を強化してまいります。本年も多くの皆様から、特許庁の取組に御理解と御支援を賜りますようお願い申し上げまして、私の新年の挨拶とさせていただきます。
- 平成24年元旦
- 特許庁長官 岩井 良行
[更新日 2012.1.4]