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特許・実用新案の出願と審査に関して(詳細情報)

刊行物に記載された発明の認定に関する審査基準の変更について


  
<この記事に関する問い合わせ先>

  
特許庁特許審査第一部調整課審査基準室
電話:03−3581−1101 内線3112
FAX:03−3597−7755
E-mail:PA2A12@jpo.go.jp





平成15年12月24日
調整課審査基準室

 現行の審査基準においては、新規性及び進歩性を判断する際の刊行物に記載された発明の認定に関して、「記載事項の解釈にあたっては、技術常識を参酌することができ、当該刊行物の頒布時における技術常識を参酌することにより当業者が当該刊行物に記載されている事項から導き出せる事項(「刊行物に記載されているに等しい事項という。)も、刊行物に記載された発明の認定の基礎とすることができる。」(審査基準第II部第2章1.5.3(3)丸1)等と記載しており、刊行物に記載された発明の認定において、刊行物の頒布時における技術常識を参酌することとしています。
 このような運用は、日本の運用を、PCT国際段階の運用と調和させることを主たる理由として採用されたものです。

 しかし、審判部及び主要な裁判例では、刊行物に記載された発明の認定において、出願時の技術常識を参酌することとされています。また、今般のPCTガイドラインの改訂により、刊行物に記載された発明の開示を判断する際に参酌する技術常識を、刊行物の頒布時のものとするか本願出願時のものとするかは、国際調査・予備審査機関が選択できることとされました。
 以上のことから、審査基準を以下のとおり変更し、平成15年12月24日以降に審査される出願に適用することとします。

第II部第2章「新規性・進歩性」


1.2.4(3)
 刊行物に記載された発明
 「刊行物に記載された発明」とは、刊行物に記載されている事項及び記載されているに等しい事項から把握される発明をいう。
 「記載されているに等しい事項」とは、記載されている事項から当該刊行物の頒布本願出願時における技術常識(注)を参酌することにより導き出せるものをいう。


1.5.3(3)丸1「刊行物に記載された発明」は、「刊行物に記載されている事項」から認定する。記載事項の解釈にあたっては、技術常識を参酌することができ、当該刊行物の頒布本願出願時における技術常識を参酌することにより当業者が当該刊行物に記載されている事項から導き出せる事項(「刊行物に記載されているに等しい事項」という。)も、刊行物に記載された発明の認定の基礎とすることができる。すなわち、「刊行物に記載された発明」とは、刊行物に記載されている事項及び記載されているに等しい事項から当業者が把握できる発明をいう。


1.5.3(3)丸2
また、ある発明が、当業者が当該刊行物の記載及び刊行物頒布本願出願時の技術常識に基づいて、物の発明の場合はその物を作れ、また方法の発明の場合はその方法を使用できるものであることが明らかであるように刊行物に記載されていないときは、その発明を「引用発明」とすることができない。
 したがって、例えば、刊行物に化学物質名又は化学構造式によりその化学物質が示されている場合において、当業者が当該刊行物の頒布本願出願時の技術常識を参酌しても、当該化学物質を製造できることが明らかであるように記載されていないときは、当該化学物質は「引用発明」とはならない(なお、これは、当該刊行物が当該化学物質を選択肢の一部とするマーカッシュ形式の請求項を有する特許文献であるとした場合に、その請求項が第36条第4項の実施可能要件を満たさないことを意味しない)。


1.5.4(3)
なお、上記(1)及び1.5.3(3)の手法に代えて引用刊行物に記載された事項と請求項に係る発明の発明特定事項とを比較する場合には、刊行物に記載されている事項と請求項に係る発明の発明特定事項との対比の際に、刊行物頒布本願出願時の技術常識を参酌して記載されている事項の解釈を行いながら、一致点と相違点とを認定することができる。ただし、上記(1)及び1.5.3(3)の手法による場合と判断結果が異なるものであってはならない。


2.4(3)
 なお、請求項に係る発明及び引用発明の認定、並びに請求項に係る発明と引用発明との対比の手法は「新規性の判断の手法」と共通である(1.5.1〜1.5.4参照)。
 ただし、ある発明が、当業者が当該刊行物の記載及び刊行物頒布時の技術常識に基づいて、物の発明の場合はその物を作れ、また方法の発明の場合はその方法を使用できるものであることが明らかであるように刊行物に記載されていないために第29条第1項における引用発明とすることができない場合(1.5.3(3)参照)においても、当業者が得ることできる出願時の技術水準に属する知識に基づけば、物の発明の場合はその物を作れ、また方法の発明の場合はその方法を使用することができるときは、その発明を第29条第2項における引用発明とすることができる。


<参考裁判例>

東京高判平15.9.4(平成14年(行ケ)第199号)
「本件においては,刊行物1の記載内容の解釈について,刊行物1が公開された当時の技術常識を基準とすべきか,本件発明1の出願時(本件優先権主張日)における技術常識を基準とすべきかについて争いがある。本件発明1の特許性の判断については,同発明の出願時(本件優先権主張日)における技術水準を基準として判断をすべきであることは当然であるから,刊行物1に接した当業者がその記載内容からどのような情報を得ることができるか(これこそが,本件発明1の特許性(現実に問題とされているのは新規性)を判断する上で同刊行物の有する意義である。)を検討するに当たっても,当業者は本件優先権主張日における技術常識に基づいてこれを行う,ということが前提とされなければならないというべきである。その意味では,刊行物1の記載内容の解釈については,本件発明の出願時(本件優先権主張日)の技術水準を基準として解釈するのが相当であるというべきである。

東京高判平1.6.20(昭和60年(行ケ)第167号)
進歩性の有無の判断は、当該特許出願に係る発明の特許出願日(優先権主張がなされている場合は優先権主張日)を基準として、この発明の属する技術分野における通常の知識を有する者、すなわち当業者において引用例を見るならば、引用例たる刊行物に基づいて当業者が容易に発明をすることができたかを判断基準とするものであって、引用例記載の技術内容をその刊行時、あるいは引用例が特許公報である場合に右公報記載の発明が出願された当時の技術水準に基づいて理解すべきものではない。」

東京高判昭61.10.16(昭和59(行ケ)第303号)
「審決の理由の要点によれば、審決は、引用例が特許法第29条第1項第3号に規定された、特許出願前に日本国内において頒布された刊行物であることを前提として、「本願第1発明は、引用例に記載の組成物とは同一といわざるをえないから、本願第1発明は、引用例に記載された発明と同一である。」と判断したものであるところ、特許出願に係る発明が引用例たる刊行物に記載された発明と同一かどうかを判断するためには、その前提として、前者の発明の特許出願当時を基準にして考えて、この発明の属する技術分野における通常の知識を有する者、すなわち当業者において引用例をみるならば、引用例たる刊行物に当業者が容易に実施することができる程度に発明の内容が記載されていなければならず、発明の内容が記載されているというためには、少なくとも、その構成が明らかにされていることを必要とする。したがって、原告の前記主張は、本願発明の特許出願当時を基準にして考えて、当業者が引用例に記載された日東化成濃ビ組成物を構成する物質のうち、エポキシ化合物との記載から、その内容を明確に理解することができるかという見地から検討されなければならない。…引用例に記載された日東化成濃ビ組成物の安定剤の処方がどのようなものであるか、刊行物の作成時の状況や作成者の意図を考慮して把握すべきであるという原告の主張は、引用例に記載されたものの内容を厳格にそれらの資料のみに基づいて認定すべきである、あるいは必ずそれらの資料を斟酌すべきであるとする趣旨の主張としては理由がないことは、先に説示したところから明らかである。」


<改訂PCTガイドライン抜粋>

A12.02 国際調査・予備審査機関は、先行技術アイテムが新規性を否定するための十分な開示があるかどうかの決定の際に参酌する外的な知識について、異なる運用を採用しうる。ある機関は、次のうち一つめのガイドラインに、他の機関は、二つめのガイドラインに従う。しかしながら、機関はこれらのガイドラインには従わず、請求項に係る発明の進歩性の欠如の決定において先行技術文献を引用することはできる。

A12.02[01] 先行文献は、有効日における十分な開示が必要である。「有効日」とは、先行公開文献の場合には、公開の日を意味する。この運用に従う機関においては、先行文献は、文献の有効日において一般的に利用可能な知識を参酌して、当業者からみてすべての要素、ステップについて十分な開示があることが条件になる。

A12.02[02].1 先行文献は、調査・審査されるクレームの基準日における十分な開示が必要である。国際調査報告に関する基準日の定義は11.03(*)を参酌のこと。見解書、国際予備審査に関する基準日の定義は、11.04-11.05(*)を参酌のこと。

A12.02[02].2 この運用に従う機関は、当業者からみて、先行文献にすべての要素、ステップについて十分な開示があるかどうかの判断の際に、先行文献の公開の日以降であって、審査されるクレームの基準日より前に利用可能になった知識を考慮する。

(*)どちらも、基本的には基準日は優先日である旨記載しています。


[更新日 2003.12.24]
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