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よくある質問

ビジネス関連発明の審査実務に関するQ&A


平成15年4月
調整課審査基準室

1.「発明」であることについて

問1.ビジネス関連発明の場合、発明の特徴はビジネス方法にあると考えられますが、ビジネス方法は特許になりますか。また、なぜ「コンピュータ」や「ネットワーク」の利用の有無によって「発明」か否かが判断されるのですか。

【回答】ビジネス関連発明の場合、どのようなビジネス(アイデア)を実現しようとしているかという側面に注目が集まりがちですが、「発明」であるか否かの判断は、ビジネス方法に特徴があるか否かという観点ではなく、「ソフトウエア」自体を創作したか、あるいは、「情報処理装置(又はその動作方法)」を創作したか、という観点から行われます。

例えば、請求項に係る発明として、経済法則、人為的取決め、人間の精神活動のみを利用したようなビジネス方法が特許請求されている場合には、そのビジネス方法は自然法則を利用していないとして、特許法による保護を受けることはできません。

また、請求項に「コンピュータ」や「ネットワーク」の利用が記載されていた場合でも、ビジネスを行うための道具として用いたり、人為的取決め等に過ぎないビジネス方法に対して、単に形式的に「(そのビジネス方法が)コンピュータによって行われる」ことを特定したにすぎない場合には、「ソフトウエア」自体を創作したとはいえませんので、「発明」には該当しないことになります。

したがって、「コンピュータ」や「ネットワーク」の利用の有無だけで「発明」に該当するか否かが判断されるのではなく、ハードウエアとソフトウエアを一体として用い、あるアイデアを具体的に実現しているか否かによって判断されます。

問2. コンピュータ・ソフトウエア審査基準<PDF 323KB>には、請求項に係る発明が「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」場合、当該ソフトウエアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」である」と記載されていますが、「ソフトウエアによる情報処理」がどの程度「具体的に実現」されている必要がありますか。

【回答】今回のコンピュータ・ソフトウエア審査基準<PDF 323KB>では、コンピュータとソフトウエアを一体として用い、あるアイデアを具体的に実現しようとする場合には、そのソフトウエアの創作は特許法上の「発明」に該当することを明らかにしています。すなわち、あるアイデアを実現する場合に、汎用コンピュータ、既存のネットワーク・システム、及び、ソフトウエアを用いて、あるアイデアを実現するための専用装置を創作したといえる場合には、この専用装置(又はその動作方法)は「自然法則を利用した技術的思想の創作」にあたります。また、この専用装置に内蔵されたソフトウエア自体についても、「自然法則を利用した技術的思想の創作」といえます。

コンピュータ・ソフトウエア審査基準<PDF 323KB>では、ソフトウエアの創作性に着目し、「請求項に係る発明において、ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」場合には、当該ソフトウエアがコンピュータに読み込まれることにより使用目的に応じた特有の情報処理装置(専用装置)が構築されているといえることから、当該発明は特許法上の「発明」に該当するとしています。また、情報処理装置の創作性に着目し、「ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)またはその動作方法が構築されている」場合にも、当該発明は「発明」に該当するとしています。

基本的な考え方として、あるソフトウエア関連発明が「発明」に該当するといえるためには、上述したように情報処理装置又はその動作方法が構築されているといえる程度に、「ソフトウエアによる情報処理」あるいは「ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段」が特定されていれば特許法上の「発明」に該当するということができます。「ソフトウエアによる情報処理」あるいは「ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段」が、請求項にどの程度具体的に特定される必要があるかは、個々のケースに応じて決められることになります。

問3.今回のコンピュータ・ソフトウエア審査基準<PDF 323KB>では、ソフトウエア自体の創作を「発明」として扱うとのことですが、ソフトウエアの創作性を判断するために、なぜハードウエア資源を用いることが必要となるのですか。また、請求項にどの程度ハードウエア資源を特定すればよいのですか。

【回答】コンピュータ・ソフトウエア審査基準<PDF 323KB>では、ハードウエア資源を用いたソフトウエア自体の創作を「発明」として扱っていますが、「ソフトウエア」を特許請求しようとする場合であっても、ハードウエア資源をどのように用いているかを請求項に特定することが必要となります。

ところで、請求項に係る発明は請求項の記載に基づいて把握されますから、請求項にどの程度ハードウエア資源を特定するかによって、請求項に係る発明の認定が影響を受けます。一般的には、ソフトウエアを実行させる上で必要となるハードウエア資源(例.メモリ、レジスタ)を請求項に詳細に特定すれば、請求項に係る発明はソフトウエア自体の創作であるとして「発明」に該当する可能性が高くなり、逆に、形式的にハードウエア資源を記載したにすぎないような場合には、通常、請求項に係る発明はソフトウエア自体の創作ではないと判断されます。

このように、請求項に係る発明がソフトウエアの創作であることが判断できる程度に、請求項にハードウエア資源を明示的又は暗示的に記載することが必要です。なお、ハードウエア資源を明示するまでもなく、そのソフトウエアの各ステップがコンピュータ上で実行されることが明確な場合には、請求項にハードウエア資源が暗示的に記載されていることになります(例.タスク管理、通信制御のためのソフトウエア等)。

問4.ビジネス分野の場合、人によって行われる方法は「発明」でないと判断されるようですが、製造業の分野では人によって行われる方法でも「発明」に該当するものがあると聞いております。「発明」であるか否かの判断にあたって、ビジネス分野の発明と他の分野の発明とは異なった扱いをしているのですか。

【回答】請求項に係る発明(特に、方法発明)が「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるか否かを判断する場合、人によってその方法が行われることだけをもって「発明」でないと判断されることはありません。このような判断は、ビジネス分野であっても他の分野(例.製造業分野)であっても同じ基準により行われます。次に、ビジネス方法と製造方法の分野での発明を例にとって説明します。

(1)ビジネス方法
ビジネス関連発明を方法の発明として特許請求した場合、請求項に記載された方法が人によって行われるからといって直ちに「発明」でないと判断されることはありません。しかし、人によって行われるビジネス方法は、通常、経済法則、人為的取決め、人間の精神活動を利用したものであって自然法則を利用していないために、「発明」に該当しないと判断されます。一方、ハードウエアとソフトウエアを一体として用い、あるビジネス・アイデアを具体的に実現し、情報処理装置の動作方法として特許請求したときには、「情報処理装置の動作方法」を創作したという観点から、「発明」に該当することになります。

(2)製造方法
製造業分野の場合、製造方法自体は、通常、機器等に対する制御、製造される対象物の物理的性質又は技術的性質を利用していることが多く、その方法自体に自然法則が利用されていると判断されます。したがって、その方法が人あるいはコンピュータのいずれによって行われるかにかかわりなく、通常、「発明」に該当するといえます。

なお、ある製造方法が情報処理装置の動作方法として特許請求されている場合、コンピュータ・ソフトウエア基準を適用することもできますが、製造方法自体が「自然法則を利用した技術的思想の創作」として判断できる以上、あえてコンピュータ・ソフトウエア基準を適用する必要はありません。

問5.請求項に係る発明が複数の手順からなる方法の発明であって、これら手順のうち一部の手順が自然法則を利用しており、他の手順が、人間の動作からなるステップ、あるいは、人の精神的活動に基づく判断ステップに相当している場合、審査においてどのように判断されますか。

【回答】「発明」であるか否かの判断にあたっては、請求項に記載された発明が全体として自然法則を利用しているか否かによって行われます。そして、どのような場合に全体として自然法則を利用したものになるかは、技術の特性を考慮して判断されます。

ビジネス関連発明において、請求項に記載された一部の手順が人間の動作からなるステップに相当している場合、通常、その動作はビジネスの一手順であって自然法則を利用しているとは言えませんから、請求項に係る発明を全体としてみても、自然法則を利用しているとはいえません。

また、ビジネス関連発明において、請求項に記載された一部の手順が人の精神的活動に基づく判断ステップに相当している場合、その手順は自然法則を利用しているとは言えませんから、請求項に係る発明を全体としてみても、自然法則を利用しているとはいえません。

問6.発明が解決しようとする課題として商業的な課題しか記載がなくても、「発明」であることの判断上は問題ないですか? すなわち、課題解決手段が技術的であれば、課題や効果は商業的でも特許適格性はありますか。

【回答】発明の詳細な説明において、技術上の課題を明確にし、かつ、その課題がどのように解決されたかを記載したほうがよいことは言うまでもありません。
なお、請求項に係る発明が特許法上の「発明」に該当するか否かの判断は請求項の記載に基づいて行われますから、発明の詳細な説明中に発明が解決しようとする課題として商業的な課題しか記載がないという理由だけで、「発明」であるか否かの判断に直接影響を与えることはありません。

発明が解決しようとする課題や効果の記載については、「発明」であるか否かの判断よりも、むしろ記載要件に関係します。「審査基準、第I部  明細書<PDF 103KB>、3.3.2 委任省令要件の具体的運用」には、「発明が解決しようとする課題についての明示的な記載がなくても、…明細書及び図面に記載並びに出願時の技術常識に基づいて、当業者が、発明が解決しようとする課題を理解することができる場合については、課題の記載を求めないこととする』とあります。

このように、課題や効果として商業的な記載しかない場合であっても、明細書には課題解決手段としてコンピュータやネットワークを用いた情報処理システムが開示されており、このような明細書の記載等から技術上の課題を理解することができる場合については、技術上の課題についての記載をしなくても良い場合があります。

問7.請求項1には「・・手段、・・手段、・・・手段を備えたシステム」、請求項2には請求項1の表現形式を変えて「・・・し、・・・し、・・・する方法」として特許請求したところ、請求項2についてのみ「発明」ではない旨の拒絶理由が通知されました。請求項1の装置発明は「発明」に該当すると考えられますが、請求項1の表現形式を変えただけの方法発明がなぜ「発明」に該当しないのでしょうか。

【回答】「システム」(物の発明)として特許請求された請求項1が、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)が構築されている場合、請求項2において、当該「システム」の動作方法として適切に表現されていれば、請求項2に係る発明も「発明」に該当します。

ビジネス関連発明の場合、ソフトウエアによる情報処理と純粋なビジネス的処理とが類似した処理となることが多いため、「・・手段、・・手段、・・・手段を備えたシステム」という表現を単に「・・・し、・・・し、・・・する方法」と変えただけでは、その方法発明が「コンピュータによる情報処理方法」とも「ビジネスを行う方法」とも解釈されることがあります。そして、請求項2に係る発明を「ビジネスを行う方法」として解釈した場合には、「発明」に該当しないと判断されます。

このように、装置発明の表現形式を単に方法的な表現に変えただけでは、その装置の動作方法として適切に表現されないことがあり、「発明」に該当しないと判断される場合があるということです。

なお、このような場合には、通常、一つの請求項に二つの異なる概念が含まれているとして、第36条第6項第2号の拒絶理由も併せて通知されます。この拒絶理由を回避するためには、情報処理装置の動作方法であることが把握できるように請求項を記載する必要があります。(問8参照

2.明細書の記載不備について

問8.ビジネス関連発明を「方法の発明」として特許請求したところ、請求項に係る発明はコンピュータが行う処理とも人が行う処理とも解釈できる、という理由で第36条第6項第2号に違反するとの拒絶理由を受けました。同時に、請求項に係る発明は特許法上の「発明」に該当しないとして第29条第1項柱書の通知も受けました。発明の詳細な説明には、発明の実施例として、ビジネス上のアイデアを具体化した情報処理装置とその動作方法が記載されているにもかかわらず、このような拒絶理由が通知されるのはなぜですか。

【回答】ビジネス関連発明を方法発明として特許請求した場合、ソフトウエアによる情報処理方法と人によるビジネス方法とが類似した処理となることが多いことから、請求項に係る発明が「人がビジネスを行う方法」とも「コンピュータによる情報処理方法」とも解釈できることがあります。このような場合、実施例には「コンピュータによる情報処理方法」が開示されていたとしても、請求項には二つの異なる概念が含まれているため、請求項に係る発明を明確に把握することができないとして第36条第6項第2号に違反することになります。

また、「発明」であるか否かの判断も請求項に係る発明が判断の対象となりますので、請求項に係る発明が「人がビジネスを行う方法」として解釈できる場合には、実施例に「コンピュータによる情報処理方法」が実施例として記載されていたとしても、「発明」でないとして第29条第1項柱書の拒絶理由も通知されることになります。

なお、審査実務では第36条第6項第2号の拒絶理由と第29条第1項柱書が同時に通知されますが、これらの拒絶理由は独立に判断されます。すなわち、第36条第6項第2号の拒絶理由を回避するために、「コンピュータ」が動作主体であることを明確にした補正を行ったとしても、直ちに「発明」であることの要件を満足するとは限りません。「発明」であるといえるためには、補正後の請求項に係る発明が「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」ことが必要となります。(問2参照

問9.発明の詳細な説明及び図面において、請求項に係る発明に対応する技術的手段としてコンピュータ画面の具体的内容やその操作方法を明確かつ十分に記載しましたが、「請求項に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない」として第36条第4項違反の拒絶理由が通知されました。このような拒絶理由が通知された理由がわかりません。

【回答】コンピュータ・ソフトウエア審査基準<PDF 323KB>「1.2.1 実施可能要件」には、「発明の詳細な説明は、ソフトウエア関連発明の分野における通常の技術的手段を用い、通常の創作能力を発揮できる者が、特許請求の範囲以外の明細書及び図面に記載した事項と出願時の技術常識とに基づき、請求項に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載しなければならない。」と記載されています。

例えば、請求項に係る発明に対応する技術的手順又は機能が抽象的に記載してあるだけで、その手順又は機能がハードウエアあるいはソフトウエアでどのように実行又は実現されているのか記載されていない結果、請求項に係る発明が実施できない場合には、第36条第4項違反の拒絶理由が通知されます。

したがって、コンピュータの表示画面に表示される入力フォームの具体的内容を記載し、その入力フォームを基にしたコンピュータの操作手順が説明されていたとしても、そのコンピュータの操作手順をコンピュータ上でどのように実現するかが記載されておらず、請求項に係る発明が実施できない場合には、「請求項に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない」と判断されます。

3.新規性・進歩性の判断について

問10.進歩性の判断では「ビジネス方法」が新規の場合には特許になる可能性がある、とのことですが、新規なビジネス方法を通常のシステム化手法でシステム化した発明は進歩性が認められるのでしょうか。

【回答】ビジネス方法は「発明」ではありませんから特許になる可能性はありません。
「発明」であることの判断においては、ビジネス方法をコンピュータ上で具体的に実現した場合に「発明」に該当することになります。この場合、請求項には、ビジネス方法が特定されているのではなく、ビジネス方法を実行するための具体的なソフトウエア、情報処理装置又はその動作方法(以下、情報処理装置等)が特許請求されていることに注目すべきです。

そして、進歩性の判断においては、ビジネス方法自体が進歩性を有するか否かを判断するのではなく、ビジネス方法を具体的に実現した発明が進歩性を有するか否かが評価されます。すなわち、「発明」に該当するとされた情報処理装置等を、既に知られているビジネス方法やシステム化技術等に基づいて当業者が容易に構築できるかどうかの論理づけが試みられます。そして、論理づけができたときには請求項に係る発明は進歩性がないとして判断され、論理づけができないときには進歩性を有することになります。

つまり、「ビジネス方法が新規の場合には特許になる可能性がある」というのは、新規なビジネス方法が特許になる可能性があるのではなく、発明者が新規なビジネス方法をコンピュータ上で具体的に実現して情報処理装置等を構築したとき、進歩性の判断においては、その情報処理装置等が公知のビジネス方法等から容易に発明できたとの論理づけができない結果、進歩性が認められる可能性があることを意味しています。

問11.特定分野に関するソフトウエア関連発明における当業者は、複数の技術分野からの「専門家からなるチーム」として考えたほうが適切な場合があるとされています。例えば、金融業に関するビジネス関連発明の進歩性判断において医療業の文献が提示されるケースがあります。しかし、現実には金融業の人が医療の知識を持っていることはないと考えられますので、現実の世界にはない程度に当業者の範囲を広げてしまうと、進歩性の判断が厳しくなりすぎるのではありませんか。

【回答】ソフトウエアの技術分野では、ソフトウエアの分野とある特定の分野の人間がチームとなって開発にあたるのが通常であるので、ある特定分野において人間が行っている既存の業務を分析し、その分析結果により既存の業務をシステム化したり、あるいは、他の分野において既に知られている類似した業務用コンピュータシステムを当該特定分野に転用することは、通常行われているシステム開発手法といえます。

例えば、金融業務用のデータ検索システムを開発しようとする場合、類似したデータ検索機能を持つ医療業務用コンピュータシステムが既に知られていれば、その医療業務用システムを金融業務用に転用しようとすることは、ソフトウエア分野の当業者にとっては通常の創作活動の範囲内ということができます。

このように、特定分野に関するソフトウエア関連発明における当業者は、ある特定分野に関する技術常識や一般常識と、コンピュータ技術分野の技術常識を有する者として想定されており、このような者を「専門家からなるチーム」として想定することもできます。なお、当業者とは、進歩性を判断するために想定された仮想の者またはチームであって、現実にこのような知識を有する者またはチームが存在することを意味するものではありません。

問12.審査基準に「所定の目的を達成するためにある分野で利用されている方法、手段等を組み合わせたり特定の分野に適用したりすることは、ソフトウエアの技術分野では普通に試みられていることである。…組み合わせや適用に技術的な困難性(技術的な阻害要因)がない場合は、特段の事情(顕著な技術的効果等)がない限り、進歩性は否定される。」と記載されていますが、どのような場合に「技術的困難性」「阻害要因」があるといえますか。

【回答】進歩性の論理づけにおいては、ビジネス関連発明か否かにかかわらず、論理づけに最も適した1つの引用発明、他の引用発明及び技術常識等から、請求項に係る発明の進歩性の存在を否定し得る論理の構築が試みられます。論理づけは、種々の観点、広範な観点から行うことが可能であり、技術分野の関連性や課題の共通性といった動機づけとなり得るものがあるか否かが検討されます。

例えば、ビジネス関連発明の進歩性を判断する場合、異なる産業分野の複数のビジネス方法に基づいて、当業者が請求項に係る発明(情報処理装置)を容易に想到できたか否かの論理づけを試みることがあります。このような場合、複数のビジネス手法に基づいて情報処理装置の構築や設計変更を行うことに、システム設計の観点からみた困難性(技術的困難性)がないとの論理づけができれば、通常、進歩性は否定されます。

なお、例えば経営的な観点のみに着目すると、異なる産業分野の複数のビジネス手法を採用することにビジネス上の困難性がないとはいえません。しかし、このようなビジネス上の困難性は、通常、情報処理装置の設計変更を技術的に阻害するような要因にはなるということはできません。

問13.ビジネス関連発明の進歩性判断において、「設計事項である」、「周知である」等の理由で進歩性がないとするのはどのような場合ですか。

【回答】一般的には、周知・慣用技術は拒絶理由の根拠となる技術水準を構成する重要な資料であるので、引用するときは、例示するまでもないときを除いて可能な限り文献を示すこととなっています。

ビジネス関連発明の進歩性判断にあたっても同様の基準が適用されますが、ビジネス分野における商慣行や一般常識は一般的によく知られているものが多いことから、それら商慣行や一般常識を記載した文献を例示するまでもなく、拒絶理由の根拠とするケースが他の技術分野よりも多くなる傾向があります。

なお、コンピュータ・ソフトウエア審査基準<PDF 323KB>では、「設計事項」の例として、「売買契約が成立したときに売り手が買い手に対して感謝の気持ちを表明すること」、「クーリングオフ制度」といった商慣行を実現するための手段を付加することは、当業者が必要に応じて定める設計上の変更に過ぎないとしています。

問14.「2.3.6 留意事項(1)商業的成功又はこれに準じる事実の参酌」には、「商業的成功又はこれに準じる事実は、進歩性の存在を肯定的に推認するのに役立つ事実として参酌することができる。」と説明されています。この「進歩性の存在を肯定的に推認する」とはどういうことなのか具体的に説明してください。例えば、商業的成功の事実を意見書等で説明できれば、進歩性を認めてもらえるのでしょうか。

【回答】コンピュータ・ソフトウエア審査基準<PDF 323KB>には、「商業的成功又はこれに準じる事実は、進歩性の存在を肯定的に推認するのに役立つ事実として参酌することができる。ただし、出願人の主張又は立証により、この事実が請求項に係る発明の特徴に基づくものであり、販売技術や宣伝等、それ以外の原因によるものではないとの心証が得られた場合に限る。」としています。

すなわち、進歩性の判断にあたっては、当業者が請求項に係る発明に対して進歩性の存在を否定し得る論理の構築が可能か否かを判断することになりますが、進歩性の存在を否定する論理づけにあたって「商業的成功又はこれに準じる事実」は、その補助的な要因となりえます。

ただし、商業的成功という事実が「請求項に係る発明の特徴に基づくものであり、販売技術や宣伝等、それ以外の原因によるものではない」ことが必要となります。通常、ある製品が大きな市場シェアを占めた原因としては、ほとんどの場合、発明自体の優位性だけでなく、販売技術や宣伝等のそれ以外の要因が密接に関連していると考えられます。したがって、現実には商業的に成功したといっても、その事実が進歩性の存在を肯定するのに役立つようなケースはきわめて少ないと考えられます。

問15.産業構造審議会の参考資料に「ビジネス方法が非常に独創的である場合には、そのビジネス方法をシステム化した発明について、容易に想到することはできないとして、進歩性が認められる可能性が高いと言えるだろう」と記載されていますが、「ビジネス方法が非常に独創的」とはどのようなケースを想定しているのでしょうか。

【回答】発明者が非常に独創的なビジネス方法をコンピュータ上で具体的に実現して情報処理装置等を構築したとき、審査段階においては、その情報処理装置等が公知のビジネス方法やシステム化技術等から容易に発明できたと論理づけできない結果、進歩性が認められる可能性があります。

例えば、発明者が、情報技術の技術的特徴を活用してビジネス方法を工夫し、それをシステム化したような発明の場合には、進歩性が肯定される可能性が高いということができます。すなわち、このようなビジネス方法はそれ自体に技術的な特徴を内在していることになりますから、このようなビジネス方法をシステム化した発明は、技術的特徴を内在しないような公知のビジネス方法を組合せても容易に発明できたとする論理づけが困難となるケースがあります。

ただし、情報技術の技術的特徴を活用したビジネス方法をシステム化したとしても、常に進歩性が肯定されるわけではなく、ビジネス方法がどの程度独創的であれば、そのビジネス方法をシステム化した発明について進歩性が認められるかは、個々の案件によって判断されることになります。

4.その他

問16.将来の規制緩和(特に、金融分野)を狙って、出願時点では法律上みとめられていないビジネス方法に基づいた発明を出願することが考えられますが、このような出願はその法律に違反するという理由により公序良俗で拒絶されますか。

【回答】出願時点では法律上認められていないビジネス方法に基づいた発明については、このような発明を現実社会で実施することが何らかの法律により規制されていたとしても、その情報処理装置等を創作した発明自体は、その理由により、通常、公序良俗違反にあたることはないと考えられます。

これは、ある薬が薬事法の製造許可を受けていないとしても、その薬に関する発明が公序良俗違反と判断されることはないのと同様の理由によります。

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  • 特許庁特許審査第一部調整課審査基準室
  • 電話:03−3581−1101  内線3113
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[更新日  2003.4.18]

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