平成20年4月18日に公布された「特許法等の一部を改正する法律(平成20年法律第16号)」(以下「改正法」という。)により、審判制度が一部変更されました。
改正法の施行日は平成21年4月1日ですが1)、経過措置により、審判関連の改正規定は、施行日以降に拒絶査定又は補正却下決定の謄本が送達された場合について適用され、施行日より前に謄本の送達があった場合については、従前の例によります。
審判関連の制度改正の概要は、以下のとおりです。
この制度改正に関するQ&Aにつきましては、「不服審判請求期間の拡大に関するQ&A」をご参照ください。
1)改正法により「特許・商標関係料金の引下げ」及び「料金納付に係る口座振替制度の導入」も措置されていますが、前者については平成20年6月1日から、後者については平成21年1月1日から、それぞれ既に施行されています。
1.特許制度における審判請求期間の拡大等
制度利用者に対する手続保障等の観点から、特許制度における拒絶査定不服審判2)の請求期間が拒絶査定の謄本の送達があった日から「3月以内」(改正前は「30日以内」)に拡大されました(特許法第121条第1項)。
また、審判請求に伴う明細書等の補正の時期について、改正前は、「審判請求日から30日以内」とされていましたが、補正内容を十分に検討した上で審判請求が行われるようにするとともに、第三者の監視負担が過度とならないようにするため、「審判請求と同時にするとき」に変更されました(特許法第17条の2第1項第4号)3)。
なお、審判請求書の「請求の理由」欄の記載については、改正前と同様に審判請求後の補正が可能です(特許法第17条第1項、第131条の2第1項)。

このような制度改正により、拡大された3月の期間を利用して十分な検討がなされた明細書等の補正を伴う拒絶査定不服審判の請求が行われることが期待されるため、前置審査の段階で特許になる割合が高くなり、制度利用者にとっての早期の権利取得につながるとともに、前置審査を経て審判部に移管される件数割合が低くなることから、特許庁全体としての処理の効率化にもつながり、審判事件全体の審理促進に資するものと考えています。
2)特許権の存続期間の延長登録出願に対する拒絶査定不服審判も含まれます。
3)オンライン手続で手続補正書を審判請求書と「同時」に提出する場合には、まだ審判番号が通知されていないため、手続補正書の【事件の表示】欄において【出願番号】欄とともに設けるべき【審判番号】欄を【審判請求日】欄に代えて、審判請求する年月日を記載することになります(特許法施行規則第11条(様式第13の備考18で同様とする様式第4の備考2ハ)を参照)。
2.意匠制度・商標制度における審判請求期間の拡大等
(1) 拒絶査定不服審判
制度利用者に対する手続保障の観点から、意匠制度・商標制度における拒絶査定不服審判の請求期間も、拒絶査定の謄本の送達があった日から「3月以内」(改正前は「30日以内」)に拡大されました(意匠法第46条第1項、商標法第44条第1項)4)。
なお、商標の書換登録の申請に対する拒絶査定があった場合(商標法附則第13条で商標法第44条を準用)並びに防護標章登録出願及び防護標章登録延長出願に対する拒絶査定があった場合(商標法附則第23条で前記商標法附則第13条を含めて準用)の不服審判請求期間も「3月以内」に拡大されました。
4)意匠制度及び商標制度においては、特許制度の場合のような審判請求に伴う補正の時期的制限はなく、審査・審判等に係属中は、いつでも手続の補正が可能です(意匠法第60条の3、商標法第68条の40)。
(2) 補正却下決定不服審判
意匠制度・商標制度における補正却下決定不服審判の請求期間も、制度利用者に対する手続保障の観点から、補正却下決定の謄本の送達があった日から「3月以内」(改正前は「30日以内」)に拡大されました(意匠法第47条第1項、商標法第45条第1項)。
また、この改正に伴い、補正却下決定後の査定の禁止期間及び補正却下決定があった場合の補正後の新出願が可能な期間についても、それぞれ改正前の「30日」を「3月」に拡大する改正が行われています(意匠法第17条の2第3項、意匠法第17条の3第1項(商標法第17条の2で準用)、商標法第16条の2第3項)。
なお、審判段階での補正却下決定に対して不服がある場合の東京高裁(知財高裁)への出訴期間については、改正前と同様に「30日」であり、変更はありません。このため、審判段階での補正却下決定後の審決の禁止期間と補正後の新出願が可能な期間についても、改正前と同じく「30日」です(意匠法第50条第1項、商標法第55条の2第3項に読み替え規定が置かれています)。
3.関連する改正事項
(1) 分割出願の可能時期の拡大
改正前の特許制度では、分割出願が可能な時期は、(i)願書に添付した明細書等について補正をすることができる期間内、(ii)特許をすべき旨の査定5)の謄本の送達があった日から30日以内、(iii)拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から30日以内とされていました(特許法第44条第1項第1〜3号:平成18年改正法が適用される平成19年4月1日以降の特許出願の場合)。
拒絶査定不服審判の請求期間の拡大に伴って、上記(iii)の期間が「3月以内」に拡大されました(同項第3号)。また、審判請求に伴う明細書等の補正の時期的要件の変更に伴って、上記(i)の期間が明細書等について補正をすることができる「時又は期間内」に変更されました(同項第1号)。
なお、特許査定から30日以内に行う分割(同項第2号)については、分割出願可能時期の変更はありません。
5)拒絶査定不服審判請求後のものを除きます。
(2) 変更出願の可能時期の拡大
改正前の制度では、意匠登録出願人は、その意匠登録出願について最初の拒絶査定の謄本の送達があった日から30日を経過した後又はその意匠登録出願の日から3年を経過した後(最初の拒絶査定の謄本の送達があった日から30日以内の期間を除く。)を除いて、その意匠登録出願を特許出願に変更することができるとされていました(特許法第46条第2項)。同様の規定が、特許出願から実用新案登録出願への変更(実用新案法第10条第1項)、意匠登録出願から実用新案登録出願への変更(実用新案法第10条第2項)、特許出願から意匠登録出願への変更(意匠法第13条1項)にも、それぞれ置かれています。
特許制度及び意匠制度における拒絶査定不服審判の請求期間の拡大に伴い、変更出願が可能な時期についても、改正前は最初の拒絶査定の謄本の送達があった日から30日経過後は変更できないとされているところ、これが「3月経過後」となり、変更可能な時期が拡大されました(特許法第46条第2項、実用新案法第10条第1項・2項、意匠法第13条1項)。
4.在外者等の請求期間の延長の取扱いの変更6)
改正前の制度では、特許法第4条等の規定に基づき、在外者に対し通常の不服審判請求期間である30日に加えて60日の期間延長を職権で行う等の取扱いとしていました(特許法第4条、意匠法第68条第1項、商標法第77条第1項を参照)。
改正法により、審判請求期間が「3月以内」となり、すべての制度利用者にとって手続保障の観点から十分と考えられる期間になったことから、原則、在外者等に対する審判請求期間等の延長は行わないこととしました。(なお、このような取扱いの根拠となっている特許法第4条等の規定自体については、今回は改正されておりません。)
ただし、特許出願の拒絶査定不服審判7)の請求期間についてのみ、明細書等の補正が審判請求と同時にのみ可能と変更されることも考慮し、明細書等の補正の検討が可能な期間が改正前よりも短くなることを避けるため、在外者に対して職権で1月の期間延長を行うこととしました。
なお、この期間延長により、分割出願可能な期間も1月延長されることになりました(特許法第44条第1項第3号、同条第6項)。

6)詳細は、「 平成20年改正特許法等における在外者等の審判請求期間の取扱いについて」をご参照ください。
7)この場合、特許権の存続期間の延長登録出願に対する拒絶査定不服審判は除きます。
5.施行日・経過措置
改正法の施行日は、同法の公布日(平成20年4月18日)から1年を超えない範囲内において政令で定める日とされておりましたが(改正法附則第1条第1項)、平成20年12月26日政令第403号により平成21年4月1日と定められました。
また、改正後の審判関連の規定は、施行日以降に拒絶査定又は補正却下決定の謄本が送達された場合について適用され、施行日より前に謄本の送達があった場合については、従前の例によります(改正法附則第2条第1, 3, 4項、第3条第1, 2項、第4条第1〜3項、第5条第1, 3項)。
なお、「3.(1)」の拒絶査定後の分割出願の規定(特許法第44条第1項第3号)は、平成18年の特許法の一部改正で導入されたものですので、平成18年改正法が適用される平成19年4月1日以降の特許出願であって、かつ今回の改正法の施行日以降に最初の拒絶査定の謄本の送達がなされるものについてのみ、分割可能時期の「3月以内」への拡大が適用になる点にご注意ください(改正法附則第2条第3項)。
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平成21年4月1日より前に拒絶査定の謄本が送達 |
平成21年4月1日以降に拒絶査定の謄本が送達(平成20年改正法適用) |
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平成19年4月1日 より前の出願 |
・審判請求期間は、拒絶査定謄本送達日から30日以内※ |
・審判請求期間は、拒絶査定謄本送達日から3月以内※※ |
平成19年4月1日以降の出願 |
・審判請求期間は、拒絶査定謄本送達日から30日以内※ |
・審判請求期間は、拒絶査定謄本送達日から3月以内※※ |
※ 在外者については、拒絶査定謄本送達日から90日以内
※※ 在外者については、拒絶査定謄本送達日から4月以内
【参考リンク】
- ・特許法等の一部を改正する法律(平成20年法律第16号)
- ・不服審判請求期間の拡大に関するQ&A
- ・平成20年改正特許法等における在外者等の審判請求期間の取扱いについて
- ・平成20年特許法改正に伴う審査基準の訂正について
- <この記事に関する問い合わせ先>
- 特許庁 審判部 審判課 審判企画室
- 電話:03-3581-1101 内線5854
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[更新日 2009.3.25]