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Vol.39
広報誌「とっきょ」平成30年10・11月号

特集1

特許が支える
中堅・中小企業独自のものづくり

金井製作所(埼玉県久喜市)

ブレーキ摩擦材技術を応用して
音楽をさらなる高みへ

周波数を「止める」から「増幅」へ

オーディオ愛好家や専門誌、プロの演奏家までもがこぞって注目する製品が、埼玉県久喜市で50年続く町工場で作られています。音響増幅装置「KaNaDe」は、手のひらサイズの丸い御影石のような製品群で、オーディオプレイヤーや弦楽器のインシュレーターとして驚くほどの性能を誇ります。

従業員15人の小さな規模ですが、小ロットからの特殊な金型製造では大手企業からも一目置かれています。店頭でよく見かけるペットボトルの形状が、金井製作所の金型から作られていることもあるそう。

KaNaDeの開発者、小林満さんは、東京都中央区の会社でブレーキ摩擦材の開発を30年以上手掛けたのち、新規事業開発に着手。自身が楽器演奏をしていた縁もあって音響装置に着目しました。「キキーッとなる鳴きは、要は周波数なんです。それを止めるための素材は、反対に周波数の増幅にも応用できると考えました」と小林さん。まずは素材となる特殊な原材料の配合を開発すべく、2000通りほどの素材の組み合わせを試しました。ヒントとなったのはブビンガという主にアフリカに生育する木の気孔率。完成した複合材は以前の会社時代に特許を取得しました。

また、素材と同様に音質を決めるのが形状や表面加工。特に最終工程で重要となる、外周部分の「テープ研磨」を外注できるメーカーが当時の国内では金井製作所を含む2社のみでした。

【左】金井隆雄代表取締役の写真 【右上】購入すれば1000万円近くかかるミキサーは、金井代表がラーメン用の寸胴から自作の写真 【右下】スピーカー用のKaNaDeの写真
【左】金井隆雄代表取締役 【右上】購入すれば1000万円近くかかるミキサーは、金井代表がラーメン用の寸胴から自作 【右下】スピーカー用のKaNaDe

金井隆雄代表取締役は「実は処分しようかと思っていた研磨機でした。何を作るのかもわからないまま秘密保持契約を結んでくれと言われましたが、まあいいか、という感じで引き受けました」と笑います。「でも、作っているのを傍で見ているうちにピンと来ちゃったんです。もともとオーディオが好きでしたので」。

職人の技と出会いが生んだ「KaNaDe」

5年に及ぶ開発によってついに納得のいく製品が完成したものの、採算性などを懸念した以前の会社側の判断で商品化を断念。失意のうちに退社を決めた小林さんがあいさつに訪れると、意外なことに金井代表は「一緒にやらないか」と声をかけました。

販売までにはいくつかの困難もありました。前職時代に取得した特許のうち1件と意匠権が譲渡されず、不利な条件での交渉を迫られましたが、小林さんの技術をよく知る弁理士のアドバイスでその知財に寄らない新たな製品を開発、特許を取得し直すことで解決。また、大変だったのは熱成型用のプレス機の購入で、「プレス機は摩擦材メーカーなどで内製化されており、手に入れるめどが立ちませんでした。途方に暮れながら道を走っていたら、機械販売の看板を見つけたんですね。物は試しと訪ねてみたら、そこの職人が『昔、プレス機を修理していた』と言うのです。そこで、中古品に専用制御装置を取り付けて破格の金額で購入させてもらいました」(金井代表)。

2016年3月、SNSでKaNaDeのモニターを募り、口コミは急速に広がりました。4月からインターネット販売を始めたところ、市場での評価は圧倒的でした。

2017年に販売開始した弦楽器奏者向けの商品は、海外にも愛用者が広がっているの写真
2017年に販売開始した弦楽器奏者向けの商品は、海外にも愛用者が広がっている

高いステレオに買い替えても、期待したよい音が出ない。こうした悩みを持つユーザーは多いそうです。インシュレーターは、これまであまり研究されていない分野でしたが、振動工学と複合材のプロである小林さんには、楽器や声の余韻が立体的に、心地よく聞こえる製品への道筋が見えました。「試作するごとに聞こえなかった音がどんどん聞こえてきます。機器や楽器の種類によって適した形状が違うこともわかったので、ラインナップを増やしながら、日々改良しています」と小林さん。

「0.1g単位、100分の1mm単位の違いで音が変わる」と小林満さんの写真
「0.1g単位、100分の1mm単位の違いで音が変わる」と小林満さん

「それまでにない商品だからこそ、見た目だけを真似た粗悪品によって『やっぱり嘘だった』と言われるのが何よりつらい。繊細な職人技から作られるKaNaDeを守るためにも特許が非常に大切ですね」。また、この原材料は、もとはブレーキ摩擦材に特化して開発されたものであるため、それ以外の用途に使用する証明としても特許が役立ちます。

商品名には「奏でる」―情熱的・躍動的に演奏して観客を魅了する―という、日本語ならではの意味が込められています。日本発の技術が、「音」を一歩上の高みへといざないます。

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