特許庁ステータスレポート2019
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AI、IoT、ブロックチェーンのような新たな技術が次々に登場し、世界の産業は100年に一度の大きな変革期にあります。特許庁は、こうした時代においても、国内外のユーザーの皆様が使いたいと思っていただけるような知財制度・運用を追求しています。 新たな技術に対応するための挑戦の一つとして、標準必須特許(標準規格の実施に必要となる特許)への取組があります。IoTの浸透により、ライセンス交渉が通信業界とそれ以外の異業種間で行われるようになり、クロスライセンスによる解決が困難になっております。そこで、特許庁は、ライセンス交渉を円滑に進められるようにするため、国際的な状況を分析し、交渉にあたって踏まえるべき考慮要素を整理した「標準必須特許(SEP)のライセンス交渉に関する手引き」を2018年6月に公表いたしました。公表した手引きは「生きた手引き」とすべく、今後もアップデートしてまいります。知財権を取得しても、それが侵害されたとき、スピード感をもって効果的に対応できず、泣き寝入りをするのでは、知財権制度の意味がありません。ユーザーの皆様のイノベーションの成果である知財権が、しっかりと保護されるよう、知財訴訟制度を強化する特許法改正案を国会に提出しました。意匠制度も、新たな技術・ニーズに対応して、変わらなければなりません。現行制度で保護される画像は物品に記録・表示される画像に限定されています。壁に映し出される画像や、インターネット上の画像などは保護されません。また、機能性だけでなく、美感が重視される今日、店舗のデザインや、一貫したコンセプトに基づくデザインの保護のニーズが高まっています。こうした新しいデザインを保護できるよう意匠法改正案を国会に提出しました。グローバルな企業活動と新しい技術に対応するため、知財制度・運用の調和が求められています。本年、特許庁は意匠五庁会合と商標五庁会合の議長国を務めます。社会や技術の変化にどう対応するのか、議論をしていきたいと思います。また、アジア・アフリカ地域の国を中心に、現地の知財制度の整備を支援してきたWIPOジャパンファンドは創設30周年が経過し、支援してきた国の知財を取り巻く環境も変化しております。そこで、知財庁の制度整備・人材育成については引き続き協力しつつ、対象地域や支援の中身を拡充し、新世代にふさわしい支援に取り組んでまいります。また、特許庁を取り巻く環境が、絶えず急速に変化する中、特許庁自身も変わらなければなりません。ユーザーの皆さまが使いたいと思っていただけるような知財制度を追求していくための挑戦の一つとして、特許庁においてデザインを活用した経営手法「デザイン経営」を取り入れ、ユーザー視点で行政サービスの在り方を変えていきます。このために、2018年8月、特許庁内に「デザイン総括責任者(CDO)」を設置し、その下に「デザイン経営プロジェクトチーム」を設置したところです。ユーザーの皆さまの声をもとに素早く施策の原案を作り、議論を行い、速やかに実施し、継続的に見直し・アップデートできるよう、組織の変革に取り組んでいきます。このような私たちの取り組みや知的財産に関する統計情報を国内外のユーザーの皆さまにご紹介するため、この度、『特許庁ステータスレポート2019』を発行いたします。皆さまからのご意見をいただきながら、特許庁のサービスを日々改善してまいります。特許庁長官宗像 直子JPO STATUS REPORT 201911

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