特許庁ステータスレポート2020
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AI、IoT技術の進展や、プラットフォーム型ビジネスの台頭など、国内外で産業構造や競争環境がダイナミックに変化しており、ユーザーの知財戦略もグローバル化・高度化しています。特許庁は、そうした変化の中でもユーザーのビジネスを支えるべく、知財制度・運用の改善等に全力を挙げて取り組んでいます。本書は、日本及び世界における知財動向に関する統計を紹介するとともには、特許庁がこの変化の時代に行っている最新の取組をは、国内外の皆様にいち早くお伝えするものです。ビジネスのグローバル化により、過去10年で、日本から海外への特許出願件数は4万件、日本国特許庁を受理官庁とするPCT国際出願件数は2万件増加しました。ユーザーのグローバルな知財戦略を支援するべく、特許庁は各国・地域との知的財産制度や運用の更なる調和、新興国等における知的財産制度の整備・強化に努めました。また、迅速な特許ポートフォリオの構築を支援するために、特許審査ハイウェイ(PPH)ネットワークの拡大を続けており、2019年には、世界に先駆けてインドとのPPHを開始しました。先端技術への対応も積極的に行っています。AI、IoT技術の進展により業種の垣根がなくなっており、研究開発において異業種も含めた社外との連携が積極的に活用されている中、取得した特許で大切な技術を守れるよう、証拠収集手続の強化と損害賠償額算定方法の見直しを図った特許法改正を行いました。また、AI関連技術の特許出願が技術分野をまたがって増加していることから、特許審査の透明性と予見性の向上を目的に、「AI関連技術に関する特許審査事例」を世界に先駆けて整備し、日本語及び英語で公表しました。さらに、AI関連発明の審査実務に関する国際シンポジウムを開催し、この審査事例を用いながら五庁の審査判断のポイントを明らかにしました。優良な顧客体験が競争力の源泉として重要性を高める中、デジタル技術を活用したデザイン等の保護やブランド構築の支援を図るため意匠法改正を行いました。これにより、AI、IoT等の新技術を利用したサービスに関する画像デザインや、企業のブランド戦略に重要な建築物や内装のデザインを新たに保護対象とし、シリーズ製品等の保護に資する制度も拡充しました。ビジネスの信用を守るための商標登録に関する出願件数は、世界的に増加傾向にあり、2018年には1000万件を越えました。日本においても出願件数は増加しており、それに伴い、出願から権利化までの平均期間は延伸する傾向にあります。特許庁では、商標を迅速・適切に保護し、ユーザーの円滑な事業活動に資するべく、審査の処理促進を図りつつ、早期審査やファストトラック審査を実施しています。イノベーションの担い手である大学や中小企業、スタートアップに対する支援も継続しています。特に2019年度からは、専門家を大学に派遣する知財戦略デザイナー派遣事業を開始しました。知的財産権として保護が図られていない研究成果を発掘し、更なる研究の発展や社会実装につながる知財戦略の策定を支援しています。このような最新の知財動向や特許庁の施策を知っていただき、皆様のビジネスに御活用いただければ幸いです。また、特許庁は、AI、IoT技術の時代において生じている、あるいは生じ得る様々な事例を分析し、新しい時代に即した知的財産制度の在り方を議論するなど、2020年もユーザーのために動き続ける所存です。引き続き特許庁の取組に御注目ください。Matsunaga AkiraCommissionerJapan Patent Ofce特許庁長官松永 明JPO STATUS REPORT 20203

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