第2章 実用新案登録の基礎的要件

最終更新 2012.4

1. 基礎的要件の審査の意義

実用新案法は、考案の早期権利保護を図る観点から、実体審査を行わずに実用新案権の設定の登録をすることとしているが、設定登録を権利付与の要件とする方式主義を採用しているため、実用新案登録出願は、設定登録を受けるに足る一定の要件を満たす必要がある。

そのため、実用新案法第2条の2第4項各号で規定する方式要件に加え、第6条の2各号において、実体審査を経ることなく実用新案権の設定登録を受けるために実用新案登録出願が満たすべき要件(以下、「基礎的要件」という。)を規定している。そして、この要件を満たさない出願については、特許庁長官は補正を命ずることができることとし、当該補正命令において指定した期間内にその補正をしないときは、特許庁長官は手続を却下することができることとしている(第2条の3)。なお、特許庁長官による手続却下処分については、行政不服審査法による異議申立の対象となり、さらにその結果に対しては、行政事件訴訟法による取消訴訟の対象となる(実用新案法第48条の2で準用する特許法第184条の2)。

この基礎的要件が課されていることにより、実用新案法の保護対象でない考案について実用新案権が設定されたり、実質的に出願書類の体をなしていない出願がそのまま登録されたりすること等の不都合を防止することができる。

第14条の3に規定する訂正後の基礎的要件についても同様である(訂正後の基礎的要件の審査は、平成17年4月1日以降の出願について行う。)。

2. 基礎的要件に違反するもの

(1)

保護対象違反(第6条の2 第1号第14条の3第1号

考案が物品の形状、構造又は組合せに係るものでないとき

(2)

公序良俗違反(第6条の2第2号第14条の3第2号第4条

考案が公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがあるとき

(3)

請求項の記載様式違反(第6条の2第3号第14条の3第3号第5条第6条第4号

実用新案法施行規則第4条で規定された実用新案登録請求の範囲の記載様式に違反するとき

(4)

単一性違反(第6条の2第3号第14条の3第3号第6条

二以上の考案について一の願書で実用新案登録出願をすることができないものであるとき

(5)

明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の著しい記載不備(第6条の2第4号第14条の3第4号

明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に必要な事項が記載されておらず、またその記載が著しく不明確であるとき

3. 具体的な運用

第6条の2に規定する「実用新案登録出願に係る考案」及び第14条の3に規定する「実用新案登録請求の範囲に記載されている事項により特定される考案」を、以下「請求項に係る考案」という。

3.1 保護対象違反(第6条の2第1号第14条の3第1号

(1)

請求項に係る考案が「物品の形状、構造又は組合せ」に係るものでないときは、本号に該当する。また、請求項に記載されたものが「考案」でないときは、同様に本号に該当するものとする。

(参考)

物品

空間的に一定の形を保有したもので、一般に商取引の対象となる自由に運搬可能な商品で使用目的がはっきりしたものは、「物品」と解釈されている。

また、道路や建築物などの構造も、物品に関する構造として取り扱われている。

なお、機械や装置などと分離して取引されるようなもので、前記の条件を満たすものであれば、その部分を「物品」とみてよい。

形状

「形状」とは、線や面などで表現された外形的形象をいい、例えば、カムの形、歯車の歯形、工具の刃型のようなものである。

構造

「構造」とは、空間的、立体的に組み立てられた構成で、物品の外観だけでなく、平面図と立面図とにより、場合によっては更に側面図や断面図を用いて表現されるような構成である。

組合せ

物品の使用時又は不使用時においてその物品の二個あるいはそれ以上のものが空間的に分離した形態にあり、またそれらのものは、独立して一定の構造又は形状を有し使用によりそれらのものが機能的に互いに関連して使用価値を生む場合を、物品の「組合せ」という。例えば、ボルトとナットからなる締結具。

考案

「考案」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作をいう(第2条)。

(2)

本号に該当する類型としては、例えば、以下のようなものがある。

「物品の形状、構造又は組合せ」に該当しないもの

(ⅰ)

方法のカテゴリーである考案

(ⅱ)

組成物の考案

(ⅲ)

化学物質の考案

(ⅳ)

一定形状を有さないもの(例、液体バラスト、道路散布用滑り止め粒)

(ⅴ)

動物品種、植物品種

(ⅵ)

コンピュータプログラム自体

「考案」に該当しないもの

(ⅰ)

永久機関(熱力学第二法則に反するもの)

(ⅱ)

音楽を録音したCD(録音された音楽のみに特徴がある場合)

(ⅲ)

絵画、彫刻などの単なる美的創造物

(ⅳ)

コンピュータプログラム言語

3.2 公序良俗違反(第6条の2第2号第14条の3第2号第4条

(1)

請求項に係る考案が公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがあるときには、本号に該当する。

(2)

考案の詳細な説明における記載が公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある場合であっても、請求項に係る考案について、そのようなおそれがないときは、公報掲載時に所要の措置を講ずるものとする。

3.3 請求項の記載様式違反(第6条の2第3号第14条の3第3号第5条第6項第4号

実用新案法施行規則第4条で規定された実用新案登録請求の範囲の記載様式に違反するときには、本号に該当する。

実用新案法施行規則第4条

実用新案法第五条第六項第四号の経済産業省令で定めるところによる実用新案登録請求の範囲の記載は、次の各号に定めるとおりとする。
一 請求項ごとに行を改め、一の番号を付して記載しなければならない。
二 請求項に付す番号は、記載する順序により連続番号としなければならない。
三 請求項の記載における他の請求項の記載の引用は、その請求項に付した番号によりしなければならない。
四 他の請求項の記載を引用して請求項を記載するときは、その請求項は、引用する請求項より前に記載してはならない。

3.4 単一性違反(第6条の2第3号第14条の3第3号第6条

(1)

基本的には、「第Ⅰ部第2章 発明の単一性の要件」の基準に則って判断する。

(2)

上記基準においては、特別な技術的特徴の認定は、最終的に特許法第29条第1項各号に該当する発明である先行技術との対比で行うこととしている。しかしながら、実用新案登録の基礎的要件の審査では、先行技術調査や先行技術調査で発見された従来技術との対比判断は行わない。そのため、考案の先行技術に対する貢献を明示する特別な技術的特徴については、明細書、実用新案登録請求の範囲及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて認定するものとする。訂正後の基礎的要件の審査においても同様とする。

3.5 明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の著しい記載不備(第6条の2第4号第14条の3第4号

(1)

明細書、実用新案登録請求の範囲若しくは図面に「必要な事項が記載されておらず」又は「その記載が著しく不明確であるとき」は、本号に該当する。

(2)

「その記載が著しく不明確であるとき」とは、一見して記載が不明確であると判断できる場合、例えば、他の記載との関係を精査することなく不明確であると判断できる場合をいう。

(3)

実用新案登録請求の範囲についての判断

「必要な事項が記載されておらず」に該当する類型には次のようなものがある。

例:

(ⅰ)

請求項に、販売地域、販売先などの技術的事項でない事項のみが記載されている場合

(ⅱ)

請求項に考案の目的、作用、効果のみが記載されている場合

「その記載が著しく不明確であるとき」に該当する類型には次のようなものがある。

例:

(ⅰ)

請求項の記載内容が技術的に理解できない場合

(ⅱ)

請求項の記載が、詳細な説明又は図面の記載で代用されている場合

(ⅲ)

二以上の考案が一の請求項に記載されている場合

(4)

実用新案登録請求の範囲、考案の詳細な説明の欄以外の部分(考案の名称、図面の簡単な説明、図面)についての判断

考案の名称、図面の簡単な説明、図面の記載内容が不明瞭であると一見して判断される場合は、本号に該当する。