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第1回医療行為WG 議事録

特許庁総務部総務課
工業所有権制度改正審議室

  1. 日時:平成14年10月16日(水曜日) 10時00分~12時00分
  2. 場所:特許庁庁舎 特別会議室
  3. 出席委員:相澤委員、宇都木委員、大野委員、熊谷委員、澤委員、菅沼委員、竹田委員、津國委員、長井委員、古川委員
  4. 議題:特許法における医療行為関連発明の取扱いの現状と課題
議事録

木村審議室長

まだおみえでない委員の方もいらっしゃいますけれども、定刻でございますので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会第1回医療行為ワーキンググループを開催させていただきます。
本ワーキンググループにつきましては、9月18日に開催されました第1回特許制度小委員会におきまして、その設置について決定がされております。座長につきましては、産業構造審議会運営規程によりまして、小委員長が指名することとされております。
本ワーキンググループでは、後藤小委員長より早稲田大学アジア太平洋研究センター教授でいらっしゃいます相澤英孝委員をご推薦いただき、相澤委員ご本人にもご内諾をいただいておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
では、相澤座長、一言ごあいさつを……。

相澤座長

相澤でございます。知的財産法を専門にしております。お忙しいところ恐縮でございますけれども、非常に重要な問題でございますので、皆様方の忌憚のないご意見をいただいて審議を進めたいと思います。よろしくお願いいたします。

木村審議室長

ありがとうございました。では、以降の議事の進行を相澤座長にお願いをいたしたいと思います。

相澤座長

ありがとうございます。それでは、本日は第1回のワーキンググループでございますので、事務局から委員の皆様のご紹介をお願いいたしたいと思います。

木村審議室長

それでは、ご紹介いたします。
ただいまおみえになられましたばかりでございますけれども、東海大学法学部教授でいらっしゃいます宇都木伸委員。
旭メディカル株式会社技術最高顧問、大野邦夫委員。
九州大学大学院法学研究院助教授、熊谷健一委員。
社団法人日本医師会常任理事、澤倫太郎委員。
株式会社キャンバス代表取締役社長、菅沼正司委員。
竹田稔法律特許事務所弁護士・弁理士、竹田稔委員。
津国特許事務所弁理士、津國肇委員。
山之内製薬株式会社特許部部長、長井省三委員。
株式会社ジービーエス研究所社長、古川俊治委員。
なお、本日、阿部・井窪・片山法律事務所弁護士・弁理士、片山英二委員及び大阪大学助教授、森下竜一委員のお二方におかれましては、ご所用のためご欠席というご連絡をいただいております。

相澤座長

ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
それでは、議事に入る前に、上野特許審査第二部長から一言ごあいさつをお願いいたします。

上野審査第二部長

本日は、皆様方におかれましては、ご多用のところ、特許制度小委員会第1回医療行為ワーキンググループにご参加をいただき、まことにありがとうございます。
第1回開催に当たりまして、審査を預かる立場の一人として一言ごあいさつを申し上げます。
皆様ご承知のように、知的財産戦略大綱においては、再生医療・遺伝子治療関連技術の特許法における取り扱いの明確化のために、2002年度中に法改正及び審査基準改定の必要性について検討し、医師による医行為等に影響を及ぼさないよう十分に配慮しつつ結論を得ることが求められております。
本ワーキンググループは、これを踏まえて、特許法における医療行為関連発明の取り扱いの現状と課題について集中的にご審議をいただくために設置されたものであります。
近年の加速する技術革新によって、新たに出現してきた先端技術分野の発明を適切に保護することは、技術開発を活性化し、国際競争力を確保するために非常に重要であります。特許庁としましては、これらの新分野の技術を適切に保護することができるよう、タイムリーに対応していきたいと考えております。
本ワーキンググループにおいてご検討いただく医療行為関連発明に関しましても、近年、再生医療及び遺伝子治療関連技術の著しい発展によって、皮膚の培養方法、細胞の処理方法といった新技術が生まれております。
このような状況を踏まえまして、現在、産業上利用することができる発明ではないとされている医療行為につきまして、その保護のあり方を明確にすることはまことに重要であると考えてございます。
本ワーキンググループの皆様におかれましては、医療行為に関連する技術を適切に保護していくために必要な特許制度のあり方につきまして、闊達なご意見を賜るとともに、ご助言、お力添えをお願い申し上げる次第でございます。
以上、簡単ではございますが、私のあいさつとさせていただきます。どうもありがとうございました。

相澤座長

ありがとうございました。
さて、具体的な審議に先立ち、本ワーキンググループの公開について、皆様のご同意を得ておきたいと存じます。産業構造審議会は、その運営規程によって、部会、小委員会、ワーキンググループを含め、原則公開となっております。
本ワーキンググループにおきましては、委員各位の率直かつ自由な意見交換を確保するために、会議自体は非公開とし、会議後に配付資料、議事要旨、議事録を経済産業省及び特許庁ホームページに掲載させていただきたいと考えておりますが、いかがでございましょうか。
(「異議なし」の声あり)

相澤座長

ありがとうございました。
それでは、早速議事に入らせていただきます。
議題である「特許法における医療行為関連発明の取り扱いの現状と課題」につきまして、事務局からご説明をしていただきたいと思います。

木村審議室長

まず、配付資料の確認をさせていただきたいと思います。
本日の配付資料でございますけれども、クリップを外していただきますと、まず資料1が委員の先生方の名簿になってございます。資料2が「バイオ産業の今後の展望」、資料3「医療関連行為発明の特許法上の取扱いについて」という紙、資料4-1が横長の紙で「人間を手術、治療又は診断する方法と具体的事例との関係」という何枚紙かになっておりまして、資料4-2が「手術方法、治療方法、診断方法に係る具体的事例について」というペーパーでございます。最後、資料5が厚生省さんのおつくりになられました「『医療行為及び医療関係職種に関する法医学的研究』報告書」でございます。
以上6点でございますけれども、過不足等ございましたらお申し出をいただきたいと思います。
それでは、最初に、資料の2に基づきまして、経済産業省製造産業局生物化学産業課の上村課長補佐から簡単にご説明をさせていただきたいと思います。

上村経済産業省生物化学産業課課長補佐

上村でございます。よろしくお願いいたします。
では、資料2に基づきまして「バイオ産業の今後の展望」についてご説明申し上げます。
まず、1枚おめくりいただきまして「バイオ研究の系譜」でございますが、いわばこれまで2回のバイオブームがあったかといえると思います。
1つ目が1980年前後でございますが、遺伝子組み換え技術の確立、Genentechというバイオベンチャー起業の設立、その後の数百のベンチャー創立、またヒトゲノムプロジェクトのスタートといったものが指摘されるかと思います。
2度目のバイオブームでございますが、2000年前後ということがいえると思います。ゲノム解読後の特許獲得競争の激化、米国NIH予算の急拡大、98年1.5兆円が2003年には3兆円ということがいえるかと思います。
日本におきましても、ミレニアムプロジェクトによってライフサイエンス分野への予算の拡大が行われてございます。
そのほか、体細胞クローン羊ドリーの誕生でございますとかES細胞の樹立といったことが指摘されるかと思います。
続きまして、我が国のバイオ産業の現状でございますけれども、約10年ほど前の90年におきまして3,000億円程度であったものが、2001年には1.3兆円ほどに急拡大してございます。内訳をごらんいただきますと、医薬品が約6,000億円弱ということでトップでございまして、次いで農林水産品、化成品というぐあいになってございます。
3ページでございます。バイオベンチャーの動向はどうかということでございますが、これは各年の設立状況をグラフにしてございます。累計いたしますと、右の方の表でございますけれども、2001年に250社程度、これは最近の状況ですともう300社を超えているという状況でございます。しかしながら、欧州、米国に比べますと、彼らは1,000社を超えておりますので、私どもも1,000社を超えるべく施策を打っているところでございます。
バイオベンチャーの分野の事例を下にご紹介してございます。これはランダムサンプリングしました59社の分野ですので、重複もございます。一番多いのは組み換えDNA技術になってございますが、次いで細胞融合技術・動植物細胞培養技術・染色体操作技術・組織培養技術・動物クローン技術に関するベンチャー企業が多いという状況になってございます。
4ページ目でございます。先ほど触れさせていただきましたミレニアムプロジェクトでございますが、これは平成11年末に当時の小渕総理大臣の決定によりまして、平成16年度の5年間のプロジェクトとしまして、情報化、高齢化、環境対応の3分野を対象として産官学共同の省横断的プロジェクトとしてスタートしたものでございます。
高齢化の中にバイオテクノロジーの関係はございますけれども、平成16年度を目標といたしまして、1つには高齢者の主要な疾患に関して遺伝子を解明し、テイラーメイド医療、画期的な新薬の開発、2つ目に再生医療というのが目標として掲げられております。
研究対象の相関図でございますが、完全長cDNAとかSNPsの解析、ヒトゲノム多様性解析を踏まえた疾患遺伝子の解析、治療応用というのがございます。
また、イネゲノムの多様性解析等もございますけれども、左下の方で、皮膚・角膜、血管、軟骨に関する細胞治療、発生・分化・再生科学総合研究と発生・分化・再生の研究がございます。これらをバイオインフォマティクスを使って統合的にデータベース化していこうという動きもございます。
次いで5ページは、総合科学技術会議が2001年9月に策定いたしましたライフサイエンスの戦略でございます。これは縦軸で「国民の健康を守る」「産業競争力」「共通基盤の強化」「推進方策」という整理がございまして、横軸で「基盤研究」「革新的技術開発」「社会還元の加速」、目標としての「成果創出」となってございます。
ゲノム・遺伝子から始まってタンパク質、細胞・組織・個体というふうに研究が進んでまいりますが、ちょうど真ん中あたりの上の方に「再生医療・遺伝子治療」ということで「安全な細胞治療の実現」「遺伝子治療の基盤技術開発」ということで、「革新的な予防・診断・治療技術」をしっかり行っていこうということが位置づけられてございます。
以上がミレニアムプロジェクト、総合科学技術会議における研究開発に対する重点化の状況でございますが、6ページに「BT戦略会議」というのがこの夏に、これも総理大臣決定で開催をされてございます。
これは、2番の「趣旨」にございますけれども、BT(バイオテクノロジー)の目覚ましい成果を実用化・産業化していこうということで始まってございまして、年内にBT戦略を樹立していくということになってございます。総理を初め関係省庁の大臣、有識者、座長は岸本先生にお願いしてございます。
これまでの議論のポイントを例示いたしますと、ゲノム解読がほぼ終了しましてポストゲノム、いわばバイオ元年であるということが指摘されてございます。また、融合分野が重要であるとか、応用技術、産業化への注力が大事である、基礎医学の成果の臨床医学における活用が大事である、事業環境の整備、安全・倫理等、国民の理解の増進が重要である、またわかりやすいビジョンを示すべきである、こういったことが委員の皆様から指摘をされている状況でございます。
今後の「バイオ市場の将来予測」が7ページにございます。欧州委員会の予測によりますと、2010年までに世界市場は約230兆円まで拡大するといわれてございます。
その中で、日本は現状、先ほどのニューバイオといわれている新しい遺伝子組み換え技術等を用いたバイオの部分は1.3兆円程度ですけれども、将来2010年には25兆円、これは国家産業技術戦略の予想値でございます。
一方、民間のバイオ産業人会議によりますと、100兆円程度までいくのではないかというビジョンが示されてございます。
8ページに、では具体的にどういった展開があるかというイメージ図でございますけれども、下の方にございますゲノム解析、タンパク質解析、細胞・組織解析というある種基盤的な研究をもとにしまして、またバイオツール、情報産業、融合技術を活用し、縦に短冊になっておりますようないろいろな技術的な利用が進むと思われます。
「健康の維持増進」という分野では、テイラーメイド医療、ゲノム創薬、再生医療というのが大きな柱だと思います。これらによりまして、革新的医療・医薬品というのが実現をし、ひいては最終的な目標である健康の維持増進が図られると考えてございます。
9ページは、またこれはある種違う切り口でみております。「バイオがもたらす経済社会構造の変革」ということで、左の方が健康・医療・医薬の関係でございますが、これもテイラーメイド医療、遺伝子治療、ゲノム診断、予防医療、ゲノム創薬・DDSもしくは総合健康情報サービスネットワークといったものが今後のバイオ産業として展望されるのではないかと思われます。
10ページは「バイオテクノロジーによる既存産業の変革」のイメージでございますが、化学、医薬品、食品等々の従来型産業がバイオを活用することによって、例えば資源循環型バイオケミカル産業、総合健康産業、植物工場等々、このように将来的には発展的に変わっていくのではないかという絵姿でございます。
11ページは、こういう産業化のためには当然特許が重要であるということを改めて指摘をさせていただいております。従来型の自動車・家電等の特許ですと、製品当たり数百から数千の特許が存在するということでございまして、ポンチ絵に小さいビーズのようにかいてございますが、1つの特許の影響は小さいであろう。したがって、特許の存在が製品の開発を妨げる可能性も低いと思われます。
しかしながら、医薬品につきましては、右側の図でございますが、製品の基本特許は原則1つであって、ライセンス料が高額である等によりまして、場合によっては製品開発を断念するケースも多いだろうということが指摘をされてございます。
また、下にありますように、特許訴訟における損害賠償額、ロイヤリティー金額もウナギ登りの状況でございまして、知的財産管理の重要性が改めて注目されているわけでございます。
最後、12ページは、改めて今後の日本国内におけるバイオ産業の――医薬分野に特化しておりますが――市場規模予測でございます。2010年、2020年と書かせていただいておりまして、ゲノム創薬、遺伝子治療、遺伝子診断、再生医療でございます。バイオ産業の合計が約25兆円から47.5兆円と2倍弱程度伸びているのですけれども、これに対して上の4分野では5倍から10倍、今後かなり伸びていくことが期待されておりまして、これらをもって今後のバイオ産業が我が国経済の活性化につながっていくだろうということを大きく期待しているところでございます。
以上でございます。

木村審議室長

続きまして、資料3に基づきましてご説明をさせていただきます。
「医療関連行為発明の特許法上の取扱いについて」ということで、本日の主題でございます。現在、特許法の運用におきましては、医療関連行為の発明は「方法の特許」として特許権が与えられていないという運用になってございますけれども、最近になって、このうちの一部について特許権を与えて知的財産として保護すべきであるという要請が出てまいっております。
釈迦に説法ではございますけれども、まず特許制度の概要から簡単にご説明を申し上げたいと思います。特許権、ご承知のとおり、発明という情報を独占的に実施する、そのための権限であるということでございまして、これは私権であると同時に、その設定は行政処分に基づいて行われるということで、かなりアンビバレントな性格をもつわけでございます。
その要件といたしましては、幾つかございますけれども、まず発明であるということ。これは「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの」ということで規定をされておりまして、「物の発明」と「方法の発明」に分類されるということでございます。
「物の発明」は、例えば機械や化合物のような有体物に加え、プログラムのような無体物も含むということでございまして、「方法の発明」には、例えば装置の操作方法であるとか物を生産する方法といったものが当てはまるわけでございます。
2番目に、産業上の利用可能性というのが要件になっております。例えば個人的にのみ利用される発明、あるいは学術的、実験的にのみ利用される発明は、産業上の利用可能性がないという解釈をしております。
3番目に新規性が当然ないといけないということで、例えば特許出願の前に日本国内または外国で公然知られた発明――公知と呼んでおりますけれども、そういうものは特許にならないわけでございます。
2ページでございますけれども、4番目の要件として進歩性を挙げさせていただいております。要は、何らかの発明であっても、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者――通常当業者と呼んでおりますけれども、そういう方が容易に発明をすることができるという場合は進歩性がないということで特許を受けることができないわけでございます。
5番目に「不特許事由に該当しないこと」というのがございます。特許法32条という条文がございまして、現在は、公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明については不特許ということで規定をしております。現在、不特許事由として明定されているのはこれだけでございます。
特許権が実際付与されますとどのような効果があるかということでございますが、独占的・排他的権利があるわけでございます。例えば「物の発明」でございますと、物の生産、使用、供給、輸入といった行為が独占的に行われる。「方法の発明」でございますと、その方法を使うという行為。生産方法の場合は、その生産方法で生産されるものの使用まで及ぶということでございまして、こういう独占的・排他的権利が与えられるわけでございます。
特許権の侵害に対しましては、侵害行為の差止の請求ないしは損害賠償といった請求権が発生する。あわせまして、特許権を侵害する行為自身は刑事罰の対象にもなるということで保護をしておるわけでございます。
2.のところでございますけれども、では医療関係の技術等についてはどのような取り扱いになっているかということを簡単にご説明をしたいと思います。
まず、「医療機器」でございますけれども、医療機器自身は当然「物の発明」として特許権の対象となるわけでございます。当然医療機器の製造業自身が産業であろうということは容易にわかるわけでございますし、あわせまして医療機器を製造する方法についても「方法の発明」として特許権の対象となるということで、普通の産業として一般的に特許権の対象となり、その保護を享受しているということでございます。
(2)の「医薬品」でございますけれども、これも同じでございまして、他の化学物質と同様、「物の発明」として特許権の対象になるわけでございます。当然医薬品の製造業も世の中にもちろん存在しておるわけでございまして、産業上利用することができるということも明らかであろうということでございますし、また医薬品を製造する方法につきましても、「方法の発明」として特許権の対象となるということでございます。
ただし、医薬品につきましては、特許法69条第3項という規定がございます。参照条文につきましては、同じ資料の後ろ3枚につけてございます。例えば69条でございますと、10ページに条文がそのまま載っております。69条第3項の規定によりまして、医薬の調剤行為及びその調剤行為により製造される医薬に対しては、特許権の効力が及ばないものとされております。
先ほど、特許を受けることができないということで32条という条文があると申し上げました。現在は公序良俗が規定されておるわけでございますけれども、昭和50年以前はここに医薬についても不特許として規定されていたということでございまして、従来、医薬または2以上の医薬を混合して1の医薬を製造する方法の発明は、特許を受けることはできないとなっておりました。
しかしながら、これにつきましては、やはり特許権をもって保護することが必要であるという政策判断に基づきまして、昭和50年の特許法改正の結果32条の不特許事由からは削除をいたしまして、他方、調剤行為に特許権が及び、差止の対象となるという事態を回避するために69条の第3項という規定を新設をしたという経緯がございます。
理由といたしましては、調剤行為を行う方は処方せんに従うしかない、あるいは医師の方がその都度、混合方法が特許権に抵触するか否かを判断しつつ使うということは困難であるし、こういうところに特許権が及ぶこと自身が不合理であるという判断をしたわけでございます。
(3)の「医療関連行為」、今回の検討の主題でございますけれども、これにつきましては特許権の対象としないという運用を行ってきておるわけでございます。
その理由といたしましては、4ページでございますが、1つは研究開発政策的な理由として、大学ないし大きな病院で医学の研究としてなされ、特許制度によるインセンティブやニーズが必ずしも高くなかったのではないか、あるいは医学研究はそもそも営利目的で行うべきではないというような判断。
人道的な理由といたしまして、医療行為に特許が付与されると、緊急の患者の治療にも、その都度、特許権者の許諾を求めなければならないということになって、それが実際現場において差し支えるという判断があったということでございます。
こういう判断に基づきまして医療行為に対しては特許権を与えないという運用になっておりまして、現在の審査基準もそうなっておるわけでございます。ここに書きましたのは、非常に簡単でございますけれども、人間を手術する方法、人間を治療する方法、診断する方法ということで、これらにつきましては別途資料に基づいて改めてご説明を申し上げます。
5ページでございますけれども、他方、こういう中にも、例えば人間から採取したものを処理する方法、またはこれらを分析するなどして各種データを収集する方法ということで、これは特許の対象にならないわけでございます。しかし、採取したものを採取した方と同一の人物に治療のために戻すことを前提に採取したものを処理する方法、例えば血液の透析のようなものがあるわけでございますけれども、こういうものは医療行為に該当する。これをそのままほかの用例にも解釈をいたしますと、例えば再生医療・遺伝子治療における細胞の処理方法などにつきましては、採取自身あるいは接種そのものがその方法中に含まれていなくても医療行為に該当してしまうということで、特許権を付与しないというようになるわけでございます。
この辺の議論をするに当たりましては、当然「医行為」でございますとか、そういう関連した概念を整理しつつ考えていく必要があるわけでございまして、この点につきましても別途ご説明を申し上げたいと思います。
3.でございますけれども、現在「医療関連行為発明への特許権付与の要請」が各方面から起こってきているということでございます。
まず、(1)で「研究開発の促進、産業振興の観点」が挙げられるわけでございまして、まず産業界のサイドからは以下のような要請をいただいているということでございます。
まず第1に「再生医療・遺伝子治療関連技術等の先端医療技術」の特許における保護でございます。例えば皮膚の培養方法とか細胞の処理方法は、医師の方のみならず、医師の免許を有しない方でも行うことができるものもあるわけでございまして、それは委託、受託の関係を通じて新産業として成長が見込まれるわけでございます。
他方、こういう方法が仮に細胞を採取した同じ方に戻すということで、例えば当該皮膚であるとか細胞を処置するということになりますと、これは医療行為に該当するので、現行の運用では特許権を付与しないということになってしまうわけでございまして、これをやはり特許で保護すべきではないかという議論があるわけでございます。
丸2で「医療機器、医薬品等の使用方法」でございまして、例えば1ページめくっていただきますと、既に知られている医薬品を既に知られている用途、例えばある疾患の治療のために使用する方法がある。それぞれはそれぞれ皆知られておるわけでございますので、それぞれについては新規性、進歩性がないので特許の対象とはならないわけでございますけれども、この「方法」が新しいという場合に、それは本来は特許の対象になるかもしれないのに、医療行為に該当するため特許権が付与されないということが起こり得るわけでございます。
ただ、現実問題といたしましては、医薬品を製造される方が医師の免許をもたない場合はそれを使えないではないかという議論があり得るわけでございますけれども、5ページの下から6ページにかけて注で書かせていただいた部分、いわゆる間接侵害が、特許法上の概念としてはあるわけでございます。
特許法101条という条文がございまして、ある方法の使用にのみ用いる物の生産、供給、輸入をする行為、あるいはその方法の使用に用いる発明のポイントに関連する重要な部品、材料等の生産、供給に要する行為であって、その行為者が特許権の存在及びその部品、材料等が特許に関する方法の使用に用いられることを知っている場合、すなわち悪意で物を供給するような場合でございますけれども、これは間接的な特許権侵害となるわけでございまして、こういう行為は差止の対象になることが起こり得るわけでございます。
(1)は、先ほど申し上げましたように産業サイドないしは研究室サイドからの観点でございますけれども、(2)で「法制上の観点」ということで、学説からは、現在、特許法29条で産業上利用することができないという運用で拒絶をしているのは、解釈上不適切であるというご批判をいただいておるところでございます。
次に、判例でございますけれども、東京高等裁判所の今年の4月の判決で、現行特許法上の解釈上医療行為自体も産業上利用することができる発明に該当するとの原告の主張は傾聴に値すると。他方、医師に特許権侵害の責任を追及されることになるのではないかと恐れさせるような状況に追い込む特許制度は、医療行為というものの事柄の性質上著しく不当であるというべきであるので、特許法上特段の措置が講じられていない以上、医療行為の発明を産業上利用できる発明としないと解する以外にない。かなり持って回った表現ではありますけれども、基本的には産業上利用することができる発明ではないという解釈に対するご批判を東京高等裁判所の判決のレベルでもいただいているということになるわけでございます。
7ページでございますけれども、政府のいろいろなフォーラムがございます。産業競争力と知的財産を考える研究会の報告書とか総合科学技術会議の専門調査会、知的財産戦略大綱、こういったところで具体的な制度整備をやる、ないしは取り扱いの明確化をすべきであるというご指摘をいただいているところでございまして、現在、先ほどご説明がございましたように、バイオテクノロジー戦略会議におきましても具体的な取り扱いを検討するように求められているという状況になっております。
ここで、外国の制度について簡単に概略だけご説明申し上げますと、まず欧州でございますけれども、基本的に医業は産業ということは認めつつ、医療行為は不特許であるという運用になってございます。ただ、この欧州特許条約そのものはまだ未発効でございます。
米国でございますけれども、基本的には不特許事由に関する規定がないわけでございまして、医療行為にも特許が付与される。したがって、それだけみると医師の行為にも特許権は原則として及ぶような規定ぶりになっているということでございますが、他方1996年の法改正で、医師等による医療行為は差止・損害賠償の請求の対象から除外されるということが明文化をされているということでございます。
他方、除外に対してさらに例外が設けられていて、バイオテクノロジー特許の侵害となる方法の実施などについては、医師の医療行為としての実施であっても、差止・損害賠償請求が及ぶという局面もあるようでございまして、実際問題としてベンチャー企業が医療機関に実施料を求めるといった事態も起こっておるようでございます。これについてのさらなる修正案のようなものがさらに議会に提出されているというようなことも聞いております。
今後の「検討における留意点」でございます。若干先取りになるような気もいたしますけれども、ここで簡単に論点をかいつまんでご紹介申し上げますと、まず医療従事者以外の幅広い分野に属する者が参入可能で、新事業として成長が見込まれるような技術分野が特許の対象になるような場合、特許権による保護が可能となり、有用な技術が営業秘密とされず、速やかに公開されるというメリットが期待されるのではないかということ。
そうなった場合に、例えば手術方法のような、いわゆる医療従事者、医師の方でなければ行い得ないような技術に関しても特許権そのものは設定される可能性があるわけでございますけれども、これが妥当かどうか。
それから、特許権の効力に関する原則にそのまま素直に従いますと、特許権に基づく各種請求権――損害賠償請求権であるとか差止請求権でございますけれども、それが行使される可能性があるわけでございます。これについて、「人道的観点」とここには書いてございますけれども、何らかの形でこれを制限することが必要ではないかという論点もございます。
特許法101条、先ほど申し上げました間接侵害でございますけれども、こういうものについての各種請求権をその特許権者が行使する可能性があるわけでございますが、これが妥当かどうかといった論点があるわけでございまして、順次整理をしてまいる必要があるのかなということでございます。
私からの資料3に基づくご説明は以上でございます。
続きまして、資料4-1、4-2につきまして、特許庁の特許審査第一部調整課審査基準室の相田室長から説明をさせていただきます。

相田審査基準室長

相田でございます。資料の4-1と4-2につきまして、簡単にご説明をさせていただきます。
先ほど木村審議室長からご説明がありましたとおり、現行の運用では「人間を手術、治療又は診断する方法」、これは産業上利用できない発明として取り扱っております。具体的にイメージがつかめますように図表化いたしましたのが、この資料の4-1でございます。
この資料の4-1の見方につきまして、簡単にご紹介をいたしたいと思います。
まず、左欄に大きな枠が3つございます。上段、中段、下段。上段が「人間を手術する方法」の具体的な事例、中段が「人間を治療する方法」の具体的事例、一番下の段が「人間を診断する方法」の事例になってございます。
それから、右にブロックが幾つかございますが、これは「人間を手術、治療又は診断する方法に該当しないもの」、つまり産業上利用できる発明として現行運用上取り扱っているものの事例でございます。
この枠の中に簡単な説明と公報番号がついてございます。公報番号の後ろ側に※を伴いまして番号が1、2、3とついてございますが、この※の番号は資料4-2の事例集の事例の番号に対応いたします。したがいまして、具体的な事例の請求項がどのようになっているのかをみたい場合につきましては、4-2の資料をみていただきたいと思います。
簡単にこの具体的例についてご紹介いたします。
まず、左側の欄の一番上の枠内でございますけれども、「人間を手術する方法」の事例でございます。例えば第1番目の例が眼内レンズを生体内で製造する方法。次の例が注射針を振動させて注射する注射方法。それから、人から細胞をとりまして、それを培養した後、もう一度、人に移植する方法。一番最後の例は、脳内に電極を挿入いたしまして、てんかん等の発作を抑制する治療方法で、これはアメリカで特許になっている例でございます。
その枠内の右側に、入れこのような形になって「手術のための予備的処置方法」というのがございます。この予備的処置方法につきましても、手術方法に相当するものとして、現在では特許しておりません。例えばX線照射方法における位置の確認方法、人体空洞を洗浄する方法等のようなものでございます。
次に、中段に移りまして、中段は「人間を治療する方法」の事例でございます。一番最初に挙げさせていただきましたのが、ゲストゲンとエストロゲンを併用することによります避妊方法。3番目にいきますと、植え込み可能な医用装置のための遠隔通信方法。これは植え込みする処置が特許請求されております。このようなものが人間を治療する方法であるということでございます。
同じ欄の左側の枠内、入れこになっている枠内でございますが、「治療のための予備的処置方法」。例えば呼吸補助装置の作動方法。次の枠の「同一人に戻す前提で採取されたものを処理する方法」ということで、例えば先ほども紹介がありましたように、典型的には血液透析方法、自己の細胞由来のクローン臓器を製造する方法などもこれに含まれるものと思います。
最後の一番下の欄ですけれども、「人間を診断する方法」でありまして、変わった例といたしましては、一番下に挙げておりますように、患者の親指と他の指でOリングを形成いたしまして、診断者がそのリングを広げようとするときに、それを維持しようとする指の抵抗力を測定して体調を診断する方法。これはアメリカで特許になっている例でございます。
それから、入れこの枠内でございますけれども、「医療目的で人間の身体の状態や構造機能を測定する方法」、「医療目的で人間の身体の状態、構造機能を測定するための予備的処置方法」、このようなものも人間を診断する方法とみなしまして、現在では特許をしていないというわけでございます。
以上が現行運用上、特許の対象としていない例でございますけれども、この資料の4-1の右欄の方にありますブロック、これは産業上利用できる発明と現在運用しているものでございます。
一番上のブロックは小動物であるとか家畜の手術方法でございまして、人間を対象としていないので、これはよろしいと。
中段の左側、これも鶏とか犬の治療方法でありますので、人間を対象としていないのでよろしいと。
一番下の段もそうですが、牛の診断方法。これらは現行運用上でも産業上利用できる発明としております。
ブロックの中段の一番右側ですけれども、「人間から採取したものを処理する方法」、例えばヒトの表皮細胞を培養して皮膚の代用品を調製する方法のようなものは特許になっております。
一番下ですけれども、「人間から採取したものを分析するなどして各種データを収集する方法」。一たん人間から取り出したもの、唾液等を検査する方法等は現在でも産業上利用できる発明とされているということでございます。
以上で私の説明とさせていただきます。

木村審議室長

それでは、最後に資料5に基づきまして、厚生労働省医政局医事課、三浦課長補佐から説明をさせていただきます。

三浦厚生労働省医政局医事課課長補佐

厚生労働省の三浦でございます。お手元の資料、昔の名前で「厚生省平成元年度厚生科学研究」と書いてございます。多少古くなっておる部分もございますけれども、今回のテーマにはこれが一番ふさわしいかと思ってつけさせていただいております。この研究は、いらっしゃいます宇都木先生なんかのご協力を得まして、平成元年度に調査されたものであります。
まず最初のページをごらんいただきたいと思います。冒頭お断りしなければいけないのですが、我が国の医療におきましては、現場の裁量と申しましょうか、医師の方の裁量を広く認められております関係上、私どもで定めております通達に加えまして、判例など確定したものを多く引用してご説明させていただくことが必要かと思います。この点ご容赦いただければと思います。
冒頭、私ども、医業、医行為につきましての規制の根拠法令といたしましては、一番最初の行に書いてございますが、医師法第17条という規定がございます。こちらの方で「医師でなければ医業をなしてはならない」という規定を設けておりまして、これに違反した場合には懲役あるいは罰金といったような刑罰が科せられるという基本的な構造になっております。法律上は、この「医業をなしてはならない」という規定だけでありまして、この規定を解釈、運用して実際には医行為というものを示しておるという現状にございます。
今は医師法を引きましたけれども、医師法とほぼ同様の法律で歯科医師法というデンティストに関する法律がございます。こちらの方でも、多少用語は違いますけれども、「歯科医師でなければ歯科医業をなしてはならない」という規制がかかっております。
この「医業の定義」でございますけれども、医業というのを分解いたしまして、「医行為を業として行う」ものであると解しております。
まず、この「業」という部分になりますけれども、「業」につきましては、「反復継続の意思をもって行う」ということが類似の判決で確定をしているという考え方でございます。学説においてもほぼ同様であると認識しておるところであります。
この中で「反復継続性」という意味を説明いたしますと、緊急避難的な行為は除外されると解釈されております。
あるいはその反復継続の意思の「意思」でありますけれども、この「意思」の部分につきましては、営利を目的とするか否かということについては、この「業」に該当するかどうかとは無関係である。あるいは偶然反復継続された行為については、「業性」があるとはいえないというような言われ方をしておるところであります。
1ページおめくりいただきまして、ではその行為の方、「医行為」という部分についてどのような解釈ないしは判断がなされてきたかというのが2ページに示されておるところであります。
私どもの方で示しておる通達の中では、「『医行為』とは」と書いておる部分、2ページ目の(2)の4行目のところでありますけれども、「『医行為』とは、『医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は及ぼす虞のある行為』」であると定義づけておるところであります。
その次の「或いは」というところ以下でありますが、こちらは最高裁の判決であります。こちらの中では「医学上の知識と技能を有しない者がみだりにこれを行うときは、生理上危険がある程度に達している行為」という表現がなされておるところであります。これは、私どもが「医師以外の方が特定の行為をした場合に医行為に該当しますか」といったような照会を受けた場合の回答、あるいは医師以外の方がこのような行為を行った場合に医師法違反という形で取り締まるという場合、あるいは刑罰を科するという際の判決の中でこのような判断が下されておるところであります。
さらに分解いたしまして、この医行為についてご説明させていただきますと、2ページ目、(2)の真ん中辺、丸1というところがございます。「医行為は、医師の『医学的判断及び技術』が必要な行為」と定義づけられております。医師になるためには、大学におきまして医学の正規の課程を修めて卒業した者などにつきまして、臨床上必要な医学、公衆衛生に関する知識、技能について行われます試験に合格し、免許を受けていただくという基本的なルールがございまして、この手続を経た方のみが行えるという法律構成をとっております。
1ページおめくりいただきまして、丸2「人体に危害を及ぼす虞(生理上の危険)」と書いてございます。これにつきましては、免許を有しない方が行った場合に人体に危害を及ぼすおそれ、生理学上の危険があることが処罰の要件となります。この場合でありますけれども、過去の判例などを分析いたしますと、人の健康に害を及ぼすことが具体的に認められるものであることは要しない。すなわち抽象的な危険性で足りますよという比較的広い判断を裁判所などではしておるということがいえるかと思います。
また、過去の判例を分析いたしますと、正常な医療を受ける機会を失わせるおそれがあること、要するに真っ当な治療を受けるチャンスを阻害したというようなケースにつきましても禁止の対象とすべきというような消極的な意見があったと聞いております。
さらに、この行為でありますけれども、3ページ目の下から3分の1あたりの「○直接的行為について」というところをごらんいただきたいと思います。「行為そのものが直接的に人体に危害を及ぼす虞のある行為」につきましては、一般に医行為と解釈しております。すなわち一定の身分をもった方以外の方はなすことはできないと解釈しております。
例といたしまして、侵襲的行為とこちらでは挙げております。採血、投薬、注射、放射線の照射、処置、手術などがこれに該当するかと思います。
また、行為そのものにつきましては、必ずしも人体に危害を及ぼすおそれがあるとはいえないけれども、診療の一環として行われるようなケースにつきまして、人体に危害を及ぼすおそれがある行為と解される場合がございます。
1ページめくっていただきまして、4ページ冒頭であります。問診・診察、あるいは生理学的検査、療養上の指導などがこれに該当すると考えておるところであります。
また、直接人体に作用する行為ではない間接的な行為につきまして考察いたしますと、4ページ目の上から3分の1あたり、「間接的行為について」というところでありますが、検体検査といわれるような、人からとってきた検体を検査する行為については医行為ではないと解釈しておるところであります。微生物学的検査とか血液学的検査などがこれに該当すると考えております。
ただし、患者からその検体を採取する行為、あるいは結果を医学的に診断をしていく、判断をしていくという行為については医師が介在する必要があるというのがこれまでのお示ししてきた考えであります。
また、その行為でありますけれども、「目的」につきましては治療に限定されるわけではない。すなわち治療目的でないからといって医行為に該当しないとはいえないということも示されております。医行為であるか否かにつきましては、その目的、対象のいかんによるものではなく、その方法または作用のいかんによるという考え方を私どもは示しておるところであります。
また、医療と申しましても、「広義の医療」とこちらでは書いてございます。診断書あるいは処方せんを交付するといったことも医行為に該当すると考えておるところでございます。
先ほど、その目的は治療に限定されないと申し上げましたが、例えば美容目的の美容整形行為といったようなものも医行為に該当する。最近では、エステティックサロンで脱毛するといったようなことにつきましても医行為に該当するケースがあり得ると私どもは解釈を示しているところであります。
また、4ページ目、下から3行目でありますけれども、「間接的医療行為」につきまして、当該患者のためではない間接的医療行為につきましても医行為に含み得る。ちょっと持って回った言い方になっておりますけれども、例えば採血につきましては、これは古い法律でありますけれども、医行為とされておる。あるいは移植のための生体からの臓器移植も医行為と考えておるところでございます。
おおむね雑駁ではありますけれども、医行為につきましてはこのような考え方で厚生労働省としては運用してきておったというところであります。
ちょっとはしょりまして、8ページをごらんいただきたいと思います。そのほかの医行為の例といたしまして、8ページの真ん中辺に「医師の指示を必要とする医行為例」という形で書いてございますけれども、このようなものも医行為として私どもは考えておる。例えば静脈の採血、心電図、与薬なども医行為に該当すると考えておるところでございます。
雑駁ではありますけれども、以上終わります。

相澤座長

それでは、ただいまの説明に関しまして、ご意見、ご質問がございましたらお願いいたします。熊谷委員どうぞ。

熊谷委員

口火を切らせていただきます。
今のお話を伺って思うことは、2年ほど前だと思いますが、知的財産研究所でも今回の問題について委員会を設置して議論を行ったと思います。その時に指摘されていたことは、研究開発の進展に伴い、医療行為の概念が相当変化しているので、その中で特許性をどのようにうとらえていくかが大きな検討課題ではないかと思います。今のお話を伺っていても、従来医療行為としてとらえ切れなかったか、とらえることができなかったような行為が、研究開発の進展により医療行為と位置付けられるようになっているようです。それをどう考えていくのかということが1つのポイントではないかと思います。
また、制度の国際比較のお話もありましたが、ヨーロッパとの制度の違いについては、釈迦に説法だと思いますが、ヨーロッパの場合は人間も動物も区別せずに、医療方法を特許対象から除外しているわけで、宗教的な背景が非常に強いかと思います。日本の場合は、基準室長からもご説明がありましたように、動物の医療方法については特許対象とされていて、人間の医療方法については産業上の利用可能性がないということで特許対象から除外されているということは、まだ欧州特許条約未発効とはいうものの、今回の条約改正との関係でどのようにとらえるべきなのか、背景も異なっているのではないかという気がいたします。また、今回の直接の検討対象ではないと思うのですが、人間の医療行為に関係する問題としては、どうしても倫理の問題も出てくると思いますので、32条における公序良俗の中で倫理面からも基準なり運用の考え方もいつかどこかで整理をする必要があるのではないかと思っております。

相澤座長

ありがとうございました。古川委員どうぞ。

古川委員

木村様にちょっと質問なのですけれども、先ほど人間から採取して細胞を加工して人間に戻す方法は医療に該当してしまうというお話がございました。これは特許法上の医療行為に該当してしまって特許が与えられないと。しかしながら、これは医行為に当たらないものですから、医師法からみた場合は必ずしも医療行為とは呼べないのですが、それは医師法と特許法の考え方が乖離している部分と考えてよろしいですか。現に細胞加工は医師でない者が行っておりますので。

木村審議室長

先ほど申し上げましたのは、あくまでも特許法上の運用の問題でございます。

古川委員

運用の問題でございますよね。わかりました。だから、それは法律上の規定ではないということですね。

木村審議室長

そうです。

古川委員

続けて、意見からいうと、私はきょうは会社の方から出ておりますが、本来は医師であって法律もやっております。今後このような趨勢において、大学の機関におるものですから、それからみますと医療行為に関連する分野であってもできるだけ広く認めていただくことが、これからの研究開発を促進するということはまず間違いないと考えられます。

相澤座長

どうもありがとうございました。竹田委員どうぞ。

竹田委員

資料3に関連しまして、このワーキンググループにおける議論の進め方として、まずこういう順序で考えていくのが筋道ではないかということを申し上げたいと思います。
資料3の表現に従っていいますと医療関連行為発明ということですけれども、どこまでが医療関連行為発明なのかというのは、先ほど熊谷委員のおっしゃったように1つの問題点としてあると思うのですが、問題は特許法における医療関連行為発明をどう取り扱うべきかということをこのワーキンググループで考えるとするならば、従来、審査基準が特許性がないものとして扱ってきた医療関連行為発明を対象にしていくのではないかと思います。
ただ、その上で、ではそういう医療関連行為発明が特許法の2条でいう発明、つまり技術的思想の創作に当たるのかどうかという問題が第1にあって、第2に、それに当たるとした場合において、今度は29条1項柱書の産業上利用できる発明になるのかどうかということが議論の対象になると思います。
主として今までの審査基準が医療関連行為発明について特許性を認めなかったのは、2番目の29条1項柱書との関係にあるわけですが、この点は先ほどご紹介がありましたように、学説上、判例上いろいろ批判もあり、この点をまず医療関連行為発明全般についてこの要件を満たすのかどうかということをもう一度検討してみないと、果たして特許庁の従来の審査基準のあり方が現行の特許法の解釈として正しかったかどうかということについての検証が済まないだろうと思います。
それを踏まえ、問題は知財戦略大綱でも総合科学技術会議の専門調査会でも代表として挙げられているのがこの再生医療や遺伝子治療関連技術ですが、いきなりそれに限定するのではなくて、今いったような医療関連行為発明一般が仮に29条1項柱書の要件を満たすということになるのであれば、その先に、満たせばすぐに特許性は認めるべきだということにはならないわけであって、特許法というのは特許法の1条に規定しているような目的で定められた法律であり、その目的にかなうような発明を特許権として保護していくものであると思いますから、そういう意味で医療関連行為発明が特許法の目的にかなうような、より具体的にいえば我が国における産業社会の発展のために、それに特許性を認めることが妥当なことであるかどうかということの検討がなされるべきですし、またそれとは別に現在の我が国の審査・審判の状況も考えなければならないわけで、今の点が仮にクリアできるとしても、果たして我が国の特許庁にそれだけの審査・審判をして本当に特許すべきものを特許できるというだけの体制が整っているかどうかということも検討しなければならない。
多分、いいました産業振興に役立つのかどうか、特許庁の審査・審判体制がそれを実施できるような整備がされているのか、現在されていなくても近い将来にそれが整備されるということがいえるのかどうか、その辺のことを議論していく中で、それでは再生医療や遺伝子治療に関するものだけに限定するのか、それとも医療関連行為発明全般について特許性を認めるという方向になるのかの議論が分かれてくるのではないかと思います。
その上に立って、それではそのためにどういう法律上の手当てが必要なのか。より具体的にいえば、特許性を認めた場合には、当然現行の69条のような特許権の効力の及ぶ範囲の規定で医師の治療行為に及ばないような手当てが必要ですし、あるいはそれとは別に医師に法定の通常実施権を認めるというような規定を置くことも可能でしょうし、さらにはそういう一部だけの医療関連行為発明の特許性を認めるのであれば、残りを認めないという理由については、やはり立法上の手当て、例えば特許法32条の特許を受けることのできない発明にするとかが必要になってくるわけで、物の順序として、先ほどいいました知財戦略大綱等で焦点になっているのは再生医療・遺伝子治療ですが、それを特許するかどうかということの問題よりも、全般的な今のような議論を進めていった上で最も妥当な我が国における特許法のあり方を考えていくのが一番よい筋道ではないか。
それとの関連で審議室長にちょっと伺いたいのですが、資料3の5.で「検討における留意点」というのがありまして、こういう点を留意すべきだということが書かれているのですが、これと私が今申し上げましたようなワーキンググループで議論していくべきだと考えていることとの関連でいくと、進め方についてどのようなお考えをもっているのか、ちょっと聞かせていただけたらと思います。

相澤座長

木村審議室長。

木村審議室長

進め方でございますけれども、基本的に次回の会合におきまして、竹田委員が今おっしゃられたようなテーマについて、さまざまなオプションを我々の方から筋道を立ててご提示を申し上げたいと思っております。
現在、29条柱書で拒絶をしておるわけでございますけれども、そういう運用の是非というのが出発点としてあることは事実だと思います。我々は今29条柱書による拒絶は当然適法だという解釈のもとで運用しておるわけでございますけれども、確かに純粋な分離解釈としてはかなり苦しい面があることは事実だろうと思いますし、そこは目的論的に解釈をしているのかもしれませんが、それが果たしていいのかどうかということは確かにございます。
ただ、実際何らかの法改正を試みるということになった場合も、まず前提にある議論というのは実益といいますか、どのような産業の振興なり、そういうものが図られてるのかということと、逆に実際医療現場がそれによって混乱をするようなことがないというようなこと。各方面からまずどういうところに例えば特許権を与えていくべきなのかということについてのコンセンサスを、例えば本日ないしは次回以降で自由なご議論を賜りながら、我々としても把握をしていきたいと考えております。
そこである程度実益に即して特許権を付与すべき状況といいますか、特許付与のカバレッジといいますか、そういうものが明らかになってくれば、ないしはそれと並行してどのような具体的な措置のあり方、当然現行の運用のままがいいのだという考え方もあるでしょうし、法改正をするということであれば、先ほど竹田先生おっしゃったようないろいろなオプションがあると思いますので、それは次回こちらの方からも整理をしたものをそのたたき台としてご提示申し上げて議論を進めさせていただければよろしいかなと思っております。

相澤座長

竹田委員、よろしゅうございますか。

竹田委員

はい、結構です。

相澤座長

宇都木委員どうぞ。

宇都木委員

私はこの特許の問題、何にもわからないままでおりますが、方法の特許というところが一番問題になるのだろうと思うのです。お医者さんが新しい方法を開発したということを社会的に認知してそれなりの評価をするというものが特許の1つの効果だとすると、これはむしろ推進するべき事柄だろうと思いますが、むしろその後のことが問題なのだろうと思うのです。
状況がよくわからないのですが、特許が新しいことであるがゆえに、それに即応する製品が開発されて、そのアイデアというのが特許され、そのアイデアに従った製品をつくる上では特許が買われて、対価を与えられて企業の手に移っていくことになるのだろうと思うのです。あるいは大変ピント外れのことかもしれないですが、その対価がどのくらいのものになるかということが本当のところはかなりの問題になってきてしまうのだろうと思ってしまうのですが。医事法という医療関係の法律を専門にしている者の立場からみますと、医療方法の開発というのは患者さんの体を使って開発されるものなのです。どうしても材料として患者さんの体を使っているわけです。しかも、たくさんの試行錯誤をなされた上で方法が開発されるとなると、その方法を開発したということは大変な努力で、それなりの意味はもちろん社会は評価するわけですが、その材料になった患者さん、つまりこれは国民なわけですが、国民の立場からみてそれをどのように評価できるかということが1つ大きな問題点ではないかと思います。
そうすると、本当によくわからないのですが、どこか仮に特許を認めて、その効果を認めていくにしても、もちろん後続の医療行為という言葉が出てくるのが問題なのだと思うのですが、法文の中になくて、その基本的解釈の中にもなくて、解釈の解釈の中に医療行為という言葉が出てきて、それがひとり立ちして動いていくというようなところがちょっと窺える。先ほどの厚生省の答申の中では「医師の行為」の領域区分というのをやろうとしたわけですが、特許で問題になる医療行為というのはそういう種類の事柄ではなくて、恐らく患者、国民に治療としてなされる行為であって、あるいはここに看護も介護も入ってきてしまうような種類の行為ととらえた方がいいと思うのです。
いずれにいたしましても、そういう種類の行為から得られたものの効果は認めてもよくて、後続の個別の医療行為は適用除外にするということはどうしても必要だろうと思うのですが、それ以外にもう1つ、そこで得られたお医者さんの社会の認知がある程度リーズナブルな範囲でおさまる必要があるのではないか。それをどうも個別の交渉の中だけにゆだねていいのかなと思います。今の規制緩和という流れに大変逆行するような形になってしまうかもしれませんが、新しい方法が世の中に普及していく上では学会の認知がどうしても必要だろうと思うので、その辺に何か1つ押さえのポイントがあり得ないだろうかなと考えております。ちょっとわかりにくいかもしれません。ありがとうございました。

相澤座長

古川委員どうぞ。

古川委員

今の宇都木委員の話だと、例えば薬にしても医療用具にしても、これは国民に対して臨床試験をやった後に市場に出てくるわけですから、その意味では国民の協力なくしてそういったものの市場での開発はできなかったということになるわけです。実際、物の発明として医療用具や医薬品は特許が可能になっている。ただ、それが本当に市場での経済効果を生み出すのは臨床に投与することが前提になっているというわけでありまして、そのことからみれば本質的にはこれは臨床を対象としているのです。
ところが、先ほど竹田委員からも我が国の審査の実情を踏まえる、今、室長からも実効性というお話がございましたので、我が国の医療体制をみた場合、これは実際臨床の現場でいうと保険診療がまかり通っているのです。これは諸外国と全然違うところでございます。ですから、我々が薬価にとらわれず医薬品を使っても、それが直接は病院の負担になってこない、だから診療現場を混乱させていないという事象があるわけでございます。
実効性ということでは、さまざまな医療行為が実際上どちらの医療行為かわかりませんが、少なくとも今特許法上で医療行為と呼ばれているような方法の一部、厚生労働省の解釈、医行為に当たらない部分を1ついいたいのですが、その部分であれば保険適用がなされることによって医療現場はさほど混乱におとしめないで済むというのが、実効性という意味ではまず間違いないことであろうと考えられます。
これからオプションを示していただく上では、さらにこのビジョンとしまして内閣等が示している医療にも株式会社等の参入を認めていこうというような考え方も近未来に出ていくところでありまして、そうするともはや非営利産業ということは全くいえなくなってくるわけでございます。ですので、選択としては医行為、すなわち医師あるいは医療従事者のみしか行えない行為についても何らかの特許法上の手当てをして特許を認めていく、これは診療報酬の裏づけをもって。これは差止請求は認めない、あるいは損害賠償請求は認めない、こういった手当てをすれば報酬を確保するという意味では可能かもしれません。そのような解釈は実は不可能ではないのではないかと考えております。

相澤座長

ありがとうございました。菅沼委員どうぞ。

菅沼委員

私は10年間、外科医師として臨床の現場にいて、そのころやっていた研究成果をもとに、現在ベンチャーをやっております。創医薬系のベンチャーになります。新しいエリアの抗がん剤の開発をしていますが、基本的にはエリアが新しいということで、抗がん剤自体は非常にクラシカルなパターンでつくっています。つまり遺伝子治療や再生医療ではない。
そういう現場にいる人間としての意見となりますので、法律的なこと等についてはよくわからないところが多いのですが、まず1つ、こういった問題が出てきた背景には、多分、最初の資料のバイオ産業、新しいゲノムの影響が非常に強いのではないか。その中で特に遺伝子治療・再生医療といった新しいエリアの産業体をどう育成していくかという問題があると思うのですが、まず1つ、実際にベンチャーをやっている者として、ご承知のように、米国でのマーケットは現在非常に冷えております。これは2000年までにベンチャーが新規公開した数の5分の1しか2001年度はIPOをしていません。投資先のベンチャーも非常に少なくなっております。こういった背景には、いわゆるゲノム解析が先進している国において、全体の株が低迷している中においても同様にバイオ関連の株価が軒並み下がっているということからも、短期的にすぐに新しい成果が出て何かが変わるというエリアではないということは再三バイオでいわれていることですが、まずそれが背景にあるということをよく認識する必要があると思います。ゲノムプロジェクトが終わったからといって何かが始まるわけではない、何かを得るわけではなくて、そこには長い研究が必要であるということだと思います。
そういう背景もあって、例えばナスダックで株価が下がる中で最も早く下がり出したのはバイオ関連の株価です。それは短期的な収益が見込めないというところもあったのだろうと思います。そういう中で再生医療や遺伝子治療は今後出てくる有望な新しい医療形態になり得る可能性はありますが、多分時間がかかることであろうと思います。(すでに確立されている一部技術もありますが、全体として考慮した場合)それは全く新しい治療形態であるということがまず背景にあります。
もう1つ、医療行為について、それを特許として認めるかどうか。そもそも特許というのは、私が考える中では、これは学術研究とは違って、発明者を保護して、それを産業利用していくために有効に活用するものである。つまり産業利用するということは、それを商品として供給するということになります。つまり商品として供給するには開発過程の審査が必要になります。これは特許の審査ではなくて物を開発していく過程になります。したがって、例えば新しい治療法を開発しました。それを特許化しました。しかし、ではそれをどこで試験をするのか。例えば薬であれば外部機関がつくって、それを第三者の医療機関でスタディーを行う。第1相、第2相、第3相試験を終えて承認されてという筋道ができています。しかしながら、再生医療や遺伝子治療というのは、いまだそのベースラインができておりません。つまりトランスレーションをするシステムがない状態で商品化を見据えて特許を与えていくということは、現場を含めて非常に混乱を招く可能性もあり、慎重を要することではないのかなと思っております。
例えば新しい手術法を開発しました。現存にある手術をモディファイしました。でも、それは実際の現場から生まれてくることであって、逆にそれをどのようにして検証して、しかも例えば手術とか医療行為の中には、薬と違って、やる当事者によって左右差が出る、つまり技術的な差が出るというところがあります。そこをどう評価して実際に広めていくかということを含めて、いわゆる特許として認めるか否かということは、それを商品として開発していくということを意味すると思うのです。その意味では、そこの部分のトランスレーションをどうやっていくかということが必要であろうと思います。
もう1つは、私はそんなに大きな大学で働いていたわけではないのですが、現場の医師たちにとって特許というのは非常に遠い世界の話であります。特に我々がいたころは、特許を出すということすらインフォメーションが非常に少なかったわけです。したがって、部分的であれ、その医療行為に特許をかけるということは、医療現場に対して特許というものをしっかり浸透させる必要があるし、各病院、医療機関で特許を管理する部門を設置しないと、日常診療、医師の活動に対して非常に影響が入る可能性がある、そのように思っております。(実際にTLOが整備されてきてはいますが、特許は保護・維持にも大変に労力が掛かります。それら全般の業務に対する管理部門が必要)。
ですので、現状のバイオがどう進んでいくかということもありますし、それらを産業化していく過程での問題点、実際の現場での問題点も十分考慮して進めるべきではないかと思います。

相澤座長

ありがとうございました。長井委員どうぞ。

長井委員

私は製薬協の立場から出ています。今の菅沼委員の発言は非常に傾聴に値し、そのとおりだなと思うところがたくさんありました。ただ、その発言中で1つ納得できない部分があります。特許を与えることと商品としてのものが良いかどうかということと関連づけること、即ち、特許を与えると商品として良いものですよというお墨付きを与えたということになるとのお話との様ですが、これは納得できません。特許が与えられることと、その特許対象品が実際に商品化されるかどうかは別の観点の話である。例えば医薬品では、特許庁で特許が与えられても実際に商品化するには安全性、有効性等色々な証明が要る。これと今の治療法の話とは必ずしもイコールではないかもしれませんが、治療法の特許化を特許庁が認めても、治療法について特許庁がお墨付きを与えることとはならないと思います。
もう1つ、製薬協からの立場でいえば、こういう先端医療を初めとする治療行為について特許化を新たに今度認めていくという方向について賛成いただきたいというのが産業界の要望である。産業界の要望だけではなくて、もう1つ、現在の知財戦略大綱等の考え方は、特にバイオとか遺伝子治療が始まったせいがあるのですが、日本の国家政策として先端医療を初めとする治療方法について、日本の産業はこのまま行くとおくれる、心もとない、この際これを立ち上げて世界のトップに伍するようにしたい。そのために特許保護を与える方向で考えるという国家政策が先にありきと云う考え方ではないか。産業界の要望ももちろんありますが、国家政策があると我々は感じています。そこで、是非知財戦略大綱等で国家政策として打ち出された点が実現される方向で今回も審議されていくということが望ましいと考えています。
それではどういうところまで保護を与えるべきかということになります。単純にいえば、現在一番進んでいる国の特許保護に合わせるというのが基本ではないか。簡単にいえば米国が一番進んでいる。欧州は、先ほどいろいろ出ていますように、特許保護の形態がアメリカとは違う。上流規制と下流規制ということで議論されますが、基本的には米国で認められている保護は日本でも同様に特許保護を与えるべきではないかと考えます。特定技術分野の特許保護をすることがその分野の産業を飛躍的に発展させることとなることは、明治時代に特許法を導入して以来、日本が行ってきた産業政策の基本である。そのことをこの分野でも同じように採用していただきたいと云うことです。日本と米国では諸制度が違いますから、違うことを考慮して日本に合ったやり方でやっていただきたい。目標は米国の特許保護に合わせるというのが基本ですという考えです。

相澤座長

ありがとうございました。先に大野委員から。

大野委員

私は医療機器業界に属しておりますが、現在、業界の中で再生医療についていろいろ取り組みをやっております。医療機器の中でも、例えば人工臓器について次世代の技術を考えたときに、最近のバイオテクノロジー、あるいはライフサイエンスの成果が必ず入ってくる。そうすると次世代技術として再生医療、あるいは少し広げて診断、治療を含めて遺伝子医療、そういったものをよくみておかないと日本の医療そのものがおくれてしまうという気がいたしますし、産業としても立ちおくれが起こるのではないかという感じをもっているわけです。
そういう意味で、先ほど菅沼委員のおっしゃられた中で、再生医療とか遺伝子治療なんかについてはゲノム解析が終わったとしても商品化まではまだ遠いのではないだろうか、トランスレーショナルリサーチのプロセスもルールもできていないのではないかという話がございましたが、再生医療の分野では、例えば皮膚とか軟骨の細胞を使って自己の細胞組織を再生する、それを治療に使うというものについては、既に厚生労働省の方に治験をしたいということで申請が出る段階まで日本でも来ているわけです。アメリカでは既にそういったものはFDAに認可されたものがもう数件ございますし、ある意味ではトランスレーショナルリサーチの段階から既に商品化の段階まで来ている。そういう中でいろいろな医療行為に係る発明が知的財産として保護されるかされないかというのは、こういったものの技術開発は、お医者さんの医側、サイエンスを進めておられる方、もう1つはインダストリー産業サイドが相まって進めているわけですが、そういった面では産業界にとっては知的財産として保護されないと、特にアメリカと競争していく上でビジネス展開が非常に難しくなるのではないか、そういう問題はもう既にかなり現実の問題として出てきているのではないかと私は考えております。
医療機器全般としてみたときには、非常に多様な製品がございますので、医療行為特許を認めるときに、特に間接侵害のところでいろいろ考えるべき問題があろうかと思いますが、これは別の機会に意見を述べさせていただければと思います。
以上です。

相澤座長

ありがとうございました。竹田委員どうぞ。

竹田委員

今の2人の方の意見に関連して少々意見を申し上げたいのですが、私も総合科学技術会議の知的財産戦略専門調査会に出て、医療関連行為発明については積極的に国家的な施策として検討して進めていくべきだという意見をいってきましたし、その方向で検討がされることは必要なことであり、より具体的な我が国の産業社会の状況に適合したような法改正も含めた制度の改善がなされるべきだとは考えています。
ただ、それであれば医療関連行為発明は何でも特許をするということでいいのかどうかについては、先ほど申し上げたように本当の特許法の目的にかなうようなものであるかどうか、我が国の審査・審判体制のことも考えていかなければなりません。
それから、アメリカに並ばなければというのは産業界の意識としてはわからないではないのですが、ぜひともこの機会に事務局の方にお願いしたいのは、アメリカでこの医療関連行為発明の特許性を認めて、それの状況がどうであるのか、一体どのくらいの特許が成立し、その出願人はどういう人であり、その特許されたもので現実にどんな問題が起きているのか、果たして本当に特許性を認めるのにふさわしいような特許が生まれ、それが産業社会の発展に寄与するような状況でなされているのか、そういう資料を少なくとも私はほとんど知りませんので、そういう点をちゃんと提供してもらってやらないと、ただアメリカに追従すればいいということではないと思います。
それは、日本の産業社会のさっきいったような状況や特許行政の状況を考えると同時に、EPCではまだ認めていないということですから、それではアメリカにおいてどうなっているのかということは十分に吟味した上で、果たしてそういう方向を先例に倣って進めることがいいかどうかということも検討の1つの資料にしていただきたいと思うのですが、そういうことは可能でしょうか。

相澤座長

木村審議室長どうぞ。

木村審議室長

今の竹田委員のご説明に関しまして、アメリカの実態がどうなっているかということについては、わかる範囲で次回整理をさせていただいて資料をご提出したいと思います。また、国家政策としてどうするかを考えるべきということについては、おっしゃる趣旨はわかります。ただ、これも竹田委員がおっしゃられたとおりでございまして、従来特許の対象でなかったものが特許されることになって、そのことによってどういう具体的な実益というとちょっと言葉が小さ過ぎるのかもしれませんけれども、そういうのがあるのかということがある程度はっきりした方が、各方面に対する御説明も容易になるような気もいたします。国家政策に関して言えば、確かにるるいろいろな報告書等で指摘はされているのですけれども、ただ絶対に医療方法について特許をせよということで現在何らかの形のオーソライゼーションがなされているわけではないので、特許付与の具体的なあり方、それについて細かいところのファインチューニングも含めまして、この場でできればコンセンサスをつくっていきたいという趣旨でございますので、よろしくお願い申し上げます。

相澤座長

ありがとうございました。熊谷委員。

熊谷委員

繰り返しになると思うのですが、今まで保護対象としていなかったものを保護すべきか否かも含めて検討する以上、保護対象とすることのメリットについての検討は、定性的にも定量的にもなかなか難しいのではないかと思うのです。一般的、総論的なことは幾らでもいえるかと思いますが。となると、保護した場合のデメリットが具体的にどのようなものであり、それはどのように克服可能か否かを検討することも重要かと思います。それは保護対象の範囲の問題にもなると思いますし、特許権の効力を制限するか否か、特許対象から除外することになるのか、その検討を行う際の材料にもなると思います。特許で保護を行うことのデメリットとそれに対する対応というのでしょうか、その点が先ほどのアメリカの例も含めて非常に重要なのかと思います。特許で保護することの積極的、具体的なメリットをは、保護をしてみないとわからないというのもひとつの真実だと思いますので、特許で保護することに対するデメリットについての具体的な検討も必要ではないかと思います。
以上です。

相澤座長

ありがとうございました。古川委員どうぞ。

古川委員

菅沼委員が再生医療とゲノム創薬の本当の実効性は遠いと。私はまだ現役で外科医をやっていますけれども、臨床の立場からみると確かにずっと遠いのです。大野委員がおっしゃったように、確かに一部の再生医療は既に商品化の段階に入っていることはわかるのですが、果たしてそれが臨床上の経済効果を生み出すほどの効果のある治療法になるかというと、これは否定的でございまして、効果は限られているのです。だから、そういう意味では確かに一部商品化できるかもしれないけれども、それが国民の健康に本当に寄与していくというのはまだ遠いと。恐らく菅沼委員がおっしゃったのはそういうニュアンスであったろうと理解しております。
これはまだ10年かかる。少なくとも今の医療が再生医療あるいはゲノム創薬によって画期的に皆さんの病気がよくなるということはちょっとまだあり得ないというのが正直なところでありまして、それでもこれが10年後少なくとも花開いていくことは間違いないわけです。アメリカですぐの経済効果が出ない。今ああいった経済状況で、そういうことがだんだん判明するにつれて、確かに一時の熱は過ぎたと思いますけれども、一部本当に柱になっていくものは我が国でも保護していく必要があるだろうと考えております。
大学において菅沼委員がやられているころはルールづくりもなされていなかったし、あるいは医師から特許が遠いものであったとおっしゃいましたけれども、現に数年前からTLOという組織が大学にもだんだんできてきまして、今の特に若い世代、今から医師になってくるような人たちは特許にもかなり意識が高くなっていくというような気がいたします。
それから、ルールづくりに第三者的な審査につきましても、先ほど大野委員からご紹介がありましたような臨床現場における臨床的な特許法上の医療行為に該当するような方法についても、厚生労働省の方も14年に医師からの臨床試験のやり方を通達を出しましたし、少しずつ医療の側からもルールづくりをしていこう、フェーズワンからフェーズスリーまではっきりさせていこうという動きはあるわけでございまして、そういった点も恐らくカバーできるということになりますと、現に我が国おいても特許を認めていくことは、私自身は不可能ではないと考えております。

相澤座長

ありがとうございました。津國委員、何かございますか。

津國委員

先ほど竹田委員から、現に医療方法の特許が認められているアメリカのことを事務局の方に調べてほしいとおっしゃったのですけれども、現に認められていないヨーロッパについても調べていただきたい。恐らく方向としては認める方向を向いているのではないか。ただ、宗教的、政治的理由があって、なかなかそれが実現できないのだと思うのですけれども、バイオ関連の研究の歴史なんかみていましても、最初は人道的な理由でだめというところから、だんだんとヨーロッパも開かれて、今はかなり規制が緩和されていると思うのです。ですから、特許についても同じような傾向があるのか。恐らく三極の会談あたりでもう既に話し合われているのではないかと思われますので、調べて教えていただきたいと思います。

相澤座長

ありがとうございました。

木村審議室長

そこはできる範囲で次回出させていただきます。

相澤座長

では、そういうことで……。澤委員、何かご意見いただけますか。

澤委員

私は医師会の常任理事でございますけれども、大学人でございまして、大学の研究者として初めて常任理事に入ったわけでございます。そこの点からいうと、研究者の気持ちは非常によくわかるのです。日本の医療の現状、先ほど株式会社云々という話がありましたけれども、国民皆保険を守るという立場から認められるものではありません。現に自己責任原理と扶助原理というのが両方ありますけれども、今それが交錯したような形になっています。国民に自己原理だけを押しつけてはならないと思います。今主体をなしているのは公的な社会保障制度があって、その上に成り立っているわけですから、今度医療を特許で保護し、また宇都木先生からもお話がありましたとおり、対価がそれについたときに、それが今の医療の状況の中でどのように還元されていくのかという部分、これは非常に慎重にいかなければいけないと思います。
あと、私ども研究所でも再生医療、例えば自己骨髄からとった幹細胞を分離する手段、これは器機ですからモノですけれど特許申請しておりますが、一時期のようなバラ色のプロパテント派というのは研究者の現場では少なくなっている印象をうけます。医療の現場の先端にいる連中でも、医療というのは患者さんと医者が両方の積み重ねで行っていくものでありますから、特許を申請したいという気持ちはわかるが、それをもって産業化しようというのは最近の若い研究者たちの中では全体的に少し少なくなってきている。産業界がおっしゃるほど、また小泉さんがおっしゃるほどにはもうそろそろ現実を見極め始めているというようなところがあるような気がします。
以上です。

相澤座長

いかがでしょうか。1回目でございますので、忌憚なきご意見をいただきたいと思います。
現行法の問題をちょっと指摘しておきますと、医師の行為にかかわる問題でありましても、医療方法には特許は与えられないけれども、医薬、医療機器には特許が与えられるということが現状であります。現行法上は医療行為全般に特許の効力が及ばないという体系にはなっていないということを先生方にご理解をいただいておきたいと思います。
もう1つは、医療方法の範囲であります。例えば痩身方法というのは、病的肥満の方にとってみれば治療方法ではありますが、健常人がダイエットのためにやるのは治療ではないと思います。もしそれが厚生労働省の見解によって医療方法だとすると、エステティックサロンは医師法違反でアウトになるという可能性が出てくるわけです。現行の運用が医療行為全般を特許の保護の対象から除外するという体系になっているわけではなく単に医療方法だけが、方法というクレームの形をとった場合だけが除外されるということになっています。先ほど薬の用い方がだめということが例として挙がっておりましたが、これも治療薬としては通るというのが現行の運用でございます。これを治療薬として出してはいけなくて、治療方法として出せというのがたしかアメリカの運用だったと思います。
そういう現状を踏まえた上でこれからどうしていった方がいいのかということをお考えいただければよろしいのではないかと思います。
宇都木委員どうぞ。

宇都木委員

今のお話、よくわかるのですが、特許の効力というか、実態的な意味というのがよくわからないのです。方法は今、特許の対象になっていない。もしこれを特許の対象にした場合の実質的な意味というのは、方法が何らかの形で製品化して企業化するところで初めて生ずると思っておいていいのですか。そうではないのですか。

木村審議室長

いずれにしても、特許権の保護の対象は、資料3の(2)のところに書かせていただいたとおりでございまして、要は方法の発明の場合は特許権の対象となる方法、方法ですから物そのものではないわけですけれども、その使用する行為を一種独占的・排他的に行い得るということなるわけでございまして、物を生産する方法の場合はそれにとどまらず、生産方法による生産されるものの使用、供給、輸入まで特許権の効力が及ぶということになるわけでございます。
したがいまして、物を生産する方法の場合は、物をつくる、つくったものそのものの使用とか供給とか輸入についても対象になりますし、純粋な方法であれば、その方法を使って何かを行うということが特許の効力の対象になるということでございます。特許の効力というのは、特許権をもたない、あるいは実施権をもたない人間が同様の方法を用いた場合、それを侵害ととらえまして、それについて損害賠償、差止という請求の対象になるということでございます。

宇都木委員

自分自身の疑問もよくわかっていないところもあるのですが、今私がお伺いしたのは後続の同様の行為、つまり個別の患者さんに適用する際には適用除外にするということを大前提にした上での質問だったのです。大前提にした上で特許が社会的実態として意味をもつのは製品を通してでしかないということなのではないかと思ってしまうのですが……。

木村審議室長

今、宇都木先生がおっしゃられたように、まさに特許の効力、特許権がそのまま何のそれ自身の制約もなく及んでしまうと、先ほど申し上げたような損害賠償とか差止の対象になるのですが、特許は成立するのですけれども、実際にある特定の行為については特許の効力は及ばない。例えば現在69条という条文がございます。例えば試験とか研究のためにする特許発明の実施であるとか、単に国内を通過するにすぎないようなものについての特許権であるとか、医薬について処方せんに基づいて調合するような行為とか、それは特許権はそれ自身発生はしているのだけれども、そういう行為については効力が及ばないということになるわけです。
したがって、必ずしも常に何か物を経由しないといけないというわけではないですし、あるいはまさにどういうところが特許権を付与すべきでないのか、あるいは特許権の効力を及ぼすべきでないのかというようなことについて、この場で議論いただければという趣旨でございます。

相澤座長

審議室長の説明は全く正しいのですが、若干難解な部分があるので、私が若干乱暴に説明いたします。
もし治療方法について特許がなされた場合に、今の薬剤師の調剤方法と同様に医師による医療行為には適用しないという除外規定を置きますと、例えば外科手術の方法などは多分ほとんど効力が及ぶことは考えられないだろうということになります。これはほとんど医師が行う行為です。ただ、間接侵害として医療用器具、その手術にのみ用いられる器具があれば、それは間接侵害になる可能性もありますが、そういう器具は多分、物としての特許の対象になるので、ここでの議論の中心にはならないと思います。
ただ、先ほどの4-1の表の中でいろいろ出ております中で、古川委員ご指摘の同一人に戻す前提で採取されたものを処理する方法というようなものが医師以外の者によって実施されることがある場合には、宇都木委員ご指摘のように、もし医師による医療行為を除外したとしても、そういうものは差止請求、損害賠償請求の対象になるということになるということです
医師による医療行為を外した場合には、実質的には外科的な方法とか治療行為にはほとんど全部及ばなくなると思います。作業を外注にしていると、医師自身による行為ではないので、外注の業者は特許権の行使を受ける可能性はあると理解していただいたらいいかもしれません。

宇都木委員

もう少しあれですが、もうおしまいにします。

相澤座長

よろしゅうございましたら、今日はこのくらいにしたいと思います。
きょうは活発なご意見ありがとうございました。
本日、特許法における医療行為関連発明の取り扱いの現状と課題について、各位よりいろいろご指摘をいただきましたが、一たん事務局で整理させていただいた上で、次回以降、具体的に審議していくこととさせていただきたく存じます。
また、次回のワーキンググループにつきまして、事務局よりご紹介させていただきます。

木村審議室長

次回の日程でございますけれども、11月14日木曜日午前10時からの開催を予定させていただいておりますので、よろしくお願い申し上げます。

相澤座長

では、以上をもちまして産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会第1回医療行為ワーキンググループを閉会させていただきます。
本日は長時間ご審議いただきまして、どうもありがとうございました。

――了――

[更新日 2002年11月14日]

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