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第11回特許制度小委員会 議事録

  • 日時:平成15年7月8日(火曜日)15時00分から17時00分
  • 場所:特許庁庁舎 特別会議室
  • 出席委員:
    後藤委員長、中山部会長、相澤委員、浅見委員、阿部委員、井川委員、市位委員、江崎委員、大西委員、岡田委員、志村委員、須賀委員、竹田委員、田中(信義)委員、田中(道七)委員、土田委員、長岡委員、西出委員、松尾委員、丸島委員、丸山委員、山本委員、渡部委員
議事録

委員長

それでは、時間となりましたので、ただいまから、第11回特許制度小委員会を開催いたします。
本日は、ご多用中のところをご出席いただきまして、どうもありがとうございます。
本日も中山知的財産部会長にご臨席いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
本日の議題ですが、主に職務発明制度のあり方についてご検討いただきたいと考えております。
その前に、資料を事務局でご用意いただいておりますので、事務局から資料の確認をお願いしたいと思いますが、あわせまして、事務局で異動がありましたので、そちらのご紹介もよろしくお願いいたします。

事務局

事務局からのご説明の前に、本日、民事訴訟法の改正の国会審議がありまして、長官はそちらの方に出ている関係で、終わり次第こちらに参りますことをご了承いただきたいと思います。
それでは、事務局の方の人事異動のご紹介でございます。
昨日付で原山保人が資源エネルギー庁原子力政策課長から総務課長に就任いたしました。それから、7月1日付で守屋敏道調整課長が特許審査第三部長に異動しまして、後任として高倉成男が特許審査第四部上席審査長から調整課長に就任いたしましたので、ご紹介いたします。
引き続きまして、配付資料の確認をさせていただきたいと思います。本日、お手元に資料1から資料4の4点をお配りしております。資料1が議事次第・配付資料一覧、資料2が委員名簿、資料3がきょうの本題の「職務発明制度の在り方について」、資料4が「特許戦略計画」でございます。過不足等がございましたら、おっしゃっていただければと思います。

委員長

ありがとうございました。それでは、早速、議題に入らせていただきます。
まず、事務局から新委員をご紹介いただきます。

事務局

資料2をご覧ください。資料2で下線が引いてありますが、読売新聞社の論説委員に異動がございました。前の北村委員が本社編集部科学部長に異動され、それを受け委員交代のお申し出がございました。後任の委員としまして、読売新聞社論説委員の井川陽次郎様にお願いすることになりましたので、ご紹介いたします。井川様は少し遅れていらっしゃるようですので、お名前のご紹介だけさせていただきます。

委員長

ありがとうございました。それでは、本日の主要な議題であります職務発明制度のあり方についての議論に移りたいと思います。まず、事務局から資料の説明をお願いいたします。

事務局

それでは、お手元の資料3をごらんください。今まで、この職務発明制度の在り方についてさまざまな観点からご議論をいただきました。その議論の中から、論点をこちらの方で何点かにまとめさせていただいております。それから、後段の方では、改正の方向性として考えられる3つパターンについてご説明させていただいております。具体的には、1は特許法第35条の全面削除、2は第3項・第4項のみの削除、3は第3項・第4項の改正といった選択肢が考えられるということで、それぞれについての考察をしておりますので、ご紹介したいと思います。
まず、Ⅰの論点の整理でございます。現行の第35条の条文に沿った形でまとめております。
1.は、職務発明に係る特許権についての使用者の通常実施権についてでございます。現在の特許法第35条では、職務発明については使用者側に無償の通常実施権が法定されておりますが、引き続きこの規定を維持する必要があるかどうかということでございます。
ポイントといたしましては、①に現行法の説明を書いております。これは省略させていただきます。
次に、諸外国の状況でございます。
②はアメリカでございますが、アメリカでは明文規定はございませんけれど、判例法によりまして、職務発明につきましては、非排他的、実施料無料の移転不能な実施権――通称shop rightと呼ばれておりますが、これが認められております。
③はドイツでございますが、ドイツにおきましては、4か月以内に使用者側から従業者側に書面での請求が行われることになっております。制限的権利請求を行った場合には、使用者は有償の通常実施権を取得することができるという規定になっております。
2.は、特許法第35条第2項に該当するところでございまして、職務発明、自由発明に係る権利の予約承継についてでございます。
職務発明については、特許を受ける権利などを、あらかじめ使用者が包括的に承継することを契約等によって定めることが認められております。一方、自由発明については予約承継を禁止しているわけでございますが、改正法におきましても同様に、自由発明について予約承継を禁止することでいいかということでございます。
2ページでございます。現行法の説明が①に記載されております。
②ですが、自由発明に係る特許を受ける権利の予約承継については、従業者保護の観点から、従来どおり、これを予約承継する定めをした場合にはこれを無効とすべきではないかということでございます。
③は、第2項の反対解釈として、職務発明につきましては、企業実務の円滑な遂行を確保するために、職務発明規程等によりまして包括的な予約承継が可能となっておりますけれど、引き続きこういった規定を設けるべきではないかということが書いてあります。
3.でございますが、ここは一番の論点になるかと思いますけれど、職務発明に係る権利の承継があった場合の対価の決定の仕方でございます。
職務発明に係る特許を受ける権利につきましては、当然、発明後に個別に契約等の定めによって使用者に承継する場合はもちろんでございますが、あらかじめ包括的に承継し、あるいは専用実施権を設定するような定めをした場合であっても、こういった考え方をとるのが妥当ではないかということで、3つ要件が書いてあります。
1番目は、そうした定めが合理的な手続を経て決定されているかどうか。
2番目は、個々の発明に対する対価額の決定がその定めに従って適切になされているかどうか。
3番目は、その決定された対価の額が不合理ではないかどうか。
この3点が充足された場合には、その決定は尊重されるようにすることが適当ではないかということが書いてあります。
ポイントの①では、職務発明に係る過去の判例をみますと、必ずしも契約等の定めをした手続の合理性については、司法審査において判断されていないというのが実情でございます。そもそも合理的な手続を経て定められた契約等の定めに従って、個々の発明に対する対価の決定がきちっと行われた場合には、司法審査においても、その定めを尊重することを明確化し、すべての事例において裁判所が独立して判断することとしなくても、使用者・従業者の間の衡平性は損なわれないのではないか、という考え方でございます。
②で、上の枠囲いに書いてありますことをもう少し詳細に説明をさせていただいておりますが、まず前段の部分では、承継等の定めを定める手続の合理性というのが上の①に相当する部分でございます。
②の中段の右に書いてありますが、個々の発明に対する対価の決定手続の合理性、これが枠囲いの②に相当するわけでございます。
まず、定めを定める手続の合理性ということでございますが、これにつきましては使用者と従業者が実質的に交渉を行うこと、定めの内容が従業者に適切に開示・説明されて、実質的に従業者の意見を聞く機会が与えられること等が、ここの合理性の判断で考慮される事項ではないかと考えております。
2番目の対価の決定手続の合理性のところでございますが、個々の対価を決定するに際して従業者に十分な説明がされていること、それから従業者が個々の対価の決定に対して不服を申し立てる機会が与えられていること等が、合理性の判断の考慮対象ではないかと考えております。
最終的に、その手続の合理性についてはこれらの観点が総合的に判断されることが妥当ではないかということでございます。
このような手続の合理性が認められれば、契約か勤務規則か就業規則かで必ずしも区別する必要はなく、また使用者と従業者の間での厳密な合意が存在することを求める必要はないのではないか。基本的には決定のプロセスを重視するということでございます。
3ページ、④でございますが、とはいっても、プロセスはきちっとやったと。しかし、結果的に対価の額が不当に低いといったケースも一部想定されますので、結果的に決定された対価の額が不合理な場合には、裁判所による対価の算定を認めるということも考えられるのではないか。ここは次の(2)とも少し重複しております。
そして、(2)が(1)の対になっておりまして、対価に関する定めがそもそも存在しない場合、そして(1)に示した合理性が満たされていない場合、こういった場合には従業者保護の観点から、裁判所が司法判断において相当の対価を決定するような強行規定を残すことが必要ではないかということでございます。
ここのポイントとしましては、先ほどご説明した3点の合理性が満たされない場合、使用者・従業者の間の衡平性が担保されないので、それを担保するためにはやはり司法救済という手段を最終的には残す必要があるということを書いております。
(3)でございますが、ここは現行の4項に当たる部分でございます。以前の事務局の紙にも、必ずしも現在の司法の判断で考慮されている事項が十分ではないのではないかといった指摘が幾つかなされていたわけでございますが、今回、相当の対価の額を決定するに際して、考慮すべき事項の明確化を図るということで、第4項の規定を改正することは必要ではないでしょうかということでございます。
具体的には、発明完成後の事情である発明品の売上高やライセンス収入が考慮されている場合には、発明完成や実施に際して使用者が負担した費用や、発明実施の段階で売り上げに寄与した発明者以外の従業者の貢献度なども併せて考慮すべきではないか、ということを書いております。
これにつきましては7ページに別紙をつけておりますが、裁判所が相当の対価を定める場合の考慮要素としてということで、1.に挙げておりますのは、現行の制度において裁判所が考慮した要素をまとめております。今回、つけ加えるべき事項として、2.にありますが、算定の際に考慮されていない要素①、②ということでございます。こういったものも第4項の考慮対象として明確化すべきではないかということでございます。
3ページに戻っていただきまして、4.の外国特許権等の取り扱いについてでございます。これも大きな論点かと思います。
(1)対価の決定の際でございますが、これついては外国特許によって受けるべき利益についても、第35条の適用対象として規定する必要があるのではないかということでございます。ポイントに書いておりますが、現行の第35条の下では、対価の相当性の部分について権利登録国の法律が適用されるのか、日本の第35条が適用されるのかというのは、不明瞭でございます。今回の改正におきましては、外国特許を受ける権利の承継に対する対価の相当性につきまして、第35条の適用があるという規定を設けた方が、使用者にとっても従業者にとっても、手続の煩雑さを回避することができるのではないかということでございます。
4ページ、(2)でございますが、ただ、第35条で、外国特許を受ける権利等の移転自体の有効性とか、法定の通常実施権、外国によってはその通常実施権という概念が違うかもしれませんので、括弧で「それに類する権利」と書いていますが、その発生について規定することは難しいのではないかと考えております。ポイントにございますが、外国特許を受ける権利の移転自体の有効性とか法定通常実施権の発生などについては、第35条に規定を設けても、これにより当該外国によって効力が生じるわけではないので、第35条で規定するのは難しいのではないかということでございます。
結論としましては、対価の額の算定については外国のものも含むべきということでまとめさせていただいております。
5.対価請求権の消滅時効でございます。これは先日、支払日として規定されているところから10年が消滅時効だという最高裁判決が出ているわけでございます。①に記載のように、現在の考え方としましては、民法第167条の一般債権の消滅時効の10年というものが適用されており、また、時効の起算点につきましては、職務発明規程などに、支払い時期に関する条項がある場合にはその支払い時期、あるいは条項がない場合には権利承継時とされております。
②ですが、いろいろなケースを検討したわけでございますけれど、仮に時効の起算点を承継時と固定して考えた場合に、請求権消滅時点以降に対価を支払うような契約が定められていた場合に、対価請求権の行使が実質的にできなくなってしまう等の問題が出てくるので、完全に固定するというのは妥当ではないのではないかということでございます。
③ですが、以前、10年というのが長過ぎるのではないかという議論もございましたけれど、短期消滅時効の規定を設けることについては従業者保護に欠けるという論点から、これを短縮するというのはなかなか難しいのではないかということでございます。ただ、そういう意味では、従来の消滅時効の考え方をそのまま踏襲するわけではございますが、先ほどご説明しましたような第35条の改正を行えば、定めた対価の安定性が損なわれるようなリスクが減少するということで、この時効の問題というのは若干緩和されるのかなと考えております。
引き続きまして、その改正案のオプション案について、3つのケースを検討した内容をご紹介させていただきたいと思います。
まず、一番最初のケースは第35条を全面削除した場合でございます。基本的には、職務発明規定に係る規定が一切なくなりますから、使用者・従業者間の契約に委ねられることになるかと思います。
その場合、まず、従業者側に与える影響としては、①ですが、基本的には、使用者との個別契約になります。ただし、使用者以外へのライセンス等については、営業秘密の保持義務とか競業避止義務等々の観点から、別途制約が加わる可能性がございます。
②ですが、現行の第3項がなくなることによりまして、事後的な対価請求権というものは認められなくなります。
他方、使用者側に与える影響でございますが、①は、第1項がなくなりますから、法定の通常実施権がなくなります。
②ですが、第2項がなくなることによって、自由発明についても、場合によっては予約承継が認められる可能性があることになります。
③ですが、今度は逆に、職務発明につきましては、使用者が一方的に定める勤務規則等による承継が認められない可能性が出てくるということでございます。
④ですが、仮にこの契約が無効とされた場合、使用者は無権利者となりますので、その使用者の出願は冒認出願と判断されて、無効審判を経由すれば特許権自体も無効になる可能性もございます。
2.ですが、2番目のケースとして、第1項・第2項を残して、第3項・第4項だけ削除するという案でございます。基本的には、第1項・第2項が残りますので、契約に加えて、勤務規則などによる権利承継が可能になります。ただ、対価につきましては何ら規定がなくなりますから、契約等に委ねるような制度になるかと思います。
次に、従業者側に与える影響でございます。
①は先ほどと同様でございます。
②ですが、第2項だけ残りまして、第3項の規定がなくなりますのが、第2項には承継の規定しか書いてございません。そして、第2項には対価という言葉が出てきませんので、場合によっては、対価なしに承継できるという解釈が出る可能性も懸念されるということでございます。
6ページ、使用者側に与える影響でございます。
①は同じでございます。
②ですが、第2項が残りますから、契約だけではなく、勤務規則等による権利承継、予約承継も可能になります。それから、③ですが、第2項によって自由発明についての予約承継は明示的に禁止されることになります。
3.は、第3項・第4項を先ほど説明致しました方向で改正した場合でございますが、制度といたしましては、権利承継に対する対価の額が合理的な手続で決定され、かつ、その額が不合理でない場合にはその対価の額が尊重されるようになるということでございます。
まず、両者に与える影響ということでまとめております。
①ですが、合理的な手続を経て対価の額が決定された場合には、その決定が尊重されるようになります。
②ですが、第4項を考慮すべき要素の明確化を図る方向で改正するという場合には、現行法下における職務発明に関する訴訟の際に、当該要素が裁判所において参考にされる可能性が出てくるということでございます。改正した場合に当該改正法を遡及適用することは、以前ご説明したとおり非常に難しいわけでございますが、考慮要素を明確化するということで、裁判所が考慮する可能性が出てくるのではないかということでございます。
従業者側のメリット、影響でございます。
①ですが、対価の額の決定のプロセスの合理性が確保される。さまざまな機会に説明を受ける機会が与えられるということになります。
②ですが、対価額の決定の手続が不合理である場合とか、対価の額が不合理である場合には、最終的には裁判所に救済を求めることができるということでございます。
他方、使用者に与える影響でございます。
①と②は先ほどと同様でございます。
特に④でございますが、合理的な手続に従って対価の決定を行えば、それが尊重されますので、訴訟リスクが低減されることになろうかと思います。
非常に短時間での説明で不十分だったかと思いますが、事務局からの説明は以上でございます。

委員長

ちょっと議事を中断しまして、先ほどご紹介しました井川委員がおいでになりましたので、一言お願いいたします。

井川委員

井川です。どうぞよろしくお願いいたします。おくれまして済みませんでした。

委員長

どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、資料3に基づきまして、職務発明のあり方についてご説明いただきましたが、最初の4ページまでで5つの論点にわたって検討すべきポイントを整理していただいておりますので、この5つの論点を順番に検討していきたいと思います。
まず、1.の職務発明に係る特許権についての使用者の通常実施権についてから始めたいと思います。ご質問やご意見がございましたら、よろしくお願いいたします。

委員

これは確認ですが、私の理解ですと、米国では、ここに書いてあるのは、職務発明でない場合でも、研究者が職場の施設や時間を使っていたときにショップライトを上げるという理解だと思います。つまり、契約がなくても事実上職務発明とみなされる場合は、その発明は企業に属すというのがアメリカの判例ではないかと。それで、ここに書いてあるのは、職務発明ではないけれど、しかし、会社の施設や会社での時間を使って発明をした場合にはショップライトを上げるということですね。

事務局

今の点ですが、まず、アメリカにおいてはそもそも職務発明に関する明文規定がございませんので、そういう意味では日本の職務発明とは概念は違い、また確かに職務発明という言葉で一言でいってしまうと若干齟齬があるかもしれませんけれど、ここに説明で書かせていただいておりますように、発明を実施するために基本的には会社のリソースを使ったりとか時間を使った場合は、会社に通常実施権が与えられるということを紹介させていただいております。
それ以外に、アメリカでは、発明をする目的で雇用する研究者について、発明はすべて会社側に帰属するといった契約が一般的に行われているということでございます。

委員

ショップライトは州法上の問題だと思います。特許法は連邦法なので、その点を明らかにしておいた方がいいと思います。州法が全部同じなのかどうかということもありますので。
それから、今、「契約によって帰属する」という言い方をされましたが、原始的には発明者に帰属しているので、表現としてはちょっと不適当かと思います。

委員長

日本の第35条第1項の議論については、いかがでしょうか。
特にご意見がないようでしたら、「使用者が通常実施権を有することが法定されることが必要である」ということで合意したということでよろしいでしょうか。
それでは、そのようにさせていただきます。
次に、2.の職務発明、自由発明に係る権利の予約承継についてですが、これについてご意見やご質問等をお願いいたしたいと思います。

委員

今のように1項ずつ問われると賛成ということなのですけれど、最後のまとめのときに、どのアプローチでいくかということになると、例えば第35条全部撤廃ということになると、今の質問は全部なくなるわけですね。ですから、今の問いに対して、そのもの自体は結構だと思いますが、トータルしてみたときに、それがまた振り返って影響するのではないかと思うのですけれど、その点はいかがでしょうか。

事務局

とりあえずそれぞれ要件ごとに確認をさせていただいて、改めて、Ⅱの方でオプション案の検討の際にまた議論をしていただきたいと思います。例えば、全面削除案の場合は1.とか2.の規定はできなくなりますけれど、それでもいいですかというような議論を次にお願いしたいと思っております。両方一度に議論してしまいますと議論が混乱しますので、まず要件ごとに皆さんのニーズを確認させていただいた上で、次の議論をさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

委員長

今、ご指摘がありましたように、1.と2.がイエスということは、自動的に全面削除はないということになるということなのですが(笑声)、それもお含みおきの上で、1.と2.についてご意見を伺いたいと思います。
2.についてはいかがでしょうか。

委員

大学関係でよく議論するのですが、企業ほど職務発明と自由発明の区別が明確かといわれると、事例が少ないですから、明確なことはいえないのです。とくに自由発明とはそもそも何かというのは、大学の先生方のところでは大議論になる可能性があるのではないかと思います。その点、コメントさせていただきたいと思います。

事務局

今の点につきましては、文部科学省の方で、科学技術・学術審議会の下に知的財産の関係のワーキンググループをつくりまして、そこで今回の機関帰属の議論がされたわけでございますが、その中で、大学における職務発明について、非常に抽象的ではありますけれど、考え方が整理されておりまして、文部科学省の考え方としては、特許法第35条で定義されている職務発明の中でどこまでを機関帰属とするのかについては各大学でパテントポリシーを設けていただく方向であると私は理解しております。

部会長

この問題は、委員がおっしゃるとおり、大学の教官の職務とは何かという問題であり、これはもう10年以上前から議論されていても結論の出ないところです。しかし、大学の場合は職務発明と自由発明の区別は難しいということはそのとおりなのですが、一応、この原則にのっとって、先ほど事務局がおっしゃったとおり、各大学で決めていくしか、多分方法はないでしょう。モデルローのようなものは文部科学省でつくるかどうかは別にして、最終的には大学で決めていくしかないと。それは困難を伴うのですが、しかし、では、すべてを職務発明にしてしまうか、すべてを自由発明にしてしまうかというと、これもできないわけでして、そこでちょっと苦しんでいただく(笑声)、ということ以外に手はないのではないかと思います。

委員

もしそういう意味だとすると、反対の意見を表明しておいた方がいいのではないかと思います。産学連携活性化という前提で考えたときに、大学の先生の発明の機関帰属ということを前提で考えているわけですが、その機関帰属が職務発明に限られると。職務発明以外は機関帰属ではないということになって、各大学の意向に任せるとはいっても、では、機関帰属にならない発明がいっぱい存在したときは、産学連携というのは恐らく活性化しないと思うのです。そういう意味では、「これを事前に取り決めすることは無効とする」という積極的な表現は、むしろとっていただいた方がいいんじゃないかという感じがいたします。

部会長

不便なことは不便かもしれませんけれど、自由発明に該当する部分を大学の方が取り上げるということは、恐らく不可能だろう。企業にとっては便利かもしれませんけれど、それは難しいだろうと。それは裁判所に行ったら、公序良俗違反とされる可能性がかなり出てくるだろうという感じがします。

委員

公序良俗でだめな場合は別にして、今、条文で取り決めでは無効だと書いてあるから取り決められないと。第35条を全部撤廃すれば、先ほどのご説明にも、職務発明以外でも取り決めは可能になりますよ、ということがありましたね。そういう自由度を与えた方がむしろいいのではないかという意味で申し上げたんです。それも、おっしゃるように、公序良俗に該当した場合はどうかという問題を含むかもしれませんが、今は第35条で取り決めは無効であると明確にうたってあるわけですから、取り決めをすること自体は即無効だと思います。その点を申し上げたのですが。

部会長

事後的に承継させる分には可能ですけれど、事前にそういうことを決めておくというのは、現在の特許法の構造でいきますと、発明は発明者に原始的に帰属していきますから、発明者の財産を使用者に移すということを事前に決めるということでして、基本的には、例えば従業者が将来取得した土地は会社に帰属させるとか、そういう契約と同列の評価を受ける。それはかなり不安定になるのではないかなという気がすると、こういう意味です。

委員

一つの発明が職務発明か自由発明かについては、その定義がはっきりしていない部分があります。先ほどの大学の場合もそうでしたけれど、企業におきましても、最近はビジネスメソッド特許とか、いわゆるアイデア特許的なものがどんどん出てきていまして、では、それが職務に関係するのかしないのか、これが案外はっきりしない状況になってきていますね。ですから、ある程度は何らかの形で明確にしておく必要があるのではないかなという感じをもっております。

委員

第1項と第2項は関連して理解しなければいけないと思いますが、第2項の規定は、自由発明と職務発明の切り分けをしていると同時に、自由発明については、あらかじめ予約承継を禁止することによって従業者保護をしていると同時に、先ほどご紹介がありましたように、この規定をいわば裏読みすれば、この規定があるからこそ使用者が特許を受ける権利を承継することができるということになっているわけですから、そういう意味では、この規定を残すということは非常に重要なことだと思います。
それから、職務発明と自由発明の区分けをどうするかというのは、確かにグレーゾーン的なところが全くないわけではないと思いますが、判例が今までかなり積み重ねてきていますし、解釈論でも、そこのところの仕分けの仕方というのはかなりできていると思いますので、それ以上に、職務発明とは、自由発明とは、という定義をする方がむしろ非常に硬直的な解釈になって、問題を残すのではないかと私は思います。

部会長

今、委員がおっしゃったとおりだと思いますが、しかし、先ほどの御意見のとおり、ビジネスメソッドが出てくると一変してしまうので、この原則は原則として、その辺の整理は将来議論はしておく必要はあるだろうという気はします。従来とはかなり様相が違っていることは間違いないだろうと思います。

委員

職務発明の中にも、国によっては、その人の従事している業務に関する、という表現、それから、会社の業務に関する、という表現等、いろいろな形で定義されています。国によって状況はかなり違うと思いますが、何らかの定義が場合によれば可能かもしれません。非常に難しい部分かもしれませんけれど。

委員

先ほどご指摘がありましたように、職務発明の範囲については、裁判例でかなり広い範囲を職務とみているので、実務上、それほど大きな問題がないのではないかと思います。
それから、自由発明を予約承継を認めないということは、先ほどのご指摘のように裏表の規定でありまして、職務発明については、勤務規則等、使用者側の一方的意思表示によって権利の移転を認めるということと1つのセットになっているものでありますから、両者を区別して考えることはできないのではないかと思います。つまり、職務発明は一方的意思表示、自由発明は予約承継はいけません、事後承継は別の話、ということは1つのまとまりだと思います。

委員

大学の場合の職務発明が非常に難しいというのはよく理解できるのですが、それと自由発明を機関帰属にさせるというのは、全く対象外になっている話なのでしょうか。
例えば、職務発明か自由発明か非常に難しい。ところが、一方では、先生方の発明を機関帰属にしてほしいという要請はあると思います。そのときに、自由発明だということになると、機関帰属にしなくてもいいということになりますと、現実問題として、恐らく個人の先生方の所有する権利が相当ふえると思います。
そういう状況下で、国の予算も相当先生につぎ込まれているわけです。それを産学連携で世の中に還元しましょうというストーリーになっていると私は理解しています。ところが、今のように個人の先生方の尊重というのはもちろんありますけれど、産学連携でそれを活性化しようということに対して、機関帰属にならなかったら、これは産学連携はできないのではないかと思います。
そういう点で、最後に質問をしたいのですが、自由発明は大学の機関帰属にはならないと理解してよろしいのでしょうか。

事務局

先ほどご紹介した科学技術・学術審議会での報告書の中には、「大学から、あるいは公的に支給された何らかの研究経費を使用して大学において行った研究」という文章が入っています。したがって、その部分については基本的には職務発明だと文部科学省は考えているようです。
現在、実際には国有特許になっているのは全体の大学の発明の2割程度しかなくて、8割は大学の先生個人に帰属しております。しかし、この8割がすべて自由発明だということではなくて、8割の中には相当数、職務発明に相当するものもありますが、その部分について現在は先生に管理をゆだねているという整理を文部科学省はしております。
したがって、先ほどの定義に従っていけば、大学で生まれる発明の相当数が職務発明の概念に含まれると考えておりますので、ご懸念のようなことは多分基本的にはないのではないかと思います。それに漏れるような、それこそ先生が自分でどこかの企業から獲得してきた資金で研究された成果などは自由発明になるかもしれません。

委員

今、事務局のおっしゃられたことは、大学の先生が企業から獲得してきたお金で研究をした場合には、そこから得られた発明は自由発明になるということですか。そうすると、それは大学帰属ではなくて、企業との契約の中で自由に帰属を決めることができると、そう解釈してよろしいのでしょうか。

事務局

済みません、ここは私の解釈なので、必ずしも文部科学省の公式見解ではありませんが、公的に支給された何らかの研究経費を使用して大学において行った研究に係る発明については、職務発明に該当するとしているようです。

委員

今の職務発明の定義は、国立大学の52年の117号通達に基づいて、特定の国のグラントを受けていない限りは自由発明としてとりあえず認めているという話で、先ほど委員が指摘された点は法人化後の機関帰属のポリシーだと思います。法人化後については、職務発明の定義をそれこそ文科省のワーキンググループでは非常に広くとっていますので、職務発明になる可能性のあるものはほとんど開示をする形になっていて、その中から機関有のものを選別するような形になりますので、そういう意味では、そこの手続に関しては機関管理・機関活用ができないような状況にはならないと思います。
むしろ、学生の発明とか職務発明の適用が難しい部分については、これはどうしても自由発明なので、事後的に契約して機関有に譲り受けるしか多分ないだろう。そして、そこの部分が一番悩めといわれている部分ではないかなと思うのですが、そういうことも含めて、今の第35条の部分をなくしてしまえばやりやすくなるということでもないだろうなという気もいたしますが。

委員

今いわれたことにも関連するかと思いますが、競争的資金というものが、今後、法人化すると各研究者に行くのだと思いますけれど、この間聞いたところによると、競争的資金については特許は研究者個人に帰属するということになっているようで、獲得した競争的資金で研究したわけで、それを研究者個人にという方針だといっている独立行政法人もあるという話なので、そうすると、またその扱いというのは非常にややこしくなるのではないかと思うのですが。

事務局

済みません、今のようなことについては私も承知をしていないのですが、いずれにしましても、それはここで議論するよりは、文部科学省の方できちっと考え方を示されるか、あるいはそれはすべて各大学に任せているのかもしれませんが、いずれにしても個別の大学への適用については、この35条の議論とは別にした方がいいのではないかと考えております。なお、大学についても当然適用となる特許法第35条において、職務発明の定義は、従業者の過去・現在の職務の範囲と企業の業務の範囲のand条件の部分だというのは明確になっておりますので、この点については特に異論はないと思います。

委員長

この2.の話につきましては、大学における発明の問題についてご議論をいただきましたが、もとに戻りまして、「職務発明は予約承継を認める、自由発明についてはそれを禁止する」という原則については、いかがでしょうか。これはこのままでよろしいでしょうか。
それでは、そのようにさせていただきます。どうもありがとうございました。

委員長

次に、一番ポイントかと思いますが、3.の職務発明に係る権利の承継があった場合の対価の決定についてですが、これは2ページから3ページにわたりまして3つの大きなポイントで整理されております。これにつきまして、ご質問やご意見等をお願いいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。

委員

この提案は、基本的には個別の発明をそれぞれ評価するということがどうも前提になっていて、そうしますと、今、起きている問題を抜本的に解決できない可能性もあるのではないかと思います。つまり、企業としては、個別の発明を承継時にやるのは非常に難しいので、実績報酬をとっていると。そうすると、実績報酬をやらなければいけない。ただ、実績報酬制度というのは、それも非常にうまくいくところもありますし、うまくいかないところもありますし、そういう枠をはめることは合一的インセンティブ制度の選択をゆがめることになるのではないか。
それから、個別の発明を評価するというのは、対価の決定というのは実は特許庁の審査がもっと大変だと思います。ですから、特許庁が使っているリソースと同じようなリソースを、本当にフィクションをやるのであれば、個別の発明ごとに評価するということは大変な評価コストを負担させることになりますし、さらに、最終的に裁判所に行ったときに、今までの事例をみると、裁判所は相当な対価について明確な基準を出すことができなかったし、今後も非常に難しいのではないかと思います。
ですから、対案になるかどうかわかりませんが、個別の発明を評価するというのはやはりフィクションであって、むしろ報酬規定がアザーホール妥当かどうか、そして、その報酬規定が特定の発明者に対して差別的に適用されているかどうか、そういう観点でみた方がいいのではないか。つまり、特定の発明の相当な対価を例えば中村さんがもらったかどうかではなくて、中村さんが日亜化学にいて、日亜化学の報酬規程に照らして妥当な評価を全体として受けてきたかどうか、ということを評価するということであれば、フィージブルだし、余り大きなコストもかからないし、しかし、それで特に労働法の方たちが心配していらっしゃるような、企業と発明者との間の交渉力のアンバランスという問題も解決できるのではないかと思っております。私のコメントです。

委員

私は、まず3.の(1)について、このような決定が尊重されるということは適切かという点については、このとおり適切だと思います。いま委員が、特に個々の発明についての実績報酬を決めるのは難しいということをいわれましたけれど、実際、企業は報奨規程を細かくつくっていて、それぞれの企業が販売実績とかライセンスした場合の実施料率とか発明者の貢献度とか、その事業分野の特殊性等も考慮して細かい規定を設けているのが通常だと思います。
私は、企業の補償規定がここで書いてあるような合理的手続でなされ、そして、その定めた額が著しく不合理でない限りは、それを尊重するのが当然であり、それでこそ職務発明問題において現在生じている、企業側と従業者側との深刻な対立問題も解消できるのではないかと基本的には考えております。
現在の第35条の解釈でも、そのように解釈することは十分できますし、それが正しいと私は思っていますが、ただ、残念ながら、最高裁はそのような考えをとっていない以上は、明確化を図るという意味で、相当な対価の決定をこのような基準で判断していくことを規定上明確にすることは必要であろうと。ただ、合理性を著しく欠くような場合には、それは司法的判断に服するのが当然でありますし、その意味では、(2)の3ページに出てくる規定の仕方を残すこともやはり必要だろうと思います。
ただ、現在の裁判所で考えられている相当な対価のいろいろなファクターの中で、一番認められていないのではないかということで不満が出てくるところは、この(3)のポイントに書いてある2つの点が主であろうと思います。そういう点をさらに判断の要素に入れることによって、その点についても相当な対価の決定に考慮が払われることになれば、現在の問題の解消の1つの前進になるだろうと理解しております。
しかし、(3)の中で、「発明実施の段階で売上に寄与した発明者以外の従業者の貢献」というと、通常の事業活動で、通常考えられる収益を上げている場合にもすべてそれを考慮しなければならないか。それはいささか問題があるので、それは特に売り上げ部門における顕著な事業活動が通常の発明の実施では考えられないような顕著な寄与度をもっているといった場合にそれを考慮する、と考えた方がいいと思います。

委員

この3.の(1)に、①、②、③と3つ書いてありますね。①は「合理的な手続を経て決定され」、②は「かつ」と書いてあって、「決定が当該定めに従い適切になされ」、そして、③は「かつ」と書いてないので、これはorなのかどうかということが1つですが、私はorにしていただきたいと。つまり、「手続合理性」、そして「決定が当該定めに従って適切になされ」というところは、実務的にもかなりできるのですが、その計算した結果が合理的なのか非合理なのかというのは、またどう評価していいかわからない。少し面倒くさいところを残してしまうことになるのではないかと思っています。

事務局

基本的には、すべてand条件と考えているわけですが、①と②で書かせていただいたのは、基本的にはルールをつくるプロセスと当てはめのプロセスですけれど、通常であれば、その両プロセスをきちっと適正にやられれば、結果としての答えも合理的な答えが出るというのがほとんどだと思っています。
ただ、場合によっては、使用者によっては「プロセスはちゃんと踏んだのだから、この額でいいじゃないか」と、そういったことを予防する趣旨でこの③を入れさせていただいているということです。これは③が適用されるケースで我々も極めてレアケースだと思っていまして、基本は①と②を満足すれば、③は通常クリアすると。

委員

私も、その点で、表現ぶりがちょっと気になっているのですが、事実上、③は要らないんじゃないかと私は思います。③があることによって、対価の額が不合理であるかないかということを結局裁判所が判断することになるだろう。私の理屈は、①で、合理的な手続を経て決定された規定がありますと。②で、「かつ個々の対価額の決定が当該規定定めに従い適切になされた」と書いてあるわけですね。適切になされて、なおかつ③がというのは、要らないのではないかと思います。適切になされない場合に③の問題が起こるのであって、規定が十分であれば、適切に運用されたものをよしとするのが正しいのではないかと思います。ですから、この③は要らないのではないか。入ることによって、裁判所にまたご厄介になる機会が多くなるということで(笑声)、これは1つも改善になっていないと思いますので。

委員

私もそう思います。

委員

それから、もう1点、②の「個々」という問題ですが、これは前からも実情をご説明してありますように、私は実務的な立場から、個々の発明の対価を決めようと思っても決められないという実情があると思います。ですから、インセンティブのためにどういう還元をするかというのは個々の企業で考えるべきであって、そのときに、個々の発明単位で合理的な規定がないとか、発明単位で合理的な対価が払われていないということで何か争いが起こるというのは、非常に現実的ではないのではないか。
どういう例かと申しますと、例えば、パッケージライセンスでロイヤリティが入ってきました、ロイヤリティを還元します。けれど、どの特許を使ったかわかりません、契約の中には特許番号も書いてありません。それで、ロイヤリティ収入があって、それを発明者に還元しましょうといっても、対象になるであろう発明者全員に対して、発明ごとに適切な対価を計算することは事実上不可能です。
そういうときにどうやって還元するのかというのは、企業において実情に合わせてやればいいと思っていますので、このように個々の発明についての対価を決めるという考え方は私は不可能に近いと思っていますので、ぜひこれを削除していただきたいと思います。先ほどおっしゃられたように、トータルで還元すればいいような考えを導入していただけたらと私も思います。

事務局

今のご意見の後段の点でございますが、当然、企業においてはかなりの数のパッケージライセンスがなされていると我々も理解をしておりまして、そのようなケースにおきましては、例えばそれぞれの契約又は職務発明規程において、パッケージライセンスをした場合の対価の支払い方というものをきちっと明文で規定していただき、そういった規定が合理的なプロセスを経て定められ、当てはめも適切に行われていれば、問題はないのではないかと思っております。
特許法の中で発明といえば当然個々の発明になってしまうので、②のところは、発明の当てはめの点ですよという意味で「個々の」という言葉を書きましたが、条文上、「個々の」という言葉は出てこないとは思います。いずれにしても、そのようなパッケージライセンスにおける支払い方についても、同様の適正なルールをつくっていただければ、基本的には尊重されると我々は考えております。

委員

先ほどのご意見についてちょっとコメントさせていただきたいと思います。①、②、③の関係ですが、現実の問題としては、程度を語り得るものがほとんどではないかなと。対価の額にしましてもそうですし。そして、手続をどの程度きちっとやっているかということも、現実の場面ではさまざまな程度を語り得るものだろうと思います。そして、先ほどのご意見のように、それこそだれもが納得するように、完全に手続を踏まえて対価の額を決めたという場合については、これはもうその額自体、合理的なのだろうと思います。
①と②が完全に満たされているならば、おっしゃるとおり、③は多分もう問題にならないだろうと思います。ただ、現実の場面では、①と②が完全に満たされているという場合は、それは理想的な場合であって、必ずしもそうとはいえない場合の方が多いだろうと。そうなってくると、そういう手続の満たされ方の度合いに応じて、これは内容自体が不合理だという場合については、救済の道を置いておく必要があろうと。
そのようにとらえるならば、①と②が完全にだれからみても問題のない手続を満たして納得が得られるという手続をもし要件とするのであれば、私は別に反対はしませんけれど、そうでないケースの方がほとんどだろうと思いますので、これは契約自身無効になりかねないと思います。それは問題があろうと思います。やはり①と②のものというのはそれぞれ程度が語り得ると。ですから、①と②の状況を勘案して、「やはりこれは不合理」という判断をするという余地を残しておくべきではないか。
ご提案の趣旨をそのように理解するならば筋も通っておりますし、また、今の民法あるいは労働法等の特に最近の考え方とはぴったり合っているところだと思いますので。もしそういう考え方であるとするならば、これはすぐれた規定の仕方ではないかと思っております。

委員

①と②と③の関係については、資料の6ページの3.の両者に与える影響の①のところですが、「合理的な手続を経て対価の決定額が決定された場合、原則として尊重」となっていますので、先ほどの委員のご発言との関係で言えば、やはり①と②が大原則、基本であって、③は――つまり、内容的な審査が行われるというのは、レアケースということになろうかと思います。
その場合、3ページの③の不合理な場合の算定ですけれど、1つは、今、山本委員がおっしゃったように、①と②が完全にされていないという場合が考えられると思います。逆に、もし非常に例外的な場合について裁判所が判断するということを外してしまいますと、①と②のプロセスのところが非常にガチガチになると思います。非常に厳しい要件になってきて、例えば②に不服申し立ての機会があると出ていますが、これを相当きちんとした制度にして整備しないと、この①と②を満たさないということになりかねません。したがって、逆に企業としては非常にやりにくい問題が出てくると思います。
要は、各企業の実情に合わせてやっていただければいい話であって、例えば、①と②に出ているプロセス、②に具体的に開示、説明、意見、説明、不服申し立てとありますが、これをあたかも機械的に一つ一つクリアしなければいけない、あるいは絶対的にこれだけの要件があるという問題ではないと思います。もう少し実情に合わせてやっていただければいいので、先ほど発言された委員がそういうことは不可能だとおっしゃいましたが、それはそうでもなくて、それぞれの制度の企業としてやっていただければいいと思います。
しかし、一方で、それがだれがどうみても不十分だという場合には、やはり不合理な対価の決定があり得るというところは残しておかなければいけないと思います。労働法の立場からいいますと、③の裁判所が例外的に審査をすることが必要だということを制度化する根拠は、やはり雇用契約は組織関係だということが非常に重要だと思います。
組織関係だということには含意が2つありまして、1つは、企業の実情に合わせて企業の裁量権を認めてやっていくことが妥当で合理的だということがあります。例えば、以前から問題になっている契約1本でいくのか、勤務規則も認めるのかという場合に、当然、勤務規則は認めていくべきだと思います。つまり、企業側のイニシアティブは認めないと、雇用関係自体がやっていけない。発明もその1つだと思います。
しかし、もう一方で考えられるのは、組織関係の1つの特色は、これは委員の方が以前からいわれていることとも関係しますが、仮に交渉とか説明とかをきちんとやったとしても、当然、客観的にみておかしい場合があるわけですね。あるいは、事業者側に不満が残る場合がある。ところが、組織だと、その場合に選択肢がない、オプションがないわけですね。一般の契約関係であれば、「それだったら、私はやめた」という選択ができるわけですが、雇用関係はそれができない。アメリカのような転職社会であれば話は別かもしれませんが、そうではない。そういう雇用関係の特色をということは1つ押さえておく必要があって、①と②が基本であっても、今の点からいっても例外的な裁判所の司法審査というものは必要になってくるだろう。
最後に、これは今発言された委員と一致しているのかどうかわかりませんけれど、①と②が不完全な場合に裁判所の審査が働くということはあると思いますが、①と②が完全であっても、ごくごくレアケースで、やはり客観的にこの対価の額はおかしいと。例えば、ものすごく価値の高い発明に対して対価が100円だったという場合には、どれほど①と②がきちんとされていても、やはり最後にレアケースとして審査が残る余地はあるのではないかと思っています。

委員

プロセス重視にしていくという考え方そのものは、大変いい方向性だと思います。ただ、疑問点が2つあります。ひとつは、「使用者と従業者が実質的な交渉をする」という部分です。例えば労使間で給与を決めるときと同じような交渉を行うのか等、どうすれば合理的と認められるかが、まだ非常に不明確だと思っております。
それから、先ほど委員がいわれましたように、我々は個々の発明の自己実施に関しては、いろいろな側面から評価をすることは可能です。しかし包括クロスライセンス等を結んだときには、相手がどの特許をどう実施しているのか実施していないのかも含めて全くわかりません。この状況で個々の特許をきちっと評価していくというのは、もう本当に不可能に近いものです。
もう1つは、「対価の額が著しく不合理な場合には」の部分です。これは今と何も変わらない状況に陥ってしまうなと思います。現状においては、対価が低いかどうかという問題よりは、むしろ不平不満をもつ人たちがこの特許法第35条を使って訴訟を起こす例の方が、圧倒的に多いと私は思っています。そうしますと、幾ら合理的に決めたとしても、人によっては、対価の額が著しく不合理であるということを盾にとって訴訟を起こします。そうすると、今回、このように一生懸命議論して改正したとしても、現状、我々が抱えている問題の何ら解決にはならないのではないかと思います。
ですから、額についても事前に決めて、それをきちっと示す。その上で、雇用契約を結ぶ。そして、それを尊重するという方向で進めていくようにしていただきたいと思います。確かにある視点に立てば不合理だという場合もあるかもしれませんが、それを許してしまったら何の解決にもならないと思います。

委員

今議論している問題は、職務発明によって従業者が取得した特許を受ける権利または特許権を使用者側が承継した場合の相当の対価の問題ですね。対価について相当であるかどうかについては、全く司法的判断の外に置くというのは、そのこと自体、私は矛盾していると思います。手続1、2を踏んだ場合には、当然、合理的な基準を満たすような相当な対価が決められるでしょうけれど、そのこと自体と、相当な対価と定めた額が客観的にみて著しく不合理であろうとどうであろうと、手続を踏んだのだから司法的判断の外だということは、法のあり方からいっておかしいと私は思います。
ただ、今いったように、改正法ではきちっと報奨規程をつくっていけば、就業規則あるいは契約が適切と判断されることから始まるわけですから、現在の解釈とは全然違うと思います。現行法では、企業がどんなにいい報奨規程をつくっても、35条が強行規定だという理由でまず裁判所が相当な対価を決めますというのと、改正法では企業が手続を踏んできちっとつくった報奨規程であれば、それは当然尊重されましょうし、それが著しく不合理とされることはレアケースに近いものになってくるでしょう。それは現行法の解釈とは違うものになると思います。

委員

先程来のご意見のように、私は、2ページの①から③の要件を設けたのはいいかと思います。それで、質問も兼ねてですが、③のところで、きょういただいた資料ですと、「著しく不合理」というのを「著しく」というのが抜けているんです。私は前にいただいたときに、「著しく」というのはどのように解釈するのかなと。これはむしろ「著しく」ではなく、「だれがみても明らかに不合理」というときに限定した方がいいんじゃないかなと思って、この「著しく」が抜けたことを歓迎していたんです。ところが、皆さん、余りここにはこだわっていらっしゃらないのか、「著しく」とおっしゃるので、私はここは「著しく」は外すべきだろうと思います。
それから、③の関係は、第35条第4項の考慮すべき要素というところで、企業の方も従業者の方も納得いくような、そういう整理の仕方をしてはどうかと思っております。

委員長

今、一当たりご意見をいただきました。まだお伺いしますが、今までのところに関して事務局の方からご説明することがあれば、お願いいたします。

事務局

2,3お尋ね等もございましたので、お答えしたいと思います。
まず1つは、実質的交渉というのをどうやってやるのかという先ほどのご質問につきましては、基本的にはその企業の実情におゆだねするということだろうと思いますが、ただ、これはもちろん集団的な処理というものもあり得ると思いますし、個々の発明者との間の個別具体的なやり方というものもある。それは労働法制的な世界に特許法が余りにも深く介入するというよりも、それぞれの企業の実情におゆだねをした方がいいのではないかと、とりあえず現在考えているところでございます。
それから、内容の合理性等々についてのご指摘もいただきまして、それは手続を踏んでいればいいのではないかということですが、基本的には、さきほど委員がおっしゃられたようなラインに尽きておると思いますし、手続を踏んでいれば、逆に内容面での司法審査というのは総合的な判断だろうとも思いますので、例えば、第35条がないような世界ですべて裸の契約にゆだねられるということになったときには、より厳しい内容面の司法審査が行われ得る余地もあるのかなとも考えたりしたわけでございます。
それから、「著しく」というのが抜けているのではないかということでございます。それにつきましては、就業規則に関するいろいろな法的な整理なども参考にいたしまして、また、「著しく不合理な場合」ということになりますと、民法の一般原則等との差異も余りつかないのかなということもございまして、ここではそういう文言は削除させていただいたということでございます。

委員

今のご説明で、使用者と従業者が実質的にというのは、例えば「個々の従業者と」という表現もされましたが、ここはあくまでも会社としてのルールを決めるときに、使用者と従業者が実質的に交渉を行ってという形でいわれていますので、個々の従業者とやるというのは不可能ですから。そうすると、一般的にいわれるのは、労使間交渉で決めるのかなととったのですが。プロセス重視ということであれば、その合理性をきちんと担保するためにそこのところを明確にしていかないと、また混乱が起こるのではないかなと私は思います。

委員

今のご発言は前回からも出ている議論だと思いますが、2ページにありますとおり、①が手続を決めて制度を決めるということで、②は当てはめ・適用の問題ですね。主に集団的な交渉というのが問題になるのは①の方で、それが今のご発言だと思いますが、しかし、「個々の発明」という表現が適切かどうかはともかく、ある発明についてその制度を適用する際には、どうしても個々の従業者との交渉、あるいは説明、あるいは不服の申し立てということが出てくると思います。そこのところを抜きにするのかしないのかということですが、特許法の建前からすると②を除外することはできないと私は考えますので、この案に賛成であります。
それから、先ほどから、個々の発明あるいは当てはめ適用というのは難しいというお話が特に企業側から出ていますが、私は企業の中で法務と人事がどれくらい仲がいいのか悪いのか知りませんけれど、これは一種、成果主義人事の問題と共通する側面があるわけですね。給与制度についてもまず制度を決めて、その制度を個々の従業員の能力や成果をみて適用するという次の段階が必ずあるわけです。どこの企業でもそれは必ずやっていらっしゃるはずなので、制度だけつくって、あとは成果主義人事は賃金の当てはめ適用はしないということは、やっていないはずなんです。
それとパラレルの問題にあると思いますので、今の賃金制度の問題でいえば、適用当てはめはどこの企業も苦労して、しかし、最近はさまざまな形で洗練をされてきてやっていらっしゃるので、特許についてそれができないという点は私は腑に落ちないのです。

委員

②が重要だというのは私も認識しているのですが、「個々の対価が適切に払われる」と、なぜ「個々」といわなければいけないのですかと、ここなんです。先生はできないはずはないとおっしゃいましたけれど、現実にはできないケースがいっぱいあるんですね。そこをなぜ法律で「個々」と規定しなければいけないのか、その問題なんです。「発明」でいいじゃないかと私は思います。

委員

これは「個々」にこだわるという趣旨ではないんですよね。

事務局

先ほどご説明したとおり、ここは決して「個々」にこだわるということではなくて、全体のルールと発明に対する当てはめ、先ほどの繰り返しになりますけれど、パッケージライセンスのようなケースも規程上きちっと定めてあれば、そこは読み込めると私は考えております。

委員

まず、「個々」と書いてあるのは、条文上、「個別の特許権の移転」となっていることは明らかなわけですから、それを前提としたのは仕方のない問題だろうと思います。先ほどご指摘がありましたように、プロセスと結果を総合的に勘案するということが必要だろうと思います。
いろいろな産業分野でいろいろな評価方法があり得ると思います。そうすると、個々の評価方法について、合理性というのはそれぞれの分野の状況というものを勘案してやるということが必要になるわけで、そうすると、総合的にみていくという規定の仕方ということが必要なのではないかと思われます。
ただ、私は、さきほどの委員のご発言とは若干裁判例についての評価が違っております。裁判例の解釈というものとそう大きく隔たっているかについて、裁判例で、対価の決め方として十分なルールがあったのかどうかということについて、被告企業が十分に主張・立証ができているのかどうか、十分な主張立証にも関わらず、認めなかったかどうかということについては、私は若干疑問をもっております。
従来の裁判例のルールの原則に基づいて我々はもう少しきちっとするのだという考え方の方が、過去分についても今度の法改正がある一定の考慮を払ってもらえるのではないかと思われます。
それから、我が国は法治国家でありまして、いかなる組織においても、例えば会社法であるとか労働法であるとか、組織法は司法審査を受けることになっているわけでありまして、我が国が法治国家である以上、司法審査をなくしてくれということは、私は無理ではないかなと思います。

委員

先ほど企業の実情ということをいわれましたが、まず、パッケージライセンスについて、得られたライセンス・フィーをこのように割り振りますということをする会社はまずほとんどないと思います。それから、先ほど、例えば③の対価の額が100円であれば著しい不合理とか、そういう判断が出るだろうとおっしゃっていましたが、現実的には、例えば、外資系の会社で1ドルしか払わないという会社もあります。その会社は恐らく、給与等を含めてパッケージとしていいものを用意しているのだろうと思いますが、非常に業績の伸びている立派な会社ですけれど、その会社が日本で1ドルでやりたいと、USのルールをそのまま適用したいというのであれば、私はそれはそれで尊重していいのではないかと考えます。

委員

私も企業の立場でいわさせていただくと、知財立国、知財立社というのは企業の存亡がかかっている話で、発明者に対して報奨金という形で、第35条の話もありますけれど、インセンティブを渡していきたいという考えに、企業の立場からいって変わりはないと思います。ところが、③の決定された対価の額が不合理という話だけ一人歩きしていくと、ある意味で、これに対して研究者側の相場感というのは、いろいろな研究者がいますから、実際問題ないんですよね。その意味では、現在の特許の第35条に関係する裁判がこの内容になってなくなるかというと、③がある限り、やはり全然なくならないという現状なのかなと思います。
それから、先ほど、営業での顕著な寄与率といったお話をしていただいたと思いますが、その寄与率というのは、結局、最後はお金ですから、何らかの形で数値をつけて、それを報奨金という形で渡さないといけないんですね。例えば、7ページに飛んで申しわけありませんが、そこの「売上総額×推定実施料率」――この推定実施料率なんていう話ももうこの辺であいまいになってくる。さらにその後ろに「適当な係数」とありますが、この「適当な係数」というのはほとんどわけのわからない数字になっている。あとは、その下のところで、「発明の完成や実施に際し」と、こういういろいろな言葉の中でいろいろな判断が出てきてしまうわけですね。それがいろいろな裁判のもとになっていくという現状だろうと思います。
そういう意味では、レアケースになるとかそういうことよりも、裁判になってしまうようなことが余りないような方向にしたいということからすると、3.はやはりカットしていただきたいなと、企業の立場からいうとそういうことになると思います。

委員

企業の立場の人の発言が続いていますので、労働者の立場で(笑声)。冗談はさておきまして、私は、今回の素案になっておりますものは、先ほどのご意見のように、労働者の立場からみてもそれなりに納得のできるものではないかなと思っています。ただ、問題なのは、先ほどから議論になっています、裁判に持ち込めるのか持ち込めないのか、不合理な状況にあったときにどうするのかという部分、これはどういうルールをつくっていくのか、あるいはそのルールを決める際にきちんとした労使間も含めたいろいろな話し合いがなされたのかどうか、ということが非常に重要なことはわかるのですが、それでも不合理だというのはあり得るはずなんですね。
今、確かに裁判が頻発していますから、私どももわかります。不合理な裁判があって、これはちょっとやり過ぎかなというのも――これは議事録に載せてもらっては困りますが(笑声)、そういう部分もあるというのもわかります。けれど、そのことだけに余りとらわれて、知財立国を目指すという大きな目的からすれば、あるいは企業の活動をそれで活性化していくということからすると、そうした裁判闘争はないにこしたことはないのですが、やはりこの道はとっておいていただきたいし、それがないことには、幾ら労使間で実質的なここに書いてあるとおりの話し合いをしたとしても、解決のできない部分は残りますから、それはそれで担保していただきたいと思います。
話のついでにもう1つありますが、不服を申し立てる機会が与えられているという、このことを制度的にどうつくるのかなと。ここに書くことは結構だと思いますが、労使紛争の異議申し立てをつくるということと同じですから、今、裁判制度の枠組みづくりも含めて、ここのところは逆に労働法上問題になってきているところなので、あくまで機会が与えられればそれでいいということであれば、それはそれでいいのですが、ここは逆の立場でちょっと気になります。
もう1つは、実は、きょうここにお集まりの企業側の皆さん方は非常に著名な、俗にいう大企業の皆さん方です。ところが、公正なルールのもとに労使間が話し合って決められない企業が、企業数でいうと日本全体の9割以上を占めているわけですから、その企業の人たちのことも頭に置いていただいて、そこで正当なルールをちゃんとつくらせる、そのためにちゃんと法が役割を果たしていくという、こういう視点も必要だろうと思いますので、この点も付加しておきたいと思います。

委員

幾つかまとめていわさせていただきたいと思います。複数の論点が入ってしまって申しわけありませんが。
先ほど、ご意見があった現行の判例法との比較ですが、おっしゃるとおりなのですけれども、ただ、最高裁判例をよくみますと、相当の対価に満たない部分について追加分の報酬請求できるという論理を最後は立てていますので、相当の対価というものを決めて、そこから上乗せしていくという発想になっているのかなという感じがいたします。
それに対して、今日のご提案によりますと、先ほど委員がおっしゃられたとおりでして、契約がある、あるいは勤務規則があると企業の側がいえれば、あとはそれが不合理かどうかと。裁判所は何が相当かというのを決めていくのではなくて、その決められたものが不合理かどうかという消極的な判断をしていくということになりますので、これは現在の最高裁判例の最後の論理を文字通りとるならば、やはり契約を尊重するという態度が示されたものといえるのかなという気がいたします。
それに関連していいますと、全体として有効か無効かを判断していく際に、②の要件を立てていく、つまりその意味でのプロセスを重視していくということを立てていくというのは、先ほどもいいましたように、それがきちんと満たされているならば、不合理といえる場面は減ってくるであろうと。それは同時に、きちんと定めを置く際に、あるいは実際に対価を決めていく際に、説明なり開示なりが行われていれば、紛争自体も減ってくるだろうと思います。情報不足に基づく紛争というのは少なからずあるのではないかなと思います。そういう意味では、事前に納得が得られるような形での手続を踏んでいくことによって、紛争自体も未然に防止できていくのではないかなという気がいたします。
そして、全体としていいますと、契約ないしは契約に類するものをできる限り尊重しようという、契約社会を目指す考え方と重なるところがありまして、しかし、その際には、きちんとそういう社会がうまく成り立つように事前に手続を踏んでいくということもあわせて要求されるであろうと。それができないというのであれば、「不合理な」という審査を受けてもやはり仕方ないであろうという気がいたします。
最後に、「著しく」ということが先ほど出ておりましたが、「著しく」という要件を立てますのは、伝統的な理解でいう民法第90条の公序良俗違反の判断の中でいわれていたことです。ただ、伝統的な民法といいますのは、非常に強い、19世紀的な、自分で決められる人間像というものを前提にして、そういう人間がした契約に介入するのだから、著しく内容が不合理である場合に限って無効とすべきだと、そういうロジックで出てきているものでして、こういう従業者のような場合に、それと同じような人間像が当てはまるかというと、どうもそうではなかろうと。
そしてまた、2000年にできました消費者契約法を立法する際にも、民法第90条よりは緩和された形の内容規制の序文を消費者契約法第10条に定めたのですが、その折にも、最初は「著しく消費者にとって不利な」という要件を立てていたのですが、情報や構想力の格差を勘案して第90条とは異なるルールを立てたのだから、「著しく」という要件は要らないだろうというので、最終的には「著しく」という要件を外したと。そういうことからしますと、やはりここでも、プロセスを一方で重視するわけですから、それとの兼ね合いで不合理かどうかということを判断すればよいと。そのように考えれば、整合性があるのではないかなという気がいたします。

委員

私も、今までいろいろ議論がありましたけれど、③の「対価の額が不合理でない場合には……」というところが非常にあいまいでわかりにくい。額が合理的であるかないかというのはだれが決めるかというと、結局、裁判所に持ち込むということになると、今と全然変わらない結果になると思います。
ですから、あくまでもプロセスを重視するわけであって、結果が、そのプロセスさえきちんとしていれば、例えば、先ほどどなたかが9割はルールが決まっていない会社があるとおっしゃいましたけれど、ルールを会社に決めさせることが重要であって、裁判所はそのルールがちゃんと守られているかどうかということを判断すればいいわけで、例えば、現在出ている判決でも、オリンパスのケースが利益の20%を基準にして、日立のケースが50%を基準にするということですが、では、20と50とどちらが合理的でどちらが不合理かというのはだれも答えられないわけですね。そういう非常にあいまいな要素が入ってくる恐れが③にはありますので、私はこの部分は削除した方がいいと思います。

委員

私は、弁理士として実務上の観点からちょっとお話しさせていただきたいと思います。
まず、私どもも、大きな会社から小さな会社、例えば中小企業でも、相談を受けて発明の報奨規程をどうやったらいいかという相談も受けて、いろいろな内容を検討することもあります。そのときに、例えば出願1件幾ら、実施料幾らと、そういう相談を受けて設定しますが、そういった報奨規程、勤務規程、就業規程とか、いろいろな規程がありますけれど、そういうところで報奨するというのが1つのプロセスかと思います。そういうプロセスを行うということが、プロセスを行う合理性だと思います。
ただし、そういうプロセスを経たからすべてが合理的かというと、例えば、発明したとしてもそれは全部社長に帰属するのだと、そういう規程であれば、プロセスは合理的であっても、内容的に不合理だということが考えられると思います。ですから、今、対価の額が、「著しく」というのは別にしまして、不合理という意味で、ゼロという場合の不合理性と、実際に会社側がすごくもうかった、例えば1億、2億もうかったのに、従業者に還元する額が先ほどいわれたように100円だったとした場合に、やはりある程度不合理性というものが出てくるかと思います。
そういったことで、基本的にはここでいう決定を尊重されるということでいいと思いますが、その決定に対して不合理であれば問題だというところは残していくべきだと思います。その不合理の内容が、プロセス的に不合理という場合と、そのプロセスを経てもその結果としての内容が不合理という、2つ考えた上で、合理性があるかということを考えた方がいいかと思います。

委員

私は、先ほど委員がおっしゃっていたことがとても印象的だったのですが、今起こっている事件はどこに原点があったかということを考えたときに、会社において自分の特許が評価されていないから訴訟を起こしたというケースは、私はほとんどないと思います。私は実際に訴訟を起こした人たちにも3人ぐらいは会っていろいろな話を聞いていますが、相当の対価を受けられなかったのではなくて、会社において相当な評価を受けられなかったというところが原点で、では、会社に対して何ができるかというと、これしかないというのが現状だと思います。
ですから、合理的・不合理というのは計算式で求められるとはとても思えなくて、技術屋さんは自分の特許が幾らに値するかなんていう相場感は全くないと思います。どういうときに疑問に思うかというと、自分が会社にやった貢献というものを会社が正しく受けとめてくれなかったときにいざこざが起こるので、多分これはもっと会社側にいろいろ自由度を任せていかないと、幾らここで制度をやったとしても、自分は不満があると思ったら、それはこの特許制度における不合理だと主張する人は絶対に後を絶たないと思います。
確かに会社の中には、本当に従業員のことは考えていない人も多いかもしれませんけれど、大分風向きが変わってきていて、皆さん最低限のことは始めるようになってきているので、とすれば、もう少し裁量を会社側に任せるようにしないと、ここで計算式はどうのこうのといっても、ほとんど意味のない議論になるのではないかなという気がします。

委員

私どもの会社の特許に対する考え方を話しします。皆さんからご批判を受けるのではないかと思っておりますが、実態として話しさせていただきます。私どもは非常に小さな会社ですから、特に発明報償に関するルールはもっておりません。ただ、私どもの会社にとって特許は商品です。商品といいますと、きょうはメーカーの方がいらっしゃるのでおわかりかと思いますが、例えば、自動車を売って会社を経営する、あるいは家電製品を売って会社を経営する、それと同じように、私どもも特許を売って会社を経営しています。
皆さんの会社でも、利益が上がればそれを従業員の方に還元すると思います。ボーナスは高くなります。逆に、売り上げが下がって利益が下がれば当然給料も下がると思います。弊社では、特許に対する対価は給与に還元しています。特に特許の対価として別に何か枠を設けて従業員に支払っているということではありません。
この考え方が、間違っているというご指摘があるならば、ぜひお聞かせ願いたいと思います。

委員

さきほど委員がいわれたことですけれど、現在、職務発明の相当な対価の額を受けていないということで訴訟を起こしている人の動機などは、おっしゃるとおりだと思いますが、それだからこそ、ここに出ているような明確化をするということに意味があるわけで、それ以上に、いわば治外法権にするということは絶対にできることではないわけですね。例えば、行政法に自由裁量の法理というものがありますけれど、自由裁量で行政庁が自由にできるということであっても、それが著しく裁量の範囲を超えたら、それは司法的判断にやはり服するわけです。
ここで決めている先ほどの1、2、3の要件というのは、まさにそういう場合だと私は理解しています。日本の法治国家のもとで事業活動をやる以上はこのような司法判断はどうしても受けなければならないことであって、司法判断から外すということはできることではないと私は思います。

委員

私はここでの議論を否定しているわけではなくて、今起こっている問題を考えたときに、ここの3つをクリアするといろいろなものがクリアになるということでは決してないのではないかなと思っています。ですから、今回の1件はものすごく大きな問題をはらんでいるので、この一つ一つの案件だけでは解けないパズルがあるのではないかなというのが私の印象というだけで、この議論を否定しているわけではありません。

委員

この合理性をだれが判断するのかということから、批判が先ほどから随分出ていますが、先ほどから議論が出ていますように、これは例外なんですよね。まず、①と②でプロセスがきちんとされていれば、それで一応対価の相当性というのは認められるわけで、そこを外れてしまった例外的な場合についてこの問題が起こるにすぎないのです。裁判所の判断は変わらないのではないかというご発言が多いのですが、そこは違うので、これまでのように、そもそも全面的な司法審査がなされてきたような状況とは法制度そのものが違ってくるわけですから、そこは全く違うと思います。
それから、先ほどのお話の、相当な対価ではなく、評価が十分でないからこういう問題が起こるのだというのは、全くそのとおりだと思いますが、しかし、そうだとすると、やはり交渉なり説明ということが重要になってくるのではないか。
つまり、これは先ほどいただいた委員のご発言とも関連しますが、2ページに、不服申し立ての機会ということが出てきますけれど、これはやはり非常に重要だと思います。いわば紛争を内部化するということです。自分の発明について評価がちゃんとされなかったから、不満をもって最終的に訴訟に行ってしまうということがあると思いますので、そこのところを防ぐためには、紛争を内部化するという意味で、このプロセスが重要になると思います。
そのときに、不服の申し立て制度ということはやはり重要なので、これは企業内での紛争処理のようなものだと思いますが、これは先ほどの人事考課についてもやはり既に出てきているところです。したがって、さきほど、それはどうかとおっしゃられたのは、私はほとんど耳を疑ったのですけれど、それは給与・処遇制度の面では実現に向けて努力されていることだと思います。
それから、先ほど私が100円といったことについては、いや、アメリカでは1ドルだという話がありましたが、ここがまさにポイントで、先ほどおっしゃったのは、給与に含めて払っているから1ドルなんですよね。もし給与に含めて払っていない日本の制度であれば、そこはやはり 100円とか1ドルが非常に不合理だということになります。客観的にみても、どんなにプロセスを踏んでも不合理だという場合が残ると思います。もし給与に含んでそこもきちんとされていれば、それはその企業の制度ですからちっとも構わない話です。しかし、そうではない、本当のレアケースはやはり残るだろうということなのです。
したがって、今の発明についての対価を給与に含めて支払うということは、以前、ここで給与と相当の対価の法的な性質の違いという議論が出ましたが、そこの理論的問題を横に置けば、構わないと思います。それが企業の制度として合理的に運営されて、そしてプロセスが踏まれていれば、全然構わないと思います。それはそれぞれの企業のやり方なので、それを尊重しながら、しかし、プロセスは大事にしましょうということです。

委員

今の後半の話は私は非常に賛成ですが、ただ、今のご提案は、個々の発明について評価をするということになっているんですね。そうしますと、なぜそれが問題かというと、3番の判例をみますと、基本的には特定の発明について相当の対価を出すことになっているために、企業が例えば失敗したときに損失を負担したということは全く考慮に入れないわけですね。どうしてそうなってしまうかというと、個別の発明ごとで紛争が起きた事例について相当の対価を求めることになっているからだと思います。
そうではなくて、3番目が決定された定めが不合理ではないかというのであれば、これはもちろん給与と一緒に評価もできますし、私は非常にリーズナブルだと思います。今のままですと、個々の対価額が不合理かどうかを3番目で司法審査し得るとなっているわけですが、それと、報酬規程が給与等を含めてアザーホール妥当かどうかという評価であれば、それはそのための労働法の今までの紛争事例の延長でも評価できるのだと思いますし、そういう方向であれば、非常に大幅に改善されるのではないかと思います。

委員

本件が司法審査に服さないという議論は全くなくて、それは当たり前だと思います。どうせ服すのですから、③なんてなくたっていいだろうということで、こういうものがあると余計な紛争がたくさん出てくるから、かえって不都合ではないかと、こういうふうにいいたかったわけでございます。

委員

私も全く同じ意味で申し上げているので、私が発言するたびに、司法審査は必要なのだとわかったようなことを注釈でいつもいただいているのですが、何もなくても、それがあるなら、あえてここに訴えを起こすような原因を書かなくてもいいじゃないですか、ということを申し上げているのです。
それから、日本は給与に含まれていないとおっしゃっていますけれど、先ほどおっしゃったように、問題は、トータルとしての処遇の問題で不満が出るのだと思います。処遇という広い意味で考えれば、昇進昇格も入っているわけですよ。これは広い意味では給与に還元されているはずですね。ですから、日本の制度では給与が入っていないと否定されていますけれど、私は広い意味では入れていると思っているんです。それはこの発明の給与分は幾らですなんて契約は一々やっていないと思いますが、運用の中で、昇進昇給という中で処遇されているはずなんです。ですから、トータルとしての処遇というのが一番大事なのであって、この発明1個1個の規定をガチガチやっても解決できないというのは、おっしゃるとおりだと私も思います。

事務局

3.の③について両論出ておりますが、事務局としては、基本的には1.と2.と3.が総合的に判断されて、1.と2.がきちんとなされていれば、3.というのはほとんど基本的には問題ない、極めて例外的なケースであろうとは考えております。ただ、それについては、この③の言い回しの問題だと思いますので、事務局の方で調整して、再度、皆様にお諮りをさせていただきたいと思います。
時間ももう余りありませんので、済みませんが、3.の(1)と(2)は置かせていただいて、(3)の第4項の取り扱いと、4.の外国のところ、ここも含めて皆さんのご意見をいただきたいと思います。

委員長

それでは、3.につきましては、今、事務局からご説明がありましたように、主に③の評価をめぐって意見がはっきり分かれておりますので、事務局の方で少し議論を整理していただいて、また次回に議論を続けていただくということで、きょうは、作業の都合上、論点はすべて一応カバーしておきたいと思いますので、3.の議論は引き続き行うということを前提にして、4.と5.について少しご意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。

委員

外国の特許権の取り扱いについて、先ほど、第35条の中で対価の対象にはするというご説明がありましたが、承継の方は規定できないだろうというご説明なのですけれど、本当にこれが規定できないということであると、恐らく別個に承継は契約でやるということをおっしゃっているのだろうと思います。企業にとって対応の外国の特許も非常に大事であることは変わりございませんので、トータルとしておさまらないのだったら、全部契約でやっても変わらないということになってしまうのではないかと思います。その辺を本当に規定できないのかどうかというのをはっきり教えていただきたいなと思います。
それが先ほどいいました最終的に選択肢のどっちを選んだらいいのかなということにも関係してくるのではないかと思っていますので、対価が規定できるなら承継も規定できるのではないかという気がするのですが、なぜこれができないのかなというところなのですけれど。

事務局

まず、承継というものも必ずしも単純ではないのかもしれませんが、基本的にそれ自体は、各国によってそのあり方というものが定められている、比較的合法的なものではないかと思っております。特に特許権はそうですし、我が国においても承継するためには登録が必要になるということで、それが効力発生要件になっているわけです。したがって、国内の契約で承継自体の効果、各国における特許を受ける権利ないしはその特許権、実施権というものの効果までを担保する、そこまでの射程をもたせるということは法制度上無理であろうと。
他方、それでは、国内で行った契約というのは何の意味もないのかということになると、多分それはそうではなくて、各国で権利を承継すべく使用者と従業者がお互いに協力する、そういうことを他方に請求する、そういう権利義務というのはあるのではないかとも考えられると思いますし、対価というのは、外国で権利がとれるということを一種の条件にするような、そういう条件をもとに支払うということになるのではないか。
他方、対価の定めというのは、使用者と従業者の間の一種の利益の分配のための規定でございますので、やはり私法的な色彩がかなり強いと思いますし、契約であれば、法例第7条で日本法が準拠法となって、あるいはその準拠法の定めは労働契約というように法性決定されるということになりますと、第35条が従業者保護という趣旨は当然色濃いわけでございますので、それが重畳的に適用されるということにもなろうかなと思っております。
したがいまして、例えば、すべて契約にゆだねるというのは、恐らく第35条を取っ払って、それとの対比でおっしゃられているのかなとも思いますが、外国特許も含めて、1本の契約で行うということ自体あり得ないということではなくて、その効力が各国において承継自体がどのように認められるかということまでは射程としては及ばないというだけの話であって、他方、特許を受ける権利などになりますと必ずしも要式行為でもないので、外国でも争われないということにもなるでしょうし、対価の定めについても、特に日本では有効だけれど、外国では有効でないという、そういう争点が生じない限り、基本的にそれについては問題なく日本の裁判所の司法審査が及ぶのではないかとも考えています。
したがって、ある意味では、1本の契約で日本の特許権も外国の特許権も同時に処理するということ自身を否定することではないと思っています。ただ、その射程が、承継というところまで、公法的な効力まで及ぼすということは不可能だろうという趣旨です。

委員

今のご説明で、承継が第35条で規定できなくても対価が決められるというのが、ちょっと理解できないんです。承継がどこかで保証されていないと、承継もしていないのに対価を払うというのはちょっとおかしいと思うので、その辺の関係がちょっと理解できないんです。

委員

短期消滅時効をすぐにあきらめてしまっていますけれど、これはもう少し考えてもらいたいなという気がいたします。対価はずっと発生してしまいますから、結局、特許が切れるまで待って、それからまた10年というのは、私は実務者からみると非常に煩わしいというか、大変である。5年とか3年とか、何とかならないでしょうかという気がいたします。

委員長

今のは5.に関することですね。

委員

はい。

委員長

それでは、時間もありませんので、4.と5.の両方についてご意見を伺いたいと思います。

委員

そもそも第35条規定の適用ができるのは、日本で生まれた発明に対してできるのか、日本法人に帰属の従業員にできるのか、あるいはその組み合わせなのかの疑問であります。というのは、外国で契約して日本法人に帰属させている人もいますし、外国の研究所に出向している人もいるわけです。また、外国へ先に出願し日本にもってくるのもあれば、いろいろあるわけです。そもそも日本特許にのみ適用できるのか、一体何に対してこれが適用できるのかで、大分後のシナリオが変わってまいりますので、ぜひご検討いただければと思います。

事務局

確かにそれは制度上の設計の問題なのかもしれませんが、基本的には、日本国において雇用契約を結んで、通常、勤務地を日本とする、そういう発明に適用されるというのが一番素直な立法論かなと思っております。したがって、外国に一時期、例えば出向のような形で行かれている従業員の方がなさった発明というのは、第35条の適用があるし、逆にいうと、外国で行われた発明が日本に出願されて、日本で特許になっているというものについては、第35条の適用がないというのが、第35条の従業者保護という規定の趣旨からすると、一番素直な政策論としてはあるような気がいたしております。
それから、消滅時効に関しましては、例えば、一括払いの原則ということでお考えになるということになれば、それは少なくとも特許権が消滅してから10年間ということにはならないとは思いますが、ただ、起算点を固定すること自体は無理だと思いますので、あとは短期消滅時効ということで、世の中のある意味では合意がとりつけられるということであれば、それはそれで考慮の余地はあるのかなと思っております。
それから、最後にさきほど委員がおっしゃられた点ですが、確かに承継が認められていないのになぜ金だけ払わなければいけないのかというのは、全くごもっともなご意見だとは思いますが、ただ、実際問題、特許を受ける権利を包括事前承継されるというケースがほとんどだと思いますし、それについては、特殊な国は別として、それ自体、特に各国において履践すべき様式があるわけでも恐らくないと思いますので、そういうことでいえば、通常、契約でもって効力が外国でそのまま認められるということも当然あり得ると思います。
それから、対価を支払うといっても、それは外国において特許がとれるということを条件にして、それでその対価を払うということに恐らくなるわけですし、実際、外国で有効になっているのかなっていないのか、あるいは許可がとれるのかとれないのかということは、当該外国法に照らして判断しないと、これは判断できないと申し上げているだけであって、したがって、それはある意味では停止条件のようなものになるのかなと思うのですが、とりあえずそういう契約で承継の問題もある意味ではセットで理解することは不可能ではないのではないかと思っております。

委員

今のご説明ですと、基本的には第35条で承継も外国も含めますよと。ただ、具体的なその対抗要件とか成立要件とか、それぞれの国の手続があるので、その手続は踏む必要がありますよと。そういうご説明と理解してよろしいのですか。
そうすると、日本の法律としては、まず承継は認めましょうと。ただ、それを実行するのに必要なステップはそれぞれの国の法律に従ってやってくださいと。そういうところまでちゃんとわかるように書いていただけると理解してよろしいでしょうか。

事務局

最後の点は私どもは勉強させていただきますけれど、おっしゃられたご趣旨はそのとおりだと思います。公法的なところはそれぞれの国によって履践していただかないとどうにもならない。ただ、国内の契約で、従業者と使用者で契約したもの、勤務規則については契約とほぼ同視できると思いますが、契約で定められたものに従って、例えば、ある国においては従業者が出願しなければいけないということになっているとすると、それはそういう協力義務が発生するということは理解できると思いますし、仮にある国では特許がとれなかった、あるいは無効になったということになると、それは事後、別途また司法的な手続で調整する。不当利得ですとか、そういうことは十分可能だと思います。

委員

海外特許の取扱い、あるいは日本人の発明かどうかという問題を議論しているわけですが、企業の実態というのははるかにそれを超えたところで活動しています。先ほど、日本から海外に出向した人が発明を成して日本国に出願したときは、特許法第35条の適用を受けると発言されました。では、例えば日本人の出向者を受け入れるアメリカの企業が、発明規程なり対価規定なりをつくる必要があるかといいますと、アメリカ法というのは対価に対する規定が何もないですから、会社としてはつくる必要がないと判断します。
そうすると、100%インセンティブを目的として、何らかの発明対価制度を策定することは出来ますが、日本の特許法第35条をベースに作ることは非常に難しいと思います。というのは、アメリカの会社の中で日本人の従業員に対しては特許法35条を適用し、他方、アメリカの従業員に対しては別の発明対価制度を適用することになります。これではとんでもない二重構造の規程ができてしまいます。このような視点も入れて議論をしていただかないと、企業としては困り果ててしまいます。

委員

もともと今の問題が起きてきたのは、東京地裁の日立事件の判決が契機だと思いますが、これに対応する規定を設けるとしたら、基本的には事務局のいわれたようなことになるでしょうし、それをさらにきめ細かく決める方法はあり得るとは思いますが、果たして本当にこういう規定を設けるのがいいのかどうかというのは、企業側はどう考えているのかというのをむしろ私は聞きたいと思います。
日立の判決というのはまだ東京地裁の一次判決の段階ですから、今後どうなっていくかということはわかりませんけれど、この問題はむしろ第35条に規定を置かないで、企業がそれぞれの企業の考えで対応するのがいいのか、一定のルールを法律でつくる方がいいのか、ということについてまず意見を聞きたいと思いますし、その上で、それでは規定をつくるとしたらどうするかとなると、結局、事務局がいわれたようなことを基本に考えざるを得ない。
企業によって違うかもしれませんけれど、私が時々聞く企業の対応としては、外国特許については全然対価を払っていないとか、あるいは非常に低い額しか払わないというところが結構あると思います。こういう規定を設けてしまうとそれこそ日本特許の相当の対価と同じことになるわけで、その辺の扱いも含めて、これは企業側のニーズから出てきたのだと私は理解していますが、本当にそういう規定を設けるのがいいのかどうかというのは、このような問題を踏まえた上で、決めてかからなければならないのではないか。
それから、消滅時効の問題については、確かに特許期間との関係からするとかなり長くなるのですが、債権の消滅時効と異なる消滅時効をここで決めるということが果たして合理性をもつかどうかということになってきますと、それはこの第35条がもともと従業者保護を考えて設けられた規定だということからすると、難しいところがあるのではないかと私は思います。

委員

時間がありませんので、手短に申します。これは前回と同じでございますが、国際私法上の問題と実質法上の問題をもう1度整理していただいたらと思います。事務局の議論は、日本法を契約準拠法とした場合の議論だろうとは思いますが。

委員

時効の点ですけれど、私も初めは設けた方がいいと思っていたのですが、この起算点をどうするかということを考えますと、非常に難しいですね。特に無効審判が出ていたとかということになりますと、事実上、とても時効進行とはいえないような例が考えられますので、やはり発明者の保護の立場からすると、簡単に消滅時効は設けるべきではないと思います。
もう1つ、第35条第4項ですが、今までは発明の段階の費用とか貢献度を考えていたのですけれど、ここでは実施の段階のことを考えていて、これは結構だと思うのですが、これだけではなく、先ほどから出ていますアザーホールの考え方で、これは対価というものをどのように考えるかということにもよりますが、給与の一部にした場合もそうですけれど、そういったほかの要素も考慮できるような、もう少し考慮していい要素をふやしていただいた方がよろしいのではないかと思います。

委員

委員の質問に答えておいた方が時間のためになるんじゃないかと思って申し上げますが、間違っていたら企業の方は指摘していただきたいと思うのですけれど、私はまず前提としては日本の国に法人がある従業員の発明ということを前提に考えますが、その発明をベースにして日本で特許をとる、外国で特許をとる、これは承継はやはりはっきりさせたいという気持ちがあると思います。ですから、その点は変わらないだろうと。承継は不安定でもいいと思っている企業はまずないだろうと思います。
第2点の問題は、今、国際交流が非常に盛んですから、日本にいるときは日本の法律でいいのですが、外国に行って発明して、それを日本に出した場合に日本の法律に従いなさいという強行規定にしてしまうと、恐らくいろいろな問題が起こるでしょう、というのはそのとおりだと思います。
現に今でも、アメリカの大学に出向などしていた場合には、アメリカのルールに従いなさいという契約をとられてしまうんです。そうすると、これは国内の職務発明でどうのこうのといっても、その人自身がアメリカの大学の規制に従って発明を全部大学に上げなければいけないということを強行に契約せざるを得ないんです。そんな事情もいろいろありますし、企業同士の連携もいろいろあるので、外国でやったことまで日本の法律で規定するのはどうかなという感じがします。
ただ、私が申し上げたいのは、企業はそう思っているのですが、学者さんなり法学者の方が「こうすればいいよ」とはっきりいってくれないところに問題があるのではないかと思います。「こうしようと思っても不安定だよ、承継が危ないよ」といってくれているだけで、最後にいわれるのは、「法的救済は必要だよ」と、それだけはおっしゃるのですが(笑声)。この辺は皮肉でも何でもなく、そういう実現できるようなご提案をいただけたらとつくづく思っております。

委員長

ありがとうございました。予定の時間を大分過ぎましたけれど、まだ論点が幾つか残っておりますので、最初の予定では8月1日に中間報告をまとめるということにしておりましたけれど、あるいはもう1回、臨時でこの小委員会を開催することが必要になるかとも考えておりますので、後で事務局から日程の調整などもしていただきたいと思います。
最後に確認しておきますが、きょう、5点にまとめて提案したうち、1.と2.につきましては、基本的にこの案でよろしいということであったと思います。それから、3.につきましては、主に③をめぐりまして、ラストリゾルトとしてこういうものが必要か、あるいはむしろあると不安定性が増すと、そういう両方のご意見があったかと思います。また、個々の特許についての評価をするのかしないのか、全体としてみた方がいいのかということについてもいろいろなご意見があったと思います。
それから、外国特許につきましては、対価については特に第35条をかぶせるということについて異論はなかったかと思いますが、承継をめぐっていろいろとご指摘をいただきました。
それから、対価請求権につきましては、そんなにあっさりあきらめていいのかというご意見が幾つかあったかと思いますが、それでよろしいでしょうか。

委員

第35条を外国の特許を受ける権利に適用する部分について、議論の整理ができていないと思いますので、その点については留保しておいた方がいいのではないかと思います。

委員長

わかりました。それでは、4.の①の対価の問題についても、ご指摘のように余り議論がなかったと思いますので、これも次回にご議論いただくということで残しておきたいと思います。
それでは、本日の委員会をこの辺で終わりたいと思いますが、事務局から次回のスケジュール等について何かご報告があれば、お願いいたしたいと思います。

事務局

本日は、活発なご議論をありがとうございました。正直なところ、8月1日には案をまとめられるというところまで詰められるかなと思ったのですが、なかなかそこまで行きませんで、申しわけございませんでした。
今のところ事務局として念頭に置いておりますのは、8月1日までにもう1回、きょうの議論を踏まえて整理をさせていただければと思っておりますが、7月22日の週でスケジュール調整をさせていただければと考えております。また、事務局の方から皆様のスケジュールをお伺いさせていただいて、早急にご連絡を差し上げたいと思います。
それから、きょうの資料の資料4「特許戦略計画」につきましては、前回の皆様のご意見等を踏まえまして、本日、特許庁として最終案をとりまとめましたものでございます。後ほどごらんになっていただければと思います。

委員長

それでは、大変活発なご意見をいただきまして、ありがとうございました。以上をもちまして、第11回特許制度小委員会を閉会させていただきます。長時間、ありがとうございました。

――了――

[更新日 2003年10月21日]

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