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北米自由貿易協定 5

 第6部 知的財産

 第17章 知的財産

 第1701条 義務の性質及び範囲

  1.  各当事国はその領域内において他の当事国の国民に対して知的財産権の適切かつ効果的な保護と執行を提供する一方で,知的財産権を執行する手段自体は合法的な貿易の障壁とならないことを保証する。
  2.  知的財産権の適切かつ効果的な保護と執行を提供するために,各当事国は,最低限本章と次の実体規定に効力を与えるものとする。
    • (a) レコードの無許可複製からのレコード制作者の保護に関する1971年ジュネーヴ条約(ジュネーヴ条約)
    • (b) 文学的及び美術的著作物の保護に関する1971年ベルヌ条約(ベルヌ条約)
    • (c) 産業財産の保護に関する1967年パリ条約(パリ条約),及び
    • (d) 植物新品種の保護に関する1978年国際条約(UPOV条約)又は新品種植物の保護のための1991年国際条約(UPOV条約)
      当事国が,本協定の発効日以前にこれらの条約の明細文に同意していない場合は,同意するためのあらゆる努力をしなければならない。
  3. 附則1701.3は,その附則で特定した当事国に適用される。

 第1702条 より拡大された適用

当事国は,その国内法において本協定で要求されているよりも拡大された知的財産権の保護を履行することができる。ただし,その保護は本協定に符合しないものであってはならない。

 第1703条 内国民待遇

  1. 各当事国は,知的財産権の保護と執行に関して,自国民に与えているよりも不利とならない待遇を他の当事国の国民に対して与えるものとする。録音に関して,各当事国は,他の当事国の制作者及び実演家に対して内国民待遇を与えなければならない。ただし,当事国が録音の二次的使用に関して他の当事国の実演家の権利を他の当事国の領域でその国民が与えられている権利に限定することができる場合を除く。
  2. 如何なる当事国も,本条に基づいて内国民待遇を与える条件として,著作権及び関連する権利に関して権利を取得するために何らかの方式又は条件に従うことを要求してはならない。
  3. 当事国は,知的財産権の保護又は執行のための司法的及び行政的手続(他の当事国の国民に訴状送達のために当事国の領域内に住所を指定したり又は当事国の領域内で代理人を任命したりすることを要求する手続を含む。)に関連して1.の義務を免除することができる。ただし,その免除は第1701条2.で列挙された関連条約と適合していなければならず,また,次のとおりでなければならない。
    • (a) 本章と矛盾しない手段に適合することを確保するために必要であること,及び
    • (b) 貿易に対する偽装制限を構成するような形で適用されないこと
  4. 如何なる当事国も,世界知的財産機関の賛助を得て締結された多国間協定で知的財産権の取得又は維持について定められた手続に関しては,本条に基づく何らの義務も負わない。

 第1704条 濫用的又は反競争的な慣行又は条件の規制

本章で述べたことは,当事国が関連市場における競争に悪影響をもたらす虞のある知的財産権の濫用を構成する実施許諾慣行又は条件をその国内法で特定することを妨げるものではない。当事国は,本協定の他の規定に適合して,上記のような慣行又は条件を防止又は規制するための適切な手段を採用又は維持することができる。

 第1705条 著作権

  1. 各当事国は,ベルヌ条約第2条に該当する作品(その条約の意味の範囲において独創性の表現を含んだ作品を含む。)を保護しなければならない。特に,
    • (a) あらゆるタイプのコンピュータ・プログラムはベルヌ条約の意味の範囲において文学作品であり,各当事国はそれをその形で保護する。及び
    • (b) 機械で読み取り可能であるか他の形態であるかを問わず,その内容の選択又は配列の理由によって知的創作を構成するデータ又は他の素材の編集はその形で保護する。
      当事国が(b)で与える保護は,データ又は素材そのものには及ばず,そのデータ又は素材に存在している著作権を無効とするものではない。
  2. 各当事国は,著者及びその権益の承継者に1.に該当する作品に関するベルヌ条約で示された権利を与えるものとする。この権利には次の権限を与え又は禁止することを含む。
    • (a) 当事国の領域に権利所有者による許諾なくして制作された作品の複製を輸入すること
    • (b) 販売,貸与又はその他の方法による原作品及び各複製の最初の一般への頒布
    • (c) 作品の一般への伝達,及び
    • (d) コンピュータ・プログラムの原作品又は複製の商業的貸与
      (d)はコンピュータ・プログラムの複製がそれ自体貸与の本質的な対象でない場合は適用されない。各当事国は,権利所有者の同意を得てコンピュータ・プログラムの原作品又は複製を市場に出すことは貸与権を妨げるものではないことを規定するものとする。
  3. 各当事国は,著作権及び関連の権利について次の事項を規定するものとする。
    • (a) 経済的権利を取得又は所有する者は,譲受人によるその権利の利用及び享受を目的とする契約でその権利を自由にかつ個別に譲渡することができる。
    • (b) 作品の創作及び録音のもととなっている雇用契約を含む契約によって経済的権利を取得又は所有する者は,自らの氏名でその権利を行使しその権利から生じる利益を完全に享受することができる。
  4. 各当事国は,写真作品又は応用芸術の作品以外の作品の保護の期間が自然人の生存期間以外を根拠として計算される場合は,その期間はその作品の最初の許諾を得た公開の暦年の最後から50年,また,作品の制作から50年以内にそのような許諾を得た公開がない場合は,制作の暦年の最後から50年を下回らないものとする。
  5. 各当事国は,本条で定められた権利に対する限定又は例外を,作品の通常の使用に矛盾せず権利所有者の合法的権益を不合理に侵害しないようなある種の特別の場合のみに限定するものとする。
  6. 如何なる当事国も,その当事国の取る手段によって作り出される障害がない場合は,その当事国の領域でのその作品の複製又は翻訳の合法的必要性が権利の所有者の自発的な行為によって満たされるようになっている場合,ベルヌ条約の附属書に基づいて認められる翻訳及び複製の使用許諾を与えてはならない。
  7. 附則1705.7はその附則で示された当事国に適用される。

 第1706条 録音

  1. 各当事国は,録音の制作者に次の権限を与える又は禁止する権利を与える。
    • (a) 録音の直接又は間接複製
    • (b) 制作者からの許諾なしに作成された録音の複製をその当事国の領域に輸入すること
    • (c) 販売,貸与又はその他の方法による録音の原作品及び各複製の最初の一般への頒布
    • (d) 録音の原作品又は複製の商業貸与。ただし,録音の制作者とそこで使われた作品の著者との間の契約で明示的に他の定めがある場合を除く。
      各当事国は,権利所有者の同意を得て録音の原作品又は複製を市場に出すことは貸与権を妨げるものではないことを定めるものとする。
  2. 各当事国は,録音完了の暦年の終わりから少なくとも50年の録音の保護の期間を定めるものとする。
  3. 各当事国は,本条で定められた権利に対する限定又は例外を,録音の通常の使用に矛盾せず権利所有者の合法的権益を不合理に侵害しないようなある種の特別の場合のみに限定するものとする。

 第1707条 暗号化された番組伝送衛星信号の保護

本協定の発効日から1年以内に各当事国は次の事項を行う。

  • (a) 番組伝送衛星信号の解読の支援を主に行う機器又はシステムを,その信号の合法的な送信者からの許諾なしに製造,輸入,販売,リース又は他の方法での利用を行うことを刑事処分の対象とする。
  • (b) 商業活動に関連して,信号の合法的な送信者からの許諾なしに暗号解読された番組伝送衛星信号を受信又は配信したり,(a)で禁止された活動に従事したりすることに民事上の責任を負わせる。

各当事国は,(b)で定めた民事責任がその信号の内容に利害を有する如何なる者によっても起訴できることを定めるものとする。

 第1708条 商標

  1. 本協定の適用上,商標は,ある者の商品又はサービスを他の者の商品又はサービスと区別することのできる標識,標識の組合せ(人名,意匠,文字,数字,色,図形要素又は商品やその包装の形態を含む。)からなる。商標は,サービスマーク及び団体標章を含むものとし,証明標章を含むことができる。当事国は,登録の条件として標識が視覚的に認識できることを要求することができる。
  2. 各当事国は,登録商標の所有者に対してその所有者の同意なくして如何なる者にもその所有者の商標が登録されている分野に関連する商品又はサービスと同一又は類似の商品又はサービスに同一又は類似の標識を商用で使用させない(その使用が混同の虞を生じる場合)権利を与えるものとする。同一の商品又はサービスに同一の標識を使用する場合は,混同の虞が推定されるものとする。上記で示した権利は既得権を侵害するものではなく,当事国が使用に基づく権利を認める可能性に影響を与えるものではない。
  3. 当事国は,登録できるか否かを使用の有無に委ねることができる。しかしながら,商標の実際の使用を登録出願をするための条件としてはならない。如何なる当事国も,登録の出願日から3年間の満了前に意図された使用が行われなかったことのみに基づいて出願を拒絶してはならない。
  4. 各当事国は,次の事項を含む商標の登録のためのシステムを規定する。
    • (a) 出願(内容)の審査
    • (b) 出願人になすべき商標登録の拒絶の理由の通知
    • (c) 出願人が通知に対して回答する合理的機会
    • (d) 登録前又は登録後速やかに行われる各商標の公告,及び
    • (e) 利害関係人が商標登録の取消の申立を行う合理的機会
      当事国は,利害関係人に商標登録に異議申立する合理的機会を与えることができる。
  5. 商標の出願の対象である商品又はサービスの性質は,如何なる場合にも商標登録の障害とはならない。
  6. パリ条約第6条の2は,サービスに対して準用される。商標が著名であるか否かを判定するにあたって,当事国の領域内で商標の普及の結果として得られた知識を含む関連区域における公衆の商標の知識が考慮される。如何なる当事国も,商標の評判が関連商品又はサービスを通常扱っている公衆の区域を越えて広がることを要求してはならない。
  7. 各当事国は,商標の最初の登録は少なくとも10年間であり登録は更新のための条件が満たされた場合は,10年を下回らない期間で無期限に更新可能であることを定めるものとする。
  8. 各当事国は,登録の維持のために商標の使用を要求するものとする。使用に対する障害の存在に基づく正当な理由が商標の所有者によって示されない限り,登録は,少なくとも2年間の継続する不使用の後にのみ不使用を理由として取り消すことができる。各当事国は,商標によって表示される商品又はサービスに対する輸入制限又はその他の政府による要求のような,商標の使用に対する障害を構成し商標所有者の意思とは関係なく発生する状況を不使用の正当な理由として認識するものとする。
  9. 各当事国は,商標所有者以外の者による商標の使用が所有者の管理下にある場合は,その使用を登録維持の目的のための商標の使用と認識するものとする。
  10. 如何なる当事国も,原産地表示又は他の商標との併用のように,商標の機能を減じる使用法のような特殊な要件によって商用に商標を使用することを妨げてはならない。
  11. 当事国は,商標の使用許諾及び譲渡の条件を決めることができるが,商標の強制使用許諾は許されず,また,登録商標の所有者は商標が属している事業の移転を伴って又は伴わずにその商標を譲渡する権利を有していることを理解しておかなければならない。
  12. 当事国は,記述上の用語の公正使用のように商標によって与えられた権利に対して限定的な例外を定めることができる。ただし,その例外は商標所有者及び他の者の合法的利害を考慮に入れるものとする。
  13. 各当事国は,商標が使われる商品又はサービス若しくは商品又はサービスの種類を少なくとも英語,フランス語又はスペイン語で一般的に指定する言葉の商標としての登録を禁止するものとする。
  14. 各当事国は,不道徳な,詐欺的な又は中傷的な事柄,若しくは人(生きているか死んでいるかを問わず),組織,信念,当事国の国家としての象徴を非難し虚偽にそれらとの関連を示したりそれらに恥辱を与えたり評判を落とすような事柄からなるか又はそれを含む商標を登録することを拒絶するものとする。

 第1709条 特許

  1. 2.及び3.に従うことを条件として,各当事国は,製品であるか方法であるかに拘らず技術のあらゆる分野における発明に対して特許の取得を可能とするものとする。ただし,その発明は新規であり,進歩性の結果であり,産業上利用可能なものでなければならない。本条の適用上,当事国は,「進歩性」及び「産業上利用可能である」という用語をそれぞれ「自明でない」及び「有用である」という用語と同義にみなすことができる。
  2. 当事国は,その領域内で発明の商業的利用をさせないことが公序良俗を保護する(人間,動物,植物の生命や健康を守り,自然又は環境への重大な害を避けることを含む。)のに必要である場合は,発明から特許取得可能性を排除することができる。ただし,その排除は,当事国がその領域内で特許の対象を商業的に利用することを禁止することのみを根拠にして行ってはならない。
  3. 当事国は,次のものから特許取得可能性を排除することもできる。
    • (a) 人間又は動物の処置のための診断的,治療的,及び外科的な手段
    • (b) 微生物以外の動植物
    • (c) 動植物の生産のための本質的に生物学的な方法(その生産のための非生物学的及び微生物学的方法を除く。)
    • (b)にも拘らず,各当事国は,特許,特殊な保護の効果的手段又はその両方を使って植物品種の保護を提供するものとする。
  4. 当事国が,
    • (a) 微生物学的方法によって準備又は生産され若しくは実質的にそこから発生してきておりかつ食物又は薬品のためであることを意図していた自然発生物質に関連する対象事項に関しては1992年1月1日現在において,及び
    • (b) 他のあらゆる対象事項に関しては1991年7月1日現在において,
      1.に相応する医薬品又は農薬に対する製品特許保護を取得可能にしていない場合は,その当事国は,本項に基づき保護を与える当事国においてその製品が市場に出されておらずまたその保護を求める者が適時に要求を行う限りにおいては,他の当事国で付与されているその製品の特許の未了期間においてその製品の製品特許保護を取得する手段をその製品の発明者又はその譲受人に対して提供するものとする。
  5. 各当事国は,次の事項を定めるものとする。
    • (a) 特許対象が製品である場合は,その特許は特許所有者に対して,他の者が特許所有者の同意なくして特許対象の製造,使用,販売を行うことを防止する権利を与えるものとする。及び
    • (b) 特許対象が方法である場合は,その特許は特許所有者に対して,他の者が特許所有者の同意なくしてその方法を使用し少なくともその方法から直接得られた製品の使用,販売,輸入を行うことを防止する権利を与えるものとする。
  6. 各当事国は,特許によって与えられた排他的権利に限定された例外を定めることができる。ただし,この例外はその特許の通常の利用と不合理に抵触してはならず,他の者の合法的権益を考慮に入れても特許所有者の合法的権益を不合理に害するものであってはならない。
  7. 2.及び3.に従うことを条件として,また技術の分野,発明のなされた当事国の領域及び製品が輸入されたか現地生産されたかに拘らず,特許は取得可能であり特許権は享受することができる。
  8. 当事国は,
    • (a) 特許の付与の拒絶を正当化できる根拠の存在する場合,又は
    • (b) 強制実施権の付与が特許の不実施を救済していない場合,
      においてのみ特許の取消を行うことができる。
  9. 各当事国は,特許所有者が承継によってその特許を譲渡及び移転し実施許諾契約を締結することを認めるものとする。
  10. 当事国の法律で,6.で許された使用以外に,権利所有者の許諾なしの特許対象の使用を認めている(政府による又は政府に許諾された他の者による使用を含む。)場合は,当事国は次の規定を尊重するものとする。
    • (a) この使用の許諾は個々の価値をもとに考慮される。
    • (b) この使用は,使用前に予定される使用者が合理的な商業的条件で権利所有者から許諾を得るべく努力したがその努力が合理的な期間内に成功しなかった場合にのみ許諾される。その努力をする要求は,国家緊急時又はその他の極度に緊急な状況のとき若しくは公的な非商業的使用の場合は,当事国によって放棄することができる。それにも拘らず,国家緊急時又はその他の極度に緊急な状況のときには,権利所有者は合理的に実行可能な範囲でできる限り早く通知を受けるものとする。公的な非商業的使用であって,政府又は契約者が特許調査をしないでも有効な特許が政府によって又は政府のために使用されているかこれから使用されるかを知っているか又は知っているべき明らかな根拠がある場合は,権利所有者は速やかに通知を受けるものとする。
    • (c) この使用の範囲と期間は,それが許諾されている目的に限定されるものとする。
    • (d) この使用は非排他的であるものとする。
    • (e) この使用は,その使用で恩恵を受けている事業又は営業権の該当部分と一緒でなければ譲渡することができないものとする。
    • (f) この使用は専ら当事国の国内市場の供給のために許諾されるものとする。
    • (g) この使用の許諾は,許諾に至った状況が消滅し,再発の見込みがない場合は,そうして許諾された者の合法的利益が適切な保護を受けることを条件として,終了するものとする。権限ある当局は,動機付けされた要求に応じて,その状況が継続して存在することを調査する権限を有する。
    • (h) 権利所有者は,各場合において許諾の経済的価値を考慮に入れた適切な報酬を支払われるものとする。
    • (i) 許諾に関連する決定の法的有効性は,別個の上級機関による司法的又はその他の独立した検討に委ねられる。
    • (j) この使用に関連して与えられる報酬についての決定は,別個の上級機関による司法的又はその他の独立した検討に委ねられる。
    • (k) 当事国は,その使用が司法的又は行政的手続の後に反競争的であると決定された慣行を救済するために許諾された場合においては,(b)及び(f)で示した条件を適用する義務はない。 反競争的慣行を是正する必要性は各場合での課徴金額を決定するのに考慮に入れることができる。権限ある当局は,許諾に至る状況が再発する可能性が高い場合は,許諾の終了を拒否する権限を有するものとする。
    • (l) 当事国は,反競争的慣行に関する国内法違反の判決に対する救済の場合を除いて,特許対象の使用に他の特許の利用の権限を与えてはならない。
  11. 特許対象が製品を得るための方法である場合は,各当事国は,如何なる侵害訴訟においても,侵害を主張されている製品が次のうちの1の状況下において特許を取得している方法以外の方法によって製造されたことを証明する責任を被告に負わせるものとする。
    • (a) その特許を取得している方法によって取得される製品が新規であるか。又は
    • (b) 侵害を主張されている製品がその方法によって製造されており,特許所有者は合理的な努力をしても実際に使用された方法を決定することができないというかなりの可能性が存在する。
      証拠の収集及び評価において,トレードシークレットを保護する被告の合法的権益は考慮に入れられなければならない。
  12. 各当事国は,出願日から少なくとも20年間,又は付与日から17年間の特許保護の期間を与えるものとする。当事国は,しかるべき場合には,通常の承認手続から発生した遅延を補填するために特許保護の期間を延長することができる。

 第1710条 半導体集積回路の配置設計

  1. 各当事国は,1989年5月26日付で署名のために開放されている集積回路に関する知的財産権条約第2条から第7条まで,第12条及び第16条(3)(第6条(3)を除く。)に従って集積回路の配置設計(トポグラフィー)(以下「配置設計」という。)を保護するものとする。
  2. 3.に従うことを条件に,各当事国は,あらゆる者にとって権利所有者の許諾なく次のものを商業目的で輸入し販売し又はその他の方法で頒布することを違法とするものとする。
    • (a) 保護された配置設計
    • (b) 保護された配置設計が組み込まれた集積回路,又は
    • (c) 違法に複製された配置設計を引き続いて含む限りにおいてのみ,その集積回路を組み込んだ物品
  3. 2.に示した行為を行った又は行うよう命じた者が,違法に複製された配置設計を組み込んだ集積回路又は当該集積回路を組み込んだ物品を取得した時に,当該集積回路又は当該物品が違法に複製された配置設計を組み込んでいることを知らず,また知っているべき合理的理由がない場合は,当該集積回路又は当該物品に関して行われた行為は,どの当事国も違法とすることはできない。
  4. 各当事国は,3.で示した者が配置設計が違法に複製されたという十分な通知を受け取った後で,その者が手元にあるか又はその通知の前に注文された在庫に関しては如何なる行為を行ってもよいが,正しい権利者に対してその行為を行うことに関してその配置設計に関して自由に交渉された使用許諾に基づき支払うべき合理的な使用料に相当する金額を支払う義務を負う旨を定めるものとする。
  5. 如何なる当事国も,集積回路の配置設計の強制使用許諾を認めてはならない。
  6. 配置設計の保護の条件として登録を要求する当事国は,保護の期間は次の行為の日から数えて10年の期間が終了する前に終了してはならない旨を定めるものとする。
    • (a) 登録の出願の申請,又は
    • (b) 世界中のどこで発生しようともその配置設計の最初の商業的利用
  7. 配置設計の保護の条件として当事国が登録を要求しない場合は,その当事国は,世界中のどこで発生しようともその配置設計の最初の商業的利用の日から10年を下回らない保護の期間を定めるものとする。
  8. 6.及び7.にも拘らず,当事国は保護が配置設計の創作後15年の経過をもって消滅する旨を定めることができる。
  9. 附則1710.9はその附則に定めた当事国に適用される。

 第1711条 トレードシークレット

  1. 各当事国は,次に該当する限り,情報を合法的に管理している者の同意なく公正な商慣習に反する方法で他の者がそのトレードシークレットを開示し取得し又は使用することを防ぐための法的手段を定めるものとする。
    • (a) 全体として又はその部分の正確な構成及びまとまりにおいて当該種類の情報を通常扱っている者に一般的に知られていない又は容易に利用することができないという意味においてその情報が秘密である。
    • (b) その情報はそれが秘密であることによって実際の又は潜在的な商業上の価値をもっている。及び
    • (c) その情報を合法的に管理している者がそれを秘密に保つ状況のもとで合理的な措置を取っている。
  2. 当事国は,トレードシークレットが保護される資格を有するためには文書,電子又は磁気媒体,光ディスク,マイクロフィルム,フィルム又はその他の類似の手段によって証明されなければならない旨を要求することができる。
  3. 如何なる当事国も,1.の条件が存在する限りは,トレードシークレットの保護期間を制限してはならない。
  4. 如何なる当事国も,トレードシークレットの任意の使用許諾に過度の又は差別的な条件を課したりトレードシークレットの価値を減じるような条件を課したりすることによって当該使用許諾に支障又は妨害を与えてはならない。
  5. 当事国が新しい化学物質を利用する医薬又は農薬製品の市場化を承認する条件としてその製品の使用が安全かつ効果的であるか否かを決定するために必要な未開示の試験又は他のデータを提出することを要求する場合は,当事国は,そのデータの作成が大変な努力によるときには,その提出を行う者のデータを開示から保護するものとする。ただし,その開示が公衆を保護するのに必要であるか又はそのデータが不公正な商業的使用から保護されることを保証するための措置が取られる場合を除く。
  6. 各当事国は,本協定の発効日後に当時国に提出された5.に従ったデータについては,それを提出した者以外の如何なる者もその提出者の許可なくしてはその提出後の合理的な期間の間に行われる製品承認の申請を支持するものとしてそのデータに依拠することはできない旨を定めるものとする。この目的のために,合理的な期間とは通常は,そのデータの性質及びそれを提出するための努力と費用を考慮に入れて,製品を市場に出すための承認を求めてデータを作成した者に当事国が承認を与えた日から5年を下回らない期間を意味するものとする。本項に従うことを条件として,如何なる当事国に対しても,生物学的等価性及び生物学的利用可能性を基礎としてその製品の短縮した承認手続を履行することに対する制限は何ら設けられない。
  7. 当事国が他の当事国によって与えられた市場化の承認に依拠する場合は,その依拠した承認を得ることに関して提出されたデータの合理的な期間における排他的使用はその依拠された最初の市場化の承認の日から始まるものとする。

 第1712条 地理的表示

  1. 各当事国は,地理的表示に関して利害関係人が次の事項を行うことを防止するために法的手段を定めるものとする。
    • (a) 商品の指定又は提示において,当該商品が真の原産地以外の領域,地域又は地方の原産である旨を,その商品の地理的原産地について公衆を誤認させるような方法で,表示したり示唆したりするような手段の使用
    • (b) パリ条約第10条の2の意味において不正競争の行為を構成するような使用
  2. 各当事国は,国内法により認められる場合は自発的に,又は利害関係人の要求により,表示された領域,地域又は地方に原産を有さない商品の商標の表示の使用が当該商品の地理的原産地に関して公衆を誤認させる性質のものである場合は,当該商品に関して当該地理的表示を含む又は当該地理的表示から構成される商標の登録を拒絶する又は無効とするものとする。
  3. 各当事国は,商品の原産の領域,地域又は地方を正確に表示してはいるが,その商品が他の領域,地域又は地方の原産である旨を公衆に対して虚偽に示す地理的表示に対してもまた1.及び2.を適用するものとする。
  4. 本条の如何なる条項も,本協定の署名日前に,
    • (a) 少なくとも10年間,又は
    • (b) 善意で,
      当事国の領域内における同一又は関連する商品又はサービスに関して継続してその地理的表示を使用してきた国民又は居住者による商品又はサービスについて,他の当事国の特定の地理的表示の継続したかつ類似の使用をさせないように要求するものと解してはならない。
  5. (a) 当事国の本規定の適用日の前に,又は
    (b) 原産の当事国において地理的表示が保護される前に,
    商標が善意で出願されたか又は登録された場合又は商標に対する権利が善意の使用を通して取得された場合は,如何なる当事国も,本条を履行するための手段を講じることによって,商標が地理的表示と同一であるか又は類似であることを根拠として商標の登録の適格性又は有効性又は商標の使用権を阻害してはならない。
  6. 如何なる当事国も,当事国の領域の共通の言語において,地理的表示がその表示の適用される商品又はサービスに対する慣用的な用語と同一である場合は,本条をその地理的表示に適用することを要求してはならない。
  7. 当事国は,商標の使用又は登録に関して本条に基づいてなされた要求は,保護されている表示の不当な使用がその当事国において一般的に知られるようになった後又は商標登録日が不当な使用の当該当事国において一般的に知られるようになった日よりも早い場合は商標はその日までに公になっていることを条件として,その当事国における商標登録日の後5年以内に提起されなければならないことを定めることができる。ただし,地理的表示が悪意で使用又は登録されていないことを条件とする。
  8. 如何なる当事国も,本条を履行するための手段を講じることによって,その氏名が地理的表示が保護されるようになる前に存在していた有効な商標の全部又は一部を構成しそれについて混同の虞があり又はその氏名が公衆を誤認させるような方法で使用される場合を除いて,その氏名又は事業における前任者の氏名を取引の過程で使用する権利を阻害してはならない。
  9. 本章は,原産の当事国において保護されていない又は不使用に至った地理的表示を保護することを当事国に要求するよう解されるものではない。

 第1713条 工業意匠

  1. 各当事国は,独自に創作された工業意匠で新規性があり又は独創性があるものの保護について定めるものとする。当事国は次の事項を定めることができる。
    • (a) 意匠は既知の意匠又は既知の意匠の特徴の組合せと実質的に異なるものでなければ新規性がある又は独創性があるとはいえない。及び
    • (b) この保護は本質的に技術的又は機能的な思考によって考えられた意匠には適用されない。
  2. 各当事国は,織物の意匠の保護を確保するため,特に費用,審査又は公開に関しての要件が保護を求め取得するための機会を不合理に害するものとならないことを保証するものとする。当事国は,工業意匠法又は著作権法を通してこの義務に適合することができる。
  3. 各当事国は,保護された工業意匠の所有者に対して,所有者の同意を得ていない他の者が保護された意匠の複製又は実質的な複製である意匠を付し又は含んだ物品を製造し又は販売しその行為が商業目的で行われる場合は,それを防止する権利を与えるものとする。
  4. 当事国は,工業意匠の保護に限定的な例外を定めることができる。この例外は,保護された工業意匠の通常の利用と不合理に矛盾してはならず,また他の者の合法的な利害を考慮しても保護された意匠の所有者の合法的な利益を不合理に侵害してはならない。
  5. 各当事国は,工業意匠の保護の期間として少なくとも10年を定めるものとする。

 第1714条 知的財産権の執行:一般規定

  1. 各当事国は,本条及び第1715条から第1718条までに示したように,侵害を防ぐための迅速な救済及び更なる侵害を抑止するための救済を含んだ,本章で対象とする知的財産権の侵害行為に対して効果的な措置を取らせるためにその国内法によって執行手続が用意されていることを保証するものとする。この執行手続は合法的な取引への障壁の発生を防ぎ,手続の濫用に対する予防措置を提供するために適用するものとする。
  2. 各当事国は,知的財産権の実行のための手続が公正かつ公平であり,不必要に複雑であったり費用がかかったりせず,不合理な期限又は不当な遅延などを伴うことのないものであることを保証するものとする。
  3. 各当事国は,案件の本案についての司法的及び行政的執行手続における決定が次の通りであることを定めるものとする。
    • (a) できれば書面でなされ,できればその決定がなされた理由を述べること
    • (b) 少なくとも手続の当事者に対しては不当な遅延なく開示すること,及び
    • (c) その当事者がそれに関して聴聞を受ける機会を提供された証拠にのみ依拠すること
  4. 各当事国は,手続における当事者が,最終の行政決定をその当事国の司法当局に再検討させ,案件の重要性に関する国内法の管轄規定に従うことを条件に,少なくとも案件の本案についての最初の司法決定を法律的観点から再検討する機会を有することを保証するものとする。上記にも拘らず,如何なる当事国も,刑事事件においては無罪の司法的再検討について定めることは要求されない。
  5. 本条又は第1715条から第1718条までにおける何れの条項も,一般的に法の執行のためのその当事国の制度と異なる知的財産権の執行のための司法制度を構築することを当事国に要求していると解釈されるものはない。
  6. 第1715条から第1718条までの適用上,「権利所有者」という用語はその権利を主張する法的地位を有している連合及び団体を含む。

 第1715条 民事及び行政手続の特別の手続的及び救済としての観点

  1. 各当事国は,本章で定めた知的財産権の執行のための民事的司法手続を権利所有者に利用できるようにするものとする。各当事国は次の事項を定めるものとする。
    • (a) 被告は,時宜を得かつ十分な詳細を含む(主張の根拠を含む。)書面による通知を得る権利を有する。
    • (b) 手続の当事者は独立した弁護士によって代理されることが許される。
    • (c) 手続には,強制的な個人の出頭に関する過度に負担の重い要求を課すことは含まれない。
    • (d) 手続のすべての当事者は,その主張を実証し関連の証拠を提出する正当な権利を有する。及び
    • (e) 手続には秘密情報を明示し保護する手段を含む。
  2. 各当事国は,その司法当局が次の権限を有する旨を定めるものとする。
    • (a) 手続の当事者がその主張を支持するのに十分な合理的に入手可能な証拠を提出し,その主張の実証に関する証拠で相手方当事者の管理下にあるものを特定した場合は,適切な場合には,秘密情報の保護を保証することを条件として他の当事者に対してその証拠を提出することを命じる。
    • (b) 手続の当事者が,その当事者の管理下にある関連証拠の利用を自発的にかつ妥当な理由なく拒絶し又はそれを合理的期間内に提出しなかった場合,又は執行行為に関する手続を大きく妨害した場合は,証拠の利用を拒否されたことによって悪影響を受けた当事者が提出した申立書又は主張を含む既に提出された証拠をもとにして肯定的にせよ否定的にせよ予備的及び最終の決定を行う(当事者に主張又は証拠についての聴聞を受ける機会を与えることを条件とする。)。
    • (c) 手続の当事者に対して,知的財産権の侵害を含む輸入商品がその管轄での流通経路に入ることを防止することを含む侵害の停止を命じる。その命令は遅くともその商品の税関通過後直ちに執行可能になるものとする。
    • (d) 知的財産権の侵害者に対して,侵害者が侵害行為を行っていることを自ら知っていたか又は知っているべき合理的な事情があった場合にその侵害のために権利所有者が被った損害を補償するのに適切な損害賠償を権利所有者に支払うことを命じる。
    • (e) 知的財産権の侵害者に対して,適切な弁護士費用を含む権利所有者の費用を支払うことを命じる。及び
    • (f) 手続の当事者でその要求によって手続が取られ執行手続を濫用した者に対して,侵害手続で不当に禁止され又は制限された当事者にその濫用のために被った損害への適切な補償を提供し適切な弁護士費用を含むその当事者の費用を支払うことを命じる。
  3. 2.(c)で言及した権限に関して,如何なる当事国も,対象の取引が知的財産権の侵害を起こすことを知るか又は知っているべき合理的な事情を有する前にその者が取得し又は注文した当該保護対象に関連してその権限を提供することを義務付けられるものではない。
  4. 2.(d)で言及した権限に関して,当事国は,少なくとも著作権のある作品と録音については,侵害者がたとえ侵害行為をしていることを知らないか又は知っているべき合理的な事情がないとしても,利益の回復又は予備的に確定した損害の支払又はその両方を命じる権限を司法当局に与えることができる。
  5. 各当事国は,侵害の効果的な抑止力を形成するためにその司法当局が次の事項を命じる権限を有することを定めるものとする。
    • (a) 侵害が判明した商品は,権利所有者の被る損害を回避するような方法で流通経路から何らの補償なしに処分し,又は,現行の憲法上の要求に反さない場合は破棄する。及び
    • (b) 主に侵害商品の創作において使用される材料及び道具は,更なる侵害の危険を最小限にするような方法で流通経路から何らの補償なしに処分する。
      その命令を出すか否かを考慮するにあたって,司法当局は,侵害の重大性と命じられた救済との間の均衡の必要性及び他の者の利益を考慮に入れるものとする。模造商品に関しては,例外的な場合を除いては,違法に付されている商標を単に除去するだけではその商品を流通経路に流すことを認めるためには不十分である。
  6. 知的財産権の保護又は執行に関する法律の運用に関連して,各当事国は,措置がその法律の運用の過程で誠意をもって取られた又は意図された場合のみ,適切な救済手段を取る責任から公共機関及びその職員の両方を免責するものとする。
  7. 第1714条から第1718条までの他の規定にも拘らず,当事国が知的財産権の侵害に関してその権利の使用又は自らのための使用の結果として訴えられた場合は,その当事国は,自らに求められる救済をその使用の経済的価値を考慮して,それぞれの場合の状況における適切な報償を権利所有者に支払うことに限定することができる。
  8. 各当事国は,案件の本案の行政手続の結果として民事救済を命じることができる場合は,その手続は本条に示した原則と本質において同等である原則に適合しなければならない旨を定めるものとする。

 第1716条 暫定的手段

  1. 各当事国は,司法当局が次の目的のために迅速かつ効果的な暫定的手段を命じる権限を有する旨を定めるものとする。
    • (a) 知的財産権の侵害を防ぐこと,特に侵害を主張されている商品をその管轄内の流通経路に入れることを防ぐこと。また,これには輸入商品が流入してくることを少なくとも通関後に直ちに防ぐ手段を含む。及び
    • (b) 主張されている侵害に関して関連の証拠を保全すること
  2. 各当事国は,その司法当局が,暫定的手段として,次の事項を十分な程度の確かさをもって決定することを可能にするために必要と司法当局が考えるような証拠で出願人が合理的に入手可能なものを司法当局に対して提出するよう出願人に対して要求する権限を有している旨を定めるものとする。
    • (a) 出願人が権利所有者であるか否か
    • (b) 出願人の権利が侵害されているか否か又はその侵害が切迫したものであるか否か,及び
    • (c) その手段の実行の遅延が権利所有者に回復しがたい損害を発生させる可能性が高いか否か又は証拠が破棄される明らかな危険があるか否か
      各当事国は,その司法当局が出願人に対して,被告の利益を守り濫用を防ぐのに十分な担保又は同等の保証を提供するよう要求する権限を有する旨を定めるものとする。
  3. 各当事国は,その司法当局が,暫定的手段として,出願人に対して,暫定的手段を執行する当局による関連商品の特定のために必要な他の情報を提供するよう要求する権限を有する旨を定めるものとする。
  4. 各当事国は,特に,その遅延が回復できない損害を権利所有者に対して起こす可能性が高い場合又は証拠が破棄される明らかな危険がある場合は,その司法当局が暫定的手段を一方だけに対して命じる権限を有する旨を定めるものとする。
  5. 各当事国は,その当事国の司法当局によって一方的な暫定的手段が取られた場合は,次のとおりとなる旨を定めるものとする。
    • (a) 影響を受ける者はその手段についての通知を遅滞なく,そして,遅くともその手段の実行後直ちに受けるものとする。
    • (b) 被告は,要求に応じて,その手段についての通知が出された後の合理的期間内に,その手段が修正,取消又は確認されるべきか否かを決定する目的でその当事国の司法当局にその手段を再検討してもらい,また,その再検討手続において聴聞を受ける機会を与えられるものとする。
  6. 5.の効力を害することなく,各当事国は,被告の要求に応じて,本案についての決定に至る手続が次の期間内に開始されないときには当事国の司法当局は1.及び4.に基づいて取られた暫定的手段を取り消すか又はその適用を停止する旨を定めるものとする。
    • (a) 当事国の国内法で認められる場合は,その手段を命じる司法当局によって決定された合理的期間内において,又は
    • (b) そのような決定がない場合は,20就業日又は31暦日未満の期間で何れか長い方の期間内において
  7. 各当事国は,暫定的手段が取り消されたか又は出願人による行為又は不作為によって失効したか又は司法当局が結果的に知的財産権に対する侵害又は侵害の虞はなかったものと判定したかの場合は,司法当局が,被告の要求に応じて,その手段によって発生した損害の適切な補償を被告に与えることを出願人に命じる権限を有する旨を定めるものとする。
  8. 各当事国は,暫定的手段を行政手続の結果として命令することができる場合は,その手続は本条で示した原則と実質的に同等の原則に適合するべき旨を定めるものとする。

 第1717条 刑事手続及び罰則

  1. 各当事国は,少なくとも商業的規模で行われる意図的な商標の模造又は著作権の侵害の場合は,刑事手続及び罰則を適用するよう定めるものとする。各当事国は,適用できる罰則は,それと相応の重大さを有する犯罪に適用される罰則の水準と適合するような犯罪防止策を提供するのに十分な懲役又は金銭的処罰又はその両方を含む旨を定めるものとする。
  2. 各当事国は,適切な場合は,その司法当局が侵害商品及びその主な使用が訴えの対象となっている材料及び道具に対する差押,没収及び破棄を命じることができる旨を定めるものとする。
  3. 当事国は,知的財産権侵害が意図的に及び商業的規模で行われる場合は,知的財産権侵害に適用される1.を除いた刑事手続及び罰則を定めることができる。

 第1718条 国境においての知的財産権の執行

  1. 各当事国は,本条に適合して,模造商標の商品又は著作権侵害の商品の輸入が発生すると疑うに足る明らかな根拠を有する権利所有者が,行政にせよ司法にせよ権限ある当局に対して当該商品を自由に流通させることを税関当局が差し止めることの請求を書面で提出することができるような手続を採用するものとする。如何なる当事国も,通過商品に当該手続を適用する義務を負うものではない。当事国は,本条の要求が満たされることを条件に,他の知的財産権侵害を含む商品に関してそのような申請を認めることができる。当事国は,また,税関当局によるその領域から輸出されようとする侵害商品の差止に関して対応する手続を定めることができる。
  2. 各当事国は,1.に基づく手続を開始する申請人に次のような適切な証拠を提供するよう要求するものとする。
    • (a) 輸入国の国内法においては,一応の証拠がある知的財産権侵害があることを当事国の権限ある当局に認めさせること,及び
    • (b) 商品が税関当局によって容易に認識できる商品の十分な詳細記述を提出すること
      権限ある当局は,申請人に対して,合理的期間内に,その申請を受け付けたか否か,また,受け付けた場合は,税関当局が行動を取る期間について通知するものとする。
  3. 各当事国は,その権限ある当局が,1.の申請人に対して,被告及び権限ある当局を保護し濫用を防ぐための十分な担保又はそれに相当する保証を提供するよう要求する権限を有する旨を定めるものとする。この担保又はそれに相当する保証はその手続を取ることを不当に妨げるようなものであってはならない。
  4. 各当事国は,本条に従って採用された手続に基づく申請に従って,その税関当局が司法又はその他の独立した当局による以外の決定を根拠にして工業意匠,特許,集積回路又はトレードシークレットを含む商品の自由な流通を差し止め,また,6.から8.までに定めた期間は正当に権限を与えられた当局による暫定的救済を与えることなく満了し,更に,輸入のためのその他のすべての条件が満たされた場合は,その商品の所有者,輸入者又は受託者は権利所有者を侵害から保護するのに十分な額の担保を提供することによってその商品を自由にすることができることを定めるものとする。その担保の支払は,権利所有者に許されている他の救済を害してはならない。権利所有者が合理的な期間内に訴訟の権利を行使しなかった場合は,担保は解除されることが了解されなければならない。
  5. 各当事国は,その税関当局が1.に従って商品を差し止めた場合は,それを輸入者及び申請人に迅速に通知する旨を定めるものとする。
  6. 各当事国は,その税関当局が,1.に基づく申請人が差止の通知を受けてから後10就業日を超えない期間内に税関当局が次の連絡を受けていない場合は,輸入又は輸出のための他のすべての条件が満たされていることを条件に,商品の差止を解除しなければならない旨を定めるものとする。
    • (a) 被告以外の当事者が案件の本案の決定につながるような手続を開始したこと,又は
    • (b) 権限ある当局が差止を延長する暫定的手段を取ったこと
      各当事国は,適切な場合には,税関当局が差止をあと10就業日の間延長することができる旨を定めるものとする。
  7. 各当事国は,案件の本案についての決定に至る手続が開始された場合は,聴聞を受ける権利を含む再検討が合理的期間内に被告の要求に応じて,これらの手段が修正,取消又は確認されるべきか否かを決定しようという見解をもって行われるべきことを定めるものとする。
  8. 6.及び7.にも拘らず,商品の解放の差止が暫定的司法手段に従って行われているか継続している場合は第1716条6.が適用される。
  9. 各当事国は,その権限ある当局が1.の申請人に,誤った商品の留置又は6.で解放された商品の差止によって生じた損害の適切な補償を商品の輸入者,受託者及び所有者に対して支払うよう命じる権限を有する旨を定めるものとする。
  10. 秘密情報の保護を損なうことなく,各当事国は,その権限ある当局は権利所有者に権利所有者の主張を実証するために税関当局によって留置されている商品を検査する十分な機会を与える権限を有する旨を定めるものとする。各当事国は,また,その権限ある当局がそのような商品を検査する同等の機会を輸入者に与える権限を有する旨を定めるものとする。権限ある当局が案件の本案について肯定的な決定をした場合は,当事国は権限ある当局に寄託者,輸入者及び受託者の住所氏名及び当該商品の数量を権利所有者に対して報告する権限を与えることができる。
  11. 当事国がその権限ある当局に対して,自らの主導で行動し,それに関して知的財産権が侵害されたという一応の証拠を得た商品の解放を差し止めることを要求した場合,
    • (a) 権限ある当局はいつでも権利所有者からその権限を行使する助けになる情報を求めることができる。
    • (b) 輸入者及び権利所有者は当事国の権限ある当局による差止の通知を迅速に受けるものとし,輸入者が権限ある当局に対して差止への抗告を提起した場合は,その差止は6.から8.までに定めた条件を準用した条件に従うものとする。及び
    • (c) 当事国は,措置が誠意をもって取られたか又は意図された場合にのみ,適切な救済手段を取る責任から公共機関及びその職員の両方を免責するものとする。
  12. 権利所有者に開かれている他の訴訟の権利を損なわないでかつ司法による再検討を求める被告の権利に従うことを条件として,各当事国は,その権限ある当局が第1715条5.で示した原則に従って侵害商品を破棄し又は処分することを命じる権限を有する旨を定めるものとする。模造商品に関しては,当局は例外的な状況の場合を除いては,侵害商品を変更しないままの状態で再輸出したり異なる税関手続に付したりすることを許容してはならない。
  13. 当事国は,旅行者の個人手荷物に入っているか又は反復性のない小さな委託貨物として送られる非商業的な少量の商品を,1.から12.までの適用から除外することができる。
  14. 附則1718.14はその附則で示した当事国に適用される。

 第1719条 協力及び技術援助

  1. 当事国は相互に合意する条件で技術援助を提供し,その権限ある当局間での協力を促進するものとする。この協力は人材の育成を含む。
  2. 当事国は知的財産権を侵害する商品の貿易を排除する見解をもって協力するものとする。この目的のために,各当事国は,1994年1月1日までにその連邦政府内の連絡先を設定して他の当事国に通知し,侵害商品の貿易に関する情報の交換を行うものとする。

 第1720条 既存の対象の保護

  1. 第1705条7.で要求されるものを除いて,本協定は,本協定の関連規定の適用日の前に当該当事国に発生した行為に関連した義務の起源となるものではない。
  2. 本協定で他の定めがある場合を除いて,各当事国は,本協定の関連規定が当該当事国に適用された日に存在しその日に当事国で保護されているか又は本章の条件に基づく保護の基準を満たしているか実質的に満たしているすべての当該対象に適用されるものとする。本項並びに3.及び4.に関して,当事国の既存の作品についての義務はベルヌ条約第18条に基づいてのみ決定される。また,既存の録音における録音の制作者の権利に関しては,当事国の既存の作品についての義務は,本協定で適用されるようになったように,その条約の第18条に基づいてのみ決定される。
  3. 第1705条7.で要求されるものを除いて,また2.の第1文にも拘らず,如何なる当事国も,本協定の関連規定の当該当事国への適用日においてその領域内で公知となった当該対象に対して保護を回復することを要求されるものではない。
  4. 保護対象を含む特定の物に関して,本協定に適合する法律の条項に基づいて侵害となる行為であって,当該当事国での本協定の発効日より前に開始された又は当該行為について大きな投資がなされた行為に関連して,各当事国は,当該当事国での本協定の適用日の後,当該行為を継続して行うことに関し,権利所有者が利用できる救済に制限を定めることができる。ただし,その場合には,当事国は少なくとも公平な報償の支払を定めるものとする。
  5. 如何なる当事国も,その当事国に対する本協定の関連規定の適用日より前に購入された原作品又は複製に関して,第1705条2.(d)又は第1706条1.(d)を適用することを義務付けられるものではない。
  6. 如何なる当事国も,第1709条10.又は特許権が技術の分野に関する差別なしに享受できるという第1709条7.の要求を,「多国間貿易交渉のウルグアイラウンドの結果を含む最終法案」の版が知られるようになる前にその使用が政府によって認められていた場合に権利所有者の許諾なしに使用することに対して適用することを要求されるものではない。
  7. その保護が登録を条件としている知的財産権の場合は,当該当事国に対する本協定の関連規定の適用日において係属中となっている保護の出願は,本協定において与えられる保護の拡大を受けるよう主張するために修正することを許されるものとする。その修正は新規の事項を含んではならない。

 第1721条 定義

  1. 本章の適用上,
    「秘密情報」は,当事国の国内法で開示を免除されているトレードシークレット,守秘情報及び他の資料を意味する。
  2. 本協定の適用上,
    「暗号化された番組伝送衛星信号」は,聴覚的又は視覚的な特徴若しくはその両方に修正又は変更を施し,当該修正又は変更の効果を除去するための認可された機器を有していない者によって,衛星信号で送信される番組が許可なく受信されることを防止するような形式で伝達される番組伝送衛星信号を意味する。
    「地理的表示」は,当事国の領域又はその領域内の地域又は地方に原産があり,その商品の特別の品質,評判又は他の特徴が本質的にその地理的原産に起因している商品を示す表示を意味する。
    「公正な商慣習に反する態様で」は,少なくとも契約違反,信頼違反及び違反への誘引を意味し,そのような慣習がその取得に含まれていることを知っていたか又は知らないことに重大な過失があるような他の者による未公開の情報の取得を含む。
    「知的財産権」は,著作権と関連の権利,商標権,特許権,半導体集積回路配置設計の権利,トレードシークレットの権利,植物栽培者の権利,地理的表示の権利及び工業意匠権を意味する。
    「他の当事国の国民」は,関連知的財産権に関しては,あたかも各当事国がそれらの条約の当事者であるかのごとく,パリ条約(1967年),ベルヌ条約(1971年),ジュネーヴ条約(1971年),実演家,レコードの制作者と放送機関の保護に関する国際条約(1961年),UPOV条約(1978年),UPOV条約(1991年)又は集積回路についての知的財産に関する条約で定められた保護を受けることができる基準を満たした者を意味する。これらの条約の対象でない知的財産権に関しては,「他の当事国の国民」は,少なくともその当事国の市民又は永久居住者である個人と理解され,また,附則201.1(国に個別の定義)で言及した他の自然人を含む。
    「公衆」は,ベルヌ条約第11条,第11条の2(1),第14条(1)(ii)で定められた伝達の権利及び作品の実演に関しては,また,演劇,楽劇,音楽及び映画の作品に関しては,少なくとも,同じときにできるか異なるときにできるか又は同じ場所でできるか異なる場所でできるかを問わず,作品の伝達又は実演の対象であり又はそれを知覚できることを意図している個人の集合体を含む。ただし,その集合体は,家族及びその直近の知人の仲間よりも大きくなければならないか,又は同様に固い絆を有するが,そのような作品の実演及び伝達を受けることが形成の主要な目的でない限定された数の個人のグループであってはならない。
    「録音の二次的使用」は,録音の放送への直接の使用又はその他の公衆送信のための使用を意味する。

 附則1701.3 知的財産に関する条約

  1. メキシコは,
    • (a) できるだけ早く1978年及び1991年のUPOV条約の実体規定に適合するようあらゆる努力をし,本協定の署名日後2年以内に適合するものとする。及び
    • (b) 本協定の発効日から,(a)に適合した後直ちにその実体規定に従って,すべての植物の属及び種における品種についての植物栽培者からの申請を受諾し,その保護を与えるものとする。
  2. 第1701条2.(b)にも拘らず,本協定は,ベルヌ条約第6条の2に関して米国に対して如何なる権利も与えず,如何なる義務も課さない,また,その条項から発生する権利も与えるものではない。

 附則1705.7 著作権

米国は,合衆国法典第17巻第405条に従って公知と宣言された他の当事国の領域内で制作された映画に対して保護を与えるものとする。この義務は米国の憲法に適合している範囲で適用され,予算上の考慮を必要とする。

 附則1710.9 配置設計

メキシコは,できるだけ早く第1710条の要求を履行するための努力をし,本協定の発効日後4年以内に履行をするものとする。

 附則1718.14 知的財産権の執行

メキシコは,できるだけ早く第1718条の要求に適合するための努力をし,本協定の署名日後3年以内に適合させるものとする。

[略]

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