審決


不服2018-650054

Berliner Strase 43 35614 Aslar Germany (DE)
 請求人
Pfeiffer Vacuum GmbH
  
東京都港区西新橋二丁目3番1号 マークライト虎ノ門 江崎特許事務所
 代理人弁理士
江崎 光史
  
東京都港区西新橋二丁目3番1号 マークライト虎ノ門 江崎特許事務所
 代理人弁理士
佐久間 洋子
  
東京都港区西新橋二丁目3番1号 マークライト虎ノ門 江崎特許事務所
 代理人弁理士
田崎 恵美子
  


 
  
 国際登録第1347923号に係る国際商標登録出願の拒絶査定に対する審判事件について,次のとおり審決する。



 結 論
  
 本件審判の請求は,成り立たない。



 理 由
  
1 本願商標
 本願商標は,「SplitFlow」の文字を普通に用いられる方法で書してなり,第6類,第7類及び第9類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として,2016年12月15日にGermanyにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,2017年(平成29年)3月2日に国際商標登録出願されたものである。
 その後,指定商品については,原審における平成30年1月24日付けの手続補正書により,別掲1のとおりに補正されたものである。
 
2 原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は,「本願商標は,『縦に(層状に)割る,断ち割る,裂く,そぐ』等の意味を有する英語『Split』と『〈川・水・液体が〉(・・・から)(・・・へ)流れる,(・・・に)流れ込む,注ぐ,流入[流出]する』等の意味を有する英語の『Flow』(いずれも「ランダムハウス英和大辞典 第2版」株式会社小学館発行)とを結合した『SplitFlow』の文字を普通に用いられる方法で書してなるところ,ポンプを取り扱う業界において,2以上のポンプを必要とする場合のスペースの確保,効率化等を目的に,1台で2分割された流出(吐出)を可能とするタイプのポンプを『スプリットフロー』と称し,使用していることが確認できる。そうすると,本願商標は,第7類の指定商品との関係において,前記機能を備えたポンプであることを認識させるにとどまるというのが相当であり,これを前記機能に相応する商品について使用をしても,本願商標は商品の品質を表すにすぎない。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,前記以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから,同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。
 
3 当審における審尋
 当審において,平成31年2月18日付けで通知した審尋により,別掲2及び3に示すとおりの使用例等の事実を新たに示した上で,本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する旨の見解を示し,請求人に意見を求めた。
  
4 審尋に対する請求人の意見
 請求人は上記審尋に対し,所定の期間を経過するも何ら意見を述べていない。
  
5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について
 本願商標は,上記1のとおり,「SplitFlow」の文字を普通に用いられる方法で書してなるものである。
 そして ,本願商標の構成中,前半の「Split」の文字は,「裂く,分割する」等の意味を有する語であり,また,後半の「Flow」の文字は,「流れ,流量」程の意味合いを有する語(いずれも「ランダムハウス英和大辞典 第2版」株式会社小学館発行)であるから,全体として,「分割した流れ」,「分離した流量」程の意味合いを認識させるものである。
 そして,別掲2のとおり,書籍等においても,油圧式ポンプや真空ポンプにおいて「スプリットフローポンプ」の文字が,「1個のシリンダブロックから独立した2つの吐出流量が得られるタイプのポンプ」程の意味合いを有する語として使用されている事実がある。
 さらに,別掲3のとおり,本願の指定商品に含まれる「真空ポンプ」の分野においても,「スプリットフロー」の文字が公開特許公報やインターネット情報で使用されている事実がある。
 そうすると,「スプリットフロー」の文字が,油圧ポンプや真空ポンプ,いわゆるポンプの分野において,「1台で2分割された流出(吐出)を可能とするタイプのポンプ」程の品質(機能),用途を表す語として使用されている事実及び真空ポンプの分野において実際に使用されている事例を併せて考慮すれば,本願商標をその指定商品中の「真空ポンプ」又は「真空ポンプ用の商品」に使用しても,これに接する取引者及び需要者は,その商品が「スプリットフロー型式(タイプ)の真空ポンプ」又は「スプリットフロー型式(タイプ)の真空ポンプ用の商品」であることを理解するにとどまるものといわざるを得ない。
 したがって,本願商標は,商品の品質(機能),用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから,商標法第3条第1項第3号に該当する。
 また,「スプリットフロー型式(タイプ)の真空ポンプ」又は「スプリットフロー型式(タイプ)の真空ポンプ用の商品」以外の商品に使用するときは,「スプリットフロー型式(タイプ)の真空ポンプに関連する商品」であるかのごとく,商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるから,本願商標は,商標法第4条第1項第16号に該当する。
(2)請求人の主張について
 請求人は,真空ポンプは,油圧ポンプのような一般のポンプとは,その目的,用途,需要者が全く異なり,その需要者が属する業界も,真空ポンプが主に製造業や食品・飲料業であるのに対し,油圧ポンプは土木・荷役業や建設業であり,互いに全く異なる。よって,例え油圧ポンプを扱う業界で「スプリットフロー」の語が特定の機能を備えた商品を指すものとして一般に使われているとしても,真空ポンプを扱う業界ではそのような事情がないことから,本願商標に接する取引者,需要者が前記意味合いを理解することはなく,またそのような機能の商品でないときに商品の品質について誤認を生じさせるおそれはない旨主張する。
 しかしながら,上記(1)のとおり,本願商標に係る各語の意味及び真空ポンプを取り扱う業界における取引の実情からすれば,本願商標がその指定商品に使用されるときは,その商品に接する取引者,需要者は,本願商標が「スプリットフロー型式(タイプ)の真空ポンプ」又は「スプリットフロー型式(タイプ)の真空ポンプ用の商品」であるという商品の品質(機能),用途を表したものとして理解するにとどまり,自他商品の識別標識としては認識し得ないものといわざるを得ないから,請求人の主張は採用できない。
(3)まとめ
 以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当し,登録することができない。
 よって,結論のとおり審決する。


        令和 1年 8月22日

     審判長  特許庁審判官 榎本 政実
          特許庁審判官 平澤 芳行
          特許庁審判官 浜岸 愛

 
  
別掲1 本願商標の指定商品
 第6類「Flanges (collars) of metal.」
 第7類「Vacuum pumps and vacuum pump stands consisting of vacuum pumps; vacuum pumps (machines) and vacuum pump stands composed thereof; drives and shaft bearings for vacuum pumps; fittings for vacuum pumps and vacuum pump stands, namely oil separators, condensate separators, dust separators, radiators [cooling] for motors and engines, filters, steam condensers, flanges and control apparatus, all the aforesaid goods for vacuum pumps and vacuum pump stands; valves [parts of machines]; vacuum engineering installations, mainly consisting of vacuum pumps, fittings for vacuum pumps, namely oil separators, condensate separators, dust separators, radiators [cooling] for motors and engines, filters, steam condensers, flanges and control apparatus, measuring apparatus, connection conduits, valves [parts of machines], vacuum vessels and process engineering attachments [being parts for these installations], all the aforesaid goods for vacuum pumps; vacuum-tight, mechanical and electrical ducts, namely electricity ducts, thermocouple ducts, fluid ducts, pipe ducts for vacuum pumps, rotary bushings, rotary/sliding bushings, sliding bushings being parts for vacuum engineering installations; parts for vacuum pumps and fittings (including checking (supervision) and control apparatus) of vacuum pumps and vacuum pump stands, included in this class.」
 第9類「Measuring, electric regulating and electric monitoring apparatus and instruments for vacuum pumps and vacuum pump stands; vacuum measuring and testing apparatus, leak detection apparatus, residual gas analyzers, gas inlet apparatus; vacuum-tight, mechanical and electrical ducts, namely, electricity ducts, thermocouple ducts, fluid ducts, pipe ducts, rotary bushings, rotary/sliding bushings, sliding bushings, all the aforesaid goods for electric wires and cables.」
 
別掲2 ポンプという商品の機能及び用途からして,「スプリットフロー」の語が,「1台で2分割された流出(吐出)を可能とするタイプのポンプ」程の意味合いで使用されている事例
(1)書籍について
 ア 「油圧ショベル大全」(平成19年10月31日 初版第1刷発行,発行所:日本工業出版株式会社)の195頁において,「2フローポンプ(スプリットフローポンプ)」の見出しの下,「・・・2フローポンプ(スプリットフローポンプ)は,1個のシリンダブロックから独立した2つの吐出流量が得られるもので,従来の2ポンプの縦列配置に対し1ポンプ分の長さとなるため,ポンプの大幅な短小化を可能とした。」の記載及び「図7-14 2フローポンプ(スプリットフローポンプ)」の図が記載されている。
 イ 「油圧制御システム」(1999年11月20日 第1版第1刷発行,発行所:東京電気大学出版局)の90頁において,「図3.21はスプリットフロータイプの可変ピストンポンプであり,・・・このポンプは・・・シリンダブロックの流出口を交互に二つの半径方向に分け,半径方向の異なる2系統の弁板吐出し口1,2から作動油を取り出している。」の記載及び「図3.21 スプリットフロータイプのピストンポンプ」の図が記載されている。
(2)特許公報について 
 ア 特許第6438916号公報について
(ア)「特許権者」の項において,「プファイファー・ヴァキュー・ゲーエムべーハー」の記載があり,【技術分野】の【0001】において,「本発明は,スプリットフローポンプの形式の真空ポンプに関する。」の記載がある。
(イ)【背景技術】の【0002】及び【0003】において,各々,「スプリットフローポンプは,例えば質量分析システムの複数のチャンバーを同時に真空引きするために実践で使用されている。スプリットフロー真空ポンプによって,複数の個々のポンプからなるポンプシステムを省略することが可能であり,そして複数のチャンバーの真空引きは唯一のポンプで実施することが可能である。」及び「スプリットフロー真空ポンプは,真空システムの為に少ないスペース要求のみを要するというメリットを有している。スプリットフロー真空ポンプは,分析装置内のみでなく,例えばリーク探索装置内で使用される。」の記載がある。
(ウ)【課題を解決するための手段】の【0062】において,「スプリットフロー真空ポンプは,通常,一または複数のターボ分子ポンプ段と,少なくとも一つの別の上述したポンプ段から成る。」の記載がある。
 イ 特許6087056号公報について
 「特許権者」の項において,「アジレント・テクノロジーズ・インク」の記載があり,【課題を解決するための手段】の【0013】において,「・・・ターボ分子ポンプはスプリットフロー型,つまり一つのポンプでインレット(吸入口)を複数持つ型式のターボ分子ポンプとすることができる。」の記載がある。
 
別掲3 真空ポンプの分野において,「スプリットフロー」の語が使用されている事例
(1)公開特許公報について
 ア 特許出願公開2004-354339号公報について
 【発明の実施の形態】の【0021】において,「・・・スプリットフロー型ターボ分子ポンプ18とダイヤフラムポンプ19の性能と到達真空度仕様とで一義的に決まる孔径及び孔長である。」,及び【0022】には「・・・差動排気室22は,スプリットフロー型ターボ分子ポンプ18とダイヤフラムポンプ19により,差動排気ポート20から真空排気されて約10paに到達している。・・・スプリットフロー型ターボ分子ポンプ18とダイヤフラムポンプ19の性能と到達真空度仕様で一義的に決まる孔径と孔長である。・・・高真空室23は,スプリットフロー型ターボ分子ポンプ18とダイヤフラムポンプ19により,真空排気ポート21から真空排気されて約10Mpaに達する。」の記載がある。
 イ 特許出願公開2012-9290号公報について
 【発明を実施するための形態】の【0035】において,「・・・第2オリフィス6の下流側に位置する第2差動排気室7には,図示していないスプリットフロー型ターボ分子ポンプの毎秒数リットルの排気速度を有する第二排気口と接続されている。」の記載がある。
(2)インターネット情報について
 ア エドワーズ株式会社のウェブサイトの「製品情報」の「nEXTターボポンプ」の項目において,「VIEW THE FULL RANGE OF nEXT PUMPS」をクリックすると,「応用および派生製品」の見出しの下,「nEXT プラットフォームの柔軟性を最大限にするために,スプリットフロータイプも幅広い用途に合わせたサイズが用意されています。」の記載がある。
(https://jp.edwardsvacuum.com/next_range/)
 イ アジレント・テクノロジー株式会社のウェブサイト
(ア)「製品」の「電気泳動 CE/MS」の項目において,「CE/MSシステム」の「MSシステム 仕様」の見出しの下,「空冷ターボ分子ポンプ:起動が高速で設置面積が小さく,冷却水が必要ありません。スプリットフローターボポンプにより,パフォーマンスが向上し,信頼性が増します。」の記載がある。
(https://www.chem-agilent.com/contents.php?id=1000120)
(イ)「Agilent7900ICP-MS」,「とどまることなく進化する次世代ICP-MS」のカタログの4頁において,「使いやすさを実現する設計」の見出しの下,「真空システム」の項目に「1台のスプリットフロー型ターボポンプと1台のロータリーポンプがインターフェース真空度を最適化し,マトリクス耐性を向上しながら高感度分析を可能にします。」の記載がある。
(https://www.chem-agilent.com/pdf/low_5991-3719JAJP.pdf)
(ウ)「Agilent8900トリプル四重極ICP-MS」,「干渉除去により究極の性能を実現するMS/MSテクノロジー」のカタログの6頁において,「干渉除去により究極の性能を実現するMS/MSテクノロジー」の見出しの下,「真空システム」の項目に,「スプリットフローターボポンプとターボポンプ(各1台),および外付けロータリーポンプで構成される高性能ポンプシステム。」の記載がある。
(https://www.chem-agilent.com/pdf/low_5991-6900JAJP.pdf)
(エ)「Agilent7000シリーズ トリプル四重極 GC/MS操作マニュアル」11頁の表1の最終行に「略語」として「Turbo」その右側に「定義」として「スプリットフローターボ分子ポンプ」の記載がある。
 また,12頁に,「7000シリーズ トリプル四重極GC/MS」の見出しの下,「7000シリーズ トリプル四重極GC/MSはスタンドアロン型のキャピラリGC検出器で,Agilent7890Aシリーズガスクロマトグラフと共に使用します。トリプル四重極MSには次のような機能があります。」の記載があり,その機能の1つ目に「スプリットフローターボ分子ポンプ」の記載がある。
(https://www.agilent.com/cs/library/usermanuals/public/G7000-96038.pdf)
 ウ 日本電子株式会社のウェブサイト 
(ア)「ANALYTICAL NEWS No.57」の4頁の「主な特長」の見出しの下,「高性能スプリットフローターボポンプ400L/秒」の項目に,「イオン源側,四重極・検出器側の双方を各々200L/秒で同時に排気し,ポンプ2基を搭載したような高排気能力を持っています。」の記載及び「スプリットフローターボポンプ」の図が記載されている。
 なお,裏表紙に,「JEOL ANALYTICAL NEWS 2003年10月発行」の記載がある。    
(https://www.jeol.co.jp/applications/analytical_news/file/ana-57.pdf)
(イ)「JMS-Q1050GC ガスクロマトグラフ質量分析計」の見出しの下,「過酷な測定条件での分析を可能にした高い排気能力」の見出しの下,「ダブルカラムにも対応」の項目において,「・・・最新の大型スプリットフローターボ分子ポンプを採用し,イオン源部と分析部を差動排気することにより,ダブルカラムでの分析時であっても分析部の真空度の低下を抑制します。」の記載がある。
(https://www.jeol.co.jp/products/detail/JMS-Q1050GC.html)
 エ 株式会社島津製作所のウェブサイト
 「ICPMS-2030」の「ICP質量分析計」において,「高安定・低ランニングコストを実現する装置設計」の項目において,「小型化された真空系」において,「小型化されたスリーステージスプリットフローターボ分子ポンプは,メンテナンス性に優れています。」の記載がある。
(https://www.an.shimadzu.co.jp/icp/icp-ms/icpms2030_p3.htm)
 
 審決注:上記の文章中の「GC」の文字は「ガスマトグラフ」,「MS」の文字は「質量分析計」を意味する略語として使用されている。
 
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示)                この審決に対する訴えは,この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は,その日数を附加します。)以内に,特許庁長官を被告として,提起することができます。                 
(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意)        特許庁は,著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては,著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 
 
 審判長 榎本 政実          
 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。


〔審決分類〕T18  .13 -Z  (W060709)
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上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。
認証日 令和 1年 8月22日  審判書記官  奥田 智子